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  心筋梗塞とは、心臓に栄養や酸素を運ぶための冠状動脈が閉ざされて血液が心臓に流れなくなり、心臓の組織・細胞が壊死することで起こる病気で、死亡率の高さで知られています。今回はこの心筋梗塞を取り上げました。心筋梗塞はきちんと予防することで防ぐことの出来る病気です。もしも万が一、心筋梗塞の症状が現われたら、直ぐに病院にゆきましょう。
心筋梗塞


心筋梗塞
【1】心筋梗塞とは?〜その症状と前兆〜
【2】心筋梗塞の原因とその治療法
【3】心筋梗塞の予防のために

【1】心筋梗塞とは?〜その症状と前兆〜

 死亡率も高い心筋梗塞。本節ではその心筋梗塞の症状を中心に取り上げ、併せてその前兆や後遺症等について取り上げ解説しました。
3人に人1が亡くなる心筋梗塞とは?

 心筋梗塞とは、心臓に栄養や酸素を運ぶための冠状動脈が閉ざされて血液が心臓に流れなくなり、心臓の組織・細胞が壊死することを言い、冠状動脈で動脈硬化が進行することで起こる病気です。日本人の死亡率の第2位であり、高齢者ほどその発症リスクが高い心筋梗塞ですが、この死亡率が高い理由はその症状に前兆がなく、ある日突然激しい痛みに襲われて倒れてしまうことにあります。心筋梗塞とは、心臓に血液が送られず、短時間で心臓が壊死してしまう病気です。生活習慣病の1つとされ、狭心症と並び「虚血性心疾患」とも呼ばれています。発症する割合は加齢と共に上がってゆき、男性では45歳、女性は65歳を境にして、発症率は急上昇のカーブを描いて上がってゆきます。
 心臓は筋肉から出来ている臓器です。中は血液が充満していて、その筋肉の収縮によって絶えず血液を送ることで全身に栄養を供給することがその役割です。心臓の筋肉に栄養を送っている血管は冠動脈と言い、3本の重要な血管からなっています。冠動脈は心臓の直ぐ外側を筋肉に這うように走っていて、心臓全ての領域の血流をカバーしています。その冠動脈でも他の動脈と同じように年齢と共に血管の壁に滓が溜まって、いわゆる動脈硬化が起こってきます。予備的な能力があるため、冠動脈の断面が半分ほど動脈硬化によって覆われたとしても、心臓の筋肉に対する血液の供給は保たれます。ところが血管の壁の滓が徐々に増えてゆき、血管の内側が狭くなってくると、胸が痛くなるという症状が出て来ますが、それを狭心症と言います。そして、ついに冠動脈が完全に詰まってしまうと、心臓の筋肉が壊死が始まり、心筋梗塞となります。狭心症と心筋梗塞は両方とも冠動脈の血流の不足によって起きるため、両方を合わせて虚血性心疾患と言います。身体の他の場所で考えると、手の指の付け根をぎゅっとにぎっていると、暫くすると色が青黒く変わってゆきますが、それを長時間続けると指の筋肉が壊死してしまいます。心臓の筋肉は手の指よりもずっと繊細なので、血流が数十分途絶えるだけで死に始めます。脳の細胞はさらに繊細で、数分心臓が止まっただけでも細胞が死んでしまい、脳に障害が残ることになるのです。なお、心筋梗塞の原因としては、冠動脈が徐々に狭くなっていって最後に詰まってしまうパターンは約30%程度のみです。後の70%は、軽度や中等度の動脈硬化でありながら脂肪に富む不安定な動脈硬化の場所が突然血管の内側に向けて破けて血管が詰まってしまうことが原因と言われています。また、殆ど狭くない冠動脈が突然痙攣を起こして詰まってしまうタイプの冠攣縮(かんれんしゅく)と言われる状態により心筋梗塞を起こす場合もあり、それは比較的若年者や中年者に多いと言われています。何れにせよ、日本人は元々塩分摂取量が多いために依然ひどい高血圧の患者さんが多く、高血圧の関与が大きい脳出血が多い国でしたが、食生活の欧米化に伴って、欧米ほどではないものの心筋梗塞の発症もかなり多くなっており、特に比較的若年や中年の患者が多くなってきているために、心筋梗塞が近年問題になっているのです。


心筋梗塞の死亡率は非常に高い
 発症してから6時間以内の死亡率が30%〜40%と最も高く、たとえ病院に運ばれたとしても。10%の確率で亡くなってしまいます。そのような心筋梗塞から回復できるかどうかは、発症から1時間以内に病院で適切な治療を受けられるかどうかにかかっていると言えます。

確実に後遺症が残る
 たとえ手術で一命を取り止めたとしても、殆どの場合で後遺症が残ると考えられます。心臓(心筋)は、一度壊死すると、繊維状の組織となり、元には戻りません。そのため、正常な働きをすることが出来ず、以後、不整脈や狭心症、低酸素脳症などの後遺症に悩まされることとなるのです。

心筋梗塞の症状

 胸部に感じる激痛が、心筋梗塞の症状として最も分かりやすいものでしょう。心臓を食い破られるとか、焼けた鉄の杭を差し込まれたようだなど、死を覚悟する程の痛みを感じます。或は冷や汗が止まらず、呼吸困難になり、そのまま気絶する人も珍しくありません。なお、痛みが持続する時間は約30分。その後痛みが引いたように感じますが、これは痛みを感じていた心臓の一部が壊死したためで、決して症状が改善されたわけではありません。
心筋梗塞の種類
 虚血性心疾患である狭心症や心筋梗塞の症状は、一般的に胸が締付けられるとか、鉄板を押し当てられるような痛みと表現されます。しかし、放散痛と言って背中や顎や左腕や胃のあたりが痛むのこともあります。中には歯が痛いという患者さんもいます。血管が細くなって心臓の筋肉に対して血液の供給が不足して起こる狭心症では、安静にすることや、ニトログリセリンの錠剤やスプレーを舌の下に入れることにより数分で痛みが消失しますが、それが消失せず、20分以上持続するようなら、血管が既に詰まっている心筋梗塞を起こしている疑いが強くなります。たとえば冠動脈を高速道路に当てはめて考えると、人間の心臓は予備的な能力があるため、高速道路の4車線のうち2車線が工事をしていても流れに大きな問題は起こりません。しかし、冠動脈の内側である内腔が75%以上、つまり4車線のうち3車線が動脈硬化で覆われると、歩いたりした時に胸が痛くなるという狭心症の症状が出始めます。さらに90%以上になると、安静にしていても症状が出始めます。高速道路が工事で通行止めになると車は完全に通れなくなるように、冠動脈も完全に詰まってしまうと、血液が先に流れなくなり、心臓の筋肉が死に初めて心筋梗塞を起こしてしまいます。
 心筋梗塞は胸痛や放散痛の他にも症状を起こすこともあります。心不全と言って、心筋梗塞により心臓のポンプ作用が衰えるために肺の中に水が溜まって息苦しくなる症状や、心筋梗塞によって起こる不整脈で動悸が出現したりすることによって、胸の痛みよりは、それらの症状が主なこともあります。最悪の場合は心筋梗塞を起こして直ぐに心臓が停止してしまうことにより、倒れて病院に運ばれて来る患者さんもいます。また、高齢者では典型的な症状が出にくく、だるいとか気持ちが悪いなどの症状が心筋梗塞の症状であることもよくあり、たとえば認知症がある人などでは、何となく元気がないと言って家族が病院に連れて来たら心筋梗塞だったなどということもあります。また糖尿病の患者の場合、神経の障害のために典型的な痛みが生じない場合があり、高血圧の患者でもそういった場合があると言われています。また、心筋梗塞を起こした患者の約20〜30%の患者は全く痛みを感じず、その後に受けた健康診断や人間ドックで実は以前に心筋梗塞を起こしていたと判明するような患者もいます。その原因ははっきりとは解明されておりませんが、痛みに対する敏感さが人によってかなり異なることが原因ではないかと考えられています。
参考:心筋梗塞と背部痛

 心筋梗塞の症状に背部痛があることはご存知でしょうか? 心筋梗塞の初期症状に背部痛があります。背部痛の多くは膵炎や胃潰瘍など腹部の病気の症状ですが、少なからず心筋梗塞や狭心症の症状である場合もあるのです。高血圧の治療をしている人で普段とは違う背部痛を感じたら、それは心筋梗塞の前兆かも知れませんので、直ぐに病院へゆきましょう。確かに心筋梗塞は心臓の病気なので、背部痛と結び付けて考える人は少ないかも知れません。しかし、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気の症状に背部痛があることを知っていれば重篤な状態になることを避けることが可能になるかも知れません。
 背部痛が心臓の病気の症状であるということを知っている人は少ないと思いますが、実は背部痛は心臓の病気の症状の一つであるのです。狭心症や心筋梗塞の場合に背部痛が起こりますが、普段から心臓に負担をかけている高血圧の人や肥満症の人は特に要注意です。心臓に対する負担が大きいと、狭心症や心筋梗塞などの病気を引き起こす場合があります。背部痛が起こったら、心臓の病気の症状かも知れないと疑い、直ちに病院へゆくことをオススメします。何れにせよ、高血圧の人がいつもと違って背部痛を感じた場合には、狭心症または心筋梗塞を思い浮かべましょう。普段持ち歩いている冠血管拡張用の舌下錠を内服して症状が軽快するようなら確実です。狭心症の痛みが10分以上続く痛みでは心筋梗塞も考えられますので、早急の受診が必要になります。大動脈の壁に穴が開いて動脈壁に血液が流入する解離性大動脈瘤などでも頑固な背部痛を訴えることがあるので注意が必要です。なお、背部痛の症状が見られる内臓疾患で、代表的なものは腹部臓器や腎臓に関連した病気であるため、心筋梗塞や狭心症など心臓に関する病気は見落とされがちだと言えるでしょう。けれども、心臓の病気の症状に背部痛があると知っておくことも大切です。狭心症も心筋梗塞も、症状が出たら直ちに処置する必要があるからです。どんな病気であれ、早期発見&早期治療が肝要です。日頃から狭心症を患い、心筋梗塞の心配がある方なら、背部痛のことをきちんと知っておくべきです。
心筋梗塞の前兆

 心筋梗塞は、胸痛などの前兆が全くなしに起こる人は約3分の1で、梗塞前狭心症と言って、数日前、或は数時間前から胸痛を繰り返したのちに冠動脈が完全に詰まって心筋梗塞を起こす人が約3分の2はいると言われています。その前兆は、いわゆる不安定狭心症と言って、ここ最近新たに起こってきた胸痛などの症状、或はたとえば駅の階段を昇る時のみに胸痛が起こっていたのが、もっと軽い動作でも胸痛が起こってきたり、安静にしている状態でも胸痛が起こってきたりするようになった状態です。冠動脈が細くなっているのみで詰まってはいない狭心症では、安静にすることや、ニトログリセリンの錠剤を舌の下に入れたり、ニトログリセリンのスプレーを舌の下に噴いたりすることにより数分で痛みが消失し、長くても30分を超えることはありません。それ以上継続するような場合は、冠動脈が完全に詰まっている心筋梗塞を起こしている可能性が強くなります。胸痛発作が1日に何度も起きたり持続時間が長くなったりするような場合、これは心筋梗塞を起こす前兆であり、速やかに病院を受診する必要があります。また、その前兆として、たとえば背中や顎や左腕や胃の辺りが痛むこともありますので、1日に何度もそのような症状が繰り返し起こるようなら、何れにしても早めの病院への受診が重要です。なお、その一方で、前兆があった後に心筋梗塞を起こした人の方が、前兆なしに心筋梗塞を起こした人よりも、その後の心臓の機能の回復が早く、合併症も少ないことが知られております。それは、胸痛発作が何度もあると、心臓の筋肉が血液の足りない状態に慣れてきたり、或は側副血行路といって他の冠動脈から詰まりかけている冠動脈に脇道が伸びてきたりすることが理由だろうと考えられています。


胸の苦しみは心筋梗塞の前兆
 心筋梗塞で倒れる前に、息が詰まるとか心臓を木の板で押し潰されるような痛みや息苦しさ、もしくは左の肩から腕にかけて痺れを感じることもあります。これらは狭心症によって引き起こされる症状の1例で、心筋梗塞の前兆とも言えます。

狭心症は見逃されやすい
 心筋梗塞になる前に、血管が完全に詰まっていない狭心症になっていることが少なくありません。しかし、狭心症の症状は、激しい痛みもなく、数十秒から長くても数分で沈静化します。そのため、胸の痛みを軽く捉え、病院にゆかないまま病状が悪化してしまい、心筋梗塞を起こしてから病気に気がつく人が殆どです。逆に考えれば、心筋梗塞に関する知識を少しでも持っていれば、狭心症の症状があった時点で発症を防ぐことも難しくはないということになります。

狭心症は心筋梗塞注意報

 生命に関わる心筋梗塞にまで進行するのを防ぐのは、狭心症の段階で早期に発見し、治療と生活習慣の改善を行なうことです。心筋梗塞が発症する前に狭心症の検査や治療をそっかり行なっておけば、進行を食い止めたり有効な治療を行なうことができるからです。そして、狭心症になると、下記で触れるような自覚症状が起こります。冠動脈の動脈硬化が原因となっている狭心症は、労作性狭心症とも言われ、急いで歩く、階段を上る、重い荷物を運ぶ、運動するなど何らかの労作に伴って、主に胸に痛みが出るのが特徴です(なお、胸の痛みと言っても、チクチクする、ズキズキするなどの痛みは、神経痛や筋肉痛、肺の病気、食道炎、胃炎など別の病気の可能性があります)。狭心症の痛みは、安静にしていると数分から10数分で治まることが多く、初期の頃は受診せずにやり過ごしてしまいがちです。しかし、症状が月に何度も出る頃には病状が進行している場合が多いので、気になる症状があった場合は直ぐに受診するようにしましょう。30分以上痛みが治まらないような場合は急性心筋梗塞の可能性があります。なお、高齢であったり糖尿病であれば、痛みを感じる神経の働きが悪くなるため、狭心症の症状を自覚できない場合もあるので注意が必要です。


参考:狭心症の自覚症状
  • どんな症状?
     胸の中央が締付けられたり圧迫されるような痛み。喉や下顎、肩、背中が痛むことも

  • どんな時に?
     坂道や階段を登るとか家事をするなど軽く息があがる程度の運動をした時。早朝や深夜などに起きるのは異型狭心症

  • どのくらい続く?
     通常4〜5分、長くても15分程度。30分以上続く痛みは心筋梗塞が疑われる

参考:不整脈と言われたら?
 不整脈には大きく分けて、(1)脈拍が異常に遅い(1分間の脈拍が50回未満)、(2)脈拍が異常に速い(1分間の脈拍が100回以上)、(3)脈拍が飛んだりリズムが不規則といった3つのタイプがあります。不整脈には心臓の病気が原因で起こるものの他に、加齢や体質的なものが原因で起こる場合もあります。ホルター心電図(24時間心電図)検査などで詳しく調べて治療が必要かどうか分かる場合もあります。動悸や脈拍の乱れが見られた時は迷わず医師に相談しましょう。

心筋梗塞の後遺症

 心筋梗塞を一度起こすと、その死亡率は約30%と言われています。約30%と言われているというのは、病院にたどり着く前に心臓が止まってしまういわゆる突然死を起こし、原因が特定できない人の中に、かなりの割合で心筋梗塞の人が含まれているからです。CCUといわれる冠動脈集中治療室のある病院では、心筋梗塞の死亡率は約5〜10%ですが、ここ数年これ以上は改善できていません。その一方、胸の痛みなどの症状が起こってから直ぐに病院に行き、冠動脈の詰まった場所をカテーテル治療で開通させることに成功した患者は、最近では1週間以内に退院が可能で、その後の生活にも殆ど影響がありません。そうかと思えば、上記のように死亡する人も多く、また、生命が助かっても心臓の細胞が死んでしまう壊死の範囲が広い患者は、たとえ退院できても、その後に様々な合併症が起こる可能性があります。その合併症の代表的なものは心不全と不整脈です。心不全とは、心筋梗塞により心臓の細胞の一部が死んでしまい、心臓のポンプ作用が衰えるために全身の臓器に充分な量の血液を送れなくなってしまうことを言います。代表的な症状は息切れで、今まで問題なく昇れていた階段を昇るのに、息切れのために途中で休まなくてはならないといったことが起こります。状態がひどいと、食事をするだけで疲れてしまい、食欲もなくなってしまいます。夜間に急に呼吸困難になり肺の中に水が溜まってしまう急性心不全を起こし、入退院を繰り返す人もいます。一方の不整脈も、心筋梗塞後の患者の重大な合併症であり、心室細動と言って心臓が止まったと同じ状態となる不整脈を起こして亡くなる人もいます。最近病院内を始め色々な場所においてある自動体外式除細動器(AED)はこの心室細動を直す機械です。心室細動を起こす可能性が高い患者には、予め植え込み型除細動器という特殊なタイプのペースメーカーが植え込まれます。
参考:歯周病と心筋梗塞

 心筋梗塞とは何らかの異変によって心臓に血液を送る血管がつまりその筋肉が壊死し、最悪の場合命を失う恐ろしい病気です。主な原因は動脈硬化で、長年の喫煙や高カロリーの食事などによる生活習慣によって動脈硬化を起こします。ところで、最近の研究によると、心筋梗塞になった人の死因となった血管の中から歯周病菌が発見さたということです。

 歯周病とは、歯と歯茎の間にある溝すなわち歯周ポケットで歯周病菌が繁殖、歯茎に炎症が起きる病気で、日本人の約7割が患っている国民病の一つですが、何と重度の歯周病を患っていると心筋梗塞になるリスクが高まるというのです。そこには歯周病菌の驚くべき働きが関係しているのです。それというのは、歯磨き不足などがキッカケとなり、歯周ポケットに歯周病菌が溜まり始めます。そして、その毒素で歯茎が破壊され、歯周ポケットが徐々に深くなり、出血を伴うようになります。さらにこの状態を放置すると、口臭が発生するなどの症状となって現われます。ここまで進行すると、歯周病菌の一部はリンパ管を経て血管の中に侵入してしまうのです。もちろん血管に入った歯周病菌の大部分は白血球によって退治されますが、ところが、一部の歯周病菌は白血球から逃れられる性質を持っているのです。その性質とは、歯周病菌が血小板に入り込むというものです。しかも歯周病菌が血管の中に入り込むと、血小板は異常を起こして互いに集まり、固まりやすくなる。すなわち、歯周病菌が入ることで血小板は簡単に血栓を作ってしまうのです。歯周病を長年放置すると、この歯周病菌が入り込んだ血小板が体内で増加して全身の血管をめぐり、最後に流れ着いた場所が心臓だったということになります。そして、長年の生活習慣から動脈硬化が起こっていた場所に血栓となって次々と付着し、血管を完全に塞いで心筋梗塞を引き起こしてしまうのだと考えられています。さらに、歯周病は2o以内であれば健康な状態です。これが3oになると、歯周ポケットの中で菌が増殖し炎症を起こしている状態、つまり初期の歯周病になっていると診断されます。さらに深さが5oを超えると、中程度の歯周病と診断されます。そしてこの段階になると、増えた菌がリンパ管から血液に流れ込み、血栓を作り始める危険性があるのです。
 多くの人々は毎日歯を磨いています。そして、年齢を重ねると歯周病や口臭を予防するために気をつけて磨いているはずなのに、何故歯周病になってしまうのでしょうか? 歯を磨くと、歯茎から血が出ませんか? 口臭がひどいと指摘されたことはありませんか? 歯周病は口の中だけの病気と思い込んでいませんか? 歯周病菌は、歯周ポケットが浅いうちは歯磨きで掻き出せますが、歯周ポケットが深くなると、歯ブラシが届かなくなってしまうのです。つまり、歯周病が悪化したら専門医の治療なしでは治らないのです。だからこそ、口臭や歯茎の出血に気づいたら、迷わず歯科医院を受診し治療を受けることが大切です。

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【2】心筋梗塞の原因とその治療法

心筋梗塞の原因


 心筋梗塞は心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈に血栓が詰まる病気で、その原因の殆どが動脈硬化です。動脈硬化は、血管の内側にコレステロールが付いて血管の弾力がなくなり、硬くもろくなっている状態で、厄介なことに痛みなどはないため、気づかないことが多いのです。昔は心筋梗塞で死亡する日本人はそれほど多くなかったのですが、最近は食事の欧米化の影響などから欧米人と変わらないぐらい増えているのが実情です。高齢で肥満や高血圧があるほどリスクは心筋梗塞の高いのですが、喫煙者では若くても動脈硬化が進んでいる場合があるので、特に注意が必要です。
心臓


心筋梗塞を起こす3大要因
  • 動脈硬化(血管の老化)
  • 肥満
  • 高血圧
心筋梗塞は早朝が危険
 朝の6時〜8時と夜の20時〜22時に心筋梗塞になりやすいというデータがあるそうです。また、温かい部屋から寒い外に出た時、お風呂やトイレなど気温の寒暖差が激しい場所では心臓に負担がかかり、発症しやすいとも言われています。

心筋梗塞を引き起こす危険因子
  • 加齢
     動脈硬化は血管の老化現象。40代に近づいたら注意が必要です。

  • 肥満
     内蔵型肥満(メタボ)は特に注意が必要です。インスリンの働きが悪くなり、代謝のバランスが崩れて動脈硬化の進行が早まります。

  • 高血圧
     血圧が高いと血管の壁に大きな圧力がかかります。そのため、血管壁に負担がかかり、傷つきやすくなることで動脈硬化の進行が早まります。

  • 脂質異常症
     心筋梗塞を発症した患者の約50%は脂質異常症主を患っています。動脈を流れる血液に悪玉コレステロールは多いと、動脈壁に粥状の塊ができて内腔が狭くなる状態(粥状硬化)になりやすくなります。普段の食生活に注意しましょう。

  • 高血糖
     心筋梗塞を発症した患者の約40%が糖尿病を患っています。本来はエネルギーとして消費されるはずの血中のブドウ糖が血中に溢れた結果、血管内の壁を傷つけるために動脈硬化を引き起こします。

  • ストレス
     ストレスにより心身が緊張したり興奮すると、交感神経が働き、心拍数や血圧を上昇させ結果動脈硬化を進行させてしまいます。

  • 偏った食生活
     暴飲暴食が肥満の原因になることは当然のことです。高血圧の改善は減塩が基本です。脂質を摂るなら、肉や乳製品よりも魚を食べることです。魚には悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やし、動脈硬化の進行を防いでくれます。

  • 喫煙
     喫煙者は吸わない人に比べて心筋梗塞や狭心症などの虚血性疾患で亡くなる人が男性で2.5倍、女性では3・3倍気にもなります。

  • 運動不足
     運動不足は肥満の原因であり、さらに肥満になると高血圧症引き起こす原因になります。ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、ストレス解消だけでなく、肥満や糖尿病、高血圧の予防にもつながります。

ストレスは心筋梗塞の原因!?
 ストレスは気づかないうちに身体に様々な影響を及ぼします。心筋梗塞もストレスが大きな危険因子となるとされています。心筋梗塞は心臓を取り巻く冠動脈の血流障害が長く続いて心筋の細胞が壊死した状態です。一方、狭心症は冠動脈の血流障害により一過性の胸痛を訴えるもので、この二つを虚血性心疾患と呼んでいます。そして、冠動脈の血流障害は、体内の活性酸素により酸化したLDLコレステロールが血管壁に入り込み粥状腫(アテローマ)を作ることで血管腔を狭めて起こりますが、その粥状腫が破れると血小板が集まって凝固し、血管腔を塞げば心筋梗塞になります。なお、これと同様の血液凝固が脳の血管で起きたものが脳梗塞です。このように、心筋梗塞の危険因子には高コレステロール値や血圧上昇、喫煙、血糖値の上昇、運動不足、ストレスなどが上げられます。ある調査では、ある市役所の職員で心筋梗塞になった人と健康な人を比較すると、心筋梗塞患者ははるかに長時間勤務をしていたことが分かったそうです。また別の調査では、心臓発作が起こる前の数ヶ月間に精神的衝撃を与える生活上の変化が高比率で現われていることが分かったそうです。

心筋梗塞にて行われる治療

 心筋梗塞の治療には、症状が出ている場合は、原因となる冠動脈の閉塞を取り除くという目的で行われるものと、一方、症状が現われていないものの、動脈硬化などにより冠動脈の狭窄部位を治療することで将来的に症状が現われないようにするという予防という意味合いもあります。そして、心筋梗塞の治療法としては、薬物療法、カテーテル療法、手術療法があります。発症からの時間や症状の度合い、患者の体力などにより選択されます。
薬物療法

 心筋梗塞の初期段階や狭心症の治療として用いられることが多いのが薬物療法です。冠動脈の血管を広げる、血管に詰まっている血栓を溶かす、心臓への負担を減らすなどの目的とする薬が使用され、治療と共に予防法としても利用されます。


硝酸薬
 ニトログリセリンやニトロペンなどがあり、血管を拡張させる効果があり、冠動脈自体を広げる直接的な効果と、全身の血管を広げることで心臓への負担を減らすという効果も期待できます。狭心症の発作を抑えるのに利用されることが多く、舌下錠(舌の下にて溶かして吸収させる薬)やスプレータイプのものもあります。

βブロッカー(ベータ遮断薬)
 交感神経のβ受容体の働きを遮断することで心臓の動きを減らすことができ、必要とする酸素量が減ることから心筋梗塞の重篤な状態を防ぐことができます。

カルシウムブロッカー(カルシウム拮抗薬)
 カルシウムには筋肉を収縮させるという作用があるので、血管の筋肉にカルシウムが流入することで血管が収縮してしまいます。しかし、カルシウムブロッカーを使用することでカルシウムの流入を防ぐことができ、血管収縮を防ぎ結果的に血管を拡張することができます。特に血管の攣縮(痙攣して縮小してしまう)を抑えるのに効果的です。

抗血小板剤(アスピリン、パナルジン)
 血液が本来持っている血栓を溶かす力(線溶)の働きを助ける作用のある薬であり、治療というよりは予防に多く用いられます。
血栓溶解剤(ウロキナーゼ、t−PA:アルテプラーゼ、チソキナーゼ)
 直接的に血栓を溶かす作用のある薬です。

カテーテル療法

 冠動脈の狭窄や閉塞部分に対してカテーテルを使用して障害を取り除き、血流を回復させるのがカテーテル療法であり、冠動脈形成術とも呼ばれます。日本の心筋梗塞の治療としては最も行なわれている療法であり、以前は治療部位での再発が懸念されましたが、技術の進歩により再発率も低下し、負担も少なく効果的な治療法とされております。カテーテルは局部麻酔をした脚の付け根や腕の動脈から挿入され、レントゲンを使用し、造影剤により血管の狭窄、閉塞部位を確認しながら治療が行なわれます。血栓を直接カテーテルにて吸引する手法と共に血管の狭窄部位を広げる手法が同時に行なわれます。


バルーン治療
 カテーテルの先にバルーン(風船)をつけ、狭窄の起きている箇所でバルーンを膨らますことで、狭窄の起きた血管を拡張させる手法です。バルーンを数10秒広げておくことで血管の拡張が期待できますが、時間経過により再発する可能性も考えられます。

ステント治療
 ステントと言われる金属製の網状になっている筒を血管の狭窄部位にて広げることで血管を拡張させるという方法です。ステントはそのまま狭窄が起きた部位に留めておいておくことで再発を防ぐことができます。近年狭窄などによる再発(再狭窄)を防ぐ効果が高い薬剤溶出ステントが日本でも使用することができるようになりました。ステントに血管の収縮を抑制する薬剤がコーティングされており、狭窄の起きた血管に直接薬剤が時間をかけて染み込むことで再狭窄を防ぐことが期待できます。

手術療法

 外科手術を行い冠動脈の狭窄・閉塞から心筋の壊死を防ぐ手法で、冠動脈バイパス手術と呼ばれます。冠動脈は心臓を這うように張り巡らされておりますが、大元となる太い血管は3本とされています。3本のうち2本以上閉塞が起きている箇所が広範囲に渡る場合、またはカテーテル療法を行なっても再発の可能性が高い場合などにバイパス手術が行なわれることが多くあります。しかし、近年ではカテーテル療法の技術向上に伴い、再発率も低下していることから、手術療法ではなくカテーテル療法にて充分に回復が見込める症例が増えています。


冠動脈バイパス手術
 心筋梗塞は冠動脈が閉塞することで閉塞箇所から先に血液が流れ無くなり、その先の血管から酸素供給を受けている心筋が壊死してしまうことで心臓が障害を受けます。バイパス手術とは、その名の通り閉塞箇所をバイパス(迂回させる)させて先の血管に血液の供給を続けられるようにする手術です。バイパスに使われる血管は患者の胸や脚、腕などの健康な血管を採取であり、採取した血管を冠動脈にある閉塞箇所の前後を繋ぎ迂回させるという手術になります。

カテーテル療法から冠動脈バイパス手術へ
 カテーテル療法にて狭窄部位の回復を図っても思ったように改善されない場合に冠動脈バイパス手術が行なわれる場合があります。閉塞箇所が多い場合には多岐バイパス(複数箇所で行われるバイパス)も行なわれることがあります。

手術の部類としてはスタンダード
 外科手術ですのでカテーテル療法とは違い、全身麻酔を行い胸部を開き、直接心臓へと処置を施します。症状が落ち着いている状態においては、患者の体力及びカテーテル療法の検討などを行ない、手術を行なうかどうか患者と充分に検討した後に手術が行なわれることになります。ただし、心筋梗塞の症状が現れている段階では、1分1秒を争う状態なので、即手術を行なうこともあります。なお、心臓に関する手術としては歴史も長く、一般的に行なわれており、成功率も高く、再発率は低いとされていますが、しかしながら、発症から時間が経っている場合で心筋の壊死が広範囲に渡る場合には、バイパスを行なっても壊死は回復しないので、予防・発作時の対応が重要になってくるのです。

急性心筋梗塞治療の最前線
治療のゴールデンタイムは6時間

 急性心筋梗塞とは、心臓に栄養と酸素を補給している冠動脈が急に詰まり、血流がその先に流れないことから心臓の一部の筋肉が死んでしまう(壊死)病気で、急死することもあります。症状としては30分以上続く胸痛が挙げられますが、同じ胸痛でも狭心症の場合は5〜15分くらいで、胸痛の持続時間が急性心筋梗塞の重要な目安になります。
 心臓の筋肉には再生能力がないため、急性心筋梗塞の第一の治療は、詰まった冠動脈を再び開通させて(再灌流療法)壊死を最小限にとどめることにあります。再開通は早ければ早いほどよく、急性心筋梗塞の治療のゴールデンタイム(心臓のダメージを少なくすることができる時間)は6時間と言われています。それを過ぎても12時間以内であれば再開通することで効果があります。ちなみに、WHOの調査では、急性心筋梗塞による死亡例は80%が24時間以内で、その3分の2は病院到着前です。ちなみに、専門施設のある病院到着後の死亡率は5〜10%です。急性心筋梗塞の疑いがある時は一刻も早く医療機関に受診する必要があるので、緊急の場合は救急車を呼びましょう。
最新の治療法:血栓溶解薬+風船療法+ステント

 治療法には、詰まった血栓を血栓溶解薬(tPAなど)で溶かす方法と、血管内に細い管(カテーテル)を入れて詰まった部位を風船(バルーン)でふくらませる風船療法(PTCAなどと呼ばれる)があります。血栓溶解薬の静脈注射による再開通率は50〜70%程度ですが、再閉塞しやすいことが知られています。この治療法は簡便ですが、出血性疾患、たとえば胃潰瘍などがあると、止血していた血栓まで溶かすため、使用には充分配慮する必要があります。風船療法の再開通成功率は約95%と高いのですが、心臓カテーテル室を持った施設でなければ行なうことができません。
 次に、いま行なわれている最新の治療法を紹介します。急性心筋梗塞で循環器専門医のいる病院に搬送されてきた患者は、到着すると直ちに血栓溶解薬を静脈注射して心臓カテーテル室に送られ、溶けているかどうかを確認するため血管造影を行ないます。閉塞部位が見つかると、そこを風船療法で再開通した後、その部位にステントというステンレススチールの金網の筒のような補強具を留置します。風船療法だけでは再狭窄することが多いため、今日広く行なわれるようになった方法です。ステントは風船療法の際60〜70%で使用されています。さらに再閉塞を防ぐために抗血小板薬を約一カ月服用します。こうした治療が行なわれるようになって再狭窄率は低下し、治療成績は向上しています。
再狭窄予防研究の最前線

 ステントを使用しても、なお20〜30%の再狭窄があると言われています。そこで研究の最前線では様々な試みが行なわれています。ステントに薬剤を付着させたり血管内から放射線を照射して再狭窄を防ぐ研究、或はステントを生体に吸収される物質で作り、体内にステントを残さない研究も行なわれています。


全国の心筋梗塞の治療実績・手術件数 - 病院口コミ検索Caloo・カルー
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心筋梗塞のリハビリテーション

 心筋梗塞や狭心症の再発予防及び早期回復のためには、症状によっては生活に適度な有酸素運動を取り入れることも有効です。
 心筋梗塞を一度でも起こしたということは、心臓のポンプの力が衰えてしまったということです。その重症度によって程度は様々ですが、これを譬えれば、これまで4基のエンジンで飛んでいたジェット機が3基のエンジンになったり、ひどい場合には1基のエンジンで飛ばなければならなかったりするような状態だと言ったらよいでしょう。1基のエンジンで飛ぶためには当然ながらスピードを落とさなければならず、また、重量も減らさなければなりません。人間で言えば歩く速度を落としたり、運動量を落とすことにより無理のない生活をしなければなりません。そうでないと、飛行機なら墜落、人間で言えば心不全や不整脈を起こして死に繋がってしまうからです。そんなことにならないようにする一つの重要な手段が心筋梗塞後のリハビリテーションです。心筋梗塞後のリハビリテーションは、(1)入院した時から退院までの急性期リハビリテーション、(2)退院後に社会復帰をするまでの回復期リハビリテーション、それ以降は、(3)再発予防のためにほぼ一生続く維持期リハビリテーションにそれぞれ分けられます。通常は、入院当日はベッドの上に安静になり、心筋梗塞の程度により歩行開始や入浴開始の時期が決まり、これもリハビリテーションの一環となります。短い人で1週間、平均約2週間で退院となりますが、数カ月もの入院期間となる患者もいます。退院後は保険診療で心臓リハビリテーションが認めらており、週に1〜3回ほど病院に通い、自転車を漕ぐリハビリテーションなどをするプログラムを持っている病院もあります。徐々に運動量を増やしてゆき、心臓機能の改善や危険因子の軽減に効果を発揮します。また、退院時に行なう運動負荷試験で運動量の設定を行ない、リハビリテーションを個人で行なう方法もありますが、何れにせよ、適切な運動の継続は予後の改善に有効であることが知られています。もちろん入院前より足腰が悪かったりするために歩行をすることができない患者もいますが、そういう人に対しては、心不全や不整脈を起こさずに入院前の生活状態まで回復させることがリハビリテーションということになります。


心臓リハビリテーション
 心筋梗塞や狭心症の発症時や治療直後は、絶対安静のためにベッドの上で過ごす日々が続きます。その生活に身体が慣れてしまった後、発症前ないし手術前の環境に急激に戻ろうとすると、思うように社会生活が営めないばかりか、身体や心臓に非常に大きい負担がかかってしまい、心筋梗塞及び狭心症が再発してしまう可能性もあります。これを防ぎ、安全かつスムーズに日常生活へ復帰するために、病院の循環器内科やリハビリテーション科などで行なわれているのが心臓リハビリテーションです。心臓リハビリテーションは、心筋梗塞や狭心症を発症した人やその他の心臓手術をした人を対象に行なわれるリハビリテーションの1つです。心臓リハビリテーションは、短期的には手術や発症によって衰えた身体機能を回復し社会生活を取り戻すことを目的とし、長期的には生涯に渡って心筋梗塞及び狭心症の再発及び発症を防ぎ、身体の健康を保つなど生活の質が向上することを目的としています。心筋梗塞及び狭心症発症後のリハビリには多少のリスクもありますが、再発を防げるなどメリットの方が大きく、医師などによる万全のケアの下でリハビリが行われています。

有酸素運動で将来の心筋梗塞及び狭心症を防ぐ
 心臓リハビリテーションは、歩行やエアロバイク、水泳など有酸素運動を中心に行なわれます。心臓に強い負担をかける無酸素運動に比べて、有酸素運動は身体に優しく、また、長時間継続して行なうことができます。リハビリテーションの際には、酸素消費量などの計測データや医師による問診などを参考に個々の人に合った運動量が設定されます。従って、焦らずに持続させることが大切となります。これらの運動は生涯に渡って行なうことで、心筋梗塞及び狭心症のみならず、様々な生活習慣病の予防にも?がります。

心筋梗塞患者に対する予後とその管理

 軽症心筋梗塞後の患者には特に特別な留意点はなく、運動、温度変化などによる急激な血圧の上昇などに留意したり、疲れすぎや脱水の予防をしたりするなどの一般的な注意をすれば問題はありません。しかし、中等症から重症の心筋梗塞後の患者に対しては、少しの運動やリハビリテーションなどでも心不全や致命的な不整脈を引き起こす可能性があるため、主治医と相談の上、運動及びリハビリテーションの程度を決定する必要があります。重症な心筋梗塞後の患者の場合、入浴のみで心不全や不整脈を起こす場合もあるので、入浴に関しては、40度以上の熱いお湯は避けて、湯船に浸かるのは心臓の高さまでとし、長時間の入浴は避けた方がよいとされています。また、重症な患者の場合、水分摂取の管理も非常に重要です。水分の摂り過ぎは心不全を引き起こしますが、夏などには脱水の予防のためにもある程度の水分摂取が必要となるため、医師と相談の上、必要水分摂取量を決めておく必要があり、体重の増減のチェックも必要となります。また、心筋梗塞後の患者の場合、二次予防と言って再発予防のためにほぼ全員が薬を飲む必要があります。急性心筋梗塞で入院し、カテーテル治療を受けて間もない患者は、血液をさらさらにする薬を絶対にかかせない時期があります。他にも心臓に関する多くの薬は非常に重要なものなので、忘れずに決まった時間にきちんと服薬をすること、また、服用できないような状態が生じた場合には、勝手に服用を中止しないで医師に相談することが肝要です。

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【3】心筋梗塞の予防のために

 心筋梗塞は予防できます。本節では心筋梗塞予防に効果的な方法について取り上げ解説しました。
心筋梗塞だって予防できる! 

 心筋梗塞は突然発症し、生命を落とすこともある恐ろしい病気です。しかし、心筋梗塞を発症する前に身体は幾つも信号を送っています。あなたはその信号を見逃していませんか? 近年、食生活の変化などにより虚血性心疾患を発症する平均年齢が下がって来ています。20代、30代のうちから、食生活の見直しと適度な運動で体重を減らし、禁煙しましょう。
虚血性心疾患が増えている

 現在、日本人の死因で2番目に多いのもが心臓病です。ひと口に心臓病と言っても様々なタイプがあります。中には、生まれつき心臓の機能に問題がある場合や、加齢などにより心臓そのものの働きが弱くなって起きる病気もあります。しかし、最近増えているのは、生活習慣と関係が深い虚血性心疾患です。これは、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈の流れが悪くなって心筋に充分な酸素や栄養が行き渡らなくなる病気です。狭心症や心筋梗塞がこれに当たり、進行の程度によって病名が異なります。
 ます狭心症は、冠動脈が狭くなっているものの、血流はまだ保たれている段階で、運動や精神的刺激などで心臓に負担がかかった時に一時的な血液不足に陥るものです。これに対し完全に冠動脈が詰まってしまったのもが心筋梗塞で、血流が途絶えることにより心筋の一部が壊死して、最悪の場合は生命を落とすことになります。なお、狭心症の中には、動脈硬化とは関係なく、血管の痙攣が原因で起きる異型狭心症もあり、これは日本人に多く、20〜30代でも見られます。
心筋梗塞の予防

 予防は、一次予防と言って心筋梗塞を起こすことを予防するものと、二次予防と言って一度心筋梗塞を起こしてしまった人が再発をするのを予防するという2つの概念に分けられますが、その両者とも基本的には動脈硬化の進展を遅らせることを目的にしています。人間は誰しも加齢より血管の壁に滓が溜まってくる、いわゆる動脈硬化を起こします。その程度は持って生まれた遺伝的な要素にも影響をされますが、危険因子といわれる高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、喫煙、肥満によって増強されます。また、その危険因子をたくさん持っている人ほど動脈硬化が進みやすいとされています。これは虚血性心疾患と言われる狭心症や心筋梗塞のみならず、動脈硬化によって起こってくる脳梗塞や、足の血管が細くなってくる閉塞性動脈硬化症にも共通な事柄です。どの危険因子に関しても、それをなくしたりコントロールしたりする基本は、生活習慣の改善で食事療法と運動療法が重要であるとされます。高血圧にはもちろん塩分が関与しており、日本人は1日の塩分摂取量は12gと言われていますが、高血圧学会のガイドラインでは6g以下にすることが推奨されています。中南米のインデイアンであるヤノマモ族やエスキモーといった塩分を殆ど摂らない民族では、高血圧の患者は殆どいないと言われています。糖尿病の食事は基本的にはカロリー制限ですが、その人の標準体重や仕事量によって推奨のカロリーが決まっています。脂質異常症には高LDLコレステロール血症や高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症が含まれます。高LDLコレステロール血症の人は肉類や卵といったLDLコレステロールが高い食品の摂取を控える必要があり、高中性脂肪血症の人はカロリーの摂取を控える必要があります。また、アルコールもカロリーがかなりあるため、多飲は中性脂肪を増加させます。HDLコレステロールが低いことも危険因子となりますが、HDLコレステロールは野菜や果物の摂取で上昇するものの、中々食事だけで改善させることは難しいと言われています。また、運動は危険因子の軽減に非常に有効で、体重を減らすことのみならず、血圧を下げ、糖尿病の原因である高血糖を改善させ、脂質異常症も改善させることができます。また、食事での改善が難しい HDLコレステロールも上昇させることができます。上記の危険因子を減らそうとする食事や運動は自然と肥満の解消にも繋がりますが、標準体重までの減量も非常に重要です。禁煙も非常に重要なことで、比較的若年者から発症すると言われている冠動脈が痙攣するタイプの冠攣縮性狭心症や、冠攣縮によって起こる心筋梗塞には喫煙が大きく関わっています。しかし、食事や運動のみで危険因子を取り除くことは中々難しく、それを補うために薬の服用が大切となります。食事や運動で危険因子が取り除けない場合には、無理にそれのみで頑張るのではなく、早めに薬をのみ始めることを考えなければいけません。そうしないと危険因子を抱えながら長い間が過ぎてしまい、心筋梗塞の発症に?がってしまうこともあるからです。なお、狭心症及び心筋梗塞には、原因ではないものの誘因と言って、いわゆる引き金のようなことがよく見られますが、たとえば疲れや睡眠不足、急な温度変化、脱水などがそれに当たります。
動脈硬化に?がる5つの危険因子

 それでは、なぜこうした虚血性心疾患が生活習慣と関係が深いのでしょうか? それは、この病気の原因のひとつとして動脈硬化が挙げられるからです。動脈硬化が進行すると、血管の内壁にコレステロールなど脂質の塊が付着します。虚血性心疾患では、この脂質の塊が大きくなって血液の通り道をせばめます。また、この脂質の塊が破裂して出来た血栓によって血管が詰まる場合もあります。動脈硬化は加齢により誰にでも見られますが、進行を促進する5大危険因子と言われるのもが高血圧と脂質異常症(高コレステロール血症)、糖尿病、喫煙、肥満で、こうした危険因子が多ければ多いほど心疾患も起こしやすくなるということです。危険因子の殆どは食生活などの生活習慣によって生じるものですから、虚血性心疾患の予防の基本はまさに生活習慣の改善にあるといえるでしょう。


■冠動脈の動脈硬化を進める危険因子
5大危険因子
  • 高血圧:収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上
  • 脂質異常症:LDLコレステロール140mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満、中性脂肪150mg/dl以上
  • 糖尿病:空腹時血糖126mg/dl以上、食後血糖値200mg/dl以上
  • 喫煙:タバコを吸わない人に比べ、虚血性心疾患で亡くなる確率は1.7倍
  • 肥満:BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が25以上
その他の危険因子
  • 飲酒
  • ストレス
  • 真面目、せっかち、負けず嫌いなどの性格(※ストレスを溜め込むことに?がる)

心臓の健康管理には定期的に心電図を

 心筋梗塞を予防するためには、高血圧や糖尿病をきちんと治療し、食事や運動など生活習慣を見直して喫煙者は禁煙するなど動脈硬化を進める危険因子を取り除くことが必要です。また、健康診断などで定期的に心電図検査を受けることも大切です。心電図に変化が見られた時は、気がつかないうちに心筋梗塞を起こしていたという場合もあります。ただし心電図検査だけでは、症状が出ていない時には狭心症かどうか分からない場合もあります。そのため、自覚症状がある人は、運動負荷をかけて心電図の変化を調べるトレッドミル検査や心臓の超音波検査などを受けるとよいでしょう。次に狭心症や心筋梗塞がより強く疑われる場合は、心臓カテーテル検査を行なうこともあります。手首の動脈から細いカテーテルを冠動脈に入れ、そこから造影剤を注入して冠動脈流を撮影します。これは冠動脈の狭窄の有無や程度を調べて狭心症や心筋梗塞の治療の方針を決めるための検査で、2泊3日で入院して検査を受けることになります。最近は入院せずに外来でCT検査で冠動脈の状態を調べることもできるようになりました。なお、治療法には薬物治療やカテーテル治療、心臓バイパス手術などがあります。カテーテル治療は、冠動脈の狭くなっているところで風船(バルーン)を膨らませて血管を広げ、そこにステントと呼ばれる金属のコイルを入れ、冠動脈の血液の流れをよくするものです。手術と比べて身体への負担も少なく、4泊5日程度の入院で可能です。最後に、心筋梗塞になってしまった時の対応についてですが、冠動脈がいったん詰まっても、早期に治療を開始すれば、心臓のダメージを最小限に抑えることができます。痛みがあった時は翌日まで我慢せず、夜間や休日でも直ぐに受診するようにしましょう。
虚血性心疾患を防ぐ生活習慣


食生活
 炭水化物や蛋白質、脂肪、ビタミン&ミネラルなどバランスのよい食事を。自分に見合った適切な摂取エネルギー量を保ちましょう(※BMI標準値=身長(m)×身長(m)×22×活動量、目安は30〜35)。調味料にも気をつけて、1日に塩分8g以下、糖分15g以下、油15cc以下を目安にしましょう。

運動
 ウォーキングなどの有酸素運動を。狭心症や心筋梗塞を起こしたことがある人も、医師に相談した上で安全な運動習慣を身につけましょう。

タバコ
 タバコを吸うと血管が細くなります。禁煙しましょう。
飲酒
 週に2〜3回程度に。ビール350mlまたは日本酒1合、ワイングラス1杯が1日の飲酒量の目安にしましょう。
水分補給
 朝起きた時は体内の水分量が減り、血液も濃くなっています。まずはコップ1杯の水を飲んでから活動開始するように心懸けましょう。

心筋梗塞の再発予防のために

 狭心症や心筋梗塞の入院治療後も、定期的な検査と治療と生活改善が大切になります。
退院後の検査と治療

 心筋梗塞や狭心症は再発の危険が高い病気です。特に心筋梗塞は治療後1年以内に再発することが多く、狭心症の症状が出たら直ぐに心筋梗塞に移行する恐れがあります。従って、その場合は直ちに受診及び治療が必要になります。一方、日常生活では、再発予防のために生活習慣の改善や薬物療法や心臓リハビリテーションなどを行ない、狭心症や心臓病の危険因子を取り除く努力をする必要があります。
再発予防のための治療

 心筋梗塞や狭心症は、糖尿病や脂質異常症、高血圧症、肥満、喫煙などが危険因子です。 狭心症や心筋梗塞の再発を予防するためには、生活習慣を改善した上で、以下に挙げるような治療を行ないます。


薬物療法
 心筋梗塞の再発予防のための薬物療法では生活習慣病を治療する薬や血管を詰まりにくくする薬などが使われます。なお、それに対して狭心症の治療には血管を広げる薬や心臓の負担を下げる薬などが使用されます。

食事指導
 コレステロールのみが高い人は、キノコや海藻など水溶性の食物繊維を多く摂るようにします。中性脂肪のみが高く肥満の人は、エネルギー摂取を押さえ、野菜を多く食べます。それに加えて鯖やブリなどの青魚も積極的に摂るようにします。また、果物やアルコールは控えめにします。なお、コレステロールと中性脂肪の両方とも高い場合は、両方の注意を踏まえて食事を摂るように心懸けましょう。
禁煙指導
 タバコは動脈硬化を促進させ、再発の危険を高めるので必ず禁煙しましょう。
心筋梗塞の人が気をつけるべきポイント
  • 夏も冬も小まめに水分を補給し、脱水を避ける
  • 熱いお風呂に入らないようにする(38〜40℃が適温。5〜10分を目安に)
  • 便秘にならないようにする(力むと血圧が上昇)
  • 屋内&屋外で着衣を調整し、急激な温度差に注意する
  • ストレスを溜めず、適度な休息を取る

心筋梗塞の予防&早期発見のために

 心筋梗塞になる数週間前に狭心症の発作が起きていたケースが数多く見つかっています。狭心症の段階で充分な治療を受け、生活を節制しましょう。
 心筋梗塞では一般的に薬物の効かない激しい胸痛が30分以上続きます。胸痛以外では左肩や左手の痛み、歯痛や胃痛を感じることもありますし、また、冷汗や息切れ、動悸を伴うこともあります。ただし、必ずしもこれらの症状が当てはまらないこともあるので注意が必要です。特に高齢者や糖尿病の人は無症状の場合もあるので用心しなくてはいけません。発作が起こったら、安静にして救急車を呼びましょう。少しの遅れが生命に関わります。なお、過去の症例から心筋梗塞になる数週間前に狭心症の発作を引き起こしていたケースが数多く見つかっています。狭心症の段階で充分な治療を受け、生活を節制することをオススメします。


健康診断では特に気をつけるべきこと
  • 問診(生活習慣など)
     タバコを吸っている人や、家族に心筋梗塞及び狭心症の人がいる場合などは、それだけで狭心症や心筋梗塞のリスクが高くなります。

  • 体重及びBMI(体格指数)
     BMIが25以上で、内臓脂肪がたっぷりとついている人、高血圧症や脂質異常症、糖尿病がある人は肥満症の可能性があります。肥満症は心臓病の大きな危険因子です。

  • 血圧
     高血圧症は動脈硬化の危険因子です。現在140/90mmHg以上が高血圧症とされています。高血圧症は遺伝が原因の場合もありますが、肥満や食生活に関係していることも多いのです。他に合併症がある場合は基準はもっと厳しくなります。

  • 空腹時血糖値
     血糖値が高いことは狭心症や心筋梗塞のリスクとなります。

  • 心電図
     心電図は狭心症や心筋梗塞を診断する大きな手懸りとなります。ただし、健康診断で取っている心電図は安静時心電図と言わるもので、実際に狭心症を診断するためには運動負荷心電図や24時間心電図、運動負荷心筋シンチと言われるような特殊な検査が必要になります。

  • 胸部レントゲン
     狭心症や心筋梗塞を診断できるものではありませんが、これらにより生じた心不全などの診断に有効です。

心筋梗塞を予防する食事
心疾患と食事の関係

 今はこれから夏で、暑い日が続きますが、夏が過ぎて秋となり、冬になって寒くなるにつれ、心筋梗塞や狭心症を起こす人が増えてきます。こうした心疾患の予防に食事が大切な意味を持っています。
 心筋梗塞の患者数の多い欧米では、早くから食事との関係が重視され、その研究が続けられて来ました。最初に注目されたのはグリーンランドなど北方地域に暮らすイヌイットの人々の食生活です。急性心筋梗塞になる比率がデンマーク人の40%に対してイヌイットは僅か3%という具合で、魚類やアザラシなどを多く食べるイヌイットには急性心筋梗塞を起こす人が非常に少ないのです。調査の結果、イヌイットの人々の血液中の脂肪分には魚類に豊富に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多いことが分かりました。DHAやEPAと言えば、日本では脳の血流をよくする成分とされ、魚を食べると頭がよくなると盛んに宣伝されていますが、元々は心筋梗塞の予防効果で注目されたのです。一方、昔から魚をよく食べていたはずの日本でも近年になって心疾患の予防が重要なテーマとなっています。この30年間の死亡者数の推移をみると、脳卒中などの脳血管疾患は減少傾向にあるのに対し、心疾患は一時的に減少することはあっても全体として増加傾向にあるのです。その背景には、肉類など脂肪分の多い食事が日常化し、逆に魚を食べる人が減っていることが指摘されています。そのため、日本でも心疾患の予防を目的に食事を見直す動きがみられます。
魚食にみる心筋梗塞の予防効果

 2006年に厚生労働省の研究班が「魚食と心疾患との関係」についての報告を発表しました。これは、厚生労働省研究班による「多目的コホート研究」のひとつとして日本各地に住む40〜59歳の男女約4万人を対象に11年間に及ぶ追跡調査が実施されたもので、日本人の場合にも魚食による心疾患の予防効果が見られるのかどうかという点について長期に渡る調査を実施した結果です。その報告によると、魚を食べる量が最も多いグループ(週8回、1日当たり180gに相当)は、最も少ないグループ(週1回、1日当たり20gに相当)と比較して心疾患を起こすリスクが約40%も低いことが分かったと言います。特に心筋梗塞に限ると約55%もリスクが低い、つまり半分以下という結果になっています。そしてさらに、魚の栄養分のうちDHAとEPAの効果についての調査も行なわれましたが、その結果、DHAとEPAの摂取量が最も多いグループ(1日当たり2.1g)は、最も少ないグループ(1日当たり0.3g)と比較して心疾患のリスクが40%以上も低かったと言うのです。特に心筋梗塞のリスクは約65%も低下することが分かったそうです。DHAとEPAは脂肪酸の一種で、血小板が集まるのを防いだり、血液の粘りを和らげる働きを持っています。心筋梗塞は、血管内に出来る傷に血小板などが集まり、血栓を作ることから起こります。また、血液がドロドロ状態であるほど起こりやすくなります。DHAとEPAはまさにその2つの悪条件を緩和する働きがあるのです。この調査から、日本人の場合にも、魚を多く食べると心筋梗塞の予防効果があること、そして、その主役がDHAとEPAである可能性が高いことが判明したのです(※ただし、この調査は魚に含まれるDHAとEPAの効果を対象としたもので、サプリメントによる効果を検討したものではないことはお断わりしておきます)。
予防効果が注目される栄養素

 私たち日本人の栄養の指針となる「日本人の食事摂取基準」(※厚生労働省:なお、これは私たち日本人が毎日の食事から摂るべき栄養の基準(必要量)を定めたもので、栄養指導の基準ともなっています)が2005年に改定されましたが、その中で、今まで以上に多く摂取すべきものとして、(1)カルシウム、(2)カリウム、(3)食物繊維、(4)n-3系脂肪酸(DHA、EPA)の4つが選ばれていますが、実はこの4つとも、何れも心筋梗塞の予防に重要な栄養素なのです。たとえばカルシウムですが、これは心臓の筋肉(心筋)を動かすのに欠かせません。体内のカルシウムが不足すると、心臓を動かすために骨からカルシウムが奪われ、その結果、血液中のカルシウム・バランスが崩れて血栓が出来やすくなります。次のカリウムは、ナトリウムと一緒になって心臓の筋肉を動かす電気信号を生み出し、心臓の働きを調節する栄養素です。総じて日本人はナトリウム(塩分)を多く摂るため、カリウムとのバランスが崩れると、心臓の動きに悪影響を与えかねません。従来の「日本人の食事摂取基準」では、カリウムの基準量は1日2000mgとされ、多くの人がこの数値を満たしていました。なお、確かに日本人の平均的なカリウム摂取量は1日2400mg程度で、これは従来の基準は満たしていますが、改定された基準(3500mg)とはかなり差があります。しかしながら、2005年の改定では1日3500mgへと大幅にこの規準が増量されました。これほどカリウムが重視されたのは初めてのことです。さらに3つ目の食物繊維ですが、これは最近の研究から心筋梗塞のキッカケとなる血管の炎症を抑える効果が報告されています。それによると、食物繊維を最も多くとるグループ(1日22.36g)は、最も少ないグループ(1日10.22g)と比較してCRP濃度が63%も低いことが分かったそうですが、とにかくCRP濃度が高いと糖尿病のリスクも高まることから、食物繊維の摂取による心疾患や糖尿病の予防効果が期待されています。何れにせよ、体内で炎症などが起こるとC-反応性タンパク質(CRP)が増加することから、CRPは心筋梗塞や動脈硬化のマーカーとして注目されているのです。食物繊維をたくさん摂る人はCRP濃度が低く、それだけ心筋梗塞のリスクも低下するというわけです。最後のDHAとEPAは前述したので省略しますが、これら4つの栄養素が心筋梗塞の予防には非常に大切であることを知っておきましょう。
心筋梗塞を予防する栄養成分と食べ物

 心筋梗塞は毎日の食生活などの習慣で予防すること出来る心疾患です。血管中の血栓が原因となるので、血栓を作らないようにすることが大切です。血液をサラサラにする効果のある成分を積極的に摂るように心懸けましょう。


DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)
 DHAとEPAは細胞膜やホルモンを作る原料となる必須脂肪酸のひとつで、血栓を作りにくくし、動脈硬化を予防する働きを持っています。DHAは血液の粘度を下げて血液の流れをよくし、悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす働きに優れ、EPAは血小板が集まるのを防いで血液の粘りを和らげ、血液をサラサラにする働きに優れています。上でも述べたように、DHAやEPAを多く含む魚を食べると心筋梗塞になるリスクが減少することが2006年発表の厚生労働省研究班の調査で裏づけられています。DHAやEPAは、心疾患の他、脳血管障害や高脂血症、高血圧、アレルギー疾患などの予防にも有効であることが分かっています。
  • DHAやEPAを多く含む食品:
     アジ、イワシ、サンマ、サバ、鮭、マグロ(脂身)、ウナギ、ブリ、ニシン、ハマチ(養殖)、マダイ(養殖)など

カルシウム
 カルシウムは心筋を動かすのに欠かせない成分です。体内のカルシウムが不足すると、心臓を動かすために骨に含まれているカルシウムが使われます。骨からカルシウムが奪われることで血液中のカルシウムバランスが崩れ、その結果、血栓ができやすくなるのです。一方カルシウム不足になると、心臓筋肉の収縮作用の異常などが引き起こされます。
  • カルシウムを多く含む食品:
     牛乳、チーズ、ヨーグルト、大豆食品(納豆・豆腐・凍み豆腐・きな粉など)、海藻類(ヒジキ・昆布・ワカメなど)、緑黄色野菜(ニンジン・パセリ・春菊・ニラ・モロヘイヤ・ホウレン草など)、トマト、切り干し大根など

カリウム
 カリウムは、ナトリウムと一緒になって心筋を動かす手助けをし、心臓の働きを調整する成分です。不足すると不整脈や心停止などの症状を引き起こすことがあります。2005年に1日の摂取量が2000mgから3500mgに増量された成分です。調理法によって損失量が異なり、一般に煮ると約30%損失するので、煮汁を利用できるような調理法で無駄なく取り入れるようにしましょう。
  • カリウムを多く含む食品:
     パセリ、トマト、バナナ、大豆類(納豆・きな粉など)、カボチャ、さといも、じゃがいも、さつまいも、明日葉、モロヘイヤ、ニンニク、ニラなど

食物繊維
 食物繊維は体内で消化できない炭水化物のため、エネルギー源にはなりませんが、腸内の物質を排泄して便秘を解消する、血中コレステロールを下げる、糖の代謝を正常化するなどの働きを持っており、第6の栄養素とも呼ばれています。水溶性と不溶性の2種類があり、共に高い整腸作用を持っています。最近の研究で、心筋梗塞のキッカケとなる血管の炎症を抑える働きがあることが分かっています。
  • 食物繊維を多く含む食品:
    • 水溶性食物繊維:コンブ・ワカメ・ヒジキ・モズクなどの海藻類、コンニャク、キノコ、果物などなどに多く含まる。
    • 不溶性食物繊維:野菜、穀類、豆類、エビやカニの表皮などに多く含まる。

カテキン
 カテキンは3000種以上あると言われるポリフェノールの一種で、体内の活性酸素を除去する抗酸化作用を持っています。糖質代謝を改善して血中コレステロールや中性脂肪を低下させ、血栓生成を防止する血小板凝集抑制作用を持っています。
  • カテキンを多く含む食品:
     茶類(緑茶、紅茶、ウーロン茶など)、渋柿、カカオ(チョコレートの場合はカカオ含有70%以上)、赤ワイン、リンゴなど

心筋梗塞を予防するレシピ - お天気レシピ
http://recipe.bioweather.net/idx_medi1_lst.php?mcd=31010

心筋梗塞の効果的な予防のために
心筋梗塞の予防のために心懸けるべきこと

 心筋梗塞の原因である動脈硬化は生活習慣病の一つであり、食生活の改善と運動及び生活環境の改善で予防できる可能性が高いものです。心筋梗塞の予防には、(A)柔軟な血管の健康を保つことと、(B)心臓に負担をかけないことが重要です。


心筋梗塞を予防する食生活
  • 野菜を中心とした食事にする
  • 納豆などの大豆食品を食べる
  • 脂肪や糖分、コレステロールなどの摂り過ぎに注意する
  • アルコールを飲み過ぎない
  • 水分を摂る
  • 過剰な塩分摂取を控える
日頃より適度な運動を心懸けるべき事柄
  • 散歩などで身体を動かす
  • 適度な運動で筋力をアップさせ基礎代謝を上げておく

生活環境を改善すべき事柄
  • 過剰なストレスから開放されるよう心懸ける、すなわち精神的に気分を楽にする
  • 喫煙せず、また、受動喫煙にもきをつけける

1杯の水が姓名を救う

 睡眠中に汗をかくことで血液中の水分が減り、詰まりやすいドロドロの血液になることがあります。このドロドロ血液の状態は、睡眠前と起床後に1杯の水を飲むだけで解消されます。
寒い日のマフラーが心筋梗塞を防ぐ

 急激な寒暖差は心臓に負担をかけ、心筋梗塞を誘発します。寒暖差を緩めるにはきっちりと防寒対策をする必要がありますが、中でもマフラーは特に有効と言われています。
参考1:心筋梗塞の予防と果物

 心筋梗塞の原因となる動脈硬化を予防するには、食物繊維のペクチンを摂取するとよいとされています。リンゴや桃、無花果、苺、キウイなどにはペクチンが豊富に含まれているのでオススメです。また、赤肉メロンやマンゴー、スイカ、蜜柑、杏には抗酸化作用のあるβカロテンが含まれていて細胞の老化防止効果が期待ができます。その他、柿や苺、キウイに多く含まれるビタミンCもよいとされています。これ以外の上記の果物も高血圧予防に効果が期待できます。なお、肥満体質や中性脂肪であるトリグリセリドの値が高い人は、糖分を摂り過ぎると肥満を進行させる恐れがあるので、果物の摂りすぎは控えるようにして下さい。


心筋梗塞の予防効果が期待できる果物
アボカド、杏、苺、無花果、柿、オレンジ、温州蜜柑、キウイ、サクランボ、スイカ、梨、西洋ナシ、パイナップル、バナナ、パパイア、ビワ、葡萄、マンゴー、メロン、桃、リンゴなど
※注意:果物は様々な病気の予防や健康作用に期待できる食物ですが、心筋梗塞を治療するための薬ではありません。既に病気を患っている人は、何よりもまず医師にご相談することが先決です。また、栄養素によっては摂取量が多すぎると身体に悪影響を及ぼすことがあります。適量を心懸けるようにし、心配な場合は医師に相談しましょう。

参考2:心筋梗塞の予防に人気の健康茶

 先月は日本茶について取り上げましたが、心筋梗塞の予防には食事内容の改善や適度な運動と併せて健康茶を飲用することで相乗効果を期待することができます。


心筋梗塞予防に効果のある健康茶
松葉茶、どくだみ茶、ソバ茶、シイタケ茶、グァバ茶、マテ茶、コンブ茶、いちょう葉茶、ハスの葉茶、オトギリソウ茶、アカザ茶、よもぎ茶、柿の葉茶

「多分大丈夫」で済ませない

 心筋梗塞は死亡率が高い恐ろしい病気です。しかも発症した直後から心筋が壊死を始めるので、初期対応の速さが生存確率と後遺症に大きく関わってきます。もしも胸に違和感を覚えるようなことがあれば、それは心筋梗塞の前兆かも知れません。「多分大丈夫だろう」ですませず、たとえ杞憂であっても、早い時期に一度病院で検査を受けることをオススメします。
参考:心筋梗塞に関する参考文献


◆参考図書
『狭心症・心筋梗塞―正しい治療がわかる本―』
野々木宏・著
『狭心症・心筋梗塞―正しい治療がわかる本―』
法研・2009年05月刊、1,470円
これだけ知っていれば?発作は防げる、命は救える。肥満、高血圧、高血糖は、狭心症・心筋梗塞の危険因子。予防策から発作がおきたときの対処まで詳しく解説。いますぐ役立つ、メタボ予備軍とその家族必読の一冊。
真島康雄『脳梗塞・心筋梗塞は予知できる』
真島康雄・著
『脳梗塞・心筋梗塞は予知できる』
幻冬舎・2009年03月刊、1,000円
塩でも、煙草でも、肥満でも、運動不足でもない。元凶は、肉と砂糖!メタボ検診は無意味!「血管プラーク」があなたの突然死・寝たきり危険度をズバリ診断!予防も可能。08年9月衝撃の論文発表。


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