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 最近、悲惨な児童虐待のニュースが盛んに報道されています。今回は児童虐待は何故起こるのか、児童虐待を防止するにはどうしたらよいのかを様々な側面から考えました。
児童虐待


児童虐待
【1】児童虐待とは何か?〜児童虐待の種類とその実態〜
【2】童虐待が起こる背景と要因〜虐待はどうして起きるのか?〜
【3】児童虐待が子どもに与える影響
【4】期発見と予防〜児童虐待の早期発見のために〜


【1】児童虐待とは何か?〜児童虐待の種類とその実態〜

 最近ニュースなどで児童虐待による殺人事件等が盛んに報道されています。
 まず本節では、そもそも児童虐待とは何か、その定義や種類などについて解説しました。
増える児童虐待〜「虐待しているのでは?」と不安な人4割〜

 親は子どもに対し愛情をもって接するべきなのに、虐待してしまう例が後を絶ちません。児童虐待のニュースを最近しばしば見かけますが、親が自分の子どもを虐待したり、ひどい時には折檻した結果死なせてしまうケースが目立ちます。
 ちなみにあるアンケートによれば、「躾にしては行き過ぎではないか?」と思う場面を見た人が半数近くもいたと言います。また、「自分では気がつかないけれど、虐待しているかも知れない」と不安に思った人が4割強もいたそうで、さらに、「子どもを叩き続ける」「子どもの存在を否定するような言葉を言い続ける」人が各1割以上もいたとのことです。そして、「子どもを叩き続ける」、「子どもの存在を否定するような言葉を言い続ける」、「子どもを長時間1人にする(家の中や屋外&車中に)」、「子どもに食事を与えないことがある(病気の場合を除く)」などの明らかな虐待行為をしたことのある親が4割近くもいるのだそうです。


■児童虐待事件の種別謙虚状況
児童虐待事件の種別謙虚状況

児童虐待とは?

 最近、児童が虐待を受けて死亡する事件が報道されています。自治体でも、子どもに対する虐待の相談件数が近年急増していると言われます。これは、子どもへの虐待が急激に増えているのか、または、これまでも行なわれていたことが最近虐待として認識され始めたために相談される件数が増えて来たのかは俄には分かりませんが、虐待で心身に深刻な影響を受けている子どもが大勢いることは間違いのない事実です。また、都市部に限らず地方でも児童虐待は多く見られる現象となっています。

 親や親に代わる養育者が子どもに対する身体的暴力や言葉による暴力などを行なうことを児童虐待と言います。児童虐待と言うと直ぐに暴力的な行為を思い浮かべがちですが、養育の放棄や無視(ネグレクト)など子どもの成長や発達に著しく影響を及ぼすような養育の状況も含まれます。そして、虐待は子どもの心身に深刻な影響を与えます。児童虐待は子どもの心と身体に深い傷を残し、健やかな成長や人格の形成に重大な影響を与えるばかりか、次の世代に引き継がれ、近い将来、さらに深刻な社会問題へと拡大する恐れも含んでいます。このように子どもに対する虐待は、子どもの健康を損ない、子どもの身体や心までも傷つけてしまう行為なのです。なお、虐待は社会に顕在化しにくいという特質もあるため、早期発見・早期対応が何よりも重要です。そのためには、地域に住む私たち一人ひとりが虐待に関心と理解を持つことが必要となってきます。
 確かに「可愛い我が子をなぜ虐待するのだろう?」と思う人が多いと思いますが、しかし、実は児童虐待は誰にでも起こりうることなのです。たとえば育児の悩みを相談する人がいないとか、一生懸命に子育てをしているのに子どもが思うように育ってくれないなど、育児に関する不安を抱える中でついつい我が子を虐待してしまう親もいるのです。このように、児童虐待は誰でもしてしまう可能性があるのだという認識を私たちが持つことで、児童虐待の早期発見と早期対応が可能になり、子どもを救うことができます。我が子を虐待している親は、子育てに悩み苦しんでいる人であり、必ずしも非難されるべき人ではなく、援助を必要としている人であることをまずは理解することが大切です。


◆参考1: 児童虐待の「発見」
 児童虐待が社会問題として浮上したのは比較的近年のことだと言われています。それというのは、昔は「躾のために親は子どもに折檻を行なうものだ」という常識が世界的に受け入れられていて、子どもの虐待は最近までは全く問題視されなかったという側面もあります。特に近代以前においては、児童は親の所有物という考えが社会通念としてあったために、人身売買や、果ては口減らし(間引き)とする子殺しすら行なわれていた事情もあります。その証拠と言っては何ですが、我が国でも、1995年の刑法改正で削除されるまで尊属殺人で子どもが親を殺すのは厳罰であったのに対して、親が子どもを殺すことには格別罰則が設けられていなかった有様です。なお、民法においても親権者による「必要な範囲内」での体罰は認められているため、現実に虐待と体罰の区別を明確にすることは難しいとされている状況です。

児童虐待の定義と種類


■法律による定義
 日本では、00年11月に施行された「児童虐待の防止等に関する法律」、「保護者(※親権を行なう者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者を言う)がその監護する児童(18歳に満たない者)に対し、次に掲げる行為をすること」と定義されています(第2条)。
  1. 児童の身体に外傷が生じ、または生じる恐れのある暴行を加えること
  2. 児童に猥褻な行為をすること又は児童をして猥褻な行為をさせること
  3. 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること
  4. 児童に心理的外傷を与える言動を行なうこと

■児童虐待の種類
 児童虐待には大きく分けて4つの分類があります。これらは単独ではなく、重複して現われることもあります。
身体的虐待
 法律では、身体的虐待とは、《児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第1項)と規定されています。
 具体的には、暴力等により身体に傷を負わせたり、生命に危険を及ぼすような行為を言い、たとえば殴る、蹴る、投げ落とす、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物を飲ませる、食事を与えない、冬に戸外に閉め出す、一室に拘束する、タバコの火やアイロンを押し付けるなどの行為の総称です。
性的虐待
 法律では、性的虐待とは、《児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第2項)と規定されています。
 具体的には、性的暴行や児童に対する猥褻な行為を言い、たとえば子どもへの性交や性的暴行、性的行為の強要・示唆などの行為、また、性器や性交を見せたり、ポルノグラフィーの被写体などに子どもを強要する行為の総称です。
ネグレクト(養育の放棄・怠慢)
 法律では、ネグレクトとは、《児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第3項)と規定されています。
 具体的には、心身の発達を損なうほどの不適切な養育や子どもへの安全への配慮がなされていない行為を言い、たとえば保護の怠慢や拒否・放置により子どもの健康状態や安全を損なう行為や、子どもの健康・安全への配慮を怠るとか、子どもにとって必要な情緒的要求に応えない、食事や衣服、住居などが極端に不適切で、子どもの健康状態を損うほどの無関心・怠慢などの行為、また、子どもを遺棄するとか、適切な衣食住の世話をせず放置する、病気なのに医者に診せない、乳幼児を残したまま度々外出する、乳幼児を車の中に放置する、家に閉じ込める、学校に登校させないなどと言った行為の総称です。なお、ここで付言しておきますが、たとえば親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し熱射病で子どもが死亡したり、また、夜間に乳幼児だけを家に残して火災で焼死したりする事件も、ネグレクトという虐待の結果なのです。
心理的虐待
 法律では、心理的虐待とは、《児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第4項)と規定されています。
 具体的には、子どもに著しい心理的外傷を与える言動を行なうこと、また、ひどい言葉や極端な無視、拒否的な態度などによって子どもに心理的な傷を負わせる行為を言い、たとえば言葉による脅かしや脅迫などの行為や、子どもの心を傷つけることを繰り返し言うとか、子どもの自尊心を傷つけるような言動などの行為、また、他の兄弟とは著しく差別的な扱いをする行為の総称です。また、DVなどを子どもの目の前で見せ、苦痛を与えてしまう行為も心理的虐待に含まれます。


■児童虐待の相談件数とその内訳
児童虐待の相談件数 児童虐待相談の内訳

参考1:無自覚の虐待の問題

 虐待行為の中には、当事者が必ずしも虐待の自覚を伴わないで行なっている行為も当然ながら含まれます。たとえばネグレクトなどではパチンコ関連で社会問題化もしていますが、これは昔から行なわれていることながら、未だに自動車内への乳幼児の放置などが危険な行為であるという認識もなく行なわれる事例が後を絶たず、業界団体より注意が呼びかけられ、また、各店舗でも保護者に注意を呼びかけるといった活動が見られます。また、自覚のない心理的虐待としては児童に対する「過干渉」といった例も挙げられます。
 なお、「揺さぶられっ子症候群」等に見るように、本人は子どもをあやしているつもりで負傷させるケースも警告されています。こちらでは、子煩悩ぶりを発揮して子どもを喜ばせようとして張り切り過ぎ、結果的に却って負傷させてしまうといったケースも報告されています。またその一方で、心理学的方面ではしばしば保護者側が偏った価値観や認識を子どもに強要するなどの問題も見出されます。ちなみに、このような問題に関連しては、たとえば米国において、「片親引き離し症候群」と称する、離婚家庭において片親が離婚した側の相手を中傷する情報を子どもに対して洗脳的に与えているなどとする指摘も出ました。なお、これに関しては、たとえばDVの問題にも関係して、米国内でもその後否定的見解が精神医学・法曹分野で成されるなどしているといった複雑な事態の発生も見られます。


◆参考2: マルトリートメント(不適切な養育・関わり)とは?
 児童虐待の定義で明記された内容以外にも、児童に対する不適切な養育や関わりについてより広い認識も持つ必要があります。たとえばマルトリートメントとは、大人(行為の適否に関する判断の可能なおよそ15歳以上の年齢の子どもを含む)の子どもに対する不適切な養育や関わりを意味しており、これは「虐待」よりも広い概念です。
 確かに児童虐待の定義で示される虐待の内容は、児童虐待が起きている状況が、ある程度様々な情報や状況から明らかな、ないしは推測できるものとなっていますが、マルトリートメントという概念では、児童虐待の定義で示される内容以外にも、現に虐待という状態ではないとしても、今後そういう状態に発展する危険性のあるようなグレイゾーンの状態も含みます。このような広い概念も導入して子どもに対する不適切な養育や関わりについてより広い認識を持って早期に対応することで、問題の重度化や深刻化を防止することにつながることが期待されます。

参考2:その他の虐待と児童虐待との関係


DV(ドメスティック・バイオレンス)
 DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者や親密な関係のパートナーからの暴力を言い、具体的には殴る蹴るなどの「身体的暴力」や、怒鳴ったり侮辱したりする「言葉の暴力」、無視や行動の制限等の「精神的な暴力」(日本では一般にモラルハラスメントとも言います)、性的行為の強要などの「性的暴力」、生活費を渡さないなどの「経済的な暴力」などがあります。
 近年、DVに子どもが巻き込まれ、子どもの心身に大きなダメージを与えている事実が注目されています。夫やパートナーからの暴力が直接子どもには向けられていなくても、DVを見続けるだけでも、その子どもにとっては大きなトラウマ(心的外傷)になる可能性があります。たとえば母子ともに暴力に晒されている場合や、殴られている母親が子どもを殴る(暴力の連鎖)といった場合はもちろんのことながら、子どもが夫婦間の暴力を目撃しているだけである場合でも、子どもへの悪影響は子ども虐待同様に非常に深刻なものがあるのです。従って、子どもの虐待の背景にDVが隠れていないかという視点を持つことも重要だと言ってよいでしょう。

学校・幼稚園・保育園での虐待
 先生による虐待(※残念ながら児童虐待防止法には規定されませんでした)は、親や養育者からの虐待と同じぐらい子どもの心に傷を残します。また、部活やスポーツクラブのコーチによる気合い入れやビンタなども虐待に当たると考えられます。日本古来の軍隊式のしごきは決してよい結果を生まないばかりか、暴力容認の土壌を生み出す温床になっているのではないかと思われます。

養護施設での虐待
 保育士や指導員、園長などによる入所児に対する虐待も後を絶ちません。また、年長児(※児童養護施設には2歳〜18歳まで入所しています)から年少児へのイジメや暴行なども起こっています。これは、狭い空間や劣悪な環境によるストレスや入所児童の以前の生育環境(暴力の連鎖)も考える必要があると思われます。


◆参考3: 躾と虐待
 我が子を虐待した親の言い訳で多いのが、「虐待ではなく躾のつもりがついゆきすぎてしまった」と言うものです。虐待と躾の間には、キッチリと線引きすることができないグレイゾーンが存在します。でも、多数の事例に関わってきた福祉・保健関係者や精神科医・小児科医なども言うように、「子どもが耐え難い苦痛を感じさせることであれば、それは虐待である」と考えるべきでしょう。たとえ保護者が子どものためだと考えていても、過剰な教育や厳しい躾によって子どもの心や体の発達が阻害されるほどであれば、あくまで子どもの側に立って判断し、虐待と捉えるべきです。
 大体、子どもに手を挙げたり怒鳴ったり、ひどい言葉を投げつけた瞬間、この子がよい子に育つようにと考えながらそれを行なえる人が一体何人いるでしょうか? そのような状態に陥っている時には、既に理性は吹き飛んで感情の赴くまま、ただ自分の「言うことを聞かせよう」としているのではないかと思います。そもそも躾とは「子どもに礼儀作法を教えること」であって、自分の思うままに動くロボットを作る(支配する)ことではないのです。


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【2】児童虐待が起こる背景と要因〜虐待はどうして起きるのか?〜

 児童虐待は当然ながら家庭において起こります。児童虐待の門dないを考えるためには、まずは家族の問題を考える必要があります。
 本節では、児童虐待が起こる背景や要因を家族の問題を中心に探りました。
児童虐待が生じる家族

 児童虐待が生じる家族は、保護者の人格特性や経済状態、就労、夫婦関係、住宅事情、医療や健康上の課題、子どもの発達特性等、実に多様な問題を抱えています。それらの問題が絡み合い複合し、家庭内に生じた家族全体のストレスが最も弱い立場にある子どもに向かうというのが、虐待の生じるメカニズムです。児童虐待は、このように家族の構造的背景から生じるのです。
 ただ、虐待の生じるハイリスク要因は様々です。そして、これらのハイリスク要因ひとつだけで虐待が生じるわけでもありません。すなわち、児童虐待はそれらの要因が重なりあって起こるのです。従って、児童虐待のハイリスクな要因があるからといって、その家族を色眼鏡で見ることがあってはならないことは言うまでもないことを念のためにここに付記しておきます。
虐待はどうして起きるのか?〜児童虐待が起きる背景と要因〜

 子育てにはしばしば不安やストレスが伴います。虐待はこのような不安やストレスが昂じて行なわれることも多くあります。なので、児童虐待は必ずしも特殊な問題ではなく、誰にでも起こりうる問題なのです。しかし、以下のような要因が重なった時に虐待へ発展しやすいと考えられています。


■虐待が起こる要因
 親が我が子を虐待するようなことがなぜ起こるのでしょうか? 多くの場合、ひとつのことが原因ではなく、様々な要因が重なった時に家族関係が不安定になり、子どもの虐待が引き起こされます。以下に示す要因は、これらがあるからといって必ずしも虐待を引き起こすというわけではありませんが、虐待発生の可能性を高める要因と言われています。
 育児不安
 親自身の虐待された経験
 病気や精神的に不安定な状態
 不安定な夫婦関係
 経済的不安
 地域からの孤立 など


親の生育歴
 子どもを虐待する親の中には、親自身が虐待を受けて育ってきた人もいます。虐待を受けて育つことは、他者への不信や自分への不信、また低い自己評価をもたらします。つまりその人自身、安定した人間関係が持ちにくいこととなるわけです。また、虐待を受けた体験は自分が子どもを育てる時に再現しやすく、子どもに暴力を振るいやすいとも言われています。さらに親は、自分が幼い頃に自分の親から得られなかった愛情と信頼を我が子との関係の中で満たそうとします。つまりこの場合、子どもに愛してもらいたいという親子の役割の逆転をもたらすことにもなるのです。

家庭の状況
 夫婦関係が不安定な場合、一方が支配し他方が服従するという関係になることが多いと言われています。そのため、服従している配偶者は我が子に対する虐待を黙認することも見受けられます。また、そのような不安定さからか、職場でのトラブルなどにより経済的に困難な状況に陥っていることも多く見られます。

社会からの孤立
 近隣との関係がうまくゆかずに孤立化すると、虐待の発見を妨げ、深刻さを増すことにも繋がります。

親と子どもとの関係
 兄弟姉妹のいる場合、全員に虐待が行なわれる場合もありますが、その中の特定の子どもだけが虐待の対象となることがしばしばあります。従って、虐待は親や家族の問題としてのみならず、親と子どもとの関係の問題とも言われています。たとえば母子分離の状態が長かった場合、親がその子どもに対して愛情が感じられなくなることがあると言われていますが、親と特定の子どもとの間に問題が起きるのは、このような母子分離の体験が要因と考えられる場合もあるのです。

子ども自身の要因
 よく泣く・要求が強い・こだわる・なだめにくいなど、しばしば手のかかる子や育てにくい子という言われ方をする子どもがよくいますが、そのような子どもに対して親が否定的な感情を持ってしまうことがあります。また、子どもが慢性疾患や障害を持っていた場合など、親がその対応に追われて余裕が無くなり、他の子どもへの虐待へと繋がることもあると考えられます。


◆参考4: 虐待の慢性化の背景
 虐待の生じる家族構造が一度できてしまうと、家族は自ら問題解決を図ることができず、周囲からの働きかけにもスムーズに応じることができなくなることがあると言われています。そして、このようような時に、保護者に対して「親なのだから」と反省を迫るだけの叱るような働きかけをすることは、家族を地域内でより孤立させることになってしまいます。そうなると、逆に周囲の目がより家庭内に届かなくなり、虐待は却って進行・慢性化してしまうのです。時には反省が保護者の精神状態を悪化させ、虐待のエスカレートや、或は転居による証拠隠滅などを引き起こすことも考えられます。また、家族と関わりを持っている機関や個人が自分の力だけで何とかしようとして問題を抱え込むことも、構造的背景を持つ虐待の解決には逆効果になります。

子どもが暴力の被害に遭いやすい理由


■1) 社会的な力を持たされていない
 子どもは生まれてくる環境を選べませんし、そこを離れて一人で生きてゆくこともできません。また、虐待は構造的な力の差によって起こります。大人にとって子どもは力関係において明らかに自分より弱い立場にあるため、大人が暴力を振るいたくなるような何らかの要因に陥った時、ストレスの捌け口にするには身近にいる子どもは格好の餌食となるのです。

■2) 虐待についての正しい知識や情報を持っていない
 子どもは生まれてくる環境を選べませんし、そこを離れて一人で生きてゆくこともできません。また、虐待は構造的な力の差によって起こります。大人にとって子どもは力関係において明らかに自分より弱い立場にあるため、大人が暴力を振るいたくなるような何らかの要因に陥った時、ストレスの捌け口にするには身近にいる子どもは格好の餌食となるのです。

■3) 孤立している
 虐待を受けても誰にも言えない状況にあったり、加害者によって口止めされていることもあります。また、誰かに言える状況にあったとしても、虐待を受けるのは自分が悪いからだ、自分が悪い子だから叩かれるんだと思い込んでいる(或は思い込まされている)子どももいます。そういう子どもは、たとえ親から虐待されていても、そのことを誰にも言うことができなくなってしまうのです。

虐待が起こりやすくなるリスク要因


■虐待が起こりやすくなるリスク要因
■1) 個人的な要因
  • 親に人権や暴力についての正しい知識がない
  • アルコール依存症や薬物依存症などのアディクションがある
  • 心身の健康面で問題がある
  • 知的障害を持ち、なおかつ社会的なサポートが得られていない
  • 自己肯定感のなさ、自己評価の低さがある
  • 強いストレスを受けている
■2) 社会的な要因
  • 夫婦間あるいは家族間の人間関係が上手くいっていない
  • DVを受けている
  • 自分の親との現在の関係が上手くいっていない(いなかった)
  • 親自身の生育歴(機能不全な環境で育った、虐待を受けていたなど)に問題を抱えている
  • 孤立している
■3) 環境的な要因
  • リストラや失業している
  • 低収入
  • 住宅事情が悪い
  • 子どもが多い
  • 近隣の環境(閉鎖的な人間関係など)に問題がある
  • 所属する社会の子ども観に虐待を容認させるようなところがある
  • 暴力を容認する社会的認識を持っている
■4) その他の要因
  • 核家族化や父親が不在がちな家庭環境
  • 近所づきあいの減少で孤立し、子どもとの密着化を来している
  • 育児に関する体験的な知識が持ちにくい
  • 育児に関する情報の氾濫から親の子育てに迷いを生じている
  • 相談できる相手がいない
  • 「3歳児神話」などによって母親が追いつめられている

■子ども側の要因〜虐待されやすい子どもとは?〜
  • 未熟児
  • 多胎児(双生児、三つ子など)
  • 障害、病弱、発育不全
  • 夜泣き、反抗的な態度
  • いわゆる育てにくい子(ディフィカルト・チャイルド)

児童虐待をしてしまう「心理」とは?


どうして虐待してしまうの?
〜過去の傷や風評は気にするな 今の心の状態に目を向けよう〜
 一般に「虐待を受けた人は子どもにもそれを繰り返す」という世代間連鎖や、また、「望まれずに出生」「女性の社会進出」などが虐待に繋がりやすいと従来から考えられてきましたが、ある調査によると、これらの要因は、それだけを録ってみれば数値的には思ったほど高くはないようです。つまり、過去の傷や風評に惑わされすぎて、育児を恐れすぎたり、育児に対する自信をなくす必要は全然ありません。それっよりは、現在の育児状況における不安や孤独、孤立といった問題の方が実は児童虐待に大きく影響しているのです。

私もいずれしてしまうかも!?〜育児による苛立ちがエスカレートするのが虐待〜
 実際、経済的困難もなく円満家庭であっても、ままならない育児への苛立ちを抱えている人は多くいるでしょう。疲れが溜まっていると、子どもを叱る時の語調が強くなったり、いつもは気にならない子どもの行為にもヒステリックに反応してしまうということは、親ならば誰しも経験していると思います。虐待をしてしまうのは、その人が特別だからではありません。もちろん子どもの心の傷は人生に大きな禍根を残す元凶となるのだから、児童虐待を容認してよいわけではありませんが、とにかく八方塞がりの状況の中で育児をしていると、子どもの行為に過敏に反応しやすくなってしまうことが児童虐待の発端であるのです(※性的虐待の場合は除く)。

悩んでいる人は1人にならない、1人にしない
〜悩んでる人に寄り添ってあげるのが子どもを虐待から救う道〜
 大切なのは、親が子どもを虐待をしてしまう前に、その親御さんの周囲が気がついてあげることです。もしもあなたの知り合いが育児に悩んでいるようなら、ぜひ足を運んで話を聴いてあげたらどうでしょうか。その際には、相手を否定したり説教したりせず、まずは気持ちを受け止めてあげることが何より大切です。そして、一緒に解決してゆく道を考えたり、保健センターや児童相談所についていってあげて、解決の糸口をさぐるための援助をしてあげましょう。とにかく、悩んでいる人を「一人にしない」ことをが大事なのです。


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【3】児童虐待が子どもに与える影響

 最近も両親のDVを見て育っただけで子どもの脳の発達に悪影響があり、脳に萎縮が起こっているという研究結果が発表されたと新聞記事になりました。そのことからも分かるように、恒常的に虐待を受けて育った児童には、それにも増して悪影響があることが誰にも分かるでしょう。
 本節では、虐待を受けて育った子どもがどのような影響を受けるか詳しく取り上げ解説しました。
児童虐待の子どもへの影響

 児童虐待は、子どもの心身に深い傷を与え、子どものその後の人生そのものを左右するばかりでなく、時には生命を奪うことさえある子どもへの最大の権利侵害です。虐待を受けている子どもは、最も安心して生きることのできるはずの家庭の中に、子どもとしての存在を認めてもらえる心理的・物理的居場所がなく、年齢相応に成長できないばかりか、子ども時代に受けた心的トラウマにより、大人になってからも、社会生活を送る上での大きなハンディを長期的に背負わされることになるのです。


■虐待を受けた子どもたちは?(※影響の事例)
身体的虐待により頭蓋内出血や火傷などよる身体的障害を負うことがあります。
ネグレクトなどにより、栄養や感覚刺激の不足・日常的な世話の欠如による生活年令にそぐわない極端な発育障害や認知能力の遅れが生じることがあります。
虐待された体験が不意に湧き上がるフラッシュバックや夜驚、ボンヤリしたり記憶が欠落するといった解離状態、また情緒不安定などの精神症状を呈することがあります。
 安定した愛着関係の欠落から愛着障害(対人関係障害)が生じることがあります。
 慢性的な愛情飢餓の状態にあるため、自分の要求を受入れてくれそうな大人に対して距離感なくベタベタしたり、際限なく要求をしたり、或は逆に自分の要求を受入れてもらえないと教室から飛び出すなど、わざと相手を怒らせて振り回わす言動を取ります(試し行動)。これらの背景には、安定した信頼関係を築くことへの恐れや不安・不信が存在します。
 怒りや感情のコントロールができず、パニックや衝動行為が生じて、集団生活をスムーズに送るのに必要なルール感覚を獲得できないことがあります。
 自己の意思や感情を相手や状況次第で変えなければならないため、感情をコントロールする力が育ちません。保護者の感情を押しつけられ、自己の感情を受止めてもらえないので、常にドロドロした怒りの衝動が燻ったままになっています。そうした捌け口のない衝動が集団生活の中での自分の思い通りにならない状況で急に爆発し、パニックとなることがあるのです。怒りの裏には、「素直に甘えることが恐くてできない」というような本心が隠されています。
 連続性のない刹那的な自己感覚が形成されることがあります。
 保護者による種々の暴力に支配されているため、相手への恐怖心から自分の意思や感情よりも、相手の顔色次第で自分の感情や意思をコロコロと変えるようになります。そのうち何が自分の本心なのかが分からなくなり、それが、大人になってからの重大な人格的障害の引き金となることがあります。
 「どうせ自分は愛される価値のないどうしようもない子」という自尊心の欠落が生じることがあります。
 最も身近な親から愛され認められたことがない子どもは、「自分はこれでよい」という自己肯定感を抱くことができません。「虐待は自分がいけない子だから行なわれているのであり、自分は存在してはいけない子なんだ」とさえ考える子どももいます。このような子どもは、親の暴力から正当に自分で自分を守ることができないのです。こうした強い自己否定は、生きる意欲を低下させ、自虐的な言動や自傷行為を引き起こします。思春期に入れば、リストカット、アルコールや薬物の乱用、摂食障害、浪費、また、自分は愛される価値があると手っ取り早く確かめるためのセックスへの過度の依存といった問題に繋がる可能性があります。
 養育態度の世代間伝達の問題
 虐待をコミュニケーション手段として身につけた子どもが親になった時には、自分の子どもとのコミュニケーションにおいても虐待を繰り返してしまうリスクが生じることがあります。
 虐待を受けている子どもは、保護者の虐待行為を第3者に知られ たくない気持ちを持ちます。
 どんなに保護者に辛く当たられていたとしても、子どもは保護者に愛されて いたいと願い、家族の生活が破綻することを恐れます。虐待を受けている子どもが保護者への忠誠心から、周囲に助けを求めないで、 むしろ保護者を庇い、怪我の理由を誤魔化したりするのはこのためです。


■虐待をそばで見ている子どもたちに与える影響
 虐待は、それを見ている兄弟も虐待を受けているような気持ちにさせられます。中には、自分が虐待を受けていたのか、兄弟が受けていたのかハッキリしなくなってしまう子どももいるのです。

虐待が子どもに与える影響(症状と特徴)


■症状
■1) 目に見えるもの(※身体的虐待・性的虐待・ネグレクト)
  • 痣、骨折、火傷、死
  • 性器の損傷、性病、妊娠
  • 発育不全(※栄養不良によるものと愛情剥奪によるものとがあります)
  • 医療機関を受診しないことによる病気や怪我の重傷化 など
■2) 目に見えないもの
(※心理的な要因によって起こる症状で、全ての虐待に共通、ただし、年齢、加害者との関係、程度、頻度によって異なります)
  • 原因不明の身体症状(※頭痛、腹痛など)
  • 食欲不振、消化不良
  • 睡眠障害(※眠れない、悪夢にうなされる)
  • 夜驚、オネショ
  • 喘息やアレルギーの悪化 など
■3) 成人してからも現われるもの
(※精神的な症状や反社会性(=犯罪行為)として表われ、本人は非常に生きづらさを感じます。ただし、虐待を受けた人が全てそうなるわけではないことはもちろんです。)
  • PTSDなどのトラウマの後遺症
  • AC(アダルトチルドレン ※病名ではありません)
  • 対人関係の障害
  • 心身症
  • 摂食障害
  • 人格障害
  • 鬱病(抑鬱症状)
  • アディクション
  • 自殺願望
  • 自他への暴力行為 など

■特徴(発見のポイント)
従来、問題行動や非行(行為障害)と言われ、子どもの側の問題とされてきたものの中に、実は虐待や不適切な養育環境が原因と思われるものが多く存在していることが最近分かってきました。
子どもの様子
  • 怪我、殴られた跡、痣、火傷(※タバコなどによる)
  • 発育不良
  • 凍てついた凝視、表情がない、大人の顔色を窺う
  • 親に対してひどく怯える
  • 連絡のない休みが多い、不登校
  • 何日も同じ服、季節外れの服装、不潔
  • 給食などをガツガツと食べる、きりがなくお代わりをする
  • 異食(※砂、小石、ガラス片、草など)
  • 遺尿、遺糞
  • 自傷行為
  • チック症状
  • 注意や叱責に過敏
  • 身体接触を嫌がる、或は逆にベタベタとまとわりつく(愛着障害)
  • 落ち着きがない、集中困難、叫声、乱暴、攻撃的な言動、自暴自棄な言動
  • 嘘をつく
  • 他人の痛みや迷惑が分からない
  • 家に帰りたがらない、常習的な家出
  • 性的なことを平気で言う
  • 万引き、盗み、放火、などの非行(行為障害)
  • 売春、援助交際(性的な早熟、逸脱した性化)行動

重傷度の判断基準


■生命の危険あり
子どもの生命の危険が「ありうる」「危惧する」もの
■1) 身体的暴行によって生命の危険がありうる外傷を受ける可能性があるもの
  1. 行動
    • 頭部外傷を起こす可能性がある暴力。たとえば乳幼児を投げる、頭部を殴る、逆さに落とすなど
    • 腹部外傷を起こす可能性がある暴力。たとえば腹部を蹴る、踏みつける、殴るなど)
    • 窒息する可能性がある暴力。たとえば首を絞める、鼻と口を塞ぐ、水につける、布団蒸しにするなど
  2. 状況
    • 親が「殺したい」「自分がかっとなって何をするか怖い」など自己抑制が利かないことを訴え、子どもは乳幼児
    • 親子心中、子どもの殺害を考えている
    • 過去に生命の危険がある虐待歴があるもので、再発の危険性があるもの
■2) ケア不足のために死亡する可能性のある(ネグレクト)
※死亡原因としては、肺炎、敗血症、脱水症状、突然死、事故死など
  • 乳幼児に脱水症、栄養失調のための衰弱が起きている
  • 乳幼児が感染症や下痢または重度慢性疾患があるのに医療の受診がなく放置されており、生命の危険がある(※障害乳幼児の受容拒否にも注意)

■重度
今すぐに生命の危険はないと感じられるものの、現に子どもの健康や成長発達に重要な影響が生じているか、生じる可能性があるもの。子どもと家族の指導や子どもの保護のために誰か他者の介入(例:訪問指導、一時分離、入院など)が必要と判断される状態。
■1) 医療を必要とするほどの外傷がある
  • 乳児や歩けない幼児で打撲傷がある
  • 骨折や裂傷、目の外傷がある
  • 熱湯や熱源による広範囲の火傷
■2) 成長障害や発達遅滞が顕著である
■3) 生存に必要な衣食住が与えられていない
■4) 明らかな性行為がある
■5) 家から出してもらえない(学校にも)、一室に閉じ込められている
■6) 子どもへのサディスティックな行為(親は楽しんでいる)

■中度
今は入院を必要とする程の外傷や栄養障害はないものの、長期的に見ると子どもの人格形成に重い問題を残すことが危惧されるもの。また、自然経過ではこれ以上の改善が見込めないもの。
■1)  今まで慢性に痣や傷痕(タバコなど)が出来るような暴力を受けていたり、長期に渡って身体のケアや情緒的ケアを受けていないために人格形成に問題が残りそうであるもの
■2)  現在の虐待そのものが軽度であっても、生活環境など育児条件が極端に不良なために自然経過で改善がありそうもなく、今後の虐待の増強や人格形成が危惧されるもの(例:養母が子どもをひどく嫌っている、虐待や養育拒否で施設入所した子どもへの虐待の再発、多問題家族などで家庭の秩序がない、虐待が食事にも困る経済状態生活の中で起きたもの、夫婦関係が険悪で子どもに反映している など)
■3)  慢性の精神疾患(アディクションを含む)があり、子どものケアができない
■4)  乳幼児を大人の監督なく長時間家に置いている

■軽度
今は入院を必要とする程の外傷や栄養障害はないものの、長期的に見ると子どもの人格形成に重い問題を残すことが危惧されるもの。また、自然経過ではこれ以上の改善が見込めないもの。
■1)  外傷が残るほどではない暴力(例:乳幼児を叩く、カーッとなって自己抑制なく叩くと自己報告する など)
■2)  子どもに健康問題を起こすほどではないものの、ネグレクト的である(例:子どもの世話がいやで時々ミルクを与えない など)

■虐待の危惧あり
■1)  虐待の危惧があって、まだ暴力やネグレクトの虐待行為はないものの、「叩いてしまいそう」「世話をしたくない」など虐待を危惧する訴えがある場合。


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【4】早期発見と予防〜児童虐待の早期発見のために〜

 私たちは悲惨な児童虐待の事件を効く度に心を痛めますが、それでは、児童虐待を発見し、予防するには私たちは一体どうしたらよいのでしょうか? 
 本節では、児童虐待の発見と予防のためのチェックリストを紹介し、自分たちで出来る予防策や解決策を探りました。
児童虐待の早期発見のために
早期発見・通報の義務意識を持とう


国民は地域の関係機関への通告の義務がある(※ただし罰則はない)
 虐待と思われる事実を知った時には、直ちに児童相談所や市町村の担当窓口、福祉事務所に通告しましょう。

学校、児童福祉施設、病院等の団体は早期発見に努める義務がある
 学校や児童福祉施設、病院その他の子どもの福祉に業務上関係のある団体、また、学校の教職員や児童福祉施設の職員、医師や保健師、弁護士その他子どもの福祉に職務上関係ある人たちには、虐待を受けている子どもの早期発見と、また、虐待を受けていると思われる子どもを発見した時に速やかに関係機関に通告する義務が課せられています。

守秘義務より虐待通告義務が優先する
 通告は、直接虐待をしているところを目撃していない場合でも可能です。身体に殴られたような痣や切り傷をつけた子どもがいる、汚れた衣服を着て食事を与えられていないらしい子どもがいる、子どもが厳冬期に戸外に長時間出されている、子どもの姿は見たことがないものの、火がついたように子どもが泣いているのがいつも聞こえる、小さな子どもを残して両親がいつも外出し、子どもに対して食事や世話を充分にしていない、などといったように、著しく様子がおかしい、或は適切な養育を受けていない子どもがいるようだと気がついた人は、地域の児童相談所に通報するように心懸けましょう。

秘密漏洩を禁止する
 通告は、電話でも手紙でも構いません。そして、通告した人の秘密は守られます。通告した後で虐待ではないと分かったとしても、通告した人に罰則はありませんので、安心しましょう。

虐待の早期発見のために

 いつでも・どこでも児童虐待に出合う可能性があります。子どもは様々な形で虐待を周囲に知らせていますので、私たち大人がそのサインに気がついてあげることが大切です。しかも、虐待は密室に隠されがちで、特に性的虐待の場合などは家庭内でも発見が難しいこともあります。従って、ちょっとしたサインであっても決して見逃さないことが大切です。もしも虐待を発見したり、その疑いをもった場合には、一人で抱え込むことなく、相談機関などに連絡するなど適切に対応する必要があります。
 なお、児童虐待の原因は様々ですが、虐待する親の大半は、1人で苦しみ、悩み続けた結果が子どもへの虐待となって現われているという悲しい現実があります。また、近所や地域から社会の悪者として見られ、敬遠されてしまうと、その親は一層社会から孤立してしまいます。虐待している親もまた同様に傷ついていることを念頭において対応することが大切です。


■虐待行為を疑わせる状況
 虐待行為そのものの目撃:この場合、親や保護者は「躾のため」と言うこともあるので、誤魔化されないよう注意が必要です
 身体的虐待を疑わせる音:叩く音や子どもの泣き叫ぶ声に注意しましょう

■虐待を疑わせる子どもの状況
 不自然な傷が多い
 不自然な時間帯に徘徊している
 衣類や身体が不潔
 常にお腹を空かせている
 凍り付いたような眼であたりを窺ったり、暗い顔をして周囲の人と上手く関わることができない
 傷や家族について聞くと不自然な回答をすることが多い
 性的なことに過度に反応したり不安を示す など

■虐待を疑わせる親や保護者の状況
 地域の中で孤立しており、子どもに関する他者の意見に被害的・攻撃的になりやすい
 子どもが怪我をしたり病気になっても医者に診せようとしない
 飲酒して暴れることが多い
 小さな子どもを置いたまま、しょっちゅう出歩いていることが多い など

保育所・幼稚園・学校などの集団生活の場でのチェックポイント


■乳児の場合
 表情や反応に乏しく、笑顔が少ない
 特別の病気はないのに体重の増え方が悪い
 衣類や身体が不潔
 いつも不潔な状態にある
 怯えた泣き方をする
 不自然な傷がある
 予防接種や健康診断を受けていない など

■幼児の場合
 他者と上手く関われない
 癇癪が激しい
 不自然な傷や頻繁に傷をつくっている
 傷に対する親の説明が不自然
 他の児童に対して乱暴
 言葉の発達が遅れている
 身長や体重の増加が悪い
 衣服や身体がいつも不潔
 基本的な生活習慣が身についていない
 ガツガツした食べ方をしたり、人に隠れて食べるなどの行動がある
 衣服を脱ぐことに異常な不安を見せる
 年齢不相応の性的な言葉や行為が見られる
 他者との身体的接触を異常に求める、或は怖がる など

■児童・生徒の場合(※幼児に見られる特徴の他に)
 万引きなどの非行が見られる
 落ち着きがない
 虚言が多い
 授業に集中できない
 家出を繰り返す
 理由がはっきりしない欠席や遅刻が多い など

■親の場合
 先生との面談を拒む
 孤立している
 被害者意識が強い
 苛立ちが非常に強い
 夫婦仲が悪い
 酒やシンナー、薬物などの乱用がある
 子どもの扱いが乱暴、或は冷たい など

虐待シグナルチェック〜児童虐待の早期発見のためのチェックリスト〜


■A:子どもの特徴
1) 身体や身なり・心の様子
 顔や腕、足などに幾つもの傷や怪我、火傷の痕がある
 体重や身長の伸びが悪いなど発育不良が見られる
 食べ物への執着が強く、与えられると貪るように食べる
 季節にそぐわない服装をしていたり、衣服が破れたり汚れたりしている
 衣類を着替える時、異常な不安を見せる
 怖がる、怯える、急に態度を変える
 表情が乏しく、受け答えが少ない
 警戒心が強く音や振動に過剰に反応し、手を挙げただけで顔や頭を庇う
小計:  □個
2) 保護者との関わり方
 保護者の前では硬くなり、極端に恐れている
 子どもと保護者の視線が殆ど合わない
 不自然なほど子どもが保護者に密着している
 保護者といるとオドオドし、落ちつきがない
小計:  □個
3) 友だちとの関わり方
 威圧的・攻撃的で、乱暴な言葉遣いをする
 落ちつきがなく、過度に乱暴だったり、弱い者に対して暴力を振るったりする
 激しい癇癪を起こしたり、噛みついたりするなど攻撃的
 友だち関係が上手くつくれない
 友だちに食べ物をねだることがよくある
小計:  □個
4) 学習状況
 理由のハッキリしない欠席や遅刻、早退が多い
 忘れ物が多い
 急激な学力低下を起こしている
小計:  □個
5) 問題行動
 下校時刻が過ぎても家に帰りたがらなかったり、家出を繰り返したりする
 金銭の持ち出しや万引きなどの問題行動を繰り返す
 小動物を虐める
 年齢に不相応な性的な興味・関心を持っている
小計:  □個
合計: □□個

■B:保護者の特徴
1) 子どもとの関わり方
 子どもに対して事ある毎に激しく叱ったり罵ったりする
 子どもを抱いたり話しかけたりしない
 子どもが病気でも、あえて病院に連れてゆかない
小計:  □個
2) 学校との関わり方
 欠席の理由がハッキリしなかったり、連絡がなかったりする
 怪我についての説明が不自然
 子どもに関して言っていることに一貫性がない
 話し合いや面談を拒む
 体罰や年齢不相応な教育などを躾だとか家庭の教育方針だなどと正当化する
小計:  □個
3) 家族の状況
 絶え間なく喧嘩があったり、家族への暴力がある
 必要な予防接種や健診を子どもに受けさせていない
小計:  □個
4) 地域での状況
 近所付き合いが殆どない
小計:  □個
合計: □□個

防止と予防・援助
虐待の連鎖を断ち切ろう

 虐待をしている親も自分の子ども時代に虐待を受けた経験があることが多いと言われています。虐待をする親たちの多くは、自分自身も叩かれて育った人や放置されて育った人、また、愛されずに育った人であるために、怒り方や叩き方は知っていても、褒め方や抱き方、愛し方が分からない人が多いのです。そして、これが「虐待の連鎖」の要因であるとされています。この悪循環の連鎖を断ち切り、親自身が変わるためにも、地域社会で親と子どもを支えてゆくことが地域の重要な役割となります。しかし、親が変わるためには、経済的及び社会的な不安や制度上の不備、心理的不安など様々な要因が絡み合っています。そして、児童の虐待防止において大切なことは、児童虐待の発見・通報・介入・保護が速やかに行なわれることが確かに理想ではあるのですが、日本においてはまだまだ不備な点が多いのが現状です。なお、その原因のひとつとしては、日本は虐待発見時の通報には責任罰則がなく努力義務でしかないことも、諸外国と比べて遅れをとっている原因であるようです。
児童虐待の発見から援助まで


■児童虐待の発見から援助まで
  1. 虐待を疑い、気づいた場合、まずは児童相談所や福祉事務所などに通報・相談する
  2. 通報・相談を受けた機関は、関係機関と連携しながら、児童や家庭の情報収集・調査、方針の検討などを行なう
  3. 子どもの身柄の安全を確認し、緊急性の有無を判断する
  4. 緊急性の有無、親子分離が必要かどうかの判断をし、援助の計画を立てる

■援助計画
親子分離の必要有り
  • 児童相談所に一時的に保護する
  • 入院を必要とする場合は病院へ入院させる
  • 施設への入所が適当と判断した場合は児童養護施設等に入所せせる
  • 親と子どもへのカウンセリング等、心理的なケアを行なう
  • 関係機関が連携して、親子・家庭への援助をする
親子分離の必要無し(※在宅)
  • 親と子どもへカウンセリング等、心理的なケアを行なう
  • 関係機関が連携して親子及び家庭への援助をする

連絡後の対応


場所の把握
 まずは子どもの様子から気懸かりなこと、子どもの住む場所などを確認する

子どもの安全確認
 情報を下に、関係機関を連携しながら子どもの安全確認を行なう

保護や支援などの必要性を判断
 子どもの状態により児童相談所が保護の必要があると判断した場合は、子どもの保護を行なう。また、その家族の相談に応じることで虐待が防止できると判断した場合は、市区町村もしくは児童相談所が保護者や子どもへの支援を行なう

児童虐待防止に向けて〜あなたにできること
子どもを虐待から守るための5カ条


■子どもを虐待から守るための5カ条
 「おかしい」と感じたら迷わず連絡・通告して下さい
 「躾のつもり」は言い訳、子どもの立場に立って判断しましょう
 1人で抱え込まない、あなたに出来ることから即実行しましょう
 親の立場より子どもの立場、子どもの命を最優先させましょう
 虐待はあなたのまわりでも起こりうる、虐待は特別なことではありません

まずは自分の子育てを振り返ってみましょう

 昔から「三つ子の魂百まで」と言われてきましたが、人間の子どもは心も頭脳も3歳までにほぼ出来上がってしまうと言われています。しかし、その言葉と矛盾するようですが、人の子どもほど与えられた能力が発揮できるようになるまで時間のかかる動物もいません。赤ん坊が最初に学ぶことは、「口から食べ物を摂り入れ、肌の接触で人の温かさを取り入れ、耳からは優しさを取り入れ、目で自分の世界を取り入れてゆく」と言われています。3歳になるまでに赤ん坊はこれらのことを無意識に心と頭で学んでいるのです。そして、大人になるまで何回か反抗期を迎えながら自立の準備をしてゆきます。また、赤ん坊であっても大人であっても、人は深い孤独感を無意識のうちに感じているものだとも言われます。だから子どもは、大人に優しく声をかけられて育まれることを望んでいるのです。しかし、まだ幼い子どもは、自分が寂しさを感じていることや、心の中で1人で悩んでいることを上手に表現することができません。それだから子どもは、「愛されたい思いを受け取ってくれ」と、大人へのサインを必死で送っているのです。
 子どもたちは、温かい眼差しと励ましの言葉、他者からの微笑み、そして、自分の全てを受け止めてくれる大きな心を求めています。子育てをしている最中であるあなたが深い寂しさに襲われたら、諦めずに周りを見回わして下さい。きっと、あなたの周囲にも、温かい眼差しと励ましの言葉とあなたへの微笑みと、そして、そのようなあなたの全てを受け止めてくれる大きな心を持った人がいるはずです。
子育てに悩んでいる人は、悩みを1人で抱え込まずに誰かに相談しましょう

 楽しみに待っていた我が子なのに、いざ育児をしようとしたら、迷うことや困ってしまうことばかりです。誰しもそれは同じなので、1人で不安にならず、地域の保健師さんなど専門家に思い切って相談してみましょう。地域の子育てサークルに行って、お母さん同士で話をすることもよいかも知れません。案外、同じ様な悩みを持っていて肩の荷が下りることもあると思います。
 親御さん自身が小さい頃に虐待を受け、その記憶に苦しめられて、子育てを難しいと感じていたり、或は子育ての不安がとても大きくなって、そのため、子どもに暴力を振るったり、逆に子育てを放棄したくなってしまったら、直ぐに受話器を取って、子ども虐待防止のために民間団体が行っている電話相談などに相談しましょう。悩みを抱え込まずに誰かにSOSを出すことで、きっと解決策が見つかります。


民間団体による電話による相談窓口一覧
http://www.orangeribbon.jp/window/win.html

虐待で苦しんでいるお子さんは、我慢しないで相談して下さい

 児童虐待とは、子ども自身が耐え難い苦痛を感じることです。何も悪くないのに、日常的に殴られたり、兄弟の間でひどい差別があったり、食事をさせてもらえなかったり、怯えが止まらないほど繰り返し叱られたり、ご両親から性的なイタズラや性的な関係を強いられたりしていませんか? たとえ殴られなくても、身体に傷がつかなくても、心が辛かったら、相談機関に電話をかけてみるのがオススメです。


子どもからの電話相談~
チャイルドライン・相談窓口一覧
http://www.childline.or.jp/

虐待ではないかと思われる事実を知った時には通報しましょう

 児童虐待を発見したり、著しく子どもの様子が変だと感じたら、児童相談所や市町村の担当窓口、福祉事務所に通告をするよう心懸けましょう。
 地域に住む私たちには関係機関への通告の義務があります。また、学校や児童福祉施設、病院その他の子どもの福祉に業務上関係のある団体、また、学校の教職員や児童福祉施設の職員、医師や保健師、弁護士その他子どもの福祉に職務上関係ある人たちには、虐待を受けている子どもの早期発見と、虐待を受けていると思われる子どもを発見した時に速やかに関係機関に通告する義務が課せられています。また、直接虐待をしているところを目撃していない場合にも通告はできます。児童虐待の可能性に気がついた方は、ご自分の地域の児童相談所に通報するようにして下さい。通告は電話でも手紙でも構いませんし、また、通告した人の秘密は守られます。上でも書いたように、たとえ通告した後で虐待ではないことが分かった場合でも、通告した人に罰則はありません。


全国の児童相談所・相談窓口一覧
http://www.mhlw.go.jp/support/jidousoudan/index.html

虐待を受けた子どもたちの自立を支援する輪に協力して下さい

 虐待を受けた子どもたちの中には、ともすると対人関係を上手に持てなくなる子どもも出てきます。虐待を受けた傷が癒えないために学校を続けられなくなる子どもも多くいます。自分のことで精一杯になり、必死に生きようとして上手く行かず、非行に走ったりすることもあります。でも、同年齢の子どもの多い学校では自分の力を発揮できなかった子どもであっても、周囲にいる大人次第で大きく変わり、成長することができます。子どもたちは秘められたたくさんの能力を持っています。大きな心を持った大人の下や社会で色々なことを学び、成長してゆくことができます。
 以前は、子どもたちの生活を引き受け、職場を提供しながら育ててくれる「職親」さんがたくさんいました。現在でも、虐待を受けて自分の家に帰れない子どもたちを受け入れてくれる職場が増えています。社宅を提供して下さり、子どもを支えてくれる会社もあります。子どもたちが社会の中で自立し、しっかりと生きてゆけるように、このような子どもたちに門戸を開き、その能力をあなたの職場などで出来る範囲で開花させてあげてほしいと思います。
虐待を受けた子どもたちの親代わり(里親)になって下さい

 虐待を受けた子どもたちは、大人を信頼することができなかったり、或は「虐待されるのは自分が悪いのせいだ」と思って自分を責めてしまったりすることがよくあります。彼ら自身の心が元気を取り戻し、自分や他者に対する信頼を回復するには、自ら安心して生活できる環境に居て、心の拠り所のベースとなる、じっくりと特定の1人の大人との深い心の絆をつくることがとても大切です。そして、自立した後にはいつでも相談に帰れる心の安全基地がなくてはなりません。
 本来ならば自分を愛して守ってくれる親の許でその回復ができればよいのですが、親の元では安心して生活できる環境がなかったり、親と一緒に暮らすことが危険な場合もあります。そこで、「里親」という制度があるのです。里親は、そのようなお子さんと自分の家庭で一緒に暮らし、安全を保証し、深い絆を作ることで、その子どもの回復と成長、自立のための手伝いをするのです。一人の大人として一人の子どもをずっと見守ってゆくのは、虐待を受けて生き延びた子どもへの最大の支援と言えます。
参考:オレンジリボン・キャンペーンとは?

 04年9月、栃木県小山市で2人の幼い兄弟が虐待の末、橋の上から川に投げ入れられて亡くなるという痛ましい事件がありました。この事件をキッカケに、翌05年、子ども虐待防止を目指した小山市の「カンガルーOYAMA」という団体が、「二度とこのような事件が起こらないように」という願いを込めてオレンジリボン運動を始めました。子どもへの虐待の問題がさらに深刻化している今、「子どもたちが健やかに育つように」という願いの下、「1人でも多くの人に「児童虐待防止」に関心をもってもらい、自分に何ができるかを考え、行動を起こしてもらおう」という活動が「オレンジリボンキャンペーン」です。オレンジリボンには、「子どもの虐待を防止する」という強いメッセージが籠められています。それぞれの出来ることからオレンジリボンを広めてゆきましょう。


オレンジリボン運動公式サイト「こども虐待防止 オレンジリボン運動」
オレンジリボン運動
http://www.orangeribbon.jp/index.php

参考3:児童虐待に関する参考文献


◆参考図書
池田由子『児童虐待――ゆがんだ親子関係』中公新書
池田 由子・著
『児童虐待――ゆがんだ親子関係』
中公新書、中央公論社・87年2月刊、¥756
人身売買や低賃金長時間労働など貧困社会型の虐待に代って、親の一方的都合で行なわれる身体的・心理的・性的虐待や育児のネグレクトなど文明型の虐待が現在急増している。子どものイジメが一見普通の家庭に拡がっているのも現代の特徴だ。長年児童の精神衛生診療の現場に当たった著者が、継子いじめや育児ノイローゼなど家庭という密室の中で起こった様々なケースの実態と背景を分析しながら、複雑化した現代の親子関係を考える。出版は比較的古いながら、この分野では先駆けに当たる著書。
川崎二三彦『児童虐待――現場からの提言』岩波新書
川崎 二三彦・著
(全国児童相談研究会事務局長、日本子ども虐待防止学会会員)
『児童虐待――現場からの提言』
岩波新書、岩波書店・06年7月刊、¥777
なぜ我が子を自ら危険に陥れてしまうのか? 深刻化する背景は単に親を責めるだけでは捉え切れない。そこには日本の貧困な福祉行政や親を取り巻く社会の急速な変容など根本的な問題が潜んでいる。児童相談所に勤務し数々の相談に対応してきた著者が、その実態や解決の手懸かりを自らの体験を下に語る。
森田ゆり『新・子どもの虐待―生―きる力が侵されるとき』岩波ブックレット
森田 ゆり・著
(ノンフィクション作家)
『新・子どもの虐待―生―きる力が侵されるとき』
岩波ブックレット、岩波書店・04年6月刊、¥609
子どもの虐待の実態、緊急対応、そして捉え方を考える上で、長らく格好の入門テキストとして広く読まれてきた緊急対策ガイドブックの新版。最新データを下に、誰でも子どもの虐待防止のために出来ることを具体的・実践的に示す。
朝日新聞大阪本社編集局『ルポ 児童虐待』朝日新書
朝日新聞 大阪本社編集局・著
『ルポ 児童虐待』
朝日新書、朝日新聞社・08年7月刊、¥756
なぜ虐待は起こるのか? 虐待を防止し、傷ついた子どもを救う手立ては何か。1週間に1人の割合で子どもが虐待死する現代。虐待は他人事ではなく、どの家庭でも起こりうる問題として認識し理解すべきだ。児童相談所、児童養護施設、里親、教育現場、医療機関等といった様々な「現場」から虐待問題の本質に迫る朝日新聞大阪本社編集局発の渾身のルポ。
毎日新聞児童虐待取材班『殺さないで――児童虐待という犯罪』中央法規出版
毎日新聞児童虐待取材班・著
『殺さないで――児童虐待という犯罪』
中央法規出版・02年9月刊、¥1,575
「親子愛」の名の下に今も奪われてゆく幼い命。止まらない児童虐待事件の現実とその背後にある社会病理を抉る。毎日新聞の連載を単行本化した迫真のルポ。01年日本ジャーナリスト会議・JCJ賞受賞作。
杉山春『ネグレクト 育児放棄――真奈ちゃんはなぜ死んだか』小学館文庫
杉山 春・著(フリーライター)
『ネグレクト 育児放棄――真奈ちゃんはなぜ死んだか(増補版版)』
小学館文庫、小学館・07年8月刊、¥580
ネグレクト・育児放棄とは、子どもに食事を満足に与えなかったり、病気や怪我を放置したり、或は長期間入浴させないなど保護者としての責任を放棄する行為を言う。00年12月10日、愛知県名古屋市近郊のベッドタウンで、3歳になったばかりの女の子が段ボールの中に入れられたまま殆ど食事も与えられずにミイラのような状態で死んだ。両親はともに21歳の夫婦だった。なぜ両親は女の子を死に至らしめたのか? 女の子は何故救い出されなかったのか? 3年半を超える取材を通じてその深層に迫った事件ルポルタージュ。第11回小学館ノンフィクション大賞受賞作。
A・ミラー『魂の殺人――親は子どもに何をしたか』新曜社
アリス・ミラー著/山下 公子 訳
(東京大学大学院教授、女性学及びジェンダー研究で著名な社会学者)
『魂の殺人――親は子どもに何をしたか』
新曜社・83年7月刊、¥2,940
躾という名の暴力――。 教育や躾の名による暴力は子どもたちの魂を粉々に打ち砕き、社会は何れ手痛い復讐を受けずにはすまない。ヒットラーや少女娼婦クリスチアーネの幼年時代を詳細に分析して、教育の暴力性と非人間性を容赦なく抉り出した衝撃のロングセラー。


研修教材『児童虐待防止と学校』文部科学省(PDF)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1280054.htm


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