1stサービスヤマト生活情報館
ヤマト生活情報館 インデックスページに戻る
こちらもチェック 水のトラブル プロが教える自分で出来る修理法
Presented by Yamato Group
今月のワンポイントアドバイス


 今年はマイコプラズマ肺炎の当たり年だと言われます。マイコプラズマ肺炎は若い人たちが罹りやすい肺炎で、比較的症状は軽いのですが、決して侮れない病気です。今月はそのマイコプラズマ肺炎と肺炎一般について取り上げました。
マイコプラズマ肺炎


マイコプラズマ肺炎
【1】今年大流行のマイコプラズマ肺炎
【2】マイコプラズマ肺炎の特徴
【3】肺炎とは?

【1】今年大流行のマイコプラズマ肺炎

 今年は子どもを中心にマイコプラズマ肺炎が流行しています。マイコプラズマ肺炎は若い人たちが罹りやすい肺炎で、一般の肺炎と違って、比較的症状は軽いのですが、決して侮れない病気です。
今年は子どものマイコプラズマ肺炎の当たり年

 今年は子どものマイコプラズマ肺炎の流行期と言われています。10年強にわたって行なわれたある調査によると、マクロライド系の抗生物質に高い耐性を示すマイコプラズマの分離率は2002年までゼロだったものが、今年に入って89.5%まで増加していることが明らかになったと言います。そのため専門家によると、現在ではまだ充分な治療効果を期待できる抗生物質がなく、従って、最も効果が期待できるテトラサイクリン系の抗生物質ミノサイクリンの使用も必要最小限にとどめる必要があるそうです。
大流行中のマイコプラズマ肺炎、抗生物質耐性化が9割


瞬く間に周囲へ拡散
 マイコプラズマ肺炎は細菌のマイコプラズマによって引き起こされる感染症で、幼児から青年期に多く見られ、通常の細菌性肺炎とは違って比較的重症に感じることが少なく、X線所見も異なることから、過去には「異型肺炎」とも言われていました。通常は秋から冬が日本における流行期とされまするが、今年は春から流行が始まり、最近再び勢いを増していると言います。その証拠として、ある調査では患者から分離されたマクロライド系抗生物質に対する耐性菌の割合は約90%と過去最高を記録しているとのことです。しかも、この耐性化は全国規模で見られており、ひとたびあるクラスで発症者が出ると、潜伏期間や咳の強さも加わって、瞬く間に周囲へ拡散してゆきます。しかも、学校保健法上マイコプラズマ肺炎の流行を防ぐ積極的な措置の規定はないのだとのことです。

マイコプラズマそのものには無効か
 菌の耐性獲得状況を調べたところ、現在マイコプラズマ感染症に使われている主なマクロライド系抗生物質の全てに高度な耐性化が認められたと言います。要するに、以前はマクロライド系抗生物質が優れた効果が見られていたにも拘らず、症状が長期化している症例や重症化例が増えているのはこのためで、最早同薬はマイコプラズマそのものに無効になっているのだそうです。さらに、マイコプラズマ感染症に使用できるもう1つの抗菌薬ミノサイクリンについても、耐性菌は認められていないものの、抗菌力が非常に優れているというわけではないそうです。なお、ミノサイクリンは歯が着色する副作用があるため、8歳未満の子供に対しては慎重な投与が求められており、ミノサイクリンを投与する場合の使用期間は通常3日、長くても5日以内が望ましいとされています。

若い人が罹りやすいマイコプラズマ肺炎
比較的症状が軽く、子どもや若者が罹りやすいマイコプラズマ肺炎

 肺炎というとお年寄りが罹ると命取りにもなりかねない病気ですが、マイコプラズマ肺炎は10〜30代の若い人たちが罹ることが多く、しかも割と軽症なために普通の風邪と見分けがつきにくく、診断が遅れることがあります。一般的によく処方される抗菌薬では効かず、稀に心筋炎や髄膜炎などを併発することもありますので、油断はしない方が無難でしょう。なお、マイコプラズマ肺炎の症状は多くの場合、咳や発熱、頭痛、倦怠感などが起こります。痰の出ない乾いた咳が激しく、しかも長く続くため、胸や背中の筋肉が痛くなることも珍しくありません。38度以上の高熱も伴いますが、重症化することは余りなく、普通とは違う肺炎という意味で「非定型肺炎」とも呼ばれます。
一般的に用いられる抗菌薬では効かない

マイコプラズマ肺炎の処方薬
 マイコプラズマ肺炎の原因になるマイコプラズマとは、ウイルスと細菌の中間ほどの大きさの微生物です。生物学的には細菌に分類されますが、他の細菌と異なるところは細胞壁がない点です。一般的な細菌感染に対してよく処方されるペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は細菌の細胞壁に作用するものですから、細胞壁をもたないマイコプラズマ肺炎には効きません。マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬がよく効き、殆どの場合、外来の内服治療で治ります。ただし、高熱で脱水症状があるとか、激しい咳で眠れなかったり食欲が大きく妨げられているような場合は入院が必要になることもあります。
 マイコプラズマ肺炎は、咳で飛び散った飛沫を吸い込んで学校や家庭内に感染が広がりますが、インフルエンザのような広い地域での流行ではなく、比較的狭い地域及び集団での流行が散発的に発生するのが一つの特徴です。以前はオリンピックが開かれる年にオリンピック同様4年ごとの周期で流行が見られたため、「オリンピック病」とか「オリンピック肺炎」などと呼ばれた時期がありましたが、1990年代に入るとこの傾向は崩れ、今ではほぼ1年中流行が見られ、特に早春にかけて流行のピークが多く見られます。

専門医での早期診断&早期治療が決め手

 子どもが学校などからマイコプラズマを持ち帰ると、1〜3週間の潜伏期間を経て家族に感染することがよくあります。予防接種はなく、決定的な予防法はありませんが、家庭では、マスクやうがい、手洗い、また、患者の使うタオルやコップを使わないなど普通の風邪と同じような予防法を心懸けるようにしましょう。何れにせよ、幼稚園や保育所、学校などで流行することが多いので、流行している時期に子どもに咳や発熱などの症状が見られたら、早めに呼吸器科や小児科に受診することが肝要です。

[ ページトップ ] [アドバイストップ]


【2】マイコプラズマ肺炎の特徴

 本節ではマイコプラズマ肺炎の病理について、いささか専門的な観点から解説し、合わせてその治療法等について取り上げました。
マイコプラズマ肺炎とその特徴


■マイコプラズマ肺炎の特徴
 マイコプラズマ肺炎には次のような特徴があり、これらの所見から医師はマイコプラズマ肺炎を疑います。血清のマイコプラズマ抗体価を検査することによって確定診断が為されますが、結果が出るまで1〜2週間かかるため、これを待っていては治療が間に合いません。医師が上記のような特徴的所見からマイコプラズマ肺炎を疑い、早期診断&早期治療を行なうことが重症化を防ぐ決め手となります。
年齢が60歳未満
基礎疾患がないか、あっても軽い
頑固な咳がある
聴診で雑音が少ない
痰の出ない乾いた咳
白血球数が正常

マイコプラズマ肺炎の症状

 最も特徴的な症状は咳で、殆ど全ての症例に認められ、夜間に頑固で激しい咳が現われます。発熱も必発で、殆どが39℃以上の高熱が出ます。要するに、本疾患の主症状は咳漱と発熱ですが、最初は全身倦怠感、発熱と頭痛で始まることが多いと言われます。咳は初発症状後3〜5日くらいから始まることが多く、当初は乾性の咳ですが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続きます(3〜4週間)。特に年長児や青年では後期には湿性の咳となることが多く認められます。また、小児では喘鳴を認めることが多いという報告もあります(約40%)。通常の鼻風邪症状はマイコプラズマ肺炎では多くないとされていますが、症状については罹患年齢によってかなり差があり、幼児では鼻風邪症状が見られることは稀ではないとされています。小児ではその他に嗄声や耳痛、咽頭痛、胃腸症状、胸痛が約25%で見られます。しかし、肺炎にしては元気で、一般状態も悪くないということがこの疾患の特徴であるとされ、合併症としては、中耳炎や発疹、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎などがあります。また、理学的所見では75%の症例で聴診上異常を認め、乾性ラ音が多い。また、約半数に咽頭炎を認め、25%に頚部リンパ節腫脹が見られます。稀に胸部レ線上異常陰影があるのに、聴診上異常を認めない症例がある。胸部レ線所見は多様なパターンを取りますが、び漫性の網状浸潤影が一般的です。ただ近年の研究では、び漫性の間質性パターンはマイコプラズマでは稀で、ウイルスやクラミジアによるものの方が多いと言われています。検査所見では白血球数は通常正常範囲内とされますが、報告により違いがあり、少なくとも左方変位を伴うような白血球増多は余り見られないとされます。回復期には好酸球増多を認めることが多いとされます。なお、寒冷凝集反応は非特異反応ですが、マイコプラズマを疑う場合有用な検査方法です。AST及びALTの上昇を認めることがあります。
マイコプラズマ肺炎とその病理
マイコプラズマ肺炎とはどんな疾病か

 マイコプラズマ肺炎は異型肺炎すなわち胸部レ線上肺炎像を呈しますが、細菌性の定型的な肺炎と違って重症感の少ない一群の疾患のひとつで、近年は非細菌性肺炎という概念に包括されることが多くなりました。マイコプラズマ肺炎は通常異型肺炎の30〜40%、流行年には60%程度を占めると言われており、異型肺炎の原因にはこれ以外にアデノウイルスやクラミジア等も含まれます。旧感染症発生動向調査では異型肺炎の発生動向調査が行なわれていましたが、これにはマイコプラズマ肺炎以外にもクラミジア肺炎やその他のウイルス性肺炎など違った疫学パターンを示す疾患が含まれる可能性がありました。新法施行により医学の進歩に合わせてより疾患特異的な発生動向調査を行なうという目的から、病原体診断を含んだマイコプラズマ肺炎として発生動向調査を行なうこととなりました。
マイコプラズマ肺炎の疫学

 マイコプラズマ肺炎は小集団内で流行を起こすことが特徴のひとつで、かつては4年周期でオリンピック開催年に大きな流行を繰り返してきたため、「オリンピック病」などと呼ばれていました。しかし、近年この傾向は崩れつつあり、1984年と1988年に大きな流行があって以降は、全国規模の大きな流行ははなく、地域流行を反映した晩秋から早春にかけての報告数の増加が認められています。この数年は散発的な流行が多くみられ、2000年以降その発生数は毎年増加傾向にあります。
 近年の細菌性肺炎の減少に伴い、マイコプラズマ肺炎の肺炎全体に占める割合が高まりつつあり、小児科では頻度の高い感染症のひとつとなっています。また、マイコプラズマは市中肺炎の原因菌としては肺炎球菌に次いで多い微生物で、本菌による肺炎は比較的軽症であることが多く、10〜30代の若年成人に好発するのが特徴です。乳幼児では感染は見られるものの不顕性或は軽症に経過することが多く、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期に多く、病原体分離例で見ると7〜8歳にピークがあります。
マイコプラズマ肺炎の病原体

マイコプラズマ肺炎の病原菌 マイコプラズマ肺炎は、自己増殖可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類される肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)によって発症します。他の細菌と異なり細胞壁を持たないため多形態性を示し、ペニシリンやセフェムなどの細胞壁合成阻害の抗生物質には感受性がありません。PPLO培地上にて増殖可能ですが、日数がかかり(2〜4週間)、操作もやや煩雑で、雑菌増殖による検査不能例が5〜10%発生します。肺炎マイコプラズマは熱に弱く、界面活性剤によっても失活します。また、感染様式は感染患者からの飛沫感染によるものですが、それには濃厚な接触を必要とします。病原体は侵入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、上気道或は気管、気管支、細気管支、肺胞などの下気道の粘膜上皮を破壊します。特に気管支、細気管支の繊毛上皮の破壊がよく知られており、粘膜の剥離や潰瘍を形成します。気道粘液への病原体の排出は初発症状発現後、2〜8日で見られるとされています。潜伏期は4日〜3週間で、最初の吸入菌量に依存するとされます。
マイコプラズマ肺炎の検査と診断
どのように診断するか

マイコプラズマ肺炎のレントゲン写真 培養検査には特殊な培地(PPLO培地)を使用しますが、細菌培養に比べて長時間を必要とするため、診断は主に血液を用いた血清抗体価測定に依存しています。しかし、血清抗体価測定法は早期に診断ができないといった欠点があり、このためIgM抗体を迅速に検出するイムノカード(IC)法が開発されました。しかし、この方法は偽陽性例が多く、陽性持続期間も長いため、急性感染を確定する方法ではないとされています。
 マイコプラズマ・ニューモニエは小児から30代の成人における呼吸器感染症の一般的な病原体で、年間に人口の5〜10%が罹患しています。季節を問わず流行し、乳幼児や高齢者にも感染がみられます。このマイコプラズマの分離培養には長い時間と特殊な培地が必要なため、診断には一般的に血清抗体検査が行なわれます。マイコプラズマ抗体にはPA法とCF法とがあり、共にIgMとIgGを測定しますが、PA法は主にIgM、CF法はIgGを測定するため、急性期を捉えやすいPA法の方がよく検査されています。また、PA法で単一血清では320倍以上、ペア血清では4倍以上の抗体価の上昇を認めたらマイコプラズマ感染症と診断できます。ただし、小児では320倍以上の抗体価の上昇が数ヵ月間認められる場合があり、単一血清での解釈には注意が必要です。また、寒冷凝集反応は血清中の冷式の赤血球自己抗体である寒冷凝集素を検出する検査で、本来は寒冷凝集素による貧血(寒冷型自己免疫性溶血性貧血)の診断に用いますが、マイコプラズマ感染症を疑う時に検査されています。マイコプラズマ感染症に特異性はなく、陽性率は25〜50%で、これは伝染性単核球症やサイトメガロウイルス感染症などでも上昇します。その他、試薬販売の簡易EIA法キットのIgM抗体検査があります。また、抗原系検査としてはマイコプラズマ・ニューモニエDNA同定(PCR)検査がありますが、保険未収載です。
病原体診断

 確定診断には、患者の咽頭拭い液や喀痰よりマイコプラズマを分離することですが、手技が煩雑なことより限られた施設でしかできないという欠点があります。臨床では血清学的診断がよく用いられ、補体結合反応(CF)や間接的赤血球凝集反応(IHA)にてペア血清で4倍以上の上昇を確認するか、シングル血清ではそれぞれ64倍以上、320倍以上をもって診断されます。近年迅速診断としてPCRによる肺炎マイコプラズマのDNA検出法が開発されており、臨床的に有用性が高いものの、実施可能な施設は限られているのが現状です。
マイコプラズマ肺炎の診断と治療の方法

 マイコプラズマは細菌の一種ですが、一般の細菌とは異なって細胞壁を持っていません。そのため、β-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系やセフェム系など)は無効で、蛋白合成阻害を主作用とするマクロライド系やテトラサイクリン系、ケトライド系抗菌薬が第一選択薬となります。また、一部のニューキノロン系薬も有効性が確認されています。一方、マイコプラズマのマクロライド耐性株が2000年以降に日本各地で分離されるようになりましたが、その頻度は小児科領域で40〜60%にも及んでいるので注意が必要です。なお、大部分のマイコプラズマ肺炎は比較的良好な経過を取りますが、時に急性呼吸不全を起こす重篤な症例も認められます。このような重症の場合では、抗菌薬と共に副腎皮質ステロイド薬の併用が有効であるとされています。
マイコプラズマ肺炎の治療と予防〜マイコプラズマ肺炎に気づいたらどうするか?〜

 家族内や小集団内で発生することから、周囲の人たちがマイコプラズマ肺炎と診断されていて頑固な咳が続く場合には病院を受診しましょう。また、世間一般に広く使用されているβ‐ラクタム系抗菌薬が効かない場合は、医師に相談して下さい。
 マイコプラズマ肺炎の治療は抗生剤による化学療法が基本ですが、ペニシリン系やセフェム系などβ-ラクタム剤には感受性はなく、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系に感受性を示します。一般的にはマクロライド系のエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどを第一選択としますが、学童期以降ではテトラサイクリン系のミノサイクリンも使用され、投与期間は通常10〜14日間とされています。なお、特異的な予防方法はなく、流行期には手洗いやうがいなどの一般的な予防方法の励行と患者との濃厚な接触を避けることが必要です。
参考1:マイコプラズマ肺炎についての参考書


◆参考図書1:マイコプラズマ肺炎についての参考図書
貞元春美『肺炎マイコプラズマとその感染症――知って得する肺炎のお話』文芸社
貞元春美・著(内科医)
『肺炎マイコプラズマとその感染症――知って得する肺炎のお話』
文芸社・2003年02月刊、¥1,365

風邪?油断は禁物。しつこい咳と微熱には要注意!マイコプラズマ・ドクターからのやさしいメッセージ。



[ ページトップ ] [アドバイストップ]


【3】肺炎とは?

 本節では、マイコプラズマ肺炎以外の肺炎一般について取り上げ、詳しく解説しました。
肺炎とは?

 年間112,000人が肺炎で死亡しており、肺炎は日本人の死亡原因の第4位となっています。抗生物質が効きにくくなったことと高齢者が増えたことが最近肺炎患者が増えている理由です。また、冬は夏に比べて3〜4倍も肺炎の発生が多いと言われます。なお、歯磨きが肺炎の予防に効果があることも分かってきました。

 若い人は肺炎に罹って生命の危険はまずありませんが、65才以上の高齢者の場合は生命に関わるので注意が必要です。たとえば肺炎の死亡者の95%は65才以上の高齢者であり、65才以上の人がインフルエンザに罹ると4人に1人が肺炎になると言います。元々肺炎の原因となる細菌は健康な時から口の中に棲みついていることが多いのですが、従って風邪やインフルエンザを長引かせてこじらせると、細菌やウイルスが気管支や肺胞で繁殖して肺炎になりかねないので注意が必要なのです。風邪は安静にしていれば治ることが多いのですが、肺炎は放っておいたら治らず死に至ります。肺炎がもとで心筋梗塞や脳梗塞、心不全などの合併症を併発することもあるので、決して侮れません。高齢者では肺炎になっていても症状が余り外に現われず、自分では肺炎になっていると感じないので、治療が遅れることが多く、そのため普段と違うようなことが3〜4日続くときは早急に受診することが必要です。
風邪と肺炎との違い

 よく勘違いされるのですが、風邪をこじらせたものが肺炎ではなく、風邪と肺炎とは別物です。風邪は鼻や喉、気管支が侵される上気道の炎症ですが、肺炎は肺が冒される、いわゆる肺胞に炎症が起こっている状態を言います。風邪は殆どウイルスで起きますが、肺炎は肺炎球菌やインフルエンザ菌、マイコプラズマなどの細菌で起きます。従って、肺炎は風邪が長引いて細菌が侵入する場合、ウイルス性肺炎の他、 誤嚥性肺炎やレジオネラ菌による肺炎、真菌等のカビによる肺炎等があり、それぞれ症状及び治療法が異なるので注意が必要です。なお、肺炎球菌は健常者の口の中に常在していることが多く、高齢者よりもむしろ0〜5才の幼児に多いと言われます。たとえば保育園児の84%から肺炎球菌が検出されたとのデータもあります。また、風邪の原因となるウイルスの寿命は通常3日程度であり、インフルエンザウイルスでも寿命は5日程度です。従って、3〜5日以上も咳や痰、発熱が続く場合は肺炎を疑って医療機関を受診することが必要です。
肺炎の症状

 (1)激しい咳が1週間以上続くとか、膿のような痰が止まらない、痰に色(緑色や黄色)が付いてきた、(2)38度以上の高熱が続く、(3)少し動くと息が切れるとか、呼吸が苦しくて夜寝られない、(4)呼吸がハアハアと増える(1分間に20回以上)、或は脈拍が増える(1分間に100回前後)、冷や汗が出る、(5)顔色が悪い、(6)食欲不振、(7)咳をすると胸が痛い、(8)全身倦怠感がある等の症状が段々強まるなど時は肺炎の可能性があるので、急いで医者の診察を受ける必要があります。
 なお、肺炎の診断としては、熱や咳、痰、呼吸困難などの全身症状、聴診での異常音、血液検査(白血球増多、CRP上昇等)、赤沈亢進、胸部X線や細菌培養検査などで診断します。ちなみに、高齢者では熱や咳、胸痛等の症状が余りなく、聴診器による音も異常ないのに、X線で肺炎と診断されることもあるので注意が必要です。呼吸がハアハアと増える(1分間に20回以上)とか、脈拍が増える(1分間に100回前後)、食欲がなくなる、意識の低下など普段と違うことがあれば早期に受診することが必要です。
肺炎の分類

 肺炎の分類としては幾つかの異なった分類が存在します。大きく分けて、(1)原因による分類(2)罹患場所による分類(3)発生機序による分類(4)病変の形態による分類などが挙げられます。


■原因による分類
細菌性肺炎
 高熱や咳、痰、呼吸困難などが主症状。黄色い痰が出る。X線で診断が付きやすい。ペニシリン系やセフェム系抗生物質が治療の主体だが、最近は耐性菌が増えてきて、抗生物質の切れ味が悪くなった。効果のある抗生物質を如何に早く探すかが問題となる。緑膿菌を始めとするグラム陰性桿菌や黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌、A群溶血性連鎖球菌、レジオネラ菌など細菌が気管支から肺胞に至る空気の通り道に感染し、熱と咳に加えて痰が出る。炎症が起きている部分が限定的なので、息切れは通常ない。肺炎の60〜70%を占める。インフルエンザに罹った高齢者の25%が細菌性肺炎になるとも言われている。予防には肺炎ワクチンが著効があるとされる。
非定型肺炎
 往々にして症状が乏しい。X線でも淡いすりガラス様の陰影が認められる。マイコプラズマやレジオネラ、クラミジア、Q熱、インフルエンザウイルス等が原因とされる。細菌性肺炎とは使う抗生剤が違い、テトラサイクリン系やマクロライド系、ニューキノロン系抗生物質が使用される。

■原因ウィルス
肺炎球菌
 患者の半数近くは肺炎球菌によるもので、一番患者数が多い。重症になりやすく、死亡例も多い。肺炎球菌は肺炎の他、髄膜炎や中耳炎、副鼻腔炎、敗血症(菌血症)、心内膜炎の原因になる。ペニシリンやニューキノロン、カルバペネム等で治療するが、最近はペニシリンに無効の肺炎球菌が増えてきている。肺炎球菌は健常者の鼻や喉に定着していることが多く、痰を検査すれば健康人の喉に50〜60%の頻度で見つかるほどの細菌だが、免疫力があれば悪さをしない細菌であり、喉や鼻に定着した肺炎球菌は通常は1ヶ月〜1年半程度定着し、何も起こさず消滅することも多いが、免疫力や体力が低下したような場合に増殖して肺炎球菌感染症を発症することがあるので注意が必要になる。感染力はそれほど強くないので、隔離するなどの必要はない。痰は最初は少なくても、徐々に増えて鉄錆色の痰が出るようになるのが特徴。症状が乏しいことがあり、肺炎になっていることに気づかないことが多いので注意が必要になる。治療には通常ペニシリン系又はセフェム系の抗菌剤が用いられる。効果が弱い場合はマクロライド系か又はニューキノロン系抗菌剤が用いられる。ただ最近は耐性菌が増えてきて、抗生物質の60%が肺炎球菌に効果がないとの報告がなされている。従って、効果のある薬剤を求めて薬を替えて治療することになる。
マイコプラズマ
 2011年は過去10年で最多で、感染者の大半は14歳以下。今年は天皇陛下や愛子様の感染が報じられた。多くは軽症で風邪と区別が付かない。肺炎となるのは感染者の3〜5%、5〜35才の若い人が罹る率が多い。肺炎は幼児〜小学生が肺炎を起こしやすい。免疫は弱いので、何度でも感染する可能性がある。これまでマクロライド系抗生物質が有効で治療の中心だったが、薬が効かない耐性菌の増加が患者数拡大の要因になっている可能性がある。なお、今年はこれまで使われてきたマクロライド系の抗生物質が効かないケースが多いが、2003年以降耐性菌が増え、今では80%を超えるという報告もある。他にニューキノロン、テトラサイクリン系抗生物質も効果がある(※ジスロマックやクラリス、エリスロマイシン等を2週間程度続ける)。普通よく使われる抗生物質のペニシリンやセフェム系は効かない。また、マイコプラズマ・ニューモニアという病原体が気管支と肺胞に感染する。肺炎の30〜40%を占め肺炎の原因の第2位で、大半は咳、痰からの飛沫感染による。最初は熱(高熱ではない)と頭痛と全身倦怠で始まるが、2〜3日で治まることが多く、その後3〜5日後に咳が出てひどくなってくる。痰は最初は少ないが、徐々に増える。咳は長引き、1ヶ月続くこともある。ゴホゴホという頑固な激しい乾いた咳(空咳)が続く割には痰は少ないという特徴がある。咳は特に夜間に多い。咳は2週目が一番激しい。殆どの人は38度以上の高熱が出る。時々強膜炎を起こし、肺に水が溜まったり、中耳炎を起こしたり、髄膜炎を起こしたりする。感染力が強く、家族内、幼稚園や学校内で感染し、時に大流行する。 なお、乳幼児に感染した場合は肺炎になることは少なく、風邪や上気道炎で終わることが多いが、5〜10歳になると、肺炎症状が出たり、重症化しやすい。嘔吐や頭痛等が見られる場合は髄膜炎を疑う。1歳までに40%、5歳までに65%、成人するまでには約97%が感染すると言われている。何度も罹患し終生免疫は出来ない。
インフルエンザウイルス
 細菌ではないので、直接効く薬はまだない。対症療法で対応する。インフルエンザに罹ったら48時間以内にタミフルやリレンザなどの処方で重症化を抑える。ウイルスの中で唯一肺炎を引き起こすのがインフルエンザウイルス。しかも症状は細菌によるものより重症となる。重症化するのは妊娠中の女性や子ども、65歳以上の高齢者。他に糖尿病や肺及び心臓に疾患のある人、ステロイド薬や抗がん剤などを使用している人も恐れがある。僅か1日で重症化することもあるので注意が必要。これを防ぐためにインフルエンザワクチンを毎年接種するようことが望ましい。ワクチンを接種しておけば肺炎になる可能性は低くなる。 

■罹患場所による分類
市中肺炎
  1. 細菌性肺炎(肺炎球菌、インフルエンザ菌、ブドウ球菌等)
  2. 非定型肺炎(レジオネラ菌、マイコプラズマ、クラミジア等)
  3. その他、結核性など
 普通に生活している健常者が肺炎を急に発症するもの。肺炎球菌肺炎やインフルエンザ菌、ブドウ球菌等による肺炎が一番多く、抵抗力が正常でも弱っていても起こる。肺炎球菌による肺炎の潜伏期間は1〜3日で突然発熱や悪寒、震え、咳や痰、息切れ、速い呼吸、胸痛、低酸素などが起きる。死亡率は10% 。なお、非定型肺炎は有効な抗生物質の種類が通常の肺炎と異なるため、一般の細菌性肺炎とは区別されている。
院内肺炎
  1. 細菌性肺炎(緑膿菌をはじめとするグラム陰性桿菌、ブドウ球菌等)
  2. 真菌性肺炎(アスペルギルス、カンジダ、ムーコル等)
  3. その他、サイトメガロウィルス、カリニ原虫など
 病院に入院している人が罹患する肺炎。入院中の患者は、自分の病気のため病気に対する免疫力が低下しており、通常の健康な人なら罹らないような弱毒菌により肺炎を発症する。MRSAや緑膿菌。死亡率は20-50%。

■病変の形態による分類
肺胞性肺炎
大葉性肺炎
気管支肺炎
間質性肺炎

肺炎の種類

■クラミジア肺炎
 ペットから感染し、健康な人にも起こります。クラミジア・トラコマチス肺炎やオウム病、クラミジア・ニューモニエ肺炎があります。なお、このクラミジアは性感染症の原因菌となるクラミジアとは種類が異なります。また、クラミジア・ニューモニエ肺炎は野鳥等が生息する公園の周辺で、散歩などを通じて鳥の糞や羽を吸い込んで熱の殆ど出ない肺炎(無熱性肺炎)を起こします。野鳥などが生息する場所を歩く時は必ずマスクを着用するように心懸けましょう。症状としては、乾いた咳だけがいつまでも続くもので、最近増えていると言われます。小児(年長児)と60才以上の高齢者に多い傾向があります(※4才以下は稀)。軽症で自然治癒することも多いものの、この病気の怖いところは、しっかりと治療しないと、喘息が悪化したり炎症部分から毒素が出て内皮細胞を傷め、動脈硬化が元になって将来心筋梗塞や脳梗塞の遠因になることもあることです。なお、この肺炎は熱が出ないことがあるので、喘息の人がこの肺炎になった場合は、肺炎の診断が遅れることがあるので、くれぐれも注意が肝要です。咳が増えたのを喘息が悪化したと診断されてステロイド剤を増量されても肺炎はよくなりません。従って症状が改善しない場合は、肺炎を疑って血液検査やCT検査などを受けた方がよいでしょう。
診断
 血液検査やCTで診断が付く。軽いとX線ではハッキリせず、CTで漸く診断が付くこともある。血液検査ではIgMが増加、赤沈値は上昇、CRP(++は25%)や白血球球数(10,000以上は25%)は多少増加する程度のこともある。陽性になった抗体は通常は数年で陰性になる。この病気が疑われたら必ず血沈を測って貰うとよい。
感染形態
 患者の咳による飛沫感染で人→人に感染する。感染していることを示すクラミジアニューモニエIgG抗体保有率は小児期に急増し、大人では50〜60%と高い。ただし、この抗体には感染を防ぐ機能はなく、抗体を持っている人でも何度でも感染し発症することがある。感染から発症までの潜伏期間は通常2〜4週間。親と子ども、年寄りと孫のような接触が密接なものほど感染が広がりやすい。
症状
 症状は乾いた咳が主体で2週間以上続き、症状も軽いことが多く、肺炎クラミジアと言っても肺炎まで移行するのは10%程度(※ウイルス感染による咳なら2週間程度で改善するのが一般的)。熱は低いことが多く、38度以上の高熱が出るのは半数以下。咽頭痛や嗄れ声がが長引くのも特徴の一つ。小児は軽症が多く肺炎は稀。発症が緩慢なことが多いので、肺炎になっていても最初は気づかないことがある。自然治癒もある。
検査
 抗肺炎クラミジアIgM抗体をELISA法で測定する方法が保険適用されており、結果は数日で分かる。他に分離培養法や遺伝子検査法がある。
治療
 発熱のない乾いた咳が2週間以上続くようなら、感染を疑って抗菌剤を投与するのも一法。ニューキノロン系(※他にマクロライド系、ケトライド系、テトラサイクリン系)の抗生物質が効果がある。除菌率80〜90%。10〜14日間の長めの投与が望ましい。小児はマクロライド系がよい。ペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効かない。水分は多めに摂取。風呂は熱が下がり、咳が出なくなってから体調のよい時に。
参考:オウム病
 クラミジアシッタシイによる肺炎。オウムやインコ、カナリアなどの糞便から空気感染する。クラミジアシッタシイに感染した小鳥は必ずしも死亡しないので、小鳥が元気でも感染の可能性がある。潜伏期間は4〜10日。高熱や頭痛、筋肉痛、肺炎を起こす。テトラサイクリン抗生物質が第一選択肢。マクロライド系、ニューキノロン系薬がこれに次ぐ。ペニシリンやセフェム系抗生剤は効かない。クリプトコッカス肺炎の場合ハトの糞便が空気感染源となることが多いが、免疫の働きが正常な人に高熱を出させることは稀。肺炎や髄膜炎、皮膚疾患を呈する。肺型は自然治癒もある。免疫が極端に落ちている人が感染すると生命予後が悪いので注意が必要。

■誤嚥性肺炎
 食事の際の飲み込み不良により食物や唾液の雑菌などが気道から肺に入ることによって起きます。65歳以上の高齢者に多く、痴呆や脳梗塞、寝たきりの人は特に注意が必要になります。米国における60才以上の高齢者の死亡原因第一位はこの誤嚥性肺炎と言われています。健常者はむせることで異物を排出するので起こりにくいのですが、寝ている間に気づかないまま逆流胃液や唾液や雑菌などを誤嚥していることが多いと言われます。
症状
 細菌性肺炎に特徴の高熱、咳・痰などの症状が現われにくい。元気がない、食欲がない、ボーとしている、呼吸が速くなる(※1分に20回以上)、脈拍が増える(※1分100回以上)など一見肺炎と思えないような症状になることが多い由で注意が肝心です。
検査
 血液、胸部レントゲン等
治療
 入院して点滴で抗生物質投与。
予防
  • 食後と寝る前のうがいと歯磨き(※口内を綺麗にして細菌を除去)。総入れ歯の人も歯ブラシで歯茎を磨くこと。歯磨きにより肺炎の発生率は半分に減る
  • 姿勢を起こして食べる
  • 食後30分以上は横にならない
  • 舌の汚れを取る
  • 手指等を清潔に保つ
  • 定期的に歯科にかかって口内の歯石などを除去して貰う
  • 栄養のよいものを食べて免疫力をつける(卵や豆腐、肉類)
  • 喉周辺を鍛える運動:大きく息を吸い込んで息を止め、唾を飲み込んでからハーと息を一気に吐き出す。3度繰り返して休み、それを3回続け、計9度行なう

■間質性肺炎
 3大症状として、(1)空咳(痰が出ない)(2)呼吸困難(3)息切れが挙げられます。肺胞の中ではなく、肺胞を取り囲んでいる壁(間質)に炎症を起こし、治る時に繊維化して肺が固くなる。じん肺やアスベスト、ウイルス、アレルギー、総合感冒薬、リウマチ、抗癌剤、カビ、羽毛布団(鳥)、放射線、強皮症などの膠原病などの他、原因不明の特発性(20%程度)も多いとされます。両方の肺に同時に炎症が起きるので、息切れが激しい。喫煙者に多い傾向がある他、年齢は50歳〜70歳の人に多いとされます。風邪などの後、急に悪くなることがあるので、予防としてはまずは風邪を引かないようにすることが肝要です。また、鼻呼吸は予防法にもなります。経過は急性(38度以上の発熱)、亜急性、慢性型に分類されます。慢性型で急性悪化することがあります。息切れを感 じてから5年前後で症状が進行する例が多いと言われ、最終的には酸素マスクを必要とすることが多いようです。聴診器で一呼吸ごとに左右対称に肺の音を聴いていくと、特徴的なパチパチといった音がし、レントゲンでは肺の容積減少や瀰満性陰影で両肺が曇って見えます。また、高解像度のCTでハチの巣状の様子を確認します。その他、肺機能検査や血液検査、6分間歩行試験、気管支肺胞洗浄、胸腔鏡下肺生検等で診断と原因を確定します。昔は間質性肺炎は原因の分からないことが多かったが、診断技術の進歩で、最近は専門医にかかれば80%程度は原因が特定出来るようになり、対処法や治療法も改善しました。疑わしい時は即刻薬の服用を中止し、専門医を受診することが必要です。軽症者はステロイド剤の大量点滴で治ります。免疫抑制剤のシクロスポリン等が使われることもあります。昨今、静脈から血液を抜き、フィルターで炎症細胞などを吸着・除去した後、再び体内に戻す治療も有効性の研究が進められています。ステロイドが効かない場合は肺移植。湿気の多い部屋や加湿器のカビは危険。加湿器は必ず頻繁に洗浄して使う。
特発性間質性肺炎
 患者の半数は肺繊維症(肺が硬くなる)。ステロイドや免疫抑制剤を使用するのが標準的治療法ですが、進行を確実に抑制する薬はまだありません。N−アセチルシステインを含む薬が進行を抑える力が強いとの報告があります。また、2008年登場のピルフェニドンは繊維化を抑える力が強いとの報告もあります。なお、特発性間質性肺炎(IIPs)の生命予後は悪く、我が国では50%生存期間が約3〜5年と報告されていましたが、副作用を念頭に経過観察すれば小柴胡湯等の漢方治療が特発性間質性肺炎に奏効あるそうです。
間質性肺炎を起こしやすい薬
 抗癌剤(ブレオ:発症率10.2%)、ペプレオ(6.9%)、イレッサ(5.8%)、カルセド(2.2%)、ジェムザール(1.5%)、カンプト(1.3%)、トボテシン(1.3%)、インターフェロン(0.1%))や、抗リウマチ薬アラバ(1.8%)、抗不整脈薬アンカロン(1.9%)、漢方の小柴胡湯(0.1%)などで間質性肺炎が起きると報告されています。なお、慢性肝炎における肝機能障害の改善の目的で小柴胡湯を投与された患者で間質性肺炎が起こり、重篤な転帰に至ることがあるとされます。小柴胡湯による間質性肺炎の発生は60歳以上の高齢者や慢性肺疾患やアレルギー疾患の既往・合併を有する患者に多いので注意が必要です。
市販の総合感冒薬で間質性肺炎
 パブロンやエスタック、ルル、コンタック、ベンザなどの総合感冒薬で200万人に一人程度ですが、間質性肺炎が起きることが報告されています。空咳(初期は痰が出ない)や労作時(布団の上げ下げ、階段や坂道)の息切れ(肩で早い息をする)がしばしば出現します。体重減少が起き、痰は少なく、熱は余り高くないことが多いとされます。進行すると、ちょっとした日常動作でも苦しくなり、唇などが青紫色になるチアノーゼやバチ状指など呼吸不全に特徴的な身体的特徴が現われます。従って、安易に総合感冒薬に頼らないと共に、市販の風邪薬を5〜6回程度飲んで、却って症状が悪くなったり、空咳や呼吸困難、発熱などの症状が出た場合は、即刻服用を止めて医師を受診しましょう。初期の兆候に気付いて薬の服用を中止すれば重大な結果になる事は防げます。

■レジオネラ菌による肺炎
 春先から多くなります。ガーデニングで使われる落ち葉を集めて作る腐葉土の中にレジオネラ菌が発生していることがあるので注意が必要です(※腐葉土は袋に入れたまま日向には置かないことが大事で、水温36度前後で増殖しやすい。また、園芸の際にはマスク・手袋、作業終了後の手洗いは必須です)。その他、超音波式加湿器や循環風呂等不衛生な入浴施設、ビルの屋上にある冷却塔等から出る微粒子を吸い込むことが原因で起きることが多いとされます。また、源泉のかけ流しの温泉ではレジオネラ菌の繁殖はまず起きないが、循環式温泉は注意が必要です。罹らないようにすることは困難ですが、温泉に行って、その後高熱や呼吸困難が起きたら、レジオネラによる肺炎を疑って呼吸器科を受診することが必要です。なおレジオネラ菌は、土中や川など湿った場所で棲息し、風呂などにも自然に住みついています。清掃状態のよくないジャグジーや打たせ湯は危険度が高い。菌の力はそれほど強くないですが、高齢者など体力の弱った人が感染すると肺炎になります。潜伏期間は2〜12日で、人から人への感染はしません。また、2〜10日の潜伏期間を経て高熱や咳、頭痛、筋肉痛、悪感等の症状が起こります。進行すると、呼吸困難を発し、胸の痛みや下痢、意識障害等を併発します。死亡率は15%〜30%と高い。健常者が感染・発症することは稀で、高齢者や幼児、また、糖尿病など免疫力が弱っていると重症化しやすいと言われます。レジオネラ肺炎は進行が早いので、疑わしい時は直ちに医療機関を受診することが必要です。レジオネラを思いつかず、他の肺炎としてレジオネラに効果のない抗生物質で治療していると、最悪の場合は生命が危険になるので、発症前の1週間の行動を医師によく伝えることが大事です。何れにせよ、急速に悪寒や高熱、震え、息切れ、呼吸困難が出て重症化したり、下痢や吐き気を伴う、意識障害が出る等が起きます。痰は少ない。脈拍は遅くなることもあります。検査は痰を検査してレジオネラ菌の存在を確認しまする。尿中抗原検出キットも活用できます。ニューキノロン系(クラビット、スパラ等)の点滴が第一推奨薬です。他にマクロライド系抗生物質(ジスロマック・クラリス・クラリシッド)が効きますが、通常のペニシリン系、セフェム系抗生物質は効きません。

■真菌等のカビによる肺炎
 免疫力が低下した時に起こりやすいと言われます。強力な抗生物質の治療を長い間続けた時などにも、細菌はなくなっても逆に真菌(アスペルギルス、カンジダ、ムーコルなど)が繁殖して発病することがありまする(※菌交代現象)。カビを吸い込んで数時間で咳や痰、熱などのアレルギー症状が出ます。さらに進むと、息切れや呼吸困難などの肺炎の症状が出ます。カビと称される真菌による肺の感染症に肺真菌症があります。症状は咳や痰、発熱が挙げられます。原因となる菌には、麹カビの仲間であるアスペルギルスや酵母の仲間のクリプトコッカス(真菌の一種)などがあります。真菌は我々の生活環境の中にあり、毎日吸い込んでいるが、真菌自体は他のバイ菌に比べて病原性が弱く、健常者は吸い込んだだけで病気を発症することはありません。肺結核やエイズ、抗癌剤治療中の人がなりやすいと言われます。ただ、レントゲンでも見つからないこともあり、診断と治療は専門医でないと難しいとされます。治療は抗真菌薬が使用されます。症状が重い場合は肺の感染した部分を切り取る手術を行なうこともあります。また、最近注目されているものにトリコスポロンというカビの一種によってアレルギーを起こす夏型過敏性肺炎があります。高温多湿の夏に家の中で増殖するトリコスポロンというカビが引き起こす肺炎です。湿度が高い台所の流しの下などが特に繁殖するため、主婦は特に注意です。吸い込んでアレルギー反応を起こします。最初は咳や痰、発熱などの軽い風邪のような症状で始まり、放置すると息切れ等が出ます。カビから離れると自然と軽快することが多いが、環境が変わらない限り、毎年5月〜10月にかけて同じ症状がぶり返す特徴があります。このアレルギー性肺炎に罹っていることに気づかず、何年も放置しておくと、肺が繊維化するので怖い病気です。診断は抗体検査やCRP、白血球等の炎症反応検査、胸のX線、肺活量などによります。この病気が疑われたら、抗体検査をして貰いましょう。治療は対症療法としてステロイド剤が主に使われます。入院して家から離れて治療することも多い。家からカビを除去するために、徹底した大掃除と場所に応じた消毒、さらに日当たりや通気を良くするリフォームをします。日常の注意として、(1)エアコンや加湿器の使い始めには必ず掃除をする、(2)部屋の換気に努める、(3)枕を干す、(3)カビの多いところでの作業は必ずマスクをする等があります。なお、カビ対策として部屋の換気と掃除を小まめにするのが効果的です。また、カビが出たらカビ取り剤を使用しましょう。

■マイコプラズマ肺炎
 上の節で詳しく取り上げましたので、そちらを参照して下さい。

肺炎の診断と検査

 肺炎の検査としては、(1)脈拍や呼吸、酸素濃度などの全身状態の観察、(2)胸部のX線撮影、(3)採血してCRP、白血球や赤沈の検査、(4)胸の音を聴診器で聞く、(5)血液ガス分析(呼吸不全の程度と呼吸性アシドーシス或いはアルカローシスを評価)、(6)血液培養検査・細菌培養検査等が行なわれます。詳しくは、まずは身体所見 (聴診所見など体の症状)や胸部X線写真、胸|CT、採血 (白血球数やCRP値、シアル化糖鎖抗原KL-6、乳酸脱水素酵素)、喀痰培養などが挙げられます。また、喀痰のグラム染色は有用と考えられ、好中球による貪食像 (※好中球が細菌を取り込んでいる像) は起炎菌の同定 (※原因となる病原体を特定すること) に繋がることもあります。近年は迅速診断キットにより肺炎球菌やレジオネラについては尿を検体として検査が可能となりました。ただ、市中肺炎の原因菌の中でも特殊な結核に付いては常に鑑別に上げなければならないとされます。また、結核を疑う場合はチール・ニールセン染色や蛍光塗抹検査を行ないます。
肺炎の治療


肺炎の治療
 肺炎の治療は、抗菌薬(細菌を死滅させる)や解熱薬、咳止め、去痰薬などが用いられます。通常は数日から1週間で治ります。細菌性肺炎は抗生物質を用いて治療しますが、ウイルス性肺炎には無効です。軽症なら自宅で服薬、安静、保温で治療します。症状が重く脱水がある場合は入院して抗生物質の点滴や酸素吸入治療を行ないます(※通常入院期間2〜3週間)。肺炎の原因を見極めて、それに合った抗菌薬を使うことが必要ですが、原因菌を特定するまでに時間がかかり、間に合わないので、通常病院では2種類以上の抗菌薬を使用して、全ての菌に対応するのが一般的です。なお、胸水が溜まった場合は肺穿刺や利尿剤等で治療することになります。また、酸素濃度が下がっていれば酸素投与の必要があります。その他、喘息の発作などがあれば、気道閉塞の除去や痙攣を取る気管支拡張剤、痰を除去する去痰剤やネブライザー、炎症を取るステロイド剤等が実施されます。なお、治療効果の判定は、熱の経過や白血球数や酸素濃度、チアノーゼ、胸部X線などで総合的に判断します。また、回復期には水分を多く摂るよう心懸けます。熱が高い時はアセトアミノフェンやアスピリンなどを服用して熱を下げます(※ただし、小児にはアスピリンを使用してはなりません)。さらに、最近耐性菌の増加により薬の効かない肺炎が増えてきていますが、これは風邪の治療などに抗菌剤などが多用された結果でもあります。肺炎と診断がついたら、強い薬を必要な量だけ最初から使うことが耐性菌対策にも有効です。

■肺炎の予防
肺炎予防のチェックリスト
  1.  インフルエンザワクチンを接種し、風邪やインフルエンザに罹らないこと。特に高齢者はインフルエンザの後肺炎に移行しやすい
  2.  肺炎球菌ワクチンを接種すること
  3.  歯と歯茎をよく磨くこと。軟らかい歯ブラシで歯と歯の間や歯茎を磨く。舌を磨くとなおよい。歯磨きを1日5回すると、肺炎のリスクは1/3に減ると言われる
  4.  体力、免疫力をつける
参考:肺炎予防呼吸法
 原因菌が棲みつかないように肺の状態をきれいに保つことが大切。肺を全部使って肺の空気を入れ替える。

  1.  口をすぼめ、肺の中の空気を全て出し切る
  2.  ゆっくりと鼻から息を吸い、吸えなくなったところで3つ数える(3秒止め)
  3.  もう一度口をすぼめ、息を静かに出し切す
  4.  
 これを3セットずつ、朝晩行なう。この運動をやって咳き込む人は呼吸器の病気がなにか隠れているかも知れないので医師に相談しましょう。

参考2:風邪についての参考書


◆参考図書2:風邪一般ついての参考図書
松永貞一『風邪の話――たかが風邪、されど風邪、風邪対策の知恵とヒント』日本医学館
松永貞一(東京都葛飾区亀有永寿堂医院院長)・著、
森利夫・挿絵
『風邪の話――たかが風邪、されど風邪、風邪対策の知恵とヒント』
日本医学館・2007年03月刊、¥1,050
みなさんが風邪を理解してくださり、風邪を重くすることなく、またかからずににすむ知恵を会得してくださることを希望します。


[ ページトップ ] [アドバイストップ]


YAMATO GROUP
112-6 Kashiwa-cho Asahi-ku Yokohama-city
1STサービスヤマト管理(有)・(有)ヤマト興業
(有)アメニティー・ワイ・(株)ヤマトプランニング


Copyright (C) 2000 02 01.Yamato Gr.
Produce By ostworks

お気付きの点、ご意見等がございましたら下記までお寄せください。

yamato@yamato-gr.co.jp