【1】めまいとはどんな疾患か? |
本節では、まず初めにめまいとは何か、その種類や症状について簡単に解説しました。
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めまいとは? |
めまいを訴える人の数は、厚生省の国民生活基礎調査によると約240万人にのぼっているそうです。
一般にめまいと言うと、皆さんはどんな病気を思い浮かべられるでしょうか。そもそもめまいとは何でしょうか? 漢字では「目眩」とか「眩暈」などと書くのですが、漢字の意味からは、目が眩(くら)んだり暈(ぼ)けることを表わしています。しかし、本来の医学的なめまいの意味は少し異なり、「空間の錯覚」とでも言えるものなのです。要するにめまいとは、身体が動いていないのに動いて感じたり、周囲が動いていないのに動いて感じることを指します。「朝、目を開けたら天井が廻って見えた」などというのが典型で、いわゆる「目が回る」状態を一般にめまいと言います。
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めまいの7割は内耳の異常によるもの |
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朝起き上がろうとした時くらっときたり、目の前の風景がぐるぐる回ったりすることはありませんか? めまいの原因の7割は内耳の異常にありますが、脳に異常がある場合や自律神経やホルモンの乱れなどからめまいが起こる場合もあります。なお、めまいの激しさと病気の重大さとは必ずしも一致しません。症状が激しいからと言って重大な病気が潜んでいるとは限らない代わりに、ふらつくだけの軽いめまいがクモ膜下出血の前兆ということもあります。ですから、めまいを起こしたらなるべく早く専門医を受診して原因をつきとめる必要があります。 |
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若い人に増えている心因性のめまい |
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内耳や脳には異常がないのにめまいを起こすことを「心因性のめまい」と言いますが、最近若い人にこのタイプのめまいが増えています。心因性のめまいの特徴は、全身に力が入らず体がふわふわする感じがしたり、座っていても揺れている感じがするというもので、時に動悸や息切れ、異常な発汗を伴うこともあります。「まためまいを起こすのでは」という不安で、ますますめまいが起こりやすくなることもあります。なお、心因性のめまいの原因はストレスや緊張、不安、鬱状態などですから、心療内科などを受診します。病院では、抗鬱薬などの薬物療法やカウンセリング、リラクセーションなどが行なわれます。 |
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ストレスを溜めず、睡眠を充分に摂り、積極的に身体を動かそう! |
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内耳の障害が原因のめまいも、ストレスや生活リズムの乱れ、過労などが引き金となっていることが多いため、これらを改善することでめまいを起こしにくくすることができます。過度のストレスは内耳への血流量を減らし、メニエール病や良性発作性頭位めまい症などを引き起こすことがあります。また、めまいを気にしすぎるのもストレスとなって悪循環に陥りがちです。また、過労や睡眠不足もめまいの誘引になります。めまいを防ぐには、ストレスを溜め込まない、気にしすぎない、睡眠を充分摂って疲れを溜めないことが必要です。適度な運動は血行や代謝をよくし、内耳の状態をよくすることに?がります。そのためにも、ウオーキングなど適度の運動を積極的に行ないましょう。 |
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めまいの症状 |
一般にめまいの症状としては、自分自身ないし周囲が回る感じ(回転性めまい)やふわふわ感、グラグラ感(動揺性めまい)、雲の上或は桟橋の上を歩くような感じ、頭部または身体が一瞬ふわっとする感じ(浮動性めまい)、身体のバランスが取れず、立ったり歩いたりすることが難しい感じ(平衡障害性めまい)、或は目の前が一瞬真っ暗になる感じ(眼前暗黒感)など様々なものが見られます。そして、こうしためまい症状も常に同じとは限らず、ある時は回転性、またある時は浮動性などと時と場合で異なることが多いです。また、めまいの起こり方も、突然に自然に起こる場合(自発性)や身体を動かした時に起こる場合(体動性)、頭の位置を換えた瞬間に起こる場合(頭位性ないし頭位変換性)、或は急に立ち上がった際などに起こる場合(起立性)など様々な場合があります。また、めまいの経過についても、一瞬の場合、数時間持続する場合、或は数日〜1週間以上も持続する場合など様々なものがあります。
めまいは身体のバランスを保つ機能に障害が起こると生じます。めまいの感じ方は、「自分の身体が回っている」とか「自分のまわりの地球が回っている」「雲の上を歩くようにふわふわする」「谷底に引きずり込まれるように感じる」など様々です。
身体の平衡を司る器官には三半規管と耳石器、前庭神経、脳幹、視床、大脳皮質があり、このどの場所が障害されてもめまいが起こります。まず三半規管は体の動きを捉える器官で、回転などの動きを鋭敏にキャッチしますが、三半規管に障害が起こると身体が回転するようなめまいを起こします。次に耳石器は加速度や重力を捉える器官で、ここが障害されると、ふわふわするようなめまいを起こします。三半規管と耳石器でキャッチした身体の信号は前庭神経で脳幹へ伝えられますが、この前庭神経が障害されると、強い回転性のめまいがおこります。脳幹には身体の位置、平衡を司る神経系が集まっており、ここが障害されると回転するめまいが起こることが多いのです。脳幹からの情報は視床、さらに大脳皮質へ伝えられますが、ここの障害ではふわふわするようなめまいを感じることが多いのです。従って、めまいを大きく分けると、耳から生じるめまいと脳から生じるめまい、それに加えて、特に老人に多いめまいの3つに分けることができます。耳から生じるめまいでは難聴や耳鳴り、耳が塞がった感じがめまいと同時に悪化し、軽快します。これらの症状を「耳症状」と呼んで注意します。ただし、過去に難聴があったり耳鳴りがあっても、めまいと同時に並行して症状が現われなければ関係がないものと考えるべきでしょう。
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めまいの種類 |
めまいは、 (A)耳から来る「末梢性めまい」と、 (B)頭すなわち脳から来る「中枢性めまい」の大きく二つに分かれます。
(A)末梢性めまいで代表的なものとしては、めまいの代名詞のように言われているメニエール病が挙げられます。これは、何らかの原因(例えばストレスなど)で耳の奥(内耳)の内リンパ圧が高まることにより、蝸牛器(音を聴く装置)や三半規管(身体の動き・平衡を感知する装置)にむくみが生じ、耳閉塞感・耳鳴・難聴・めまいなどの諸症状が反復して出現してくる病気です。主に中年(40歳代)の働き盛りの人に多く見られ、病気自体は生命の危険はありませんが、めまい発作を繰り返すうちに次第に聴力が失われてゆく疾患です。それから、頭位や体位を変えた時だけに一過性にぐるぐる回る特徴あるめまい発作を繰り返す「良性発作性頭位性めまい症」などもあります。この病気自体は、生命の危険はありませんが、よく似た症状が中枢性病変(脳幹・小脳)で見られる(中枢性頭位性めまい症)ことがあり、この場合は生命の危険を伴うことが間々見られることから充分な鑑別診断が必要です。その他、末梢性めまいでは、突発性難聴にめまいが伴う例や前庭神経炎、或は慢性中耳炎(特に真珠腫性中耳炎)などから内耳炎を併発しめまいが発症する場合などが多く見られます。
次に、 (B)中枢性めまいでは、主に小脳・脳幹部の脳血管障害や腫瘍、変性疾患、脱髄疾患などで多く見られます。小脳・脳幹部は主に椎骨脳底動脈から枝分かれした血管によって栄養補給を受けています。従ってこの動脈領域にいったん血管障害が起こると、小脳・脳幹部の双方に障害が発生するため、実際、小脳障害による症状と脳幹障害による症状とを厳密に鑑別することが難しい場合も多くあります。ただし、小脳障害(出血・梗塞)では、激しい回転性めまいや立位・歩行時にふらつき強い割りには、手足の麻痺・痺れは殆ど見られない例が多いです。その一方で、脳幹部は顔面・四肢の運動・感覚を司る神経が密集して走行しているところ、脳幹障害(出血・梗塞)では、めまい症状の他に顔面・四肢の麻痺・痺れなどの症状が随伴する例が多いようです。
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回転性めまい |
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回転性めまいとは、めまいの数々の中でも最も症状が強く、不快感を感じるめまいです。回転性めまいを感じると、その名称でも分かるように回転するような錯覚を覚えます。ぐるぐる回るのは自分本人という錯覚に陥りますが、実際には自分だけではなく、他人や他のものが回っているように感じることもあります。そして、ただぐるぐる回るのではなく、物や人が上下に、または左右に回っているように感じることもあります。また、それに伴う症状として耳鳴りや難聴に苦しむこともあります。また、回転性めまいは突然発症します。ただぐるぐると回っているような錯覚に陥るのは強い不快感を伴うものですが、それだけではなく、聴覚の不具合や吐き気を感じたりもするので、症状としては非常に辛いものです。こうしためまいの背景には、耳の異常や脳の異常が考えられます。とにかく心当たりがあると思ったら、なるべく直ぐに病院に行って診断を受けるようにしましょう。この種のめまいをそのまま放置しておくことは危険です。このまま放っておくと、難聴になることや、或は脳に異常がある場合には脳出血や脳梗塞の可能性が考えられます。自分の身体のためにも一刻も早く原因を突き止め、克服に向かうように心懸けましょう。 |
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動揺性めまい |
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ぐるぐるするめまいが「回転性めまい」なら、「ふらふら」するめまいが動揺性めまいだと考えて下さい。めまいは様々な症状があって紛らわしいものですが、「どんなめまいを感じるか、どのように揺れているか」を把握すれば、自分で原因を理解しやすくなります。
動揺性めまいは、簡単に言うと「ふらふら、ぐらぐら」揺れているように感じるめまいのことを指します。頭や体がぐらぐらとひっきりなしに揺れてるような感覚を覚え、それ故に実際に立って歩いたりする時にふらついたりします。また、紛らわしいことに回転性めまいでもこのような揺れを感じることがあります。動揺性めまいの原因としては主に脳の異常が考えられます。ここで言う脳の異常とは小脳の異常のことを指します。小脳は新小脳を古小脳に分けられていて、後者の古小脳は私たちの身体の平衡感覚を保つ役割を担っています。従って、古小脳がこのように平衡感覚のバランスを保っていてくれるからこそ私たちは真っ直ぐ立ったりしっかり歩くことができるのです。そして、古小脳に異常が生じた場合、平衡感覚が失われて真っ直ぐ立ったり歩いたりすることが困難になるのです。また、服用している薬の副作用も原因として考えられます。何れにせよ、動揺性めまいも回転性めまいと同じく非常に苦しいものです。放置しておくと症状は悪化するばかりなので、早めの検診をオススメします。 |
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浮動性めまい |
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浮動性めまいの症状を簡単に説明すると、地に足が着いてないように感じることを指します。浮動性めまいを経験したことのある人は、その殆どが「身体がふわふわする」とか「身体が宙に浮く」「船の上や雲の上でも歩いているような感じがする」と言い、また、実際に病院に来る人もそのようなことを言います。このように描写されている通り、浮動性めまいになると身体がふわふわしたようにふらつき、真っ直ぐ歩いたり正しい姿勢を保ったりすることが困難になります。また、浮動性めまいは他のめまいと違って症状が軽いことでも知られています。回転性めまいや動揺性めまいのようにそこまで苦しく感じることはありませんが、めまいを感じる原因が特定しにくいことが難点です。なお、浮動性めまいは回転性めまいや動揺性めまいのように症状としては軽いものとして見なされますが、だからと言って楽観視せず、慎重かつ冷静な対応が必要です。なお、浮動性めまいの主な原因としては貧血や低血圧が考えられます。貧血や低血圧によるめまいは感覚的にふわふわする感じが強いとされているためです。また、自律神経の不調が浮動性めまいの原因として考えられることもあります。このように浮動性めまいは原因が特定できないため、治療方法や対策が分かりにくくなります。そのため、原因が分からないままに放置されるケースが多く、そのうちに併発症状として麻痺症状や意識症状などが起こった場合、症状が深刻化する可能性もあります。 |
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立ちくらみ |
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立ち上がった時に目の前がくらっとする、目の前が真っ暗に感じたりすることを立ちくらみと言います。お風呂から上がった時にくらっと感じたりすることは誰にでもあることでしょうが、このくらいなら軽度のものということで済みますが、しかし、立ちくらみが強度のものであった場合には注意が必要です。
立ちくらみは一般に「起立性低血圧」と呼ばれています。低血圧だからと言って特に健康に血芽的な悪影響を及ぼしているとは一概に言い切れず、低血圧でも普通に生活することは可能です。しかし、一部の低血圧の人は「朝起きるとめまいがする」とか「歩くのが時々きつく感じる」「ふらふら」するなど日常生活に支障をきたす症状を持っています。そして、こうした中で立ちくらみを強く感じる場合、起立性低血圧の可能性が考えられるのです。このため、一般的に立ちくらみの原因は貧血であり、低血圧の人が立ちくらみを起こしやすいと考えられています。しかし、立ちくらみの原因は他にもあります。たとえば自律神経の働きに問題がある故に立ちくらみを起こすこともあります。自律神経は血液や血圧、心拍数や体温の調節などを支える働きをしています。つまり、私たちの身体を支える重要や役割を担っているため、これに異常が現われると、ふらつきや立ちくらみ、ひどい失神を起こすようになります。このように立ちくらみの原因は他にも色々あります。なるべく早い時期に検診を受けることが賢明な対策と言えるでしょう。 |
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めまいの原因 |
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ストレスでもめまいは起こる! |
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過度のストレスが続くと、メニエール病や自律神経失調症やパニック障害、起立性調節障害などの心身症が起こってきますが、これらの障害はめまいを伴うことがあります。メニエール病とはフランスの内科医メニエールによって発見された病気で、吐き気や嘔吐を伴うぐるぐる回るようなめまいを繰り返し、内耳の中に水腫(むくみ)が出来る病気です。メニエール病は肉体的・精神的ストレスが誘因となって起こることがあります。 |
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不眠症も立派なめまいの原因 |
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睡眠は人が生きてゆく上でとても大切なものですが、最近では夜型人間が増え、同時に睡眠障害を訴える人も増えています。このように睡眠が規則正しくないと、その結果としてめまいを起こすこともあります。この場合は、まさに生活習慣の乱れがめまいを起こすわけで、めまいも生活習慣病といってもよいほです。意外と不眠症がめまいの原因だと気がつかない人も多いので、めまいを感じたら一度自分の睡眠を振り返ってみることが必要かも知れません。 |
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めまいや吐き気は三半規管に問題が |
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耳の中にある三半規管と呼ばれ、平衡感覚を司っている器官がありますが、この三半規管に障害が来した時、めまいや吐き気などの症状が出てきます。三半規管はとても奇妙な器官で、中にあるリンパ液の状態によって身体の平衡感覚を判断しています。三半規管の働きが乱れてくると、人間の平衡感覚がおかしくなってしまい、周りの物体や景色がグルグル廻っているように感じます。その結果めまいや吐き気といった症状が出てくるわけです。なお、三半規管が正常に働いているのかどうかを簡単なセルフチェックで自己検査することができます。セルフチェックの方法は、目を瞑って片足で立ってみるというものです。三半規管が正常に働いている時、人間はおよそ30秒から1分ほどそのままの姿勢を維持することができます。それがちゃんとできない場合は三半規管に何らかの障害が起きている可能性が大です。直ぐ近所の耳鼻喉科で診察を受けることをオススメします。めまいや吐き気が症状が出たら、まずこの自己検査をやってみましょう。もちろん日頃から適度に運動して筋肉を鍛えておくことも大切です。運動することは三半規管の訓練にもなりますし、健康を維持するために大切な一環なのです。 |
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参考:意外と多いめまいの合併症 |
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めまいと合併症 |
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めまい自体とどのような関係があるかははっきりしませんが、めまいの患者さんには幾つかの病気が合併していることがあります。 それらの病気との関連を知ることはめまいを治していく上で大切なことです。このような病気は、めまいの患者さんに非常に多い合併症で、めまいと共通した原因が背景にあるのではないかと考えられています。
- 偏頭痛:ザクザク或はキリキリした頭痛。
- 花粉症(鼻炎):めまいのシーズンと花粉症のシーズンが似ているのも不思議なことです。
- 睡眠障害:まるで時差ボケみたいに昼間眠くて仕方がない状態があります。治療のための薬のせいとは考えにくい部分もあります。
- 首や腰の病気:首痛や腰痛はかなりの頻度で見られます。 中には過去にむち打ち症になっている人がいます。
- 逆流性食道炎:胸焼けやげっぷ、胃の痛みを起こす病気で、胃液が食道に逆流することによると言われています。
- その他:多汗症や手足の冷感、胸がドキドキするといった症状を起こす病気は、めまいの患者さんに非常に多い合併症で、めまいと共通した原因が背景にあるのかも知れません。
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参考:脳梗塞はめまい立ちくらみが前兆 |
脳梗塞は、脳の動脈が詰まり、そこから先の血流が止まって脳の一部を障害する疾患で、脳の血流障害のうち発病の頻度は約60%にも上ります。また、脳梗塞には脳血栓症と脳塞栓症があり、何れも発症時あるいは発症の前兆としてめまいが起こります。その発作には脳出血や脳塞栓症のような急激さはなく、多くのケースは一過性脳虚血発作を繰り返しながら症状が段々と進行します。発作の前兆として、ふらつきやめまい感を訴えることがあり、数分もしくは数時間かけて障害された部位の神経機能が失われてゆきます。これを神経脱落症状と呼びます。一方、脳塞栓症が椎骨脳底動脈系に起こると、急激な回転性のめまいに襲われることになります。なお、脳梗塞が内耳性のめまいと明らかに異なる点は耳鳴りを伴なわないことです。ちなみに、ここで強調しておきたいことは小脳に生じる梗塞です。小脳梗塞の際のめまいは極めて軽いものもあります。しかも身体を動かしている時に一時的に起こるだけのことが少なくありません。たとえば急に起き上がった時や顔を上に向けた時などに軽いめまいを感じる程度です。単に「疲れ」「血圧のせい」「立ちくらみ」と思ったら実は小脳梗塞だったというケースはよくあることです。医師だけでなく、患者自身もその危険性を肝に銘じておくべきでしょう。
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参考:近年日本で増加する脳梗塞 |
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近年、日本人の生活文化は欧米化し、今や脳梗塞の発生率も欧米並みです。当然の脳梗塞によるめまいも増えています。身体循環に関係深い心臓疾患や糖尿病、甲状腺疾患、高脂血症、痛風などのある方は節制を徹底しましょう。また、延髄の外側と小脳の下面に分布する後下小脳動脈の障害や椎骨動脈の閉塞によってワレンベルグ症候群と言う特徴的な症状を見せる病気があります。ワレンベルグ症候群とは、頭痛や嘔吐、回転性のめまいから始まり、ものが飲み下せなくなる嚥下障害や言語障害、患側顔面の温痛覚障害、ホルネル症候、或は病巣とは反対側の手足や体に出る温痛覚障害など特徴的な多くの症状が現れる疾患です。正面を見つめている状態で目がくるくる回る純回旋性眼振もハッキリと見られます。 |
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【2】めまいの種類と病態 |
本節では、めまいの種類及び分類に従って様々なめまいの種類と症状その他について詳しく取り上げました。
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耳から生じるめまい |
内耳にある三半規管の内部はリンパ液で満たされていて、身体が動くとリンパ液の流れが変わります。三半規管には3つの半円形の管があり、互いに90度の角度を持っていますが、そこでどの方向へ体が動いているかを容易に捉えることができるのです。また、耳石器には炭酸カルシウムの小さな結晶がたくさんあって、これが感覚器の上に乗っています。身体に重力や遠心力が加わると炭酸カルシウムの結晶が動き、身体の傾きや重力、加速度をキャッチすることができます。そして、三半規管と耳石器からの感覚情報は前庭神経によって脳幹へ伝えられます。これらの器官、すなわち三半規管、耳石器、或は前庭神経に障害があるめまいが耳から生じるめまいです。耳から生じるめまいでは、めまいと同時に耳鳴りや難聴、耳閉感が現われ、また、めまいと平行して軽快します。 |
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■耳から生じるめまいの検査 |
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足踏み検査 |
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目を閉じ、30秒間足踏みをします。 |
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フレンツェルの眼鏡による眼振検査 |
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外を見えないようにして目の動きを見ます。 |
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視運動性眼振検査 |
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目の前の動く物体を注視し、眼振の反応を見ます。 |
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温度眼振検査 |
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耳に水を入れて目の動きを見ます。電気眼振計目の動きを電気的に正確に解析します。 |
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ロンベルク検査 |
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直立して閉眼し、身体の動揺を見ます。 |
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■疾患 |
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メニエール病 |
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難聴や、耳鳴り、耳閉感などの耳症状と共に発作的に強い回転性めまいを生じる。めまいは数分から数時間続く。内耳リンパの異常による。40歳以降の壮年に発症する疾患で、高齢初発のめまいはむしろ中枢性疾患を考える。発作を繰り返し、やがて聾となる。 |
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前庭神経炎 |
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風邪の症状から1〜2週間して突然回転性のめまいで始まる。めまいの中でも最も強烈な症状。食事をすることも動くこともできないが、2〜3週間ほどで自然に軽快する。前庭神経炎の原因は主に風邪症状の後に起こるので、アレルギー反応が関係しているのではないかと考えられている。治療は強いめまいに対してめまいを抑える薬を使ったりステロイド剤を使うこともある。 |
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前庭神経が圧迫されるために起こるめまい |
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加齢によって動脈硬化が起こると、動脈が延長し蛇行するため、前庭神経が圧迫を受け、「ごっ、ごっ」という耳鳴りと同時にめまいを起こすことがある。治療には抗痙攣薬(カルバマゼピン)を投与したり、手術で血管と神経を離し、間にスポンジを挟むことで完治させることができる。 |
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突発性難聴 |
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聴神経に炎症が起き、突然強い難聴が起こる。耳鳴りを伴うこともあるが、めまいは比較的軽い。 |
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聴神経腫瘍 |
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聴神経に腫瘍ができるが、良性の腫瘍なので転移することはない。大多数は徐々に難聴が進むが、めまいは比較的軽い。20%は突発性難聴として始まることもある。腫瘍が大きくなると、周囲の脳組織を圧迫して顔面神経麻痺などの様々な症状を引き起こす。小脳が圧迫されると、ふらつき歩行が現われる。治療は手術で患部を取り除く方法が用いられるが、年齢によっては手術後遺症との兼ね合いで経過観察をする場合もある。 |
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抗生物質などの薬物から起こるめまい |
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結核の治療によく用いられたストレプトマイシンやカナマイシンなどの抗生物質の後遺症でめまいを残すことがある。もとの病気の治療が終わって数年ないし20〜30年経ってからめまいや耳鳴りが始まることもある。治療はめまいを抑える薬を服用する。 |
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騒音難聴から起こるめまいなど |
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ヘッドホンで大きな音を繰り返し聞いたり、プラモデルを組み立てる際にシンナーを嗅ぎすぎるとめまいを起こすことがある。 |
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脳から生じるめまい |
脳が原因でおこるめまいは、耳鳴りや難聴、耳閉感を伴いません。めまいも耳から生じるめまいに比べると軽いことが多いです。しかしながら、脳の障害による特徴的な症状が現われます。たとえば物が二重に見えるとか顔や手足が痺れる、力が入らない、手が震えるなどの症状がそれです。また、耳から生じるめまいが何度も何度も同じめまいを繰り返すことが多いのに対して、脳から生じるめまいは今までに経験したことのないようなめまいであることが多いです。
■脳から生じるめまいの検査 |
脳にめまいの原因があると疑われる場合には、耳鼻咽喉科で行なう検査の他に以下のような検査を行ないます。 |
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神経学的検査 |
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感覚、運動機能、刺激に対する反応を色々な方法で調べる。その反応によって脳に原因があるのか、末梢の神経に原因があるのかなど、さらに脳のどこが問題かなどを絞り込むことができる。 |
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MRI |
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磁気を利用して脳の状態を調べる。また、脳梗塞があれば容易に診断をすることができる。 |
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MRA |
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MRIと同じ機械で脳の血管の状態を調べる。血管のどこが細くなっているかなどの詳細を明らかにすることができる。MRIもMRAもX線を使わないので人体に対する影響はなく、苦痛もない。 |
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脳波検査 |
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てんかんからめまいを起こすことがあり、そのために脳波を調べる。 |
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■疾患 |
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脳卒中(脳梗塞、脳出血) |
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脳卒中によって平衡感覚の経路のどこかが障害を受けるとめまいが起こる。脳卒中によるめまいの特徴は通常2〜3時間、短くても20〜30分間は続くことが挙げられる。めまいの症状や程度は梗塞や出血が生じた場所によって異なる。たとえば脳幹の前庭神経核と言う平衡感覚が集まる部分の障害では強い回転性のめまいが起こるし、また、大脳皮質の障害では揺れるような比較的軽度のめまいですむ。なお、脳卒中によるめまいの治療は脳卒中そのものに対する治療に準じる。何れにせよ、なるべく速やかに医療機関を受診することが大事。 |
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椎骨脳底動脈循環不全 |
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大動脈から分岐して脳、特に脳幹や小脳へ血流を送るのが椎骨動脈であり、脳底動脈だが、この血管の血流が悪くなるとめまいを起こすが、この場合のめまいは20〜30秒で治まることが多い。椎骨動脈は頸椎の中を通っているため、急に後ろを振り向いたり天井を見上げたり、或は床を見たりする動作によって血液循環が妨げられてめまいを起こす。特に生まれつき椎骨動脈が細い人、動脈硬化によって椎骨脳底動脈に狭窄がある人、老化で頸椎が変形し、動脈を圧排している人には起こりやすい。検査はMRAによって椎骨脳底動脈の変化を調べる。治療は首を特に朝の起床時に勢いよく屈曲しないように気をつける。動脈硬化の危険因子のある人はそのコントロールを行ない、とくに喫煙者は禁煙する。 |
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てんかん |
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てんかんによるめまいは、耳鳴りと共に揺れるようなめまいが15秒ほど続く。めまいは自然に治ることが多いが、時には手の震えが現われたり、全身痙攣に至ることもある。てんかんが疑われる時には脳波の検査をする。治療は抗てんかん薬で発作を抑える。日常生活では禁酒し、12時前には床に入るように心懸け、睡眠不足にならないようにする。 |
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良性発作性頭位変換性めまい |
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頭を動かした時だけに軽い回転性のめまいが起こり、20秒以内に自然に治まるのが特徴だが、原因は多岐に渡る。たとえば昔カナマイシンを注射したなど内耳の障害が原因であることもあれば、更年期で神経が敏感になっていることもあり、或は軽い脳幹梗塞やその後遺症で起こることもある。また、過労や睡眠不足、酒の飲み過ぎなどが原因になることもある。きちんとした検査の後で良性発作性頭位変換性めまいと診断された場合には安心してよいが、めまいの専門医ほどこの病名を使わないものだとも言われる。予防法は急に振り返る、天井を見上げるなどの急な頭の動作を避ける。逆にめまいが起きる動作を繰り返すことによってめまいが起こりにくくなることも知られている。 |
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老人に多いめまい |
お年寄りのめまいの特徴は、原因を簡単に明らかにできないことが多いことです。たとえば若い人であればめまいに伴って難聴や耳鳴りが生じれば耳に原因があると分かりますが、ところが、元々耳鳴りがあったり、以前から難聴であることが少なくありません。こういう状況の下にめまいが起こったとしても、必ずしも耳に原因があるとは言えないのです。また、めまいの感じ方もずしも典型的ではありません。回転性のめまいが起こるような病気であっても、揺れるようなめまいとして感じることがあります。このように診断が難しいのがお年寄りのめまいの特徴です。
■原因 |
お年寄りのめまいをおこす原因にはいくつもありますが、特に多いのが、 (1)起立性低血圧、(2)椎骨脳底動脈循環不全、(3)脳梗塞・脳出血、(4)脱水の4つです。中でも起立性低血圧によるめまいは最も多いと考えられます。 |
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起立性低血圧によるめまい |
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起立性低血圧とは、座った位置から立ち上がった時に最高血圧が20mmHg以上低下するものを言います。若い人では急激に血圧が下がると顔が青ざめ、冷や汗が出て倒れてしまうことがありますが、老人では若い人のように激しい反応が起こらず、反応自体が弱く現われます。その一方で、血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすくなります。
- 起立性低血圧でめまいがおこる仕組み:
めまいを感じるのは大脳皮質の頭頂葉の第22野の周囲。 特に頭頂葉の第2野は前大脳動脈と中大脳動脈の境にあり、ここは心臓から最も遠いので、血圧が下がって脳の血液循環量が低下すると真っ先に障害されます。その結果めまいがおこります。特にお年寄りでは、血圧を一定に保つ機能が衰えているために、急に立ち上がると血圧が下がり、めまいが起こりやすくなるのです。
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起立性低血圧の原因 |
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起立性低血圧の原因には、血液が脚に溜まる、パーキンソン病、多発神経炎、薬剤の服用などがあります。
- 血液が脚に溜まる
起立性低血圧で最も多い原因と言えます。本来座った位置から立ち上がると神経の末端からノルエピネフリンという物質が放出されて脚の血管を収縮させ、その結果、血液が脚に溜まることを防いでいるのですが、この反応が衰えてくると、立ち上がった時に血液が脚の方へ流れ、脳に流れる血液が減るために起立性低血圧が起こります。対策としては、急に立ち上がらないこと、立っていてめまいが起こりそうになったら足踏みをするなどがオススメです。弾性ストッキングを使用するのもよいでしょう。
- パーキンソン病
パーキンソン病では血管の収縮を調節する交感神経の働きが弱くなるため、立ち上がると血液が脚の方へ流れてしまいますが、その結果、脳の血液循環量が減少して血圧の低下が起こります。この場合には血圧を上げる薬を使います。
- 多発神経炎
末梢神経が障害されて手足の先から痺れが始まります。血管を支配している神経に障害が及ぶと、立ち上がった時に血管が上手く収縮しなくなります。そのため、脚に血液が流れ込み、血圧が低下します。多発神経炎はアルコール依存症や糖尿病、腎臓病などが原因で起こるので、その原因となる病気を治療することが大切です。
- 薬剤による起立性低血圧
薬の服用による起立性低血圧も多いもので、特に血圧を下げる降圧剤や利尿薬、狭心症の治療に使うニトログリセリン、向精神薬などが原因となります。
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椎骨脳底動脈循環不全によるめまい |
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動脈硬化が進行したり、頸椎の変形が起こってめまいが始まります。 |
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脳卒中によるめまい |
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脳梗塞や脳出血もお年寄りに多いめまいです。小さな梗塞(ラクナ梗塞)がおきても麻痺は出ず、めまいで治まってしまうことも多いのです。 |
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暑さによる脱水から起きるめまい |
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暑さのために汗をかくと身体の水分が失われ、脱水状態になります。それ同時に血液の粘りけが増してきます。その結果血流が滞り、めまいを起こします。特にお年寄りは喉の渇きを感じる感覚が鈍くなるので脱水が生じやすく、周囲の人はいつも注意している必要があります。脱水を防ぐためには小まめにお茶などを飲み、入浴や就寝前にもコップに1〜2杯の水を飲みたいものです。なお、夜間にトイレに行くのを嫌がって水分補給を控える人がいますが、却って脱水を起こしやすく、好ましくはありません。 |
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お年寄りがめまいを起こしやすい理由 |
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- 平衡感覚が衰える:
お年寄りでは内耳や前庭神経、前庭神経核、大脳皮質などの神経系が老化によって変性してゆきます。そのため、平衡感覚の情報を上手く処理できず、めまいを起こしやすくなります。
- 血圧を調節する能力が衰える:
年を取ると血圧を調節する能力が衰え、血圧の変動が激しくなりますが、その結果、脳幹や視床、大脳皮質に酸素や栄養が充分に送れなくなり、めまいを起こしやすくなります。
- 様々な病気を抱えている:
歳を取ると、高血圧症や糖尿病、或は動脈硬化症など様々な病気が起こってきます。これに対して薬を服用しますが、そのため、病気やクスリの副作用によるめまいも頻発してきます。
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回転性めまい |
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回転性めまいの特徴 |
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回転性めまいは、自分自身か周囲のもの、またはその両方が動いているか回転しているように誤って感じられるめまいで、通常は吐き気とバランス感覚の喪失を伴います。ちなみに、小児の遊びで、その場でぐるぐる回ってから急に止まると周囲のものが回転して見えるというものがありますが、回転性めまいの感じはこれとよく似ています。
- 回転性めまいは内耳かバランス感覚に関与する脳の領域が病気の影響を受けることで起こります。
- 回転しているような感覚に加えて吐き気やバランス感覚の喪失、聴覚または視覚障害、頭痛などが生じる場合もあります。
- 多くの場合は患者による症状の説明と身体診察の結果に基づいて原因を診断できますが、さらに検査が必要になる場合もあります。
- めまいの誘因に応じた簡単な予防策や薬剤の服用によって再発を予防できる場合があります。
- スコポラミンのパッチ剤などの薬剤によって回転性めまいと吐き気を軽減できることがあります。
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■回転性めまいの症状 |
回転性めまいの発生時は、自分自身か周囲のもの、またはその両方が回転しているような不快な感覚が生じます。時には単に片側に引っ張られているように感じることもあります。そのため、バランス感覚が失われて歩行や運転が困難になります。回転性めまいは、ほんのわずかな時間で終わる場合もあれば、何時間或は何日間も続く場合もあります。回転性めまいの発生時には横になるか静かに座っていることで楽になる場合もありますが、全く動いていなくてもめまいが続く場合もあります。症状の原因が内耳の異常である場合(良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭神経炎など)には数日から数週間で症状が改善されるのが典型的ですが、原因が中枢神経系の病気である場合(脳卒中や多発性硬化症など)は症状の改善までに数週間から数カ月を要します。 |
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回転性めまいによく現われる症状 |
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回転性めまいは、しばしば次のような症状を伴います。
- 眼振:眼球が一定の方向にすばやく動いてからゆっくり元の位置に戻る現象で、回転性めまいの発作中に何度も見られる
- 吐き気:時に嘔吐も伴う
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メニエール病に見られる症状 |
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メニエール病では回転性めまいの発作が間欠的に突然起こりますが、その他にも以下のような症状がみられます。通常、1回の発作は数分から数時間続きます。低下した聴力は最初のうちは正常時の状態まで回復しますが、病気が長引くにつれて難聴が持続的になり、悪化します。
- 耳鳴り
- 進行性難聴:通常は周波数の低い音(低音)に対する聴力が低下する
- 異常が起きた側の耳の充満感や圧迫感
- しばしば重度の吐き気と嘔吐
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内耳のウイルス感染(前庭神経炎)による回転性めまいとその症状 |
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内耳のウイルス感染(前庭神経炎)が起こると回転性めまいが突然発生し、数時間のうちに悪化します。吐き気が強い場合もあります。頭や眼を動かすと嘔吐の引き金になるため、この病気になった人は動かずにじっと座っていることもあります。前庭神経炎は数日で軽快し始めますが、場合によっては数週間から数カ月続くこともあります。 |
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椎骨脳底動脈循環不全症などの脳の病気による回転性めまいの症状 |
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椎骨脳底動脈循環不全症などの脳の病気による回転性めまいは次のような症状を伴うことがあります。
- 頭痛
- ろれつが回らない
- 複視
- 腕や脚の筋力低下
- 協調運動の障害
- 意識の喪失
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突然の頭蓋内圧の上昇によって起こる回転性めまいの症状 |
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突然の頭蓋内圧の上昇によって起こる回転性めまいは次のような症状を伴うことがあります。
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■回転性めまいの原因 |
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回転性めまいはバランス感覚の維持に関与する体の各部の病気によって発生 |
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内耳の中には、身体が位置と動きを感知するために必要な構造物(半規管、球形嚢、卵形嚢)が存在します。これらの構造物から発信された情報は内耳神経(第8脳神経。聴覚にも関与する)を経由して脳に伝達されます。この情報が身体の姿勢を調節する脳幹と身体の動きを協調させる小脳で処理されてバランス感覚がもたらされます。
なお、回転性めまいは、バランス感覚の維持に関与する体の各部の病気によって発生しますが、その具体的な部位は以下の通りです。
- 内耳(耳、鼻、喉の構造と機能)
- 脳幹と小脳
- 脳幹と小脳を繋いでいる神経路または脳幹内の各部分を繋いでいる神経路
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内耳障害 |
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回転性めまいの原因で最も多いのは乗り物です。乗り物酔いは、左右方向の揺れや急停止と急発進など特定の動きに対して内耳が敏感な人に起こることがあります。その他に回転性めまいの原因として多いのは、内耳に複数ある半規管の一つにカルシウム粒子が異常に蓄積することです。これが原因となる良性発作性頭位めまい症(BPPV)は特に高齢者に多く見られ、頭が特定の動きをした時にめまいが発生します。また、メニエール病は回転性めまいの発作を起こす病気ですが、このメニエール病の原因には内耳の過剰な液体貯留(内リンパ水腫)が関係すると考えられています。この状態をもたらす要因はまだよく分かっていませんが、自己免疫反応やアレルギー、自律神経系のバランスの乱れ、耳の中のある種の構造物の異常、ウイルス感染などではないかと考えられています。
- 内耳や内耳の神経接続部に影響して回転性めまいを起こす病気
内耳神経に異常が生じると、回転性めまいか、聴覚障害またはその両方が生じる可能性があります。内耳や内耳の神経接続部に影響して回転性めまいを起こす病気としては他に以下のようなものがあります。
- 細菌またはウイルス感染症(前庭神経炎、帯状疱疹、乳様突起炎など)
- パジェット病
- 腫瘍(聴神経腫瘍など)
- 神経の炎症
- その他、一部の薬剤(アミノグリコシド系抗生物質、アスピリン、化学療法薬のシスプラチン、鎮静薬のフェノバルビタール、抗痙攣薬のフェニトイン、抗精神病薬のクロルプロマジン、フロセミドを含む一部の利尿薬など)によって内耳に異常が起きる場合もあります。大量の飲酒も一時的な回転性めまいを引き起こします。
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脳に影響する病気 |
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脳幹、小脳または脳の後部に供給される血液が減少して回転性めまいが起きることがありますが、この血液供給量の減少は椎骨動脈と脳底動脈で生じることから椎骨脳底動脈循環不全症と呼ばれています。血液供給量の減少による症状が一時的な場合は、一過性脳虚血発作(TIA)と診断されますが、永続的な異常が生じた場合は脳卒中と診断されます。また、頻度は低くなりますが、脳幹または小脳に影響して回転性めまいを起こす他の病気としては、多発性硬化症や頭蓋底骨折、頭部外傷、痙攣発作、感染症、脳の底部やその付近に発生した腫瘍などがあります。片頭痛発作の一部として起こる回転性めまいもあり、これは時として頭痛を伴わずに起こる場合もあります。時には頭蓋内の圧力が突然高まる病気によって脳が圧迫され、その結果として回転性めまいが起きる場合もありますが、そのような病気としては良性頭蓋内圧亢進症や脳腫瘍、頭蓋内出血などが挙げられます。 |
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■回転性めまいの診断 |
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身体診察 |
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眼を観察して眼振などの異常な眼球運動がないかを調べます。異常な眼球運動がある場合は、内耳や脳幹内の様々な神経接続部に影響する病気が疑われます。眼振の時に眼がどの方向に動くかが診断に役立つため、医師は意図的に眼振を誘発します。眼振の方向を調べるには幾つかの方法があります。検眼鏡検査では、医師は視神経乳頭を注視しながら患者のもう一方の眼を覆います。このとき視神経乳頭が揺れ動くようなら、眼振があります。フレンツェル眼鏡という特殊な眼鏡を使った検査方法もあります。患者がこの眼鏡をかけると、医師はレンズを通して患者の眼球をよく観察できますが、患者は視界がぼやけて焦点を合わせることができません(眼の焦点が合うと眼振が抑制されます)。眼の周りの皮膚に電極を貼り付けるか(電気眼振検査)、フレンツェル眼鏡にビデオカメラを取り付けて眼球の動きを記録する場合もあります。なお、眼振の誘発法としては、以上の他にも、耳の中に冷たい水を入れる方法(温度眼振検査:カロリックテスト)、頭を20秒間素早く左右に揺り動かす方法(頭振後眼振検査)、頭部の位置を素早く変えて後半規管を刺激する方法(ディックス・ホールパイク法)などがあります。ディックス・ホールパイク法は良性発作性頭位めまい症の診断に用いられ、方法はエプリー法の最初の部分と同じです。 |
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検査 |
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多くの場合、追加の検査は必要ありません。場合によっては頭部のCT検査またはMRI検査で回転性めまいの原因となっている病気を発見できることがあります。CT検査では、耳の後ろにある骨の感染症(乳様突起炎)や頭蓋底骨折、腫瘍による骨の浸食、パジェット病などによる異常な骨形成など骨の異常を見つけることができます。脳幹や脳神経についてはCT検査よりMRI検査の方が良好な画像が得られます。
耳の感染症が疑われる場合は注射針か綿棒を用いて耳から膿や体液のサンプルを採取します。脳の感染症が疑われる場合は脊椎穿刺(腰椎穿刺)を行なって脊椎から脳脊髄液のサンプルを採取することがあります。また、多発性硬化症が疑われる場合はMRI検査を行なうことがあります。さらに脳への血流不足が疑われる場合は、ドップラー超音波検査やCT血管造影検査、磁気共鳴血管造影(MRA)検査、カテーテル血管造影検査(X線を使用します)などを行ないます。 |
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回転性めまいの予防と治療 |
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特定の原因による回転性めまいは予防が可能です。たとえば乗り物酔いによる回転性めまいの場合は、原因となる状況(揺れるボートに乗ることなど)を避けることができますし、また、遠くの動かないものに視点を定めると(固視)、発作を防いだり、始まった発作を止めたりするのに役立ちます。スコポラミンのパッチ剤は乗り物酔いによる回転性めまいの治療と予防に役立ちます。
回転性めまいとそれに伴う吐き気を軽減する薬剤としては、シクリジン(cyclizine)やジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メクリジン(meclizine)、プロメタジンなどがあります。これらの薬剤は経口での使用が可能です。或はスコポラミンの経皮パッチ剤を通常は耳の後ろに貼って使用することもできます。スコポラミンのパッチ剤は効果が数日間持続し、特に吐き気がある場合に選択されることがあります。また、回転性めまいが重度の場合や回転性めまいにより不安が生じている場合は鎮静薬が有用なことがあります。最も多く使われるのはベンゾジアゼピン系薬剤です。ベンゾジアゼピン系薬剤であるアルプラゾラムとロラゼパムは他のベンゾジアゼピン系薬剤と比べて効果の持続時間が短いため、特に高齢者でよく使用されます。ただし、これらの薬剤は何れも副作用を起こす可能性があり、高齢者では特にリスクが高くなります。そのため高齢者はできるだけこれら薬剤の使用を避けるべきですが、重度の回転性めまいが長く続いて薬剤が必要になることもあります。その場合は医師の監督下で使用すべきです。スコポラミンのパッチ剤は副作用が最も少ない傾向があります。大抵の場合、高齢者の回転性めまいは良性発作性頭位めまい症が原因であり、薬剤を使用しなくても軽快します。なお、回転性めまいの治療薬は、乳幼児に使用すると精神の興奮を引き起こす可能性があるため、医師の指示がない限り使用してはいけません。 |
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良性発作性頭位めまい症(BPPV) |
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内耳の構造 |
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耳の奥には内耳という聴覚と平衡覚のセンサーがあります。平衡感覚のセンサーは半規管(三半規管)と耳石器に分かれます。半規管は回転加速度(頭の回転運動)のセンサーで、耳石器は直線加速度(重力や直線運動)のセンサーです。半規管は丸い管の中にリンパ液という液体とこのリンパ液の動きを感じるセンサー(クプラ)が入っており、クプラには有毛細胞という感覚細胞があります。半規管が回転すると、中の液体は動かないのでクプラが相対的にリンパ液に押されて刺激されますが、このことで頭が回転していることを感知します。その一方、耳石器は有毛細胞がたくさん並んだ上にゼラチン状のものが乗っていて、さらにその上に小さな砂状の石(耳石)が乗っています。身体が傾くと、重力によって耳石がずれて有毛細胞を刺激しますが、こうして身体の傾きや重力を感じるのです。 |
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良性発作性頭位めまい症の病態 |
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良性発作性頭位めまい症は、半規管の中に耳石器から剥がれた耳石が紛れ込んだものだろうと考えられています。耳石が紛れ込むと、頭を動かした時に半規管と一緒に紛れ込んだ耳石も一緒に動きます。頭を止めると、少ししてから耳石が半規管の中をゆっくり落ちてきます。この時リンパ液も一緒に動かされてクプラが刺激され、頭は実際には動いていないのに回転のセンサーは動いていると感じるので、めまいが起こります。耳石が落ち切るとめまいは止まりますが、動くとまためまいがします(半規管結石症)。また、クプラに耳石がくっついてしまうこともあり、この時は頭を動かすとクプラが下の方に引っ張られて常に刺激されている状態になりますが、この時は半規管の中に耳石が浮いている時(半規管結石症)よりめまいが長く続きます(クプラ結石症)。なお、半規管は両耳に3つずつあり、前半規管、後半規管、外側半規管と言われていますが、外側半規管は頭を左右に回転させる運動のセンサーで、前半規管と後半規管は頭を前後・左右に傾ける運動のセンサーです。良性発作性頭位めまい症は60%以上が後半規管が原因で(後半規管型)、これは後半規管が一番下の位置にあり耳石が迷入しやすいためと考えられます。外側半規管型が約30%で、前半規管型は稀です。 |
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良性発作性頭位めまい症の症状 |
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良性発作性頭位めまい症の代表的な症状としては、ある特定に位置に頭を動かすことでぐるぐる回る(回転性)めまいを起こすとか、特定の頭の位置になってからめまいが始まるまでに数秒の時間差がある、めまいを繰り返すことで症状が軽快してくる、耳鳴りや難聴などの耳症状がない、手や顔の痺れや頭痛、目の前が暗くなる等の中枢神経症状や頸部の異常がないなどが一般的ですが、しかし、同様のめまいは他疾患でも認められることがあり、種々の検査が必要となります。めまいは突然起こり、朝起きたときに起こることが多いようです。吐き気や嘔吐を伴うこともあります。激しい回転性のめまいのことが多いですが、じっとして頭を動かさないようにすればめまいはしません。一回頭を動かした時のめまい発作は大抵は30秒以内に治まります。めまいは日毎に軽快してゆき、1週間から2週間で治ることが多いようです。ただし、動かないでじっとしていたり結石の状態によっては長く続くこともあります。
- どんな人が罹りやすいか?
特にキッカケがなく発症することが多いようですが、頭部打撲後、メニエール病や突発性難聴後などの内耳の病気がある時、長期間病気で寝ていた後、閉経後や老化によるカルシウム代謝異常などが発症の原因になるとも言われています。
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■良性発作性頭位めまい症の治療 |
良性発作性頭位めまい症は自然の経過でも徐々に治ってゆく病気です。結石が吸収されたり元の場所に戻ることができれば症状は治まります。これを促進するために頭や首を動かして半規管を刺激してやることで早く治ります。めまいが怖いからといってじっとしていると、めまいが持続するようです。良性発作性頭位めまい症の症状を早く治すために以下のような治療法があります。 |
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理学療法 |
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良性発作性頭位めまい症であれば、結石を元々あった場所に戻してやることで症状が治まります。結石の場所や状態によって様々な方法があります。理学療法を試行することでめまいがして気分が悪くなることがありますが、後々に悪影響を及ぼすようなことはありません。非侵襲的な安全な治療法と言われています。また、他のめまいとの診断をつける意味で施行することもあります。
- Epley(エプレイ)法:
後半規管の良性発作性頭位めまい症に用います。体位を変換してゆくことで結石を戻してゆきます。
- Semont(セモン)法:
後半規管の良性発作性頭位めまい症に用います。勢いよく体位を変換することで結石を動かします。
- Lempert(レンペルト)法:
外側半規管の良性発作性頭位めまい症に用います。体位を変換してゆくことで結石を戻してゆきます。
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薬物療法 |
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めまいがひどい時や吐き気が強い時に、これらの症状を抑えるために薬を服用することもあります。他の病気(メニエール病など)との合併が疑われる時はその治療も行ないます。 |
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日常生活上の注意点 |
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良性発作性頭位めまい症のめまいは急激で強いことが多く心配なものですが、良性発作性頭位めまい症であれば、このめまい自体は怖がる必要はありません。動くとめまいがするからといって頭をじっと動かさないようにしていることがありますが、良性発作性頭位めまい症に関しては、むしろ積極的に動いた方が早く治ります。特に頭の位置を動かす運動は有効です。ただし、高所や階段、足下の不安定な場所、駅のホームなどでめまいがすると非常に危険です。転んでも安全な場所で運動するようにしましょう。また、めまいのしている間は車の運転は避けるようにしましょう。 |
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立ちくらみ |
立ちくらみは「起立性低血圧」とも呼ばれます。立ち上がる時にふらっと感じたり、目の前が白くなって気を失いそうになる症状は若い女性に多く見られます。立ちくらみはお風呂で長湯した後に急に立ち上がった時には誰でも感じるものですが、強くなると気を失って倒れることもあり危険を伴います。一般には20〜30歳代の女性に多く見られますが、年齢と共に増加し、高齢者では20%前後に認められます。
めまいと立ちくらみの違い |
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めまいと立ちくらみの違い |
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めまいと立ちくらみという言葉は曖昧な表現であると思われがちですが、症状によってめまいと立ちくらみを分けることができるのです。すなわち、起立性低血圧などで急に立ち上がった瞬間にふらつきを覚える事を立ちくらみ、常にフワフワしていたりぐるぐると目が回るような感覚に陥るのがめまいと呼んで区別します。また、立ちくらみは目の前が真っ暗になる(暗転感)という症状も認められますが、めまいにはこのような症状は認められません。医師に診断を仰ぐ時には、めまいなのか立ちくらみなのかを見極めてから診察に入ることが大切です。 |
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それぞれの症状で考えられる原因 |
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立ちくらみは先述の通り起立性低血圧や鉄欠乏性貧血などに代表される低血圧症などが考えられます。女性であれば月経のサイクル上、貧血気味に陥りやすくなりますし、低血糖などの糖尿病の症状などでも立ちくらみなどを起こすことがあるので注意が必要です。一方めまいは、常にふわふわした感覚やぐるぐるした感覚がつきまとった状態を言いますが、考えられる疾患は内耳の疾患であるメニエール病や一過性脳虚血発作など危険信号を伴う疾患が多くあります。また、頚椎がずれたことによって起こる頚性めまいなども考えられます。更年期障害に伴う不定愁訴や神経症、鬱病などでも常にめまいを伴うこともありますので、早めの治療を行うことが大切です。 |
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貧血気味の場合はどちらが起きやすいか? |
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貧血気味の場合立ちくらみを起こすことが多いのですが、進行した状態になると、めまいを起こすことが多くなります。鉄欠乏性貧血であれば鉄剤の処方で様子を見ますが、胃潰瘍など内臓からの出血があり、貧血を起こしていることも考えられます。ひとくくりに貧血による立ちくらみ、めまいでも入念な診察や検査を必要とされることもあります。 |
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血圧とたちくらみ |
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低血圧と起立性低血圧 |
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血圧の上が100より下の血圧が60より低い場合、低血圧と言われます。血圧は低くても自覚症状がなく日常生活にも支障がない体質的な低血圧も少なくありませんが、一部の低血圧の人は立ちくらみや倦怠感、ふらふらやめまい、朝に起きづらいなど様々な症状が出てきます。これを低血圧症と言いますが、立ちくらみを強く感じる場合(立った時に上の血圧が20以上下降する時)を起立性低血圧と言います。低血圧は高血圧と異なり、脳出血のような重い病気に結びつかないので、血圧を上げることよりも様々な症状を軽くする治療が中心になります。それほど頻度は多くありませんが、心臓や神経の病気、内分泌(ホルモン)の異常などで強い立ちくらみなど低血圧症の症状が現れることがあります。また、内服している薬のせいで立ちくらみなどが起こっている場合もあります。このような低血圧を二次性低血圧と言い、専門医による診断と原因に対する治療が必要になります。 |
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脳貧血と貧血 |
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脳貧血と貧血がしばしば混同され誤って理解されていることがあります。貧血は様々な原因で血液中の赤血球の異常(普通、数が減少しますが正常のこともあります)を生じた場合を指します。俗に言う脳貧血は立ち上がった時にふらつきやめまいなどを感じる場合を指しており、赤血球の変化とは関係なく血圧の変化で起こってきます。貧血が強くなると、たちくらみやめまい、疲労感、息切れや動悸が起こってきます。脳貧血の症状と似通っていますが、血液検査で赤血球数や血色素量の変化で貧血の診断は容易にできます。 |
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参考:原因のよく分からない立ちくらみは高血圧を疑ってみましょう |
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頭痛などと違って立ちくらみを感じた場合、さすがにこれはちょとおかしいと感じる人は多いと思いますが、直ぐに回復してしまった場合には、そのまま「ちょっと疲れていたんだろう」程度に考えてしまう場合が多く、原因を追究する人はあまりいないでしょう。しかし、この立ちくらみは色々な病気の症状として出てくるもので、場合によっては危険なものもあります。高血圧の自覚症状の1つにもなっており、無視するのはリスクが大きすぎることを理解しておきましょう。
立ちくらみの原因は一時的に脳内の酸素が不足することで起こります。酸素の供給は血液が行ないますので、血液が不足するということです。「高血圧は血流が強くなりすぎて圧力が上がっているのだから、血液が不足するというのはおかしいのではないか」と思う人もいるでしょうが、確かに通常はそうなのですが、身体を動かした場合、たとえば座った状態から急に立ち上がったような場合には一瞬血液が停滞することがあります。このとき脳から出てくる血流はそのままなので、一瞬血液が足りない状況が出現します。このような状態は高血圧、正常血圧、低血圧区別なく発症しますが、高血圧の場合普段の圧力が大きいだけに、立ちくらみとなって現れることが多くなります。従って、もしこのような場合に立ちくらみを感じるようなことがあったら、高血圧を疑う必要があるのです。まずは病院に行って検査を受けてみましょう。もしも自宅に血圧計があるのであれば朝と晩に何回か計測してみて下さい。高いようなら直ぐに病院に行きましょう。また、立ちくらみの原因としては、既に高血圧と言う診断を受けて日常降圧剤を服用している人に見られるものもあります。そのような人が降圧剤の服用を忘れた場合、通常下げられている血圧が急に上がった状態になってしまうため、これによって立ちくらみを感じることがあります。こういう状態で降圧剤を服用して急激に血圧を下げると、今度は血流が弱くなりすぎて立ちくらみになるのです。降圧剤を飲み忘れた時は、安定するまで暫く安静を保つ必要があります。なお、高血圧はサイレントキラーと言われ、自覚症状がないことが多いと言われていますが、実は頭痛やめまい、鼻血、立ちくらみなどを感じている人は非常に大勢います。ただそれらの症状は高血圧でなくても感じるものですし、また、高血圧であっても皆が皆感じるわけではありませんので、折角の身体のサインも利用されずにいる場合が少なくありません。これらの症状を感じたら、原因はともかく、躊躇していないで病院で診察・検査を受けて原因をはっきりさせておきましょう。 |
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自律神経と立ちくらみ |
私たちの身体は、脳や脊髄を中心にした中枢神経とそこから出ている末梢神経とに分けることができます。末梢神経には、手足や顔などの筋肉を動かす運動神経や痛みや痒み、触覚に関係する知覚神経、それに自律神経が散在します。自律神経は血液の流れ、血圧や心拍数、体温などの調節、胃腸の運動などに深く関係していて、私たちの身体を守る上で極めて重要な働きをしています。自律神経は私たちの意志ではコントロールが不能で、脳にある自律神経の中枢から自動的にコントロールされています。また、自律神経の重要な働きの一つは脳の血流を守ることです。たとえば横になっている時に全身を平均的に流れている血液は、起きあがると血液そのものの重力の影響で足の方に溜まってしまいますが、そうすると脳が血液不足になり、ふらつきやひどいと失神を起こします。健康な人場合、そうなる前に自律神経が働いて血管を収縮させ、血液が下の方に一気に落下するのを予防するのですが、自律神経の働きが弱いと、これが充分にできなくなります。これが立ちくらみの原因です。自律神経失調症とは、TPOに応じて働かなければならない自律神経の機能が鈍ったり働きが悪くなることを指しています。なお症状として、たとえば家庭の血圧計を持っている時には、静かに横になっている時の血圧と立ち上がって直ぐに測った血圧との差が20以上ある時とか、或はゆっくりと落ち着いて横になっている時の1分間の脈拍数と起き上がって直ぐの脈拍数との差が30以上あったり、起き上がった時に逆に脈拍数が少なくなる時などは、その原因として、自律神経の反応が過敏であったり、反対に鈍感である可能性があります。ただし、このような異常がみられても自覚症状がなければ自律神経失調症とは言えません。
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立ちくらみの予防 |
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立ちくらみの予防 |
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自律神経の働きを整えるための日常生活の一般的な注意を以下に挙げてみます。なお、以下に挙げたような方法でもよくならない時や立ちくらみが強い時には、血圧を上げる作用のある薬を使って治療することもあります。
- 早寝・早起きの規則正しい生活リズムを作り、睡眠を充分に摂ります。
- 寝ている状態から急に立ち上がらないように気をつけます。特に起床後の動作はゆっくりと行ない、過労や急に姿勢を変えることは避けます。
- 高齢者では夜中にトイレに立って用を足した後に急にフラフラッとしてとして倒れることがあります。トイレは洋式が好ましく、ゆっくりと立ち上がるように気をつけます。冬はトイレや風呂場を暖かくする注意も必要です。
- 早歩きや体操、水泳など軽い運動を毎日10〜20分は続けます。
- 血液の循環を促すためには朝の入浴や乾布摩擦も役に立ちます。
- 便秘や腹痛の原因となる食事はできるだけ避けます。排便で力んだり、腹痛が強くなるとフラフラッとなることがあります。
- 日昼はややきつめのストッキングや腹巻きをするのも血管が引き締まり役立ちます。
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