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今月のワンポイントアドバイス


 本格的な少子高齢化社会の到来を前にして、「破綻しかねない医療・福祉関連の財政を立て直し、不公平のない安定した高齢者医療制度を目指す」として、半世紀ぶりとも言える大きな医療改革が今回為されした。今月は、その新医療制度である「後期高齢者医療保険制度」について取り上げました。制度の概要についてまずは解説し、その上で制度のはらむ多くの問題点と政府・厚生労働省の医療改革にかける本当の意図について詳しく解説を試みました。

私たちは今後、国を頼らずに、自分の健康は自分で守らなくてはならないのでしょうか? 
後期高齢者医療保険制度


後期高齢者医療保険制度〜制度の概要と狙い〜
少子高齢化社会と医療保険制度
〜安定した高齢者医療制度を目指して〜
高齢者の医療は今後どうなるの?〜後期高齢者医療保険制度の概要〜
現代の姥棄て山!?〜思いやりに欠ける後期高齢者医療保険制度の裏側〜


少子高齢化社会と医療保険制度〜安定した高齢者医療制度を目指して〜

 本項では、後期高齢者医療保険制度について解説するに先立って、まずは世界的な傾向である「少子高齢化社会」の抱える問題について簡単に解説し、最後に、今回の医療改革の必要性の根拠となる時代的背景について取り上げ、解説しました。
日本は超少子化社会に突入!?

 国立社会保障・人口問題研究所によると、2055年には日本の人口は9千万人を下回わるそうです。また、2035年には65歳以上の人たちが4割(その中でも75歳以上の人たちは27%)になると言われています。日本の少子高齢化は現実にとても深刻な問題になってきました。政府も少子化対策戦略会議を設け、少子化問題に取り組み始めました。

■老齢人口(65歳以上)比率
老齢人口比率
少子高齢化社会の一体何が問題なのか?

 高齢者が多く若い人たちが少ない社会のどこがそんなに大変なことでしょうか? 

 確かにこのまま何もしなければ、受け取る年金額は減り、支払う医療・介護保険料(費用)は増えてゆくことでしょう。現在の社会保障制度が存続できるかどうかも疑問が残るところです。それ以外でも、医療・介護を担う人たちが減ることはとても大きな問題です。
 「人間の尊厳」も含め、少子高齢化について真剣に考えてみなければならない時が来ているようです。
高齢社会と高齢化社会の違い

 本節では、「高齢化社会」と「高齢社会」の違いについて簡単に解説し、併せて高齢化率の意味するものについても簡単に解説した。
高齢社会とは何か?

 日本は「高齢社会」だとよく言われますが、最近では、出生率が下がったことも含め「少子高齢社会」と言われることが多くなりました。しかし、以前は「高齢社会」ではなく「高齢化社会」という言い方が一般的でした。ここでは、「高齢社会」と「高齢化社会」は一体どう違うのか参考までに解説しておきたいと思います。


 「高齢化社会」というのは、65歳以上の老年人口が総人口に占める割合が7%以上に達し、さらに老年人口が増え続けている社会のことを言います。そのため「高齢」に“化”の一字がが付いているわけですが、これは、1956年に国際連合が作成した「The Aging of Population and Its Economic and Social Implications」という報告書の中で使われていた「老年人口が7%以上は高齢化した人口」という表現を基準にして作られた言葉です。

 一方で「高齢社会」というのは、老年人口の7%以上で落ち着いている社会のことを言います。“化”の文字が取れて「高齢」が定着してしまった社会のことを言います。一体誰が定義したのかは分かりませんが、現在では老年人口が14%を超えると「高齢社会」と言われているようです。
 また最近では、さらにその上をゆく「超高齢社会」という表現も出てきました。これも誰が定義したのか分からないのですが、老年人口がさらに増加して20%を超えた社会のことだとされています。
高齢化率とは何か?〜3人に1人が高齢者の社会がやって来るのはもう直ぐ!〜

 ところで、よく聞く言葉で「高齢化率」という言葉もありますが、これは「老年人口比率」とも言い、上で「高齢社会」か「高齢化社会」かの定義に用いた「総人口に占める65歳以上の老年人口の占める割合」のことを言います。

 日本は高齢化のスピードが世界各国の中でも並外れて速いのが特徴です。高齢化率が7%から14%になるのにかかった年数は、最も遅いフランスで114年、アメリカで69年かかっていますが、日本の場合はそれが何と僅か24年で7%から14%へと倍増してしまっているのです。
 日本が高齢化率7%を突破して「高齢化社会」になったのは1970(昭和45)年、さらに14%を超えて「高齢社会」になったのは1994(平成6)年です。2004(平成16)年には高齢化率が19.5%に達しており、現在既に20%突破の「超高齢社会」になっている可能性もあります。しかも、これから高齢化はどんどん進んでいって、2015(平成27)年には26.0%、2050(平成62)年には35.7%にも達すると予想されています。35.7%と言えば、恐ろしいことに「3人に1人以上が65歳以上のお年寄り」という凄まじい計算になります。
安定した高齢者医療制度を目指して〜半世紀ぶりの高齢者医療制度の大幅見直し〜

 昭和36年に国民皆保険が達成されて47年を経た今日、我が国は世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成し、WHO(世界保健機構)の00年の報告では日本の保健システムの到達度は世界第1位と評価されています。しかも、医療費のGDPに占める割合は約8%で主要国の中では下位に位置しており、一見効率的な医療が提供されているように見えますが、しかしその実、医療事故の多発や地方及び一部診療科における医師不足、医療機関の機能の未分化による非効率性などが近年問題となっており、国民の間には医療の現状に対する不満・不信が少なくないのが実情です。
 しかも昨今の急速な高齢化や医療の高度化に伴って、累次の制度改正や近年の診療報酬マイナス改定にも関わらず、老人医療費を中心に国民医療費は国民所得の伸びを上回わるペースで増嵩しており、平成15年度には31.5 兆円(※国民所得に対する割合は8.6%)に達しています。このまま推移すれば、25年度には医療費が65兆円(同12.2%)に達すると試算されており、国民が負担可能な範囲となるよう医療費を適正化する必要性が指摘されています。
 たとえば各医療保険者の財政状況は、平成14年健康保険法等改正の効果等により若干改善されているものの、中長期的には厳しい状況が続くと見込まれていいます。特に被用者保険においては老人保健制度及び退職者医療制度への拠出金の負担感が依然重く、収入の約4割が拠出金として吸い上げられる構造となっています。また、国民健康保険においては、平成16年度の実質赤字は3,284億円、保険料収納率は過去最低の90.09%となり、構造的な赤字体質と保険料収納率の低下傾向に改善が見られない状況にあります。

 このような状況の中で、高齢者医療についても永らく老人保健法による老人医療制度として実施されてきました。老人医療制度については、国・都道府県・市町村の負担金及び健康保険等(政府管掌保険・共済組合・健康保険組合・国民健康保険等)の拠出金により運営されてきましたが、高齢化の進展等によって、その財政負担は増加の一途を辿ってきました。もちろん老人保健法でも被保険者の年齢や窓口負担等の引き上げ等を行なうなど制度改正を行なってきたのですが、なおも増え続ける高齢者医療費の財政負担を抑制するために設けられたのが後期高齢者医療制度です。
 何れにせよ、政府によればこのような一連の医療改革も「痛みを伴う改革」の一種なのでしょうが、それもこれも「安定した高齢者医療保険制度」の実現を目指した改革であると位置づけられています。


■高齢者割合と後期高齢者割合の推移(50年〜00年)
高齢者割合と後期高齢者割合の推移


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高齢者の医療は今後どうなるの?〜後期高齢者医療保険制度の概要〜

 後期高齢者医療保険制度の導入で、高齢者の受ける医療は今後どうなってゆくのでしょうか? そのことについて不安を感じている向きも多いでしょう。
 そこで本項では、この制度が孕む問題点などを指摘する前に、後期高齢者医療保険制度の概要や重要ポイントについて取り上げ、解説しました。
後期高齢者医療制度とは?
後期高齢者
 後期高齢者医療制度とは、後期高齢者の心身の特性に合わせた医療サービスを介護サービスと連携して提供することにより高齢者本人の生活の質(クオリティー・オブ・ライフ=QOL)を向上させる「医療の適正化」を目的としています。また、医療費の中で高い割合を示す後期高齢者医療を、(1)制度の独立化と、(2)都道府県単位で全市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」を設置することにより、高齢者世代内の負担や高齢者と若年者の世代間の負担の公平化及び財政基盤の安定化を図る「医療費の適正化」も視野に入れた制度となっています。

 前項でも簡単に触れたように、急速な少子高齢化が進み、高齢者の医療費が増える中、現役世代と高齢者世代の負担を明確にし、公平で分かりやすい制度とするため、75歳(※一定の障害のある人や寝たきりの人、人工透析患者は65歳)以上の高齢者を対象に新たな高齢者医療制度が創設されました。この新制度がスタートすると、75歳以上の方は、今まで扶養者として保険料を免除されていた高齢者も自ら保険料を納め、広域連合が交付する被保険者証を医療機関に提示して診療を受けることになりました。
後期高齢者医療保険制度でここがよくなる!!

 「新医療制度が始まっても、従来と同じ医療を受けることが出来るのでご安心下さい」として、厚生労働省は、パンフレット等で従来の医療保険制度よりも後期高齢者医療保険制度の優れた点を幾つもの項目を挙げて新制度の宣伝に努めています。
 そこで本節では、高齢者医療保険制度の詳しい内容を解説する前に、参考までに厚労省の挙げる後期高齢者医療保険制度の利点をまずは紹介しておくことにします。


■厚生労働省による後期高齢者医療保険制度のメリット
住み慣れた自宅で自分らしい生活を送りたい方には
医療関係職種が連携して、多様できめ細やかな訪問医療が提供される
  • 4時間、長時間の対応など訪問看護サービスが充実
  • 一生美味しく食べられるよう、歯科訪問診療が充実
  • 飲み忘れや飲み残しがないよう、服薬支援が充実
急に病状が悪化した場合にも
患者の病状をよく分かっている病院に入院できる
(※在宅・外来患者の緊急時の入院)
安心して退院できるように
退院前後の医療・福祉のサポートが充実する
(※退院支援の計画、退院に向けた指導)
希望すれば
こうした医療の流れを患者本人の選んだ担当医が継続して支えてくれる(※高齢者担当医)
  • 個々人に相応しい治療計画を立て、生活を重視した丁寧な医療を提供
  • 飲み合わせの悪い服薬も予防
これからは被保険者証1枚で医療を受けられる
※従来は加入する制度の被保険者証と老人医療受給者証の2枚が必要だった
医療と介護の新しい合算制度を創設
 従来は医療保険と介護保険の制度毎に自己負担の毎月の上限を設定していたのに対して、今後はこれらに加えて両制度の自己負担を合計した額についても年間の上限を設定する。そのため、従来の医療費自己負担額よりも相当な減額になると厚労省は試算しています。

後期高齢者医療制度の重要ポイント


■後期高齢者医療保険制度のポイント
[新規]  平成20年4月から始まります。
[現行通り]  75歳(※一定以上の障害のある方や寝たきりの人、人工透析患者は65歳)以上の方が後期高齢者医療の被保険者になります
[新規]  後期高齢者医療制度加入後は国民健康保険や被用者保険(※政府管掌健康保険や組合管掌健康保険、船員保険及び共済組合の公的医療保険の総称)の被保険者ではなくなります。
[新規]  従来の「老人保健医療受給者証」と「健康保険証」は使えなくなり、新しい被保険者証が交付されます。
[新規]  国民健康保険料等の保険料の負担は無くなり、その代わりに「後期高齢者医療保険料」を支払うことになります。
[新規]  今まで自分で保険料を支払っていなかった各社会保険の被扶養者の方も新たに保険料を支払うことになります(※保険料の徴収はお住まいの市町村が行ないます)。
[新規]  被保険者自身の年金から原則として天引きする形で保険料を直接徴収します。
[現行通り]  従来の老人保健制度と同様の医療給付が受けられます。
[現行通り]  窓口での医療費の自己負担割合は、(1)一般の方が1割、(2)現役並の所得者が3割です。
[現行通り]  窓口業務(申請受付や届け出、保険者証の引渡しなど)や保険料の徴収事務はお住まいの市町村が行ないます。
[新規]  被保険者の資格管理や保険料の賦課・給付・財政など制度の運営及びこれに伴う事務は「後期高齢者医療広域連合」がこれを行ないます。

後期高齢者医療保険制度の概要

 後期高齢者医療保険制度の概要につき、本節では、以下でその重要な部分を取り上げて解説しました。


■後期高齢者医療保険制度の仕組み
■1)制度の仕組み
後期高齢者医療保険制度の概要
■2)財政運営の仕組み
後期高齢者医療保険制度の財政運営の仕組み

「老人保健制度」から全員加入の「後期高齢者医療制度」へ

 平成20年4月から従来の「老人保健制度」が「後期高齢者医療制度」へ変わるため、75歳(※一定の障害のある人や寝たきりの人、人工透析患者は65歳)以上の高齢者等の方は、今後は「後期高齢者医療制度」で医療を受けることになります。従って、上でも既に触れたように、後期高齢者医療制度への加入後は今まで加入されていた市町村の国民健康保険やお勤め先の健康保険等の被保険者では無くなります。
運営の主体は「後期高齢者医療広域連合」

 平成20年4月から始まる新しい医療制度である「後期高齢者医療制度」を運営する特別地方公共団体が「後期高齢者医療広域連合」になります。この広域連合は各都道府県単位で運営し、全ての市町村が加入することになります。

後期高齢者医療広域連合
医療機関で医療を受ける時は?

 広域連合で交付する被保険者証を提示して医療を受けることになります。療養の給付を受けることができますので、医療機関での本人負担は1割(※現役並の所得者は3割)となります。
保険料は?

 保険料は被保険者単位で算定されます。被保険者は保険料を原則として年金からの天引き(※本来は特別徴収)によって納めることになります。

 なお、保険料は応益割額(定額分)と応能割額(所得比例分)の合計となります。応益割額とは被保険者一人ひとりに均等に負担してもらう額で、応能割額とは被保険者の算定対象所得(※総所得金額−基礎控除)に保険料率を乗じて得た額です。また、保険料率や賦課限度額は、国で定める算定基準に基づき広域連合が条例で定めることになります。


■高齢者の医療費の窓口負担と保険料
高齢者の医療費の窓口負担と保険料

参考:旧制度との比較


■旧制度との比較表
旧制度
(平成20年3月まで)
後期高齢者医療制度
(平成20年4月から)
運営主体
  • 市町村
  • 後期高齢者医療広域連合
    (※都道府県区域ごとに全ての市町村が加入する広域連合)
※広域連合:後期高齢者医療事務(=被保険者の資格管理、保険料の賦課、医療費給付等)
※市町村:保険料の徴収及び窓口業務
被保険者
  • 75歳以上の者
  • 65〜74歳の一定以上の障害を有する者(認定を受けた者)
  • 同左
※認定は後期高齢者医療広域連合で行なう
保険料
  • 老人保健での保険料は発生しない
  • 各医療保険制度の保険料を負担する
  • 被用者保険者の被扶養者には保険料はかからない
  • 患者負担を除く総医療費の1割を保険料として負担
高齢者の患者負担
  • 70歳以上は原則1割
  • 現役並みの所得を有する者は3割
  • 70〜74歳は原則2割
  • 75歳以上は原則1割
  • 現役並みの所得を有する者は3割
給付
  • 療養の給付
  • 医療
  • 入院時食事療養費
  • 入院時生活療養費
  • 保険外併用療養費
  • 訪問看護療養費
  • 療養費
  • 移送費
  • 特別療養費
  • 高額療養
  • 高額医療費
  • 現行の老人保健制度と同じ給付と平成20年4月に新設される高額介護合算療養費及び広域連合の条例で規定された給付
財源構成
  • 公費:5割(国4/6、都道府県1/6、市町村1/6)
  • 老人保健拠出金(国保・被用者保険):5割
  • 公費:5割(国4/6、都道府県1/6、市町村1/6)
  • 後期高齢者支援金(国保・被用者保険):4割
  • 高齢者の保険料:1割
加入形態
  • それぞれの医療保険および市町村が行なう老人保健医療制度に加入
  • これまでの医療保険を脱退し、広域連合が運営する後期高齢者医療保険制度に加入
保険証
  • 老人保健医療受給者証
  • 国民健康保険、健康保険組合などの保険者証
  • 新しい被保険者証を交付
※これまでの老人保健医療受給者証と健康保険証は使えなくなります
法的根拠
  • 老人保健法、健康保険法
  • 高齢者の医療の確保に関する法律


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現代の姥棄て山!?〜思いやりに欠ける後期高齢者医療保険制度の裏側〜

 多くの人が新たに導入された後期高齢者医療保険制度に不安の思いを募らせるのも無理はありません。事実、新医療制度は様々に批判されています。
 本項では、後期高齢者医療保険制度の抱える問題点をクローズアップし、併せて、それでもこのような新制度を導入しなければならないとする政府の主張の裏に一体どのような本音と狙いがあるのかを詳しく解説しました。
窓口には苦情や問い合わせが殺到!!〜新医療制度を襲う4.15ショック〜

 保険証の未送達や保険料の算定ミス、死亡でも保険料の天引きといった具合に、後期高齢者医療保険制度の根幹を揺るがすトラブルが続出しています。このように新医療制度は波乱含みで開始されましたが、以下で取り上げた項目によっても、この制度が如何に不備なものだったか理解できるでしょう。
 新医療制度はうまく機能するのでしょうか? それとも早晩、見直しや破綻を来すのでしょうか? 
窓口には苦情や問い合わせが殺到!

 4月から始まった後期高齢者医療制度ですが、これにより75歳(※一定の障害のある人やや寝たきりの人、人工透析患者は65歳)以上の高齢者は新しい保険証で医療機関を受診することになりました。ところが、「肝心の保険証が届かない」といった自体が各地で起こっていると言います。厚生労働省によれば、宛先不明などで戻ってきた保険証は6万3千万人分以上あるそうです。そのため、同省は慌てて古い保険証でも代用できる窮余策を講じましたが、窓口となる各自治体には問い合わせや苦情が殺到したとのことで、「保険料はいくら?」「高齢者への差別だ!」など電話が鳴りっ放しの状態が続いているそうです。それもこれも全ての原因は国の周知不徹底と準備不足にあります。こんな状態で「長寿医療」は本当に実現するのでしょうか? 

 そればかりではありません。新たな火種となりそうなのが保険料の年金天引きです。当初の保険料(=全国平均で年額7万2千円)は4月15日以降、原則として年金から天引きされるようになりますが、ところが、社会保険庁が保険料額を知らせる「年金振込通知書」の発送を始めたのは何と天引き開始直前の4月9日なのです。このため、「4.15ショック」を迎える現場では新たな混乱に戦々恐々としていると言います。そんな折、社会保険庁が年金相談を受け付ける「ねんきんダイヤル」で11日、通信障害が勃発しました。「4.15ショック」を控えて問い合わせが殺到したせいかどうかは分かりませんが、「記録漏れが解決していないのに、保険料だけは差っ引くのか!」といった非難轟々の嵐の中、年金制度はまたひとつ新たな火種を抱え込んだと言ってよいかも知れません。
現代の姥棄て山か?〜「思いやり」にかけた高齢者切り捨ての新医療制度〜

 このように、後期高齢者医療保険制度は1日にスタートし、年金からの医療費の天引きも始まるというのに、上でも書いたように医療を受けるために必要な保険証すら手元に届けられていない人もいるという状況で、その数は9日現在で全国で6万3千人に上っていますが、これでは、国が言う「高齢者の生活の質を高めるための医療の適正化」どころの話ではありません。本来1割負担のはずが、保険証が無いことを理由に医療費の全額負担を求められるケースも出ている有様です。いくら保険証が届くまでの暫定措置とは言え、高齢者に医療費を全額負担させるというのは一体どういうことでしょうか? 金銭的な負担は精神的な負担につながります。高齢者の通院や入院、治療の動きを萎縮させかねません。
 繰り返し書いてきたように、後期高齢者医療制度は医療と医療費の適正化を目的にこの4月からスタートした新医療制度で、その狙いは、高齢者の心身の特性に合わせた医療&介護サービスの連携・提供、高齢者間や高齢者と若年者層との世代間の医療費負担の公平化にあると国は強調してきました。しかし、上記の自体ひとつ取ってみても、国の実際の狙いが「医療の適正化」ではなく「医療費の削減」に重きが置かれている感を強く受けざるを得ません。

 さて、06年度の推計では国民医療費は総額約34兆円で、このうち高齢者の医療費は11兆円と3割を占めていますが、そのような膨張する高齢者の医療費に歯止めをかけ、負担力のある高齢者たちへの医療費の受益者負担と若年層の負担軽減を図るのが同制度の言う「医療費の適正化」です。本当にそうでしょうか? 
 75歳以上という有病者が増える年代(しかも一定の障害のある人や寝たきりの人、人工透析患者は65歳以上の既に医療費がかかる年代)の高齢者を他の医療保険から切り離し、独立した保険制度に入れることで確かに国は管理を強化することができます。しかし、これも制度導入の当初から「粗悪医療」「病院追い出し」などの弊害が指摘されてきた事柄です。また、後期高齢者の保険制度と他の保険制度を別枠にすることで診療報酬制度も別建てにする構想も論議されています。
 しかも子どもや孫の扶養にある高齢者も独立して医療費を支払わされるため(※月額1万5千円以上の年金受給者の老齢年金・遺族年金・障害年金から天引き)、保険料の負担は高齢者の懐を直撃することになります。厚労省の試算ではその保険負担額も7年後には現行より1万3千円も増えて8万5千円に値上げが想定されていると言います。
 何れにせよ、不備は制度の周知不足や役所の事務能力にとどまりません。難解で負担増を強いる高齢者に優しくない「制度」そのものにあると言ってよいでしょう。まさに「現代の姥捨て山」と言ってよい高齢者切り捨ての医療保険と言わざるを得ません。
後期高齢者医療制度の問題点

 上記で見たように、新医療制度は始まる早々ケチが付き、問題点も幾つか明るみに出ました。「現代の姥棄て山」とまで酷評される新医療制度はお年寄りに優しくない制度であるとかねてから指摘されてきました。また、今回の医療改革は年齢による「医療差別」を持ち込む世界に例のない「医療制度改悪」の試みだとも言われています。
 それでは、今回の医療改革のどこが・どのように問題なのでしょうか? 本節では、後期高齢者医療保険制度の抱える問題点を取り上げて、以下で詳しく解説しました。
後期高齢者医療制度の主な問題点


■後期高齢者医療制度の問題点
■1)高齢者&国民の負担について
保険料の新たな負担
保険料自動引き上げ
資格証明書の発行
公費負担の対象から除かれる
保険料減免が困難
■2)医療保険制度&診療報酬について
75歳で区切る「差別医療」の導入
健康の保持増進は努力規定
高齢者医療は劣悪な内容に
寿命が長いとペナルティー
■3)医療提供体制について
高齢者の選択権に制限
登録「かかりつけ医」に定数
■4)終末期医療のあり方について
財政優先で決められる
医療から介護保険への誘導
■5)後期高齢者医療広域連合について
高額医療費の申請償還
当事者の声が届かない
不平等な事務費の均等割
「医療費削減」を競わせる
現役世代への特定保険料の負担

後期高齢者(75歳以上)の保険料が増えます

 新制度では、高齢者を65〜74歳の「前期高齢者」と75歳以上の「後期高齢者」とに分け、後期高齢者の独立した保険制度を設立し新たに保険料を徴収しようとしています。
 たとえば一般的なサラリーマンの息子さんの扶養になっているAさん(76歳)の場合、従来は保険料の負担が0円であったのに対して、新制度では平均で年間 7万2千円(1ヶ月で6千 円)の負担が直接高齢者自身にかかってくることになります。しかも、年金からの天引きが実施され、現在2ヶ月毎に天引きされている介護保険料と合わせると、1ヶ月約 1 万円が毎月年金から天引きされることになります。しかも、現役でサラリーマンとして働いている人が75歳になれば、その扶養家族も新たに国民健康保険に加入しなければならず、国民健康保険料が丸まる負担増となります。

 考えもみて下さい。現在国民年金の平金額は月4万6千円ですが、そこから新たに1万円の保険料を徴収されたら高齢者の生活は一体どうなってしまうのでしょうか。また、この天引きによって「分納誓約」や「納付猶予」の相談もできなくなります。一方的な天引きは生きることのできない高齢者を多数生み出すことになる恐れがあります。
 なお、これまで扶養家族となっていたために保険料負担がゼロの人(厚生労働省の推計では約200万人)には激変緩和措置として保険料が2年間は半額になる措置が取られることになっていますが、何れにせよ新たな負担には変わりありません。
70〜74歳までの窓口負担も増えます

 75歳(※一定の障害のある方や寝たきりの人、人工透析患者は65歳)以上の高齢者ばかりでなく、新制度では70〜74歳の前期高齢者の方の窓口負担すら従来の1割から2割になりました
 たとえば、(1)糖尿病で月1回通院中のBさん(73歳)の場合は、従来は月2,440円の治療費が、新制度では月4,880円と倍額(※年間で29,280円の負担増)になり、また、(2)腰痛リハビリで月4回通院中(1回290円)のCさん(70歳/一定所得者)の場合は、従来は月2,320円の治療費が、新制度では月3,680円と1,360円の増額(※年間で16,320円の負担増)になります。
高額療養費の上限が引き上げられて現役世代も負担増になります

 医療保険では、重病になった時でも「これ以上は負担しなくて済む」ラインがあり、所得によって自己負担額の上限が決められています。これを「高額療養費制度」と言うのですが、新制度ではこの上限額が引き上げられて24万1千円から26万7千円になります。
 たとえば従来では24万1千円以上治療費がかかった場合はその超過額に対して1%の金額のみを負担すればよかったのですが、その上限額が2万6千円も負担増になる仕組みです。元々高額な治療費なので、一般の人ならばこれでもよいかも知れませんが、年金しか収入のない高齢者にとってはこれでも大変な出費と言わざるを得ません。
長期入院の場合、食費・居住費が新たに徴収されます

 昨年の10月から介護保険の施設では食費・居住費(=ホテルコスト)徴収が始まりましたが、新制度では、これを医療型療養病床でも新たに取り入れようといています。
 たとえば脳梗塞後、療養病棟に長期入院しているDさん(85歳)の場合、従来は〔療養費40万×10%+食事代2万4千円=6万4千円〕だったのに対して、新制度では〔療養費40万×10%+食事代・調理コスト4万6千円居住費1万円=9万6千円〕と、一気に3万2千円の負担増になってしまいます。

 ちなみに政府の主張では、「自宅で療養している人は食費や水道光熱費を払っているのだから入院した人も支払うべきで、これも公平のために行なう」と言うのですが、入院する際に自宅を処分して入院する人はいないことは誰でも分かるように、新制度でも入院中も自宅の家賃や水道光熱費を払うのですから、これでは2重払いになってしまいます。
2年毎に保険料が自動的に引き上げられる可能性があります

 後期高齢者が増え、さらに医療給付費が増えれば、新医療制度では“保険料値上げ”か“医療給付内容の劣悪化”かという、そのどちらを取っても高齢者は「痛み」しか選択できない仕組みになっています。
 たとえば2年毎に保険料の見直しが義務付けられ、各広域連合の医療給付費の総額をベースにして、その10%は保険料を財源にする仕組みとなっています。さらに後期高齢者の人数が増えるのに応じてこの負担割合も引き上がる仕組みです。これらのことが受診抑制につながることにもなり、高齢者のいのちと健康に重大な影響をもたらすことが懸念されてなりません。
独自の保険料減免が困難になります

 保険料は「後期高齢者医療広域連合」の条例で決めてゆくことになりますが、関係市町の負担金や事業収入、国及び県の支出金、後期高齢者交付金からなる運営財源はあるものの、一般財源を持たない「広域連合」では独自の保険料減免などの措置が困難になってくることは火を見るよりも明らかです。
 また、これまでは地域の医療体制や被保険者の健康状態の違いが反映した自治体毎の医療保険制度であったために、保険料水準には自ずから違いがありましたが、県内統一の保険料になれば、大都市部と山間部での医療体制の大きな相違等で新たな医療格差が発生する恐れが強くなります。
社会保障が低所得者を排除します〜現行制度にない厳しい資格証明書の発行〜

 保険料を年金天引き(特別徴収)ではなく現金で納める(普通徴収/政府の試算では2割と見込まれている)人にとっては、一回でも保険料を滞納すれば「保険証」から「資格証明書」に切り替えられ、「保険証」を取り上げられてしまいます。さらに、特別な事情なしに納付期限から1年6ヶ月間保険料を滞納すれば保険給付の一時差し止めの制裁措置もあると言います。これは、年金収入の少ない低所得者への相当に厳しいペナルティだと言わざるを得ません。

 先にも書いたように、月1万5千円以上の年金受給者は医療費が年金から天引きされるので、元々滞納しようがありません。滞納が生まれるのは1万5千円未満の僅かな年金受給者です。すなわち、この制度では低所得者ほど医療を受ける権利が奪われることになるのです。そして、資格証明書を発行されると保険が効かなくなり、いったん全額自費で払う必要があります。従ってこの新制度では、〔病気で医療機関にかかる→医療費がかかって保険料が払えない→資格書を出されてさらに医療が遠のく〕という悪循環を必然的に生み出すことになります。恐ろしいことに、新医療制度は社会保障制度が低所得者を排除する仕組みなのです。
 何れにせよ、従来の制度で高齢者に対しては資格証明書発行の対象から外してきたことと比べると問答無用な冷厳なシステムだと言わざるを得ないでしょう。ここからも、新制度がお年寄りに優しいどころか如何に冷たい医療制度であるかよく理解できます。
給付を切りつめる「差別医療」の導入

 新制度では、医療機関に支払われる診療報酬は他の医療保険と別建ての「包括定額制」とし、「後期高齢者の心身の特性に相応しい診療報酬体系」を名目に診療報酬を引き下げ、受けられる医療に制限を設ける方向を打ち出しています。厚生労働省から示されているのは、主な疾患や治療方法毎に通院と入院とも包括定額制(※たとえば「高血圧症の外来での管理は検査・注射・投薬などを全て含めて1カ月○○円限り」と決めてしまう方法)の診療報酬を導入する考えです。また、国保中央会では昨年12月、後期高齢者を対象とした「かかりつけ医」の報酬体系を導入し、「登録された後期高齢者の人数に応じた定額払い報酬」とし、「医療機関に対するフリーアクセス(※『いつでも、誰でも、どこへでも』)の中の『どこへでも』をある程度制限」することを提言しました。
 なお、新制度では「後期高齢者の心身の特性等に相応しい診療報酬体系を構築する」としていますが、何れにせよこれは、高齢者にかかる医療費を抑制するための「医療内容の劣悪化」「差別医療」につながる恐れがあります。
世界にも例がない「包括払い」で医療を制限

 上でも述べたように、厚生労働省が診療報酬の「出来高払い」に代えて「包括払い」を検討し、高齢者の医療を制限しようとしていることはとても大きな問題です。診療報酬とは病院や診療所などで行なう医療や検査、投薬などに対する医療保険上の支払い額ですが、分かりやすく言えば、これは「何をやっても同じ額」というのが診療報酬の包括払いのシステムです。つまりこれは、病院や診療所からすれば検査や手当などをやればやるほど赤字になる仕組みで、「病院に来ないでくれ」と患者が病院側から断わられる可能性がこれでさらに高まることにました。
 特に入院医療は深刻になりそうです。長期にわたる治療が必要な慢性疾患患者は必然的に高齢者に多いわけですが、当然のこととして、「包括払い」になれば医療費の嵩む高齢者が病院から敬遠されかねないことになり、入院患者も病院から追い出さることにつながります。たとえば数年前になりますが、「終末期の適切な評価とは何か?」と聞かれた厚労省のある医療課長が「家で死ねっていうこと」「病院に連れて来るな」と語ったそうですが、「入院患者を病院から追い出せば医療費は安くすむ」という考えがここに如実に現われていると言ってよいでしょう。

 ちなみに、全国腎臓病患者協議会は「高齢者の透析の受け入れ先がなくなり、透析医療が危機に陥るのでないか」と懸念を強めているそうです。透析患者にとって透析は命綱ですが、後期高齢者の医療費が将来さらにふくらんでくれば、「75歳以上は透析を制限する」「インシュリンの注射もほどほどに」ということにもなりかねません。
 何れにせよ、年齢で医療に「差別」を持ち込む制度は世界にも例がありません
当事者の声が直接届かない

 広域連合議員の定数は制限されており、半数以上の市町から議員を出すことが出来ません。その議員は各市町の長及び議会の議員の中から選ばれることとなっており、しかも広域連合の会議は半年に1日程度とされています。これでは、当事者である後期高齢者の意見を直接的に反映できる仕組みとしては極めて不充分なものと言わざるを得ません。国保料値下げなどの住民の声が伝わらないことが危惧されます。
 しかも、広域連合には一般財源がなく、自治体の一般財源から減免に当てることも禁止されています。その上、広域連合で独自の減免制度をつくって赤字が出た場合、国の交付金が減らされるペナルティまであるです。新制度では、このように住民との関係が遠くなる一方で、国に対しては「助言」の名を借りた介入や「財政調整交付金」を使った誘導など大きな指導権限を与えています。このままでは、広域連合が国言いなりの「保険料取立て・給付抑制」の出先機関になる恐れがあります。
恐るべし!後期高齢者医療制度の本当の狙い

 色々と批判されている今回の医療制度改革ですが、その問題点については上記でかなり詳しく取り上げて解説しました。それでは、政府は何故そこまで批判される医療改革を行なおうとするのでしょうか? 政府及び厚生労働省の本当の“狙い”とは一体何なのでしょうか? 
 “医療改革を行なう政府の本当の狙い”について、本節では3つの項目を取り上げて解説しました。
「コスト意識」で世代間の対立を煽る政府

 これまでの医療制度改正で用いられたのが、「高齢者が医療費を使うから国や医療保険の財政が大変だ」などの世代間の対立を煽る方法です。後期高齢者医療制度でも現役世代に対しては自分が加入する医療保険に入る保険料と高齢者医療制度に支出される保険料が明記されますが、これはたとえば給与明細に表示され、「こんなに高齢者にお金を使っているのか?」という“コスト意識”を煽るのです。
 しかし、対立を煽る方法は限界に来ています。そこで、政府は次に「医療機関は設け過ぎているから医療保険財政が大変だ」などと国民の不信感を煽ることで診療報酬を削りましたが、その結果は、医師の労働が一層過酷となり、産科や小児科が地域から消える「医療崩壊」を招いただけでした。
 たとえ高齢者の負担を増やしても、現役世代にとって高齢者は将来の我が身です

 何れにせよ、小泉・安倍・福田政権と続く社会保障改悪が浮き彫りにしたのは、「国や大企業の負担だけが軽くなった」という現実です。たとえば最初「福祉のため」と称して導入された消費税も結局は法人税の軽減などに消えただけでした。そして今度は、医療・介護から「軽症」「軽度」を排除するという考えが持ち込まれ、06年には療養病床の削減(※38万床から15万床に)やリハビリの日数制限、介護保険の軽度者からの車イスやベッドの取り上げなどが行なわれました。そして今、風邪などの比較的“軽い”病気を医療保険から外すことすらも検討されている始末です。
制度の「持続可能性」の狙い

 高齢者の単身世帯では、収入200万円以下の人が7割、250万円以下の人が8割いると言われます。女性の単身者の収入額は一層低く、後期高齢者医療制度は生活を破壊しかねません。上でも指摘したように、所得の再分配を目的とする社会保障制度が逆に貧困を生むことになりかねないわけです。
 それでは、こんな本末転倒な制度を政府は何故わざわざ導入するのでしょうか? それは、国の医療費負担を減らし、企業の医療費負担も減らすことにその最大の狙いがあります。

 政府は80年代の「臨調行革」の時代から一貫して「社会保障に国のお金を使わない」政策を進めて来ました。83年から老人医療費を有料化し、翌84年には健保本人の1割負担を強行、さらに国民健康保険の国庫負担を総医療費の45%から38.5%に引下げました。97年には健康保険本人の患者負担を1割から2割に、04年には「国保も3割だから」と3割に上方修正しました。そして、高齢者医療も02年には定額制から定率制にしました。一方、財界も03年には経団連が「活力と魅力溢れる日本をめざして」を発表し、社会保険料負担は本来個人が全額負担するところを事業主が肩代わりするもので、本来は全額個人が負担すべきだと、効率優先の企業の論理そのものの主張を為すに到りました。
 もちろんその一方で、政府は何も社会保障制度を無くしたいと思っているわけではありません。「高齢者社会を迎え、社会保障財政は大変だ。だから、持続可能な制度にするために国民にも負担をお願いするんだ」と政府は言い続けてきましたが、実際はお金を取ることは熱心なのに国民への給付には余り関心がないのです。その本音は「消えた年金」問題にも見事に現われましたが、国が本当に関心を持っているのは、実は「お金を取り続ける制度」を「持続」させることなのです。
狙いは「団塊世代」!?

 新制度を導入する最大の狙いは、この制度が以前から「現代版姥捨て山」と批判されているように、重い保険料負担と貧しい医療内容を75歳以上(※一定の障害のある人や寝たきりの人、人工透析患者は65歳)の高齢者に押し付けることです。もっとも政府も表向きは「高齢者の医療を抑制することは現役世代の負担を過重にしないためだ」などと言っていますが、しかし、この制度が最もその“効果”を発揮するのは、現在75歳以上のお年寄りよりも、実は戦後ベビーブームのときに生まれた「団塊の世代」が75歳以上になった時なのです。政府はその時を睨んでこの新医療制度をいま新たに導入したというわけです。

 政府は、現在60歳前後のこの世代が後期高齢者になる20年代を「医療費が膨張する危機」と捉え、今のうちに国民に負担増を負わせ、国の支出を抑える仕組みに変えてしまいました。ですから高齢者医療保険制度は、現在の高齢者はもちろん、これから高齢者になる全ての国民を直撃する制度なのです。
 そして、何よりこの医療制度の改正を強く求めて来たのが財界及び大企業です。彼らは、「企業の保険料と税負担が増えれば企業のグローバル競争力の低下を招く」として制度改正を強く求めて来たのです。自分たちはバブル期の2倍近い利益を上げながら国民に犠牲を押し付けるというのは、これは誰がみても余りにも身勝手な態度と言わざるを得ません。政府にしても、自分たち省庁の運営は経営の論理を無視して放漫経営を行ない、そのツケを国民に押し付けようと言うのも論外と言わざるを得ないでしょう。
自分の健康は自分で守れ!〜医療・介護の世界にはびこる企業・経営の論理〜

 上記の政府の方針からは、高齢者を含め「国民は国を頼らずに、自分の健康は自分で守れ」という意図が見え隠れしています。

 上でも触れたように、政府は、これまで社会保険・福祉制度その他に経営の論理を持ち込もうと様々な制度の改革を試みてきました。それが杞憂でなかったことは、今回の医療制度の改正で明るみに出たと言ってよいでしょう。
 医療制度に企業の論理・経営の論理を持ち込んではいけません。だからといってもちろん経営の論理を全く無視してもよいというわけではありません。しかし、それは各病院の経営に関する事柄であって、医療制度そのものを企業・経営の論理で貫いてよいということにはなりません。医療や福祉の世界に企業の論理が持ち込まれる時、多くの人が切り捨てられてゆくことは火を見るよりも明らかです。何れにせよ、「弱者切り捨て」の制度は近代国家の取るべき制度・政策であってはならないのです。 

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