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今月のワンポイントアドバイス



 カキが美味しい季節になりました。カキは栄養が豊富であることでも知られています。

今月はそのカキの特徴と栄養成分などを取り上げました。

併せてそのカキなどの二枚貝が原因となるノロウィルスとその予防法を取り上げました。

おいしく安全に、美味しいカキをお楽しみください。
カキ


カキが美味しい 季節ですが・・・
【1】美味しいカキと日本人
【2】栄養豊富なカキ
【3】美味しいカキの安全な食べ方
【4】猛威を振るう新型ノロウィルス〜カキに当たらないために〜


【1】美味しいカキと日本人

 多くの人がその美味しさを知るカキ。本節では、そのカキの特徴や産地などカキに関する基礎知識をまとめました。
天然の健康食品・カキ

 ミネラルやビタミンが発見されるずっと以前から人類に栄養食品として人気があった食べ物があります。そのひとつがカキ(牡蠣)です。古くは歴史の教科書の初めにも出てくる貝塚で、ここで一番多く発見されたのがカキの殻でした。つまり、人類は一万年以上も前から牡蠣を食べ続けているのです。さらに歴史を紐解くと、牡蠣のエピソードは続々と登場します。

 西洋では昔から哲学と芸術を愛する古代ギリシア市民から古代ローマの貴族に至るまでカキは珍重されていました。たとえばテムズ河口のカキ欲しさにイギリス遠征を企てたと言われるシーザーをはじめ、戦場でも牡蠣を食べ続けていたナポレオン1世や、一度に144個もの牡蠣を平らげていた文豪バルザックが有名ですが、その他でも、ドイツ初代首相ビスマルクに至っては一度に175個ものカキを平らげたなど、歴史上の人物と牡蠣の逸話がたくさんあります。一方東洋でも、釈迦の時代から栄養食として食べられた記録がある牡蠣のスープ、また、古代中国では身体によい調味料であった?油(オイスターソース)など、既に健康食品としての地位を確立していたとされます。さらに日本でも、戦国武将の武田信玄や儒学者の頼山陽など、カキ好きはよく知られており、歴史上で見ても、カキはいわば天然の健康食品の元祖とも言えるのです。
カキの特徴

 カキ(蠣、牡蠣、英名:oyster)は、岩礁に左殻で付着するウグイスガイ目イタボガキ科に属する二枚貝、ないしはカキ目もしくはカキ上科属する種の総称で、特に食用とされるマガキを指すことが多くあります。海の岩から「かきおとす」ことから「カキ」と言う名が付いたとも言われ、古来、世界各地の沿岸地域で食用ばかりでなく、薬品や化粧品、建材(貝殻)として利用されてきました。なお、英語でカキを指すoyster(オイスター)は日本語の「カキ」よりも広義に使われ、岩に着生する二枚貝のうち、形がやや不定形で表面が滑らかでないもの一般を指し、アコヤガイ類やウミギク科、或はかなり縁遠いキクザルガイ科などもoysterと呼ばれることがあります。


美味しいカキ カキ類は付着生活を送るため、その形は一定せず、軟体の足は発達しません。また、その殻は付着する左殻が大きく深くなり、右殻はやや小さくて余り膨らみません。殻表には皮がなく、成長脈が板状になっています。両殻の噛み合わせには黒い卑帯がありますが、歯はないか甚だ弱く、また、軟体の中央には大きい後閉殻筋(貝柱)があって、外套膜の中のエラは大きい。雌雄同体であるが雌性の強いものと雄性の強いものとがあって、雌雄性の割合はその時の条件で決定されます。産卵後や環境が悪い場合は雄性が強くなります。また、イタボガキなど卵胎生の種類では雌雄の卵子と精子が同じ生殖腺内で出来ますが、マガキなど卵生の種類では卵子と精子が交代して造られます。後者は見かけ上雌雄の別があるように見えるので、かつては雌雄異体と思われていました。生殖腺は雌性・雄性の何れが強いものでも白いので、みな雄のように思われていたこともあります。また、カキは干潮時には水が無い場所に住む場合が多く、グリコーゲンを多く蓄えているため、他の貝と違って水が無い所でも1週間は生きていられます。
 カキは基盤に従って成長するため殻の形が一定せず、また、波の当たり具合などの環境によっても形が変化するので外見による分類が難しく、野外では属さえも判別できないこともあります。このため、未だに分類が混乱しているものも少なからずあり、最近は外見に惑わされない分子系統などを使った分類がなされつつあると言います。

 食用にされるマガキやイワガキなどの大型種がよく知られていますが、食用にされない中型から小型の種も多く存在します。どの種類も岩や他の貝の殻など硬質の基盤に着生するのが普通です。船にとって船底に着生して抵抗となる固着動物は大敵ですが、カキもその代表的な生物です。ちなみに、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』で知られる帝国海軍軍人の秋山真之は、幼馴染みである歌人・正岡子規に《軍艦は遠洋航海に出て帰ってくると、船底にかきがら(蠣殻)がくっついて船あしがおちる》と書いていますが、こうした水棲生物のために船底塗料が使われています。また、カキは着生してからは殆ど動かないため、筋肉が退化し、内臓が殆どを占めています。そのため、カキの独特の風味は貝類の内臓の味で、その証拠に一般人にはハマグリの内臓を寄せ集めて作ったカキフライもどきが本物と区別が付かないそうです。

 なお、カキを養殖する方法は、カキの幼生が浮遊し始める夏の初めにホタテの貝殻を海中に吊るすと幼生が貝殻に付着するので、後は餌が豊富な場所に放っておくだけというものです。一方、野生のものは餌が少ない磯などに付着するため、総じて養殖物の方が身が大きくて味もよいとされます。欧米では種牡蠣を原盤(フランス語ではクペール)という網状の円盤で採取するのですが、ある程度大きくなるとそれから外して網籠に入れて干満の差が大きい場所の棚に置くか干潟にばら撒いて育成します。この方式はホタテガイで種牡蠣を海中に付けっ放しにしておく日本の方式よりも身が大きくなりやすいとされます。
カキと人間
カキに関する伝承

 大プリニウス『博物誌』によれば、カキは古くから養殖され、セルギウス・オラタが前1世紀にバイアエ湾(ナポリ湾の一部)にカキの池を造ったのが始まりとされます。また、古来カキは春から夏には食べるべきでないとされ、「月の名に rがつかない月(5〜8月)にはカキを食べるな」というイギリスの諺もあるくらいです。バビロニア神話では世界をカキの形になぞらえています。一方、中世の動物寓意譚では高貴な獅子や鷲とは逆に最下等の卑しい生物として描かれ、下賤の意味になりました。なお、英語の成句に《カキのように無口な asdumb as an oyster》とか《カキのように口が固い asclose as an oyster》などとあるように、寡黙なことのシンボルともされています。
カキという名前の由来


カキの語源
 古来からの和名は「おかきのかい」ないし「かき」で、密集している貝を掻き取ることが語源と考えられています。カキは漢字で書くと「牡蠣」ですが、この名前の由来は海の岩にくっついた貝を「かきおとす」から「カキ」という説や、殻を欠き砕いて取るというところから「カキ」となったという説など、カキの殻を取るための動作からこの名前がついたとされれています。

派生義
 英語のoysterは「寡黙さ」の代名詞となっています。すなわち、《as close as an oyster》で「口が固い」という熟語となります。一方、広東語で??・??(干しガキ)はホウシー(?音: haoshi)と言い、好市(?音: h?oshi、良い市況)と似た発音なので、旧正月に好んで食べられます。

カキの漢字
 蠣、蛎だけでカキの意味を表わしますが、現在は「牡」の文字も用いて、牡蠣、牡蛎の表記が一般的となっています。これは一般に貝は雌雄で色の異なる部分(※サザエであれば「ふんどし」と呼ばれる部分がこれに相当します)があり、白い物が雄と考えられていたのに対し、カキは全身が白い(※緑色をしたカキも存在しますが、これは餌の違いによるもので、余り一般的ではありません)ことから「牡しかいない貝」と誤解されたことに由来するとされます。中国語では「牡蛎」「牡蠣」(ムーリー)も使われますが、これは専門用語的で、口語では「?」、簡体字では「?」(ハオ)が用いられています。

カキの種類


日本全国の主な産地
 世界的にカキの養殖は盛んですが、養殖に用いられる主な種は次の通りです。
  • マガキ(Crassostrea gigas、英名Japanese oyster):
    マガキ サハリンから日本、台湾、朝鮮南部、中国からマレーにかけ広く分布し、日本で養殖するのは主としてこの種で、シカメやナガガキ、エゾガキと称するものはこの種の一型です。卵生で、産卵は22〜25℃が適温で、水中に産み出された卵はベリジャー幼生となりますが、20日前後で付着生活に入ります。成長は1年で7cm、重量60g程度で、2年で10cm、140gほどになりますが、その後は余り大きくなりません。養殖は古くから中国で行なわれており、また、ヨーロッパでも前1世紀にナポリで行なわれていた記録があります。日本でも簡単な養殖は行なわれていたようですが、1673年(延宝1)安芸国草津で小林五郎左衛門がアサリやハマグリを囲った秦(ひび)にマガキが多く付着して成長したこと着想を得て養殖を始めたのが最初の記録です。さらに、20世紀に入った1923年に妹尾秀実と堀重蔵が筏による垂下養殖法を考案、養殖技術が著しく進歩しました。
     内湾の海水温が24〜25℃になる5〜8月がマガキの産卵期で、海中を遊泳している幼生が0.4mmほどに成長すると、岩などに定着し始めます。この時にカキ殻やホタテ殻を連ねたコレクター(付着器)を海中に入れ稚貝を付着させて採苗する。付着した稚貝の成長は速く、4〜5日でゴマ粒くらいになります。これが種ガキと言いますが、この種ガキは宮城県が主産地で、養殖は広島県、有明海、宮城県などで盛んです。この種ガキを筏式垂下養殖で育てるのですが、この方法では、種ガキが常に水中にあって品を食べるので、干潮時に露出する岩に付いているものより成長が速くなります。そして、春に種ガキを垂下すると、冬には収穫できる大きさに成長します。なお、北アメリカでもマガキの養殖をしていますが、水温が低く採苗ができないので、毎年宮城県などから種ガキを輸出しています。

  • スミノエガキ(C. ariakensis):
     マガキに近似した種で卵生、有明海で養殖されます。

  • アメリカガキ(C.virginica、英名American oyster):
     北アメリカ東岸からブラジルまで分布し、卵生。マガキに似ています。

  • ポルトガルガキ(C. angulata、英名Portuguese oyster):
     南ヨーロッパや地中海に分布し、卵生。アメリカガキと非常に似ています。

  • オーストラリアガキ(Saccostrea commercialis、英名Australian oyster):
     日本のオハグロガキに近い種で卵生、オーストラリアの主に東岸に分布しています。

  • ボンベイガキ(S. cucullata、英名 Bombayoyster):
     インドなどの熱帯地方に分布します。卵生。

  • ヨーロッパガキ(Ostrea edulis、英名 Europeanoyster):
     イギリスやフランスに多く胎生、日本のイタボガキ(O. denselamellosa)に似ており、海底の小石に付着します。

  • オリンピアガキ(O. lurida、英名 Olympia oyster):
     アメリカ西岸に分布し胎生、味が最もよいとされています。

  • その他:
     日本では、この他にイタボガキやオハグロガキ、ケガキ、イワガキなどを採取して食用にしていますが、養殖はしていません。

主な食用種
  • マガキ属
    • マガキ(真牡蠣):
       最も一般的な種で、日本でカキと言えばこれを指すくらいです。本来は冬が旬ですが、近年は大型で夏でも生殖巣が発達しない3倍体牡蠣も開発され、市場に出ています。広島、宮城、岡山産が有名ですが、韓国からの輸入品も相当あります。

    • イワガキ(岩牡蠣):
       マガキと対照的に夏が旬で、夏ガキとも称されます。殻の色が茶色っぽく、マガキに比べて大きいものが流通しています。天然物と養殖物の両方があります。

    • スミノエガキ(住之江牡蠣):
       有明海沿岸で食用にさていますが、余所には殆ど出回りません。マガキにごく近い種で、殻の表面はやや滑らかです。

    • シカメガキ:
       八代海や有明海、福井県久々子湖に分布するカキで、小振りながらクリーミーで濃い味が特徴。八代海周辺で食用にされていましたが、1946年頃に熊本県八代市鏡町からアメリカに種ガキが輸出され、現地で養殖が進むと八代海では生産されなくなました。なお、アメリカに輸出されたシカメガキは現在もワシントン州沿岸を中心にクマモトの名で養殖されています。

  • イタボガキ属
    • イタボガキ(板甫牡蠣):
       かつては多く食用にされ、能登半島や淡路島周辺が有名な産地でしたが、現在は瀬戸内海地方で僅かに市場に出回る程度で、絶滅危惧種状態となっています。食用のみならず、貝殻が最上質の胡粉の原料となる点でも重要で、現在、本種の復活と養殖技術開発の努力がなされています。

    • ヨーロッパヒラガキ:
       ヨーロッパ原産で、別名ヨーロッパガキ。イタボガキに似た外観で、輪郭が丸く平たい貝。市場では、フランスガキとかブロン、フラットなどとも呼ばれています。日本では宮城県気仙沼市の舞根などで僅かに養殖され、高級食材としてフランス料理店などに卸されています。かつてのヨーロッパ、特にフランスでカキと言えば本種のことを指しましたが、1970年代以降、寄生虫などにより激減し、需要を賄うために日本産のマガキを輸入して養殖するようになりました。それ以来フランスなどで流通するカキの相当部分は日本由来のマガキであるとされます。ちなみに、2011年に東日本大震災の津波により宮城県のカキ養殖施設が壊滅状態に陥った時には、フランスのカキ養殖業者達がかつて日本に助けてもらった恩返しとして養殖施設の復旧を支援してくれたこともあります。

カキとその産地
カキの産地

 日本の2009年におけるカキの水揚げ量は209200トンで、その内訳は広島が105900トンでシェア約50%とトップで、次に宮城が48100トンでシェア約23%、岡山県が18300トンでシェア約8%を占めており、以下、岩手、兵庫、三重、北海道、石川、福岡、長崎、香川、新潟、愛媛、京都と続いています。広島は大規模業者が多いのに対し、宮城は個人での生産が多く、カキ生産に携わる漁業関係者は宮城県が一番多いとされます。また、同年の輸入量は14,892トンで、輸入量の93%を韓国からのものが占めています。近年は、北海道厚岸町のシングルシード(蛎殻を砕いたものに各一匹の幼生を付着させて育てたもの)のカキ「カキえもん」、三重県の「的矢かき」「浦村かき」、広島県の3倍体のカキ「カキ小町」、北海道寿都町の「寿カキ」など、各産地毎にブランド化した牡蠣を売り出すなど新しい動きも見られます。特に三重県の的矢かきは生食かき養殖技術発祥の牡蠣でもあります。なお日本以外では、たとえば香港郊外の流浮山は牡蠣の焼き物などの料理が有名な養殖地でしたが、近くの深セン市の工業化によって海水の汚染が酷くなり、衰退しています。


日本全国の主な産地
  • 北海道:サロマ湖畔、厚岸町、知内町
  • 岩手県:山田湾、大船渡湾
  • 宮城県:牡鹿半島、松島沿岸
  • 新潟県:加茂湖、真野湾
  • 富山県:新湊市
  • 石川県:能登半島
  • 三重県:鳥羽市、志摩市
  • 京都府:久美浜湾
  • 兵庫県:播磨灘沿岸
  • 岡山県:備前市日生諸島、瀬戸内市虫明湾、浅口市寄島町
  • 広島県:広島湾一帯
  • 香川県:高松市牟礼町、さぬき市
  • 愛媛県:宇和島市
  • 福岡県:糸島半島
  • 佐賀県:太良町
  • 長崎県:九十九島、有明海、大村湾

広島産牡蠣

 全国一の生産量を誇る広島産カキには、瀬戸内の恵まれた自然環境と先人たちの努力に培われた450年の歴史があります。


 広島でカキの養殖が始まったのは、《天文年間(1532年〜1555年)、安芸国において養殖の法を発明せり》(『草津案内』大正13年発行)と記されているように、16世紀半ば(室町時代末期)のことだとされています。その当時の養殖法は、干潟に小石を並べてカキを付着させ育成を待って収穫する石蒔(いしまき)養殖法でしたが、450年以上の歴史を経て、現在は四角い筏(いかだ)からカキの種を持った貝殻を棒に付けて垂らし、成育を待って収穫する筏式垂下(いかだしきすいか)養殖法になりなした。現在の筏式へと大きく進歩した後、生産量を飛躍的に伸ばしています。こうした時代経過を経て、現在わが国のカキの全生産量の約50%以上、全世界の約15%を占めるまでになっています。

 広島産のカキは、丸みを帯びた艶やかな身と濃厚な味わいが特長です。カキの味は養殖場の自然環境に大きく左右されます。広島湾は、広島を代表する太田川をはじめ、多くの川から豊富な栄養分が運び込まれ、カキの餌となるプランクトンがよく育つため、味も良く、栄養価も高い高品質な広島産カキが育つのです。また、カキを養殖するに当たって、波が穏やかでないと筏が壊れたり、吊るしたカキがこぼれ落ちたりしますが、その点で広島湾は周りが島や岬で囲まれているため、波が穏やかなのでカキの養殖に最適なのです。餌となるプランクトンが多く、牡蠣の種苗となる幼生が多く存在するのもその理由の一つです。さらに年間の水温変化がカキの成育リズムにちょうど合っているのです。
 さらに広島産のカキは、他のどの産地よりも厳しい出荷基準が定められています。たとえばカキの筏も広島湾全体で現在約12,000台あり、自然環境循環の一部となっており、海を浄化する役割をも担っています。また、川から流れた豊富な有機物が植物性プランクトンとなりますが、それをカキが餌とすることで、広島湾が富栄養化になるのを防ぎ、赤潮の発生を抑える役割をも果たしているのです。それは、カキが1時間に何と10リットルもの水を飲んでいるからです。もちろん牡蠣がゴクゴクと飲み込んでしまうわけではなく、これはあくまでカキ1個が通す(濾す)水の量のことで、これによって植物性プランクトンを濾し取っているのです。宮島から江田島のエリアの面積とカキ筏の数を考えると、これは約1週間で広島湾の水を全部濾す計算になるわけですが、こうして栄養分豊富な美味しいカキに育っていくのです。カキ筏は、広島の風景の一部になっているだけでなく、広島湾の環境の一部にもなっているのです。
カキの旬の時期はいつ?


牡蠣の旬は11〜2月の冬、養殖の50%が広島産
 牡蠣の旬は冬、特に11〜2月頃の季節です。特に11〜2月に旬を迎えるのはマガキです。マガキは国内で最も流通している牡蠣で、一般に牡蠣と言うとマガキを指します。一方、数は少ないですが、主に日本海側で養殖されているイワガキは6〜8月の夏に旬を迎えます。国内で流通している牡蠣は養殖が大半で、そのうち5割超が広島産で、広島に次ぐ産地は、宮城、岡山、岩手県などが挙げられます。なお、パックで市販されている牡蠣は生食用と加熱用とに分けられます。生食用は一定時間紫外線殺菌したもので、ウイルス数は少ないが、その代わり旨みは多少落ちます。一方、加熱用は殺菌せずに、水揚げ後直ぐに出荷したもので、ウイルス数が多く、生食はできませんが、旨みは多い傾向にあります。

11月23日はカキの日
 11月23日は、その昔は収穫に感謝する日であり、現在は勤労感謝の日として「勤労を尊び、生産を祝い、感謝し合う」日となっています。「この日に栄養分豊富なカキを多くの人に食べてもらい、日頃の勤労の疲れを癒して欲しい」という意味から、11月23日は勤労感謝の日であると共に、2013年に全国漁業協同組合連合会(全漁連)によって「カキの日」と制定されました。

カキが食べられない月
 産卵期にはカキは精巣と卵巣が非常に増大し、食用とはなりません。一般にカキとして認識されているマガキの場合は、グリコーゲン含量が増える秋から冬にかけた時期が旬とされており、英名に「R」のつかない月、すなわち、May、June、July、Augustの5、6、7、8月は、ちょうどカキの産卵期で、食用には適さないとされています。ただし、春から夏に旬を迎えるイワガキと呼ばれる種類のカキもあり、それぞれ養殖も盛んであることからマガキに限らないならば通年食べることができます。また産地によっては、水温などの条件によって旬が変わることもあります。

食用としてのカキ
カキの食用史

 貝塚からの出土例を見ると、縄文期の日本人が食べた貝の中でハマグリに次いで多かったものがカキです。また、『延喜式』には伊勢からの貢納物のうちに「蠣,礒蠣」と見えます。礒蠣は「アラカキ」と読まれていますが、礒を冠していることから、或は殻付きの生ガキだったのかも知れません。近世前期には吸物や酢ガキ、串焼き、殻焼き、杉焼きなどがよく行なわれた料理で、産地としては三河や尾張、伊勢、江戸などが知られています。後期になると、《畿内に食する物、皆芸州広島の産なり、尤名品とす》(『日本山海名産図会』)と言われるほど広島の養殖カキの声価は高まっていました。なお杉焼きというのは、杉箱の底に塩を海苔で厚く塗りつけて火にかけ、箱の中に味噌を溶かして魚鳥野菜を煮るもので、現在行なわれているカキの土手焼き(土手鍋とも)はこれを簡便化した料理とも言ます。
食材としてのカキ

 カキには、グリコーゲンの他、必須アミノ酸を全て含むタンパク質やカルシウム、亜鉛などのミネラル類をはじめ、様々な栄養素が多量に含まれるため、カキは「海のミルク」と呼ばれることはよく知られていますが、食材として、カキはカキフライのような揚げものや鍋物の具にして食べる他、新鮮なものは網焼きにしたり生食したりしています。また、カキの食用としての歴史は非常に長く、世界中で食され、人類が親しんできた貝の一つでもあります。一般的に肉や魚介の生食を嫌う欧米食文化圏において、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、古代ローマ時代から珍重され、養殖も行なわれており、生ガキはフランス料理におけるオードブルとなっています。また、生ガキをメニューの中心に据えるオイスターバーと呼ばれるレストランも存在します。先にも触れた通り、ナポレオンやバルザック、ビスマルクなどがカキの愛好家であったことが知られています。一方、日本でも縄文時代ごろから食用されていたとされ、多くの貝塚からカキの殻が発見されており、ハマグリに次いで多く食べられていたと考えられています。また、室町時代頃には養殖も行なわれるようになりました。大坂では明治時代まで広島から来るかき船が土佐堀や堂島、道頓堀などで船上での行商を行ない、晩秋の風物詩となっていました。かつては広島や東北などの産地から消費地まで輸送するのに時間がかかったため、日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、専ら酢締めや加熱調理で食されました。日本人では武田信玄や頼山陽などがカキの愛好家であったことが知られています。なお、日本人がカキを生で食べるようになったのは欧米の食文化が流入した明治時代以降で、生食文化が欧米から輸入された珍しい食材なのです。
カキ料理

 カキの殻の表面は剃刀の刃のように薄いものが重なっており、生食の際には軍手などの手袋を用いないと掌に無数の傷が付くことがあります。ちなみに、網焼きや生食では、カキの身だけでなく、汁もともに吸って食します。多くの人はカキの身にのみ栄養があると考えていますが、カキの身が浸されている殻の中の海水を含む汁にも多くの栄養素が含まれていることが知られています。


生食
 カキの殻を合わせ目からナイフ状のヘラを差し込み、貝柱を切断してこじ開け、身をつまみ出して食べます。レモン汁や食酢等を使った酸味のある調味ダレを添えることもあります。

焼き牡蠣
 殻のままのカキを網の上で焼き、殻が開いたら食べます。焼く際、平らな面をまず焼くことで、貝の汁を残しつつうまく開けることができます。

カキフライ
 カツレツの手法によって生のカキに小麦粉をまぶし、溶き卵をくぐらせてからパン粉をつけて油で揚げます。

カキの天ぷら
 中国広東省などでは厚めの衣を付けた天ぷらが好まれています。

カキの土手鍋
 広島県の郷土料理で、土鍋の内側の周囲全体に味噌を厚く塗った中にカキとネギやその他の具材を入れて加熱し、味噌が溶け出したら食べます。

カキ鍋
 季節の具材と共に煮る鍋料理の一つで、土手鍋とは異なります。

カキ飯
 カキの煮汁でご飯を炊き、炊き上がったところでカキを混ぜ、数分ほど蒸らして作ります。厚岸駅や広島駅では駅弁にもなっています。

カキカレー
 カレーライスの具にカキを使ったもので、広島などで供されたり、レトルト食品として売られています。

お好み焼き
 広島風お好み焼きの具材としてポピュラーです。また、お好み焼きの具にカキを使ったものでは岡山県の備前市日生地区のカキオコも有名です。

カキの燻製
 缶詰や真空パックで流通しています。

カキ入り卵焼き(?仔煎、オーアチエン)
 台湾や中国福建省、広東省の一部で一般的な料理で、お好み焼きのように平たく焼いてから、甘い味のタレをかけて食べます。

カキ粥(台湾語:?仔粥、オーアティオッ)
 台湾や広東省(特に汕頭市)、香港などで好まれる料理のひとつで、カキの剥き身を米の粥に入れ、揚げたネギや広東セロリ、コリアンダーなどを添えたものです。

カキスープ(台湾語:?仔湯、オーアトゥン)
 台湾などでは生姜の味を利かせたカキのすまし汁にも人気があります。

カキを利用した調味料


カキ醤油
 広島県や厚岸町(北海道)で水揚げされるカキの出汁を用いて醤油が製造されています。

カキ油
 カキ油(オイスターソース)は中華料理の重要な調味料で、中国マカオのものがよく知られています。

干しガキ
 干しガキ(??、??、ハオチー)は中国広東省で製造、使用されている調味用食材です。カキの剥き身を塩茹でしてから日干しにしたもので、旨みを出すのに使われています。

食用以外に利用されるカキ


薬用として利用されるカキ
 貝殻は牡蠣(ボレイ)と言い、焼成してから粉砕した粉は『日本薬局方』にボレイないしボレイ末として記載される生薬です。なお、ボレイの歴史は古く、梁の陶弘景が『神農本草経』を修訂した『神農本草経集注』に収載されています。現在市販されているものはマガキの左殻が普通です。
 ボレイ末は炭酸カルシウム (CaCO3) が主成分で、リン酸塩や他マグネシウム、アルミニウム、ケイ酸塩、酸化鉄などを含有しています。処方例として、安中散や桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯などに使われています。なお、農薬として長期的に使用すると、除草効果(雑草の根張りが悪くなる)があるとされています。薬理作用としては、カキ肉には血糖低下(カキ身エキス)や免疫増強作用(中性多糖類)、牡蠣制酸などの作用があるとされています。一方、薬用以外には天然炭酸カルシウムとして、また1000℃程度に焼成すると牡蠣灰などとも呼ばれる酸化カルシウム (CaO) が主成分のものとなるので、消しゴムの添加剤などの工業用や食品添加物、砂糖精製用助剤などに利用することもあります。

カキのその他の利用法

  •  牡蠣殻には鳥に必要なカルシウム分が豊富で、そのため、ぼれい粉の名前で鳥類の餌として供給されています。

  • 養殖
     カキの養殖用の筏(カキ筏)を用いて養殖が行なわれています。天然の環境を利用して半養殖の形で採取することが多く、海苔の養殖などにおいて海苔の糸状体が蛎殻に付着することを利用し、採苗に貝殻が利用される場合もあります。

  • 海水の浄化
     二枚貝は水中の懸濁態物質やプランクトンを取り込むため、カキを収穫することで水中の栄養塩の回収に繋がります。特にカキは濾過量が他の二枚貝に比べて多いとされています。米国チェサピーク湾では、オイスターガーデニングと呼ばれる水質浄化活動も行われています。カキの擬糞はゴカイなどの底生生物の餌となり、底生生物は魚類の餌となりますが、過剰なカキ養殖などで底生生物による分解能力を超えて擬糞が発生すると、低層が貧酸素化し、底泥もヘドロ化することがあります。

  • 胡粉
     日本画によく使われる白色の顔料で、岩絵具の一つにも分類されます。

  • 肥料
     粉砕された殻がカキ殻石灰などの名前で、有機石灰の一種として供給されています。消石灰と異なり、作物に有効な微量元素を多く含んでいるとされます。


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【2】栄養豊富なカキ

 カキはその美味しさだけでなく、「海のミルク」と言われるほど栄養も豊富です。本節ではカキの栄養とその健康効果を取り上げました。
海のミルク〜カキの成分は海の縮図!?〜

 他の貝類や食べ物に比べ、カキの栄養成分がなぜここまで豊富なのかはまさに謎と言ってよいほどです。カキはよく「海のミルク」と言われますが、その理由はカキには人が必要とする殆ど全ての栄養素を含んでいるからです。蛋白質や糖質、脂質などの基本的な栄養素はもちろん、旨味のもとになるグルタミン酸やグリシン、アスパラギン酸なども含まれています。さらにビタミンB・D・E・Fを含有しており、その他にも亜鉛やカルシウム、リン、鉄、銅、マンガン、ナトリウムも揃っています。しかも、カキ自身は消化がよいばかりではなく、他のものと一緒に食べると、その消化も助ける働きを持つ勝れた存在なのです。

 カキは海中で移動することがなく、どんな環境下にあってもじっとそこの止まっているので、海のあらゆる栄養素を吸収して貯え、活性酸素にも負けない強靭な免疫力さえも持つことができているのではないかと言われています。さらにカキは、環境状態の変化によって自らの性を転換してしまうミラクル機能も備えているのです。
 カキという天然の生物の中で保たれた栄養、その相互バランスと、相乗成分効果はとても人為的に模倣することは不可能です。様々なサプリメントや健康食品が続々と登場する中で、カキはまさにそれらを圧倒するものがあると言ってよいでしょう。


カキと栄養
 カキは、ビタミンB1、B2などのビタミンや亜鉛などのミネラル、タウリンなどを豊富に含んでいる食品です。また、カキのタンパク質は、全ての必須アミノ酸と同時に12種以上の他のアミノ酸を併せ持っている良質のものです。
 カキのビタミン類はビタミンA・B1・B2・B6・B12・C・ビオチン・コリン・イノシトール・葉酸などが含まれています。また、ミネラル類はカルシウム・カリウム・リン・鉄・ヨード・マンガン・マグネシウム・銅・亜鉛・コバルトなどが含まれています。また、私たちの活力源となるグリコーゲンも豊富に含まれています。

元気の元
 カキの成分の中でも代表格といわれるのがタウリンですが、実はタウリンは体内の殺菌や消毒、解毒の作用をする白血球の中に多く存在しているものです。ですから、病気や傷、ストレスなどがあると体内のタウリン量は急増するのですが、一方で身体はこれを取り去ろうとするのです。従って、カキを食べれることで健康の基本となるタウリンのパワーを摂ることができるのです。

活動力の源泉
 三大栄養素の一つである糖質は、体内に入るとブドウ糖や果糖、乳糖などに分解されて吸収されてゆきますが、これらの成分はエネルギーの源でもあります。そのブドウ糖が肝臓に入ると、グリコーゲンになって蓄えられたり、血液を通して筋肉や臓器に入って利用されますが、このグリコーゲンをたくさん持っているのがカキなのです。かつて野口英世はグリコーゲンの需要性を普及させるためにカキを食べることを推奨したと言われます。

カキに含まれる主な成分
  • ミネラル
     カキの栄養素で特筆すべきは、亜鉛やカルシウム、鉄、カリウム、マグネシウム、リン、銅、ヨード、セレンなどの多彩なミネラルがバランスよく豊富に含まれていることです。特に亜鉛はあらゆる食品の中でトップの含有率を誇っています。牡蠣に含まれる主なミネラルとしては、亜鉛、ナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、銅、セレン、クロムリチウム、コバルト、ヨード、バナジウム、モリブデン、硫黄が挙げられます。

  • ビタミン
     目や肝臓の働きを活発にするビタミンAや貧血を予防するビタミンB6、肝機能の改善やボケ防止に効果のあるビタミンB12など多くのビタミンがカキにはバランスよく含まれています。牡蠣に含まれる主なビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1・B2・B6・B12、ビタミンC、コリン、イノシトール、ビオチン、葉酸が挙げられます。

  • アミノ酸
     体内で合成できないアミノ酸である必須アミノ酸の全てがカキには含まれています。特に血栓の予防や高コレステロール及び高血圧の解消、心筋梗塞の予防効果のある成分として注目されるタウリンがカキにはたくさん含まれています。カキに含まれる主なアミノ酸としては、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニールアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、ブロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファン、シスチンが挙げられます。

カキの栄養と健康効果


お酒とカキ
 カキは「酒毒を消す」と言われる通り、二日酔いや悪酔いの防止にも効果があります。
 アルコールが体の中に入るとアセトアルデヒドという毒物に変化しますが、カキはこの解毒に役立ちます。また、良質のタンパク質がアルコールから肝臓を守ってくれます。お酒を飲む時には、余り油っこいものばかりを食べず、カキ料理はもちろんイカの刺身や豆腐、納豆、トロロイモ、サンマなどの良質のタンパク質を含んだ食べ物を食べるよう心懸けましょう。

貧血とカキ
 カキは貧血症の改善に良い食べ物として知られています。その証拠に、古書にも「婦人の気血を増す」とあるように、カキは貧血の改善には理想的な食べ物です。
 カキには良質のタンパク質と同時に造血に欠かせない鉄や銅、コバルトなどのミネラルが豊富に含まれています。また、造血ビタミンとして知られるビタミンAやB1、B2、B12、葉酸なども備わっています。抗貧血食の代表にはレバーが上げられていますが、カキはレバーにも決して引けを取りません。むしろシーズン中にはレバーを食べるよりも、美味しいカキを食べている方がずっとよいかも知れません。なお、貧血予防にカキを食べる時は、火や熱を加えて温かくして食べた方がよいとされます。このように、カキには様々な有効成分が含まれていますが、その中でも銅を含むミネラルの働きが注目されるようになりました。よく貧血を治すには鉄分をよく摂るようアドバイスされることが多いと思いますが、その鉄の造血作用も銅がなければ行われなりません。なぜなら鉄はヘモグロビンを生成しますが、銅はその生成に必要な酵素の活性を高めるからです。そのため、貧血の症状を少しでも楽にしたい方はカキを摂るようしましょう。ちなみに、銅の1日の必要量は3mgほどですが、しかし、銅は過剰摂取を続けると神経障害を起こすこともありあるので、必要量を守るようにしましょう。

目と肝臓とカキ
 肝臓が疲れて弱ってくると、目もしょぼしょぼして来ますが、こんな時にカキを食べると、目はしっかりしてきます。もちろん人間の身体というものは一箇所だけが悪くなるというものではありません。また、病気というものは身体全体の機能低下がその人の身体の一番弱い部分に現われたものでもあります。従って、カキも目だけによいというだけでなく、カキによって身体全体の活力を増すために肝臓も目もよくなると考えた方がいいでしょう。

冷え性とカキ
 女性には冷えや便秘で悩む方が多いとされますが、こうした女性に共通して見られるのが貧血などがいっしょにあることです。こんな場合には、カキを生で食べるよりも、鍋物やフライなどにして温めて食べた方がよいとされます。ただ2〜3日カキを食べたからと言って、こうした症状が改善されるというわけではありませんので、やはりできるだけ毎日続ける必要があります。

カキで美肌になる
 カキは顔色を美しくして肌をきめ細かにするとされいて、女性にとっては大変有難いことです。事実カキをよく食べる女性にはシミも少なく、色白のモチ肌と呼ばれるしっとりとした肌をしています。これはカキに含まれるメチオニンやシスチン、タウリンなどの硫黄を含んだアミノ酸によるところも大きいとされます。よく硫黄泉に入ると、肌はつるつる、スベスベになり、自分で触っても気持ちがよくなりますが、カキにはそのような働きがあるのです。そのため、カキは美容食としても最高です。水分代謝もよくなるので、ぽちゃぽちゃとした水肥りタイプの人は身体が引き締まってきます。事実かどうか試してみたい人は、カキを食べ始めてからのお化粧の乗り具合を注意して観察してみて下さい。皮膚の細胞が生き生きとして来るので、お化粧が肌にしっくりとなじむと同時に、周囲の人々からキレイになったと言われること請け合いです。

カキとビタミン・ミネラルの関係
 ビタミンとミネラルはエネルギーにはなりませんが、身体の働きを正常に保ち、エネルギーを作るために欠かせない物質で、どれか一つでも欠乏すると、私達の身体はたちまち変調を来してしまいます。ところが、最近の食べ物からはビタミン、ミネラルがどんどん減少しています。最近カルシウム、カリウム、マグネシウム、ヨード、亜鉛、コバルトなどのミネラルの効用が発表されるようになりましたが、中でも亜鉛の研究が目立ちます。亜鉛が味覚障害に効果のあることや糖尿病、関節リウマチ、悪性腫瘍などで体内の亜鉛が減少すること、また、亜鉛が不足すると発育不良や貧血、下痢、食欲不振なども起こります。亜鉛は体内の50種以上もの酵素を作ることなどでも知られていますが、まだ未知の部分が多いのが現状です。カキには牛乳の35倍、ほうれん草の7倍もの亜鉛が含まれています。また、亜鉛はセックスミネラルとも言われており、中国では滋養強壮・精力増強によい食材としてカキが利用されています。

鰻の三倍の「亜鉛」で精力増強!
〜亜鉛が全食品でトップクラス!代謝の促進、生殖機能の改善に〜
 カキの栄養成分と言えば、鰻の三倍はあるという亜鉛の存在でしょう。カキは全食品の中でも亜鉛の含有量がトップクラスの食品なのです。これは、カキ二粒で1日の必要量を摂取できるほどの量です。亜鉛はミネラルの一種で、新陳代謝に欠かせない栄養素です。亜鉛は生殖細胞の代謝に不可欠な栄養素で、その他、味覚を正常に保つ効能や、生殖機能や性欲を正常に保つなどの効能もあります。DNAやタンパク質の合成とも深く関わっているため、免疫力や代謝をアップさせる効果も期待できます。従って、亜鉛は体内を若々しく健康的に保ち、精力もバックアップしてくれる存在です。

鉄分や銅、ビタミンB12も豊富に!〜 女性の貧血予防にも効果大〜
 牡蠣は鉄分や銅、ビタミンB12のミネラル、ビタミン類を豊富に含んでいます。鉄分はヘモグロビンの構成成分となり、銅は鉄の吸収を助ける働きをします。また、ビタミンB12はヘモグロビンが合成されるのを助ける補酵素となります。また、鉄分や銅、ビタミンB12は何れも貧血を予防する効能があり、月経のある女性には特に重要な栄養素となっています。

グリコーゲンもたっぷり〜エネルギーを蓄え、疲れにくい身体へ整える作用も〜
 牡蠣にはグリコーゲンがたくさん含まれています。グリコーゲンは多糖類の一種で、エネルギーを貯蔵しておくための物質です。通常は肝臓や骨格筋などに蓄えられており、運動などの際にエネルギー源として活用されます。そのため、カキなどグリコーゲンを含む食品を定期的に摂取することで、疲れにくい身体を作ったり、血糖値を調整するなどの効果が期待できます。

タウリンで二日酔いの予防・改善!
 カキにはタウリンも豊富に含まれています。タウリンは、カキをはじめ、魚介類や貝類、タコ、イカなどに多く含まれます。タウリンは含流アミノ酸の一種で、筋肉や胆汁酸と結合して存在している栄養素です。タウリンには身体や細胞を正常に保つ効能(ホメオスタシス)があり、肝臓の代謝を改善する働きやコレステロールを下げる効果、血圧を下げる効果などがあり、二日酔いの予防・改善の効果が期待できます。また、アルコールを分解する過程で亜鉛が使われるため、亜鉛とタウリンとを同時に摂取できるカキは、呑みすぎによる不調の改善にとても適しているのです。もちろんカキを食べれば暴飲暴食をしても大丈夫というわけではありません。適度な飲酒量を保った上で、不調の際のサポート役としてカキを取り入れましょう。

骨格の形成や情報の伝達機能などに効果があるカルシウムやマグネシウムも豊富
 カキにはカルシウムやマグネシウムも含まれています。カルシウムやマグネシウムはミネラルの一種で、何れも骨格の形成に欠かせない栄養素です。また、カルシウムは細胞の機能調整を、マグネシウムは代謝を促す補酵素になるなど、どちらも生命活動に重要な役割を果たしてくれる存在です。

リジンで育毛効果も!
 カキに含まれるリジンには髪の健康を保つはたらきがあります。髪の材料となるタンパク質の合成に関わる亜鉛と一緒に摂取できるため、カキは育毛効果も期待されているのです。さらに亜鉛には肌の新陳代謝をサポートして、肌荒れなどの肌トラブルを予防・改善する働きや、抗酸化効果による老化抑制の効果も期待することができます。そのため、カキを食べることで肌や髪を若々しく保つことが可能になります。このように、海の栄養素を豊富に取り込んだカキは、健康増進やアンチエイジングに欠かせない栄養素の宝庫です。日々の食事などにカキを食材として積極的に取り入れてみてはどうでしょうか。

参考:カキ肉エキスとは?
 カキ肉エキスはカキから重要な栄養素を抽出し濃縮したもので、日常生活で不足しがちな栄養素を補うには最適の栄養バランスになっています。もっとも、ひと口にカキと言っても、世界中で数百種類の様々な形状、大きさのカキがありますが、その中でもマガキを使用したものがオススメです。
 マガキはイタボガキ科の軟体動物で、様々な栄養素が多く含まれており、海由来の食品としては完全栄養食に近い存在であると言えます。他の品種のカキと比べて、環境の変化に強く、栄養のバランスも優れているという特徴があります。成分的な特徴としては、亜鉛をはじめとするミネラル類やタウリン、グリコーゲン、核酸関連物質(ヌクレオチド)などが豊富に含まれています。その反面、重金属やアレルギー因子など好ましくない物質も含まれており、さらに季節によって栄養素が大きく変動するという欠点もあります。カキ肉エキスはこれらのマイナス要因となるものを排除し、年間を通じての栄養補給を可能とした健康食品でもあります。


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【3】美味しいカキの安全な食べ方

 本節では、カキの美味しい食べ方、新鮮なカキの見分け方を取り上げました。
新鮮な牡蠣の見分け方


鮮度のよいカキ
  • 殻付きのカキの場合、殻が全体的に丸い形で厚みがあって傷が少なく、殻が固く閉じているか、触れただけで殻が閉じるもの

  • 剥き身のカキの場合、貝柱が透明で全体的に丸みがあり、形が潰れていないもの

  • 乳白色で身がこんもり盛り上がり、艶があって弾力性の高 いもの

  • 外とう膜(黒い縁のビラビラした薄い膜)が盛り上がったように縮んでいるもの

  • 貝柱が身から離れず、半透明なもの

  • カキ独特の澄んだ香りのもの

鮮度の低下した牡蠣
  • 形が崩れ、全体がでれっとして締まりがないもの

  • 艶がなくなり、白けた色になっているもの

  • 貝柱が乳白色だったり黄色味を帯びてしまったもの

  • 白い濁り水が出ているもの

加熱用のカキを生で食べても大丈夫?
「生食用」と「加熱調理用」のカキの違い
〜生食用のカキの生産地(取れる場所)は決められている!〜

 カキには生食用のものと加熱調理用のものの二種類があります。

 生食用のカキと加熱調理用のカキの違いは採れた海域の違いによるもので、カキの鮮度による違いではなく、指定された生産地(海域)で獲れたか否かの違いです。新鮮=生食と思っている人も多いのですが、実際には生産地の違いが重要となりますす。簡単に言えば、海が綺麗なところで取れたカキか、海が汚い場所のカキかの違いだと言ってよいでしょう。ちなみにカキの国内生産地ランキングは、1位が広島、2位が宮城、3位が岡山です。カキの生産量が一番多いのは広島ですが、生カキの生産量で一番多いのは宮城で、特に宮城県の松島産の生ガキは有名です。
 また、生食用のカキには規格基準があり、その殺菌方法なども細かく決められています。そのため、生食用のカキは収穫から出荷までに時間がかかります。一方、加熱用のカキは、収穫後きれいに洗ってそのまま出荷されるので、生食用の牡蠣が加熱用の牡蠣より新鮮であるということではありません。生食用のカキは、ただ洗うだけでなく、カキに付着した雑菌を殺すための浄化洗浄をするめ、栄養分や旨味が抜けてしまい、身が痩せて少し水っぽくなったりします。従って、そのような手を加えず、自然の状態に近く、旨味成分や栄養分を残しているのはむしろ加熱用のカキなのです。ちなみに、生食用のカキは食品衛生法において成分規格と加工基準、保存基準が決められており、また、各自治体においても「かき取扱いに関する指導要領」が定められていて、生食用かきの指導基準が設けられています。なお、東京都福祉保健局の生カキきの衛生的な取扱いには、生食用のカキ限っては消費期限や保存方法以外にも採取海域の表示も義務付けられており、万が一にも食中毒が発生した場合は、どの海域のカキによって食中毒が発生したかを直ぐに調査できるようになっています。
カキの保存方法


直ぐに冷蔵保存を
 カキが届いたら、水洗いをせず、そのまま冷蔵庫で保存するようにします。寒い季節だからと言って冷蔵庫に入れず、置きっ放しにしてはいけません。

冷凍保存の場合は
 解凍した時にドリップ(解凍液)がたくさん出て美味しくなくなってしまうので、水洗いしたカキや鮮度の低下したカキは冷凍しないようにして下さい。

剥き身のカキの場合
 購入してきた状態のままで冷蔵保存します。中に水分が一緒に入っている時は、水分を捨てずに保存しましょう。保存期間は1〜2日です。

殻付きのカキの場合
 殻を開いたりせず、そのままの状態で冷蔵庫に入れます。乾燥に弱いのでキッチンペーパーなどに塩水を含ませて(びしょびしょ感がある程度)殻付きカキを包みます。それをボールなどに並べ入れ、ラップをかけてから冷蔵庫で保存して下さい。保存期間は2〜3日です。

参考:カキの賞味期限
 カキの賞味期限は、手元にカキが届いて大体3日が目安です。翌日のお届けができない地域などは異なる場合もあるので、箱の外側に表示されている賞味期限を必ず確認するようにしましょう。また、商品到着後は直ぐに冷蔵庫で保存して、できるだけ早く食べるようにしましょう。

加熱用のカキは絶対に生で食べないように

 生食用のカキからカキ特有の旨み成分が洗浄殺菌のために抜け出しているからと言って、加工用のカキを生で食べることだけは絶対に避けて下さい。従って、生で食べるなら「生食用」、カキフライや鍋など加熱して食べるなら「加熱用」を選んで食べるようにして下さい。ただし、体調が余りよくない人や普段カキを食べ慣れていない人は、生食でカキを食べることや、一度にたくさんの量を食べることはオススメできません。そのような人は、「中心温度85℃で約1分」を目安にしっかりと火を通してカキを食べるようにして下さい。生のカキをどうしても食べたいと言う人は、どこで採れた(産地の)カキかきちんと調べる事も大事だと言えます。


 加熱用と書かれているのには当然ながら理由があります。生食用のカキについては、厚労省の食品別の規格基準で詳細な決まりがあります。それによると、細菌数が牡蠣1gにつき5万以下でなければならないという基準から始まり、加工や保存方法、殺菌方法などについて詳細な基準が設けられています。「加熱用」と書かれたカキは、この生食用の基準を満たしていないもので、従って、そのカキを生で食べるということは「安全な基準値を超えた細菌を多く体内に取り込む危険性がある」ということになるのです。

 もっとも「加熱用」として販売されているものでも、その数値が生食用と殆ど変わらないものもあれば、そうでないものもあります。ですから、たまたま大丈夫だったからと言って、今度も大丈夫とは限りません。従って、100%の確率ではありませんが、食中毒になる可能性は、生食用を食べるよりも加工のようカキを生で食べる方が遙かに高いのです。
 もしもうっかり加工用のカキを生で食べてしまったという場合は、もう後の祭りではありますが、念のために殺菌の意味で緑茶を飲むなどしてみてはどうでしょうか? 緑茶に含まれるカテキンには、身体に入り込んだノロウィルスが体内に吸収されるのを抑える働きも期待できます。ノロウィルスが体内に吸収されずに排出されれば、激しい食中毒も少しは抑えられるかも知れません。カキに当たると、激しい下痢や嘔吐、発熱などで数日寝込むことも少なくありません。加熱用のカキを誤って生で食べることのないようくれぐれも注意して下さい。なお、同じ菌を保有するものを食べても、食べた人の体調や免疫力によってその症状は異なるものです。特に抵抗力の弱いお子様や高齢者の方には注意が必要です。
妊婦はカキを食べても大丈夫?
妊婦はカキを食べても大丈夫か?

 結論を先に言えば、妊婦さんでもカキは食べても大丈夫です。その証拠に、妊娠中の病院食でもカキフライなどが出されたりします。特にカキは栄養素が豊富なので、正しい食べ方をすれば問題ないということになります。ただし、その場合には以下に挙げるような条件があります。


生ガキ、半生のカキは食べてはいけない
 妊婦、特に妊娠初期の場合には免疫力が低下されており、生ガキや半生のカキに多少でも付着したノロウイルスや腸炎ビブリオ、大腸菌が妊婦の身体に反応してお腹を壊すなど、カキに当たりやすくなっています。従って、妊婦は生ガキ及び半生のカキを食べず、充分に加熱したカキを食べるようにして下さい。ちなみに、85℃以上で1分間加熱することで、これらの菌の全てが死滅することが確認されています。ただし、自分で生ガキや加熱用のカキを買ってきて調理するのは、その料理されたカキが半生の可能性があるので控えた方がいでしょう。カキフライや加熱した牡蠣を食べる場合は、市販されているカキフライや外食でカキを食べるようにしましょう。

量を摂りすぎてはいけない
 妊婦に限らず、普通の成人男性なども、加熱したカキを大量に食べることでカキの内部のプランクトン(緑色のもの)に含まれる貝毒を摂取してしまい、下痢を引き起こす場合があります。しかも、この貝毒は加熱しても死滅しません。貝毒の含有量は個体によって差があるのですが、一般的に5以上食べると下痢などの症状が出る可能性があるとされます。妊婦の場合は、大事を取って1日牡蠣は3個までにするのがよいと言われています。

牡蠣は少量ならは妊婦の強い味方


 上で書いたように、加熱した加工用のカキ、1日3個まで、自分で調理せずに市販のカキか外食でのカキといった条件付きではあるけれども、妊娠中もカキを食べることができます。そして、この条件内ならばカキは妊婦にとっても大きな効果をもたらせてくれます。しっかりと条件を守ることで、妊婦でも問題なくカキを食べることが可能ですし、胎児の成長に役立ってくれるのです。


葉酸
 カキには牡蠣100g中に葉酸が40μg含まれており、これは魚介類の中ではトップクラスの配合量です。葉酸は胎児の細胞分裂を促し、神経管の合成する働きがあるため、妊婦にとっても特に欠かせない栄養素のひとつです。葉酸は1日400ug必要なので、カキを食べることでその10分の1を補うことが可能です。

亜鉛
 牡蠣100gに含まれる亜鉛は13.2mgでが、全ての食べ物の中でカキの亜鉛含有率が一番高いとされます。亜鉛は胎児のタンパク質の形成を司るため、妊娠中に亜鉛が不足すると、低体重、低身長の赤ちゃんが生まれてしまいます。


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【4】猛威を振るう新型ノロウィルス〜カキに当たらないために〜

 今年もノロウィルスが猛威を振るっています。カキは美味しいですが、当たることでも知られています。そのカキなどの二枚貝が食中毒の原因になっています。本節では、参考までにノロウィルスなど食中毒の予防法を取り上げました。
今年も流行するノロウイルス
東京都は患者多数!〜ノロウイルスやRSウイルスの感染者が全国的に増加〜

 国立感染症研究所は、11月9〜15日の期間中の感染症発生動向調査を11月下旬に公開しましたが、それによると、ノロウイルスが原因と見られる感染性胃腸炎やRSウイルス感染症の患者が全国的に増加していることが明らかになりました。また、関西の小児科医院で先月初め、入院患者7人に相次いで発熱や下痢などの症状が現われ、このうち10歳の女の子が死亡するというニュースがあったばかりです。

 食品などを通じて感染するノロウイルスによって引き起こされる症状は、嘔吐や下痢、腹痛などが現われます。ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は通年で発生していますが、特に冬季に流行する傾向があります。国立感染症研究所によれば、全国約3,000カ所の定点医療機関から11月9〜15日(第46週)の期間中に報告があった感染性胃腸炎の患者数は2万1,696人で、第42週(10月12〜18日)は1万393人だったため、約1カ月の間に1週間当たりの患者数が約2.1倍に増加していることになります。第46週において、都道府県別での感染者が最も多かったのは東京都(1,871人)で、以下、大阪府(1,680人)、福岡県(1,561人)、神奈川県(1,323人)、兵庫県(1,235人)と続き、前週と同じ地域が上位5つに入っています。
 またRSウイルス感染症は、RSウイルスによって引き起こされる呼吸器の感染症で、風邪のように発熱や鼻水などを伴う症状が現われますが、重度の場合は肺炎や気管支炎になるケースも見られます。生後数週間〜数カ月間程度の乳児が初めて感染した場合は重篤な症状が出る可能性が高いとされています。
 こちらも、同研究所によれば、全国約3,000カ所の定点医療機関から11月9〜15日(第46週)の期間中に報告があった全国の感染者数は5,465人。第42週(10月12〜18日)は3,861人だったため、こちらも1カ月間で1週間当たりの患者数は約1.4倍になっています。第46週に都道府県別での感染者が最も多かったのは536人を記録した大阪府で、以下、北海道(423人)、東京都(310人)、愛知県(258人)、埼玉県(250人)となっており、東京都はどちらも患者が多く報告されています。
新型ノロウイルス!〜今年のノロウイルスは感染力に注意〜

 近年インフルエンザ並みの流行を見せているノロウイルス感染症ですが、どうやら今年になって新型のウイルスが発生したらしく、先にも触れた通り2015年の秋から冬にかけて大流行する兆しがあるとのことです。新型となると、まだ一般に免疫がないので、感染の危険もそれだけ高まります。

新型ノロウィルス 感染力が高く、周囲でノロウイルスの感染者が現われると、集団感染となるケースも少なくありません。実際に小学校や中学校、高齢者施設などでは集団感染が起きていますし、ノロウイルス感染症による学級閉鎖なども今では珍しいことではありません。記憶に新しいところでは、2006年のホテルメトロポリタンで発生した集団感染では実に347人という非常に大規模な集団感染が起こってしまい、当時はかなり騒がれました。それまでは「排泄物や吐瀉物からのウイルス感染について警戒するように」と注意される程度で、ホテルなどの公共施設では特に予防策しか講じられてきませんでした。それも原因となって、ノロウイルス感染症を発症してしまった後の対応に問題があり、その結果347人もの感染者を出してしまったのです。ちなみに、ホテルメトロポリタンでのノロウイルスの集団感染の主な原因は残留吐物で、絨毯に付着していた客の乾いた残留吐物の上を人が歩くことによりノロウイルスが拡散しました。そして、拡散したウイルスをホテル内の人が吸ってしまうことにより、体内でノロウイルスが増殖し、大事件となってしまったのです。これを機に公共施設でもノロウイルス発症者が出た場合の対処方法も見直され、今ではこれほどの大規模感染はほぼなくなりました。
 ノロウイルスは僅か1日で100個ほどのウイルスが10万〜1億ほどに急激に増えると言われており、感染力のみならず増殖力も高い非常に危険なウイルスです。そんなノロウイルス感染症の流行シーズンがもう既に始まっています。しかも国立感染症研究所などの調査によると、2015年〜2016年にかけてのノロウイルスは新型ノロウイルスとなり、かつてない猛威を振るう恐れがあるとのことです。遺伝子配列を調べたところ、これまでとは違うウイルスの型が発見されたとのことで、新型ノロウイルスは従来からの変異型であることが分かりました。変異型なので多くの人々にまだ免疫がなく、これまでに人が体内で作ったノロウイルスに対する免疫も役に立たなくなってしまうのです。そんな訳で、今年の冬は例年以上にノロウイルスの予防をしっかり行う必要がありそうです。
食中毒とは何か?

 食中毒とは、専門的に言えば、有毒な物質が食物と共に経口的に摂取された時に起こる人体の機能障害(中毒)を言います。食中毒の原因となる病原物質は、細菌や自然毒(フグや毒カマスなどの動物性自然毒、毒キノコや毒ゼリなどの植物性自然毒など)、化学物質(メタノールやメチル水銀など)に分けられます。寄生虫によるものやウイルスによるものは食中毒としては扱いません。また、細菌性食中毒は更に感染型(サルモネラ菌属や腸炎ビブリオなど)と食品内毒素型(ブドウ球菌やボツリヌス菌など)、生体内毒素型(ウェルシュ菌や毒素型大腸菌など)に大別されます。食品内毒素型食中毒は、摂食時に既に大量の毒素が汚染食品中に産生されており、生体内で細菌が増殖してから症状を呈する感染型や生体内毒素型に比べて、摂食から発症までの潜伏期が短いのが特徴で、特にブドウ球菌食中毒では摂食後30分くらいで発症することも見られます。

 食中毒は日常生活の基本である衣食住に密接に関わっており、食品衛生上の重要課題でもあります。日本では食品衛生法(1947年施行)により食中毒患者の届出が義務づけられており、1952年以降は統計として体系化されています。食中毒の発生状況を見ると、近年事件数は減少しているにも拘らず、大型の食中毒が発生するため患者数に減少が見られず、毎年2〜4万名の届出があると言います。これは学校給食や外食産業の大規模化、そして、流通機構の変化によって同じ食品を多数の人が食べる機会が多くなったことが原因となっています。特にひと頃大騒ぎになった腸管出血性大腸菌O‐157による大規模な集団食中毒の多発によって、この菌による食中毒の年間有症者数は96年当時9000余名、死者数12名にも上りました。
 食中毒の原因食としては、魚介類とその加工品が最も多く挙げられます。発生場所で多いのは飲食店や家庭、旅館、仕出屋等です。食品営業者に対する監視体制としては、食品衛生法に基づく食品衛生監視員が各都道府県等に配置され、食品の製造や加工、保存、販売などの衛生状態を監視・指導しています。その一方で家庭での食中毒予防としては、冷蔵庫を過信しない、肉や魚など生ものとその他の食品を分けて扱う、手洗いの励行などの基本的な衛生事項の遵守が大事だと言えます。
日本人と食中毒

 食中毒は、日本では昔は「食傷」とか「食あたり」と言われました。生活環境と衛生観念の水準が低かった時代には、当然のことながら食物が細菌に汚染される機会はきわめて多く、また、慢性的な食料不足から汚染食品や腐敗食品を口にすることは日常茶飯事であったため、多くの人々、特に幼い子どもや老人、病弱な者がこの犠牲となりました。たとえば江戸時代の見聞記や小咄、川柳などにも食中毒の出度数が高く、痘瘡や麻疹などの疫病に次いで罹患率の高い疾病であったと言えます。江戸時代に最も多かった食中毒は細菌性食中毒で、今日と同じようにサルモネラ菌や大腸菌による感染型食中毒と、ブドウ球菌や腐敗菌による毒素型食中毒だったと考えられます。蘆川桂洲の『病名彙解』(1686)に、食傷として《其ノ症胸膈痞塞、吐逆、嚥酸、敗卵臭ヲ噫シ、食ヲ畏レ、頭痛、発熱、悪寒シテ、病傷寒ニ似タリ》とありますが、これは要するに嘔吐や下痢を主症とする細菌性食中毒の症状を示しています。江戸時代の医書などに「泄痢」「泄瀉」「痢病」など下痢を伴う胃腸病の名前がよく現われますが、その多くは食中毒と考えられています。これと並んで、昔はフグ中毒やアサリ中毒、キノコ中毒など自然毒による食中毒も多く見られました。特定の動植物の持つ毒性についての知識は一般にもかなり普及していたものの、有毒な野草や魚介類を口にする機会はやはり多く、様々な毒に当たる危険もやはりそれだけ多かったのです。こうしたことから、昔は解毒性のある薬草や食あたりに関する諺が庶民に広く親しまれていました。
カキと食中毒

 古くから食べられてきたカキではありますが、その一方でカキは「当たる」食品(食材)としても昔からよく知られています。カキの食中毒が注目されるのは、非加熱状態で食べられる機会が多いことと関係しています。また、現代において食中毒症状を引き起こす原因としては貝毒や細菌(腸炎ビブリオ、大腸菌など)とウイルス(特にノロウイルス)がよく知られていますが、そのどれも原因となる食材の生育環境(海水)に由来するものであり、二枚貝特有の摂餌行動などによって貝内部、特に消化器官(中腸腺など)に取り込まれてその毒性が濃縮されるものです。

 現代の日本国内で流通している生食用のカキは、食中毒を極力回避するために生産・流通段階で幾つもの対策が取られています。たとえば生食用として販売されるカキには加工基準が設けられ、カキそのものを対象として規格基準が設けられています。さらに保存基準や表示基準も規定されています。なお、貝毒以外の食中毒の予防のために注意すべきことは、先ず第一に充分に加熱することで食中毒を回避できること、また、カキを含むどのの二枚貝も同様の処理で食用にする限り食中毒の危険度に関しては変わらないということです。


貝毒
 貝毒は貝が捕食する海水中の有毒プランクトンを蓄積したもので、有毒のプランクトンの発生しやすい時期は3月〜5月です。その対策として、生育海水中の植物プランクトンの種類及び貝に含まれる毒が定期的に検査されています。また、貝毒は濾過海水中で一定期間飼育することでその毒の量を規制値以下に減毒できるとされています。

細菌
 細菌は海水中に常時一定数存在するもので、ごく少量であれば食中毒症状を引き起こすことはありませんが、気候や水質、保存方法などによっては細菌が大量に増殖することもあり、生食する際には注意が必要です。なお、現代の日本国内の生食用カキの場合は上流通段階では充分な対策が取られており、むしろ購入後に残った少量の細菌を増殖させてしまうような家庭その他の環境にカキをそのまま放置することの方が危険だと考えられます。
  • 腸炎ビブリオ
     20℃付近でおよそ10分間に1回と活発に分裂・増殖するものの、15℃以下では増殖は抑制され、70度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされています。また、経口摂取によって感染症状を引き起こす際には生菌100万個程度が必要であるとされています。夏期に海水温が20℃を超えるようような時期はやはり食中毒の原因となりやすく、以上のことから、20℃以上の環境に数時間置いておくだけで食中毒を引き起こす可能性があると言えるので、家庭で調理する際には充分に注意が必要です。

  • 大腸菌
     一般的には37℃付近でおよそ30分に1回と活発に分裂・増殖するものの、こちらも75度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされています。また、紫外線照射及び殺菌海水などの循環によって同菌への対策が為されていいます。

  • 赤痢菌
     現在、日本国内産についてはまず問題になることはないものの、韓国では2001年にカキが原因で千人規模の罹患者を出しました。この際、韓国産のカキが日本国内において国内産と称して流通していることが発覚しました。

ウイルス
 2000年頃よりノロウイルス感染症が特に注目されています。特に日本では「ノロウイルスと言えばカキ」という印象が広まり、特に2006年から2007年にかけてノロウイルス感染報道があるごとにカキの売上が減少しました。
 ノロウイルス感染力は85℃以上で1分間以上加熱することで破壊されるとされることから、中心部まで十分に加熱することが重要で、沸騰した湯で最低でも1〜2分程度、約180度前後の油で4分以上揚げることで食中毒の危険性は大幅に軽減するとされています。厚労省や保健所は二枚貝を内臓も含めて、食す際には内部まで充分に加熱調理すること、また、調理の際に使用した器具の充分な洗浄を呼びかけています。感染原因としては、感染者の排泄物に含まれるウイルスを下水処理場では充分に除去できないため、排水が流入する養殖海域で養殖される貝類などから検出されることが多いとされます。免疫のない者(1年以内に感染していない者や先天的に免疫ができない者)、抵抗力が弱い老人や子供などはウイルス感染を起こし、激しい感染性胃腸炎を引き起こすことがあります。通常1〜2日で治癒するものの、乳児や高齢者は重症となることがあります。

冬の食中毒とノロウィルス

 先にも触れたように、この冬、ノロウイルスが全国で猛威を振るっています。健康な大人が感染した場合は、2〜3日で回復しますが、子どもや体力の弱ったお年寄りなどは、場合によっては死に至ることもあるで注意が必要です。

 食中毒の原因は、一般にサルモネラや病原性大腸菌O-157などの細菌性食中毒、或はフグやキノコなどに含まれる自然毒食中毒が知られています。また、食中毒と言えば湿気が多く細菌の繁殖しやすい梅雨から夏の時期というイメージがありますが、しかし、冬季にはウイルス性食中毒が頻発し、その大多数はノロウイルスというウイルスが原因です。毎年10月頃から1 〜2月をピークに全国的に流行しています。
 ノロウイルスはヒトの腸内でのみ増殖するため、患者や感染者の糞便や吐物には大量のウイルスが含まれています。海水中のウイルスを二枚貝(アサリやカキ等)が溜め込む(=濃縮する)性質があり、[ヒト→糞便・吐物→トイレ→下水処理場→河川→海→二枚貝→ヒト」と自然界を循環しています。感染力が非常に強く、食中毒の他に糞便や吐物・手指を介して人から人へ感染します。また、ノロウイルスは乾燥すると空中に漂い、これが口に入って感染することもあります。特に保育園や小・中学校、病院、老人ホームなどの施設で人から人への感染が多く、冬〜春季(11月〜4月)に多発します。
ノロウィルスとは?


ノロウイルス感染症の特徴
 ノロウイルスとロタウイルスは共に下痢、嘔吐を主徴とする胃腸炎を起こしますが、ノロウイルスはロタウイルスに比べて幅広い年齢層に罹患する傾向があります。秋から年末にかけてはノロウイルスが、そして、1〜4月にかけてはロタウイルスが主に流行します。ノロウイルスはカキ等の二枚貝の生食による食中毒がよく知られていますが、僅かなウイルスが口の中に入るだけでも感染する、つまり人から人への感染力も非常に強いウイルスで、。乳児期から成人まで幅広く感染します。嘔気や嘔吐、下痢が主症状で、一般に症状は軽症ですが、老人や免疫力の低下した乳児では重症化して死亡することもあります。保育所や幼稚園、小学校などの小児や、病院や老人ホーム、福祉施設などの成人でも集団発生が見られることがあり、とにかく注意が必要です。

ノロウイルスによる食中毒はどこが違うのか?
  • 新鮮でもダメ! 冷蔵してもダメ!
     新鮮だからといって安心してはいけません。カキに限らず食べ物がノロウイルスに汚染されていれば感染の可能性があります。冷蔵してもウイルスは死んだりしません。

  • 非常に少量で発症
     非常に少量(数個から100個程度)でも感染しますから、“ちょっと汚したぐらい”と思っても安心できません。

  • 人から人に移る(感染症)
     人間の体内でのみ増え、糞便の中に多量に出てきます。感染力が強く、トイレの後の手指や嘔吐物の飛沫(=空気中に飛び散ること)からでも感染しますから特に注意が必要です。

  • 消毒薬が効かない
     消毒アルコールや塩化ベンザルコニウムなどの逆性石けん液(※洗面所等にある薬用石鹸液)では消毒効果が低いので、熱湯または次亜塩素酸を使用しましょう。

  • 感染しても発症しない人がいる
     米国での実験例では、ウイルスに感染しても症状が出ない人(=不顕性感染者)が32%であったと言われています。

ノロウイルス感染症の症状
 主な症状は吐き気や嘔吐、そして下痢です。通常は便に血液は混じりません。また、熱も余り高くならないことが多いです。通常これらの症状が1から2日続いた後治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の時もあります。ただ、小児では嘔吐が多く、嘔吐及び下痢は1日数回から、ひどい時には10回以上の時もあります。
 感染してから発病するまでの潜伏期間は短くて10数時間〜数日(平均1〜2日)で、症状の持続する期間も数時間〜数日(平均1〜2日)と短期間です。元々他の病気があったり、大きく体力が低下しているなどのことがなければ、重症になって長い間入院しないといけないというようなことはまずありませんが、ごく稀に嘔吐したものを喉に詰めて窒息するというようなこともありますので、くれぐれも注意が必要です。また、激しい嘔吐や下痢によって急激に水分を失うこともあるので、特に乳幼児や高齢者では脱水症状に特に気をつける必要があります。

ノロウイルス感染症の原因
 ノロウイルスによる食中毒は、以前はノロウイルスに汚染された牡蠣やアサリ、シジミなどの二枚貝によるものが最も多いと言われていました。ただし、ノロウイルスは貝類自体には感染しないと考えられていて、ウイルスが貝の体内で直接増殖するわけではありません。実際には貝は大量の海水を取り込み、プランクトンなどの餌を体内に蓄積するのですが、それと同じメカニズムで海水中のウイルスも体内で濃縮・蓄積されると考えられています。ところが、近年はこういった二枚貝が食中毒の原因となることは減少しており、牡蠣が食材とされる集団食中毒も激減しています。疫学的には牡蠣以外の食材、或は直接・間接的なウイルスへの接触による、原因の余りハッキリしない感染経路が圧倒的であると考えられています。
 人から人への感染は糞口感染とも呼ばれます。経口感染の場合、ノロウイルスは口から入ってきて、食道や胃を通って小腸の壁で感染し、増殖します。そして、増殖して多くなったウイルスが腸の中で便と混じってゆくわけですが、その結果ウとともイルスは感染者の糞便と共に排出される他、嘔吐がある場合は胃に僅かに逆流した腸液と共に嘔吐物にも混じって排出されます。そうして出て来た糞便や嘔吐物の一部は目に見えないような少量ですが、これが広範囲に飛び散ります。また、手洗いを充分にしないと、ウイルスは手の指の間などにしぶとく残っています。知らず知らずのうちに、衣服や食器など様々な経路で広がったウイルスがごく僅かに混入した食品などを介して再び経口的に感染して広がってゆくことになるのです。なお、しばしば聞かれるのは、まず子どもが感染性胃腸炎に罹って家で吐いたり下痢をしたりして、それを世話したお母さんが同じような症状を訴えて病院にゆくということです。またノロウイルスの場合、少数のウイルスが侵入しただけでも感染・発病が成立すると考えられており、僅かな糞便や嘔吐物が乾燥した中に含まれているウイルス粒子が空気を介して経口感染することもあると言われています。

ノロウイルス感染症の感染経路
  • 人から人へ
     感染している人の便や嘔吐物が手につき、ドアノブやタオルなどを介して感染することがあります。

  • 人から食品を介して人へ
     ノロウイルスの感染した人がウイルスの付いた手をよく洗わずに調理したため、食品にウイルスが付き、この食品を食べることで感染することがあります。

  • 食品から人へ
     ノロウイルスを取り込んだ二枚貝を生で、或は充分に加熱しないで食べることによって感染することがあります。

ノロウイルス感染症の予防法
ノロウイルス感染症の予防方法

 日頃からの予防方法としては、食事前やトイレの後などにおいて、まずは石鹸を使ってお湯などでしっかりと手を洗うことが大切です。また、食品中のウイルスは、加熱により感染性をなくすことができます。食品の中心温度が 85℃ 1分以上になるようにしっかり熱を通して食べましょう。さらに、下痢や嘔吐などの症状がある人は食品を取り扱う作業を控えましょう。

 感染経路を考えると、手洗い及び調理器具の衛生管理が重要です。手洗いは、調理を行なう前、飲食業を行なっている場合は食事を提供する前、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後などに、手袋をして直接触れないようにしていても必ず行ないましょう。石鹸を充分に泡立て、手の指の間、爪の間、手首などまでしっかり洗うことが大切です。石鹸自体にはノロウイルスを直接死滅する効果はありませんが、通常の水洗いでは落としにくい手の脂等の汚れを落とすことでウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。また、ノロウイルスの活動性を無くすための温度と時間については、現時点で正確な数値はありませんが、同じようなウイルスから推定すると、食品の中心温度85度以上で1分間以上の加熱を行なえば感染性はなくなると考えられています。そのため、特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱することが予防として有効です。なお、家庭内や集団で生活している施設においてノロウィルスが発生した場合、集団感染を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人の糞便や吐物からの二次感染、人から人への直接感染、飛沫感染を予防する必要があります。ノロウイルス感染による嘔吐や下痢では、嘔吐物や糞便ともに大量にウイルスが存在しているので、その取り扱いには十分に注意が必要になります。無造作に手で触ったりすることのないようくれぐれも注意しましょう。また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐物や糞便は乾燥しないうちに床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら充分に喚気を行なうことが感染防止にとって重要になります。殺菌には熱湯或は家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、殺菌剤を使用します。ただし、アルコールや逆性石鹸には余り殺菌効果はありません。さらに、汚れてしまった洋服や布団類は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理する必要があります。まず使い捨てのマスクと手袋を着用し、便や嘔吐物はペーパータオル等で取り除き、ビニール袋に入れます。残った糞便や嘔吐物の上にペーパータオルを被せ、その上から50〜100倍に薄めた市販の塩素系漂白剤を充分浸るように注ぎ、汚染場所を広げないようにペーパータオルでよく拭きます。そうした後で洗剤を入れた水の中で静かに揉み洗いします。下洗いした洋服類の消毒は85度以上、かつ1分間以上の熱水洗濯が適していますが、家庭であれば普通に洗濯をした後、乾燥機にかける、スチームアイロンを使用するなどの手段も有効でしょう。


予防の基本は手洗い
 予防の基本は手洗いです。充分な時間(30秒以上)をかけて洗いましょう。
  • まず水で洗う
  • 石鹸をつけてよく泡立てる
  • 手の甲を伸ばすようにこすって洗う
  • 指の間を洗う
  • 指先や爪の間を念入りに洗う
  • 親指はねじるように洗う
  • 水でよく洗い流し、清潔なタオルなどで拭く

生食は厳禁!しっかりと加熱処理を
 ノロウイルスは湯通し程度の加熱では死滅しないので、中心部まで充分に加熱(85℃&1分間以上)しましょう。

感染予防&食中毒予防のポイント


最も有効な予防対策は手洗い
  • トイレの後、調理前、食事の前には必ず流水と石鹸による手洗いをしましょう。

  • ノロウイルスに汚染された可能性のある食材(貝類等)の取扱い、特に加熱しないで食べる食材(サラダ等)の取扱い、そして、調理への移行時にも注意しまししょう。

  • タオルの共用は二次感染防止の観点からやめましょう。

食品を充分に加熱
  • ウイルスに汚染されている可能性のある食品は、中心温度85度以上で1分間以上加熱して食べます。

  • 生で(加熱しないで)食べる食品(野菜&果物等)はしっかり洗います。

調理器具の洗浄&消毒を徹底
  • 洗剤等を用いて調理器具等をよく洗った後、次亜塩素酸ナトリウム(200ppm=0.02%)で浸すように拭くなどして消毒を徹底します。

  • 加熱しないで食べる食品は、俎板や包丁等の調理器具を専用のものとして使い分けたり、或はウイルスに汚染されている可能性のある食品に使用した調理器具を使い回しする場合には充分に洗浄と消毒を行ないます。

調理する人の健康管理を徹底
  • 下痢や嘔吐等の症状がある時は直接食品に触れる作業をしないようにしましょう。

  • 症状が回復してからも便の中にウイルスの排泄が続くことがあるので、暫くは直接食品に触れる作業をしないようにします。

糞便や嘔吐物を適切に処理
  • 糞便や嘔吐物を処理する際には、使い捨ての手袋やマスク、ガウン等を着用し、処理する方が感染しないよう注意します。

  • 汚染した床は、乾燥させないよう速やかに次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm=0.1%)で、汚染場所の外側から中心に向かって浸すように拭くなど、汚染を広げないよう注意して処理します。

糞便や嘔吐物を適切に処理
  • 糞便や嘔吐物を処理する際には、使い捨ての手袋やマスク、ガウン等を着用し、処理する方が感染しないよう注意します。

  • 汚染した床は、乾燥させないよう速やかに次亜塩素酸ナトリウム(1000ppm=0.1%)で、汚染場所の外側から中心に向かって浸すように拭くなど、汚染を広げないよう注意して処理します。

間違ったノロウイルス対策してない?うっかり感染するNG習慣


手洗いをしているから大丈夫だと思い込む
 ノロウイルスなど感染症の予防には手洗いはとても大切です。しかし、爪は伸びていませんか? 爪が伸びていると、爪の間にウイルスが入ってしまうため、手洗いの効果がない場合があります。子どもの爪は常に短くしておくように気をつけましょう。

汚染した衣類や雑巾を子どもの前で洗う
 部屋の中で汚物のついた衣類や雑巾を洗い、部屋の中に干していませんか? 処理の際に吸い込むと感染してしまう恐れのある飛沫が発生します。最低でも3mは遠ざける必要があります。特に子どもは別室に連れて行くのがよいでしょう。洗剤を入れた水の中でもみ洗いをして飛沫を吸い込まないように気をつけるようにして下さい。

家族で同じ手洗いタオルを使う
 タオルについたウイルスは死なずに残っています。そのため、ウイルスがついたタオルで手を拭いて、その手で口に触れると、当然ながら感染の危険が高まります。家族で別々の手洗いタオルを用意しましょう。

手洗いに固形石鹸を使う
 固形石鹸では保管時不潔になりやすいです。よって、1回ずつ個別に使える液体石鹸を使いましょう。

感染している人をお風呂に入れる
 身体が汚れてしまった場合、お風呂に入りたくなりと思いますが、万が一、身体に僅かでも汚物がついている状態で入浴すると、そこから感染する可能性もあります。家族が感染し、発症してしまった場合は、湯船を使うのを止め、お風呂の椅子やスポンジなども別々にするか、塩素系漂白剤で消毒した方がよいでしょう。どうしてもお風呂に入りたい場合は、最後に入るようにしましょう。また、湯船に浸かる前にしっかりお尻を洗うことも忘れずに。

症状が治まったからと素手でオムツ交換をする
 ノロウイルスは感染しても通常3日以内に回復します。しかし、症状が治まってもウイルスは10日ほど排出されていることがあるのです。よって、幼児がノロウィルスに感染した場合は、特にオムツの取り扱いには特に注意しましょう。

吐いてしまった場所だけ消毒する
 嘔吐物は想像以上に遠くまで飛び散っています。床から1mの高さで吐くと、カーペットでは最大1.8m、フローリングでは2.3mも飛び散ると言われています。カーペットの場合は毛足の長さにも影響されますが、広い範囲を消毒しましょう。

ウイルス除去のために衣類やタオルをまとめて洗濯機で洗う
 ウイルスで汚れてしまったものは、つい洗濯機で洗ってしまいたくなるはず。しかし、ノロウイルスは通常の洗剤では殺菌できないため、感染していない人のものまで汚染されてしまう可能性があるのです。洗濯機で洗う時は、ちょっと大変ですが、感染してしまった人の衣類やタオルは分けて、塩素系漂白剤で消毒してから洗濯するようにしましょう。

二次感染を防ぐために

 患者の下痢便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれていますので、その処理には充分に注意する必要があります。 乾燥した嘔吐物や下痢便のかけらが風に乗って舞い上がり、そばを通った人が吸い込んだり、その人の身体に付着して、最終的に飲み込むことによって感染する場合があります。その上、下痢の症状がなくなった後も、患者の便には暫くウイルスの排出が続くと考えられるので、症状が治まっても安心は出来ません。汚物を処理する際には使い捨ての手袋を使用し、用便後や調理前の手洗いを徹底しましょう。なお、殺菌には熱湯ないしは0.05から0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。そして、調理器具や衣類、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効です。また、市販の塩素系漂白剤(通常は5〜10%次亜塩素酸ナトリウム)なら50〜100倍に薄めて(※原液10ミリリットルを1リットルの水で薄めるなど)使用します。


有効な消毒の方法
  • 85℃以上の熱湯で1分間以上加熱消毒する

  • 塩素系漂白剤(※次亜塩素酸ナトリウム液)を適切に薄めた消毒液で消毒する

  • 消毒用アルコールは余り効果はない

消毒が必要なところ
  • ドアノブや蛇口、手すり、子どものオモチャなど手の触れるところにウイルスが付着する可能性がある

  • 感染した人の嘔吐物や便には1g中に100万個〜10億個の多量のウイルスが含まれている。トイレや床など嘔吐物や便で汚染された箇所は徹底して消毒をすること

どうやって消毒するのか
  • 調理器具やオモチャなど:よく洗った後、消毒液に10分くらい漬けてから水洗いする

  • ドアノブや蛇口、手すりなど:消毒液をよく染み込ませたペーパータオル等で拭いた後、10分くらいしてから水拭きする

お風呂に入る時に気をつけること
  • 下痢などの症状がある人は1番最後に入るか、シャワーのみにする

  • 症状のある人が浴槽に入った後は、湯船等をよく洗い、消毒する

汚物の処理方法
  • 患者の便や嘔吐物を処理する時は使い捨ての手袋とマスクを着用する

  • 便や嘔吐物はペーパータオル等で取り除き、ビニール袋に入れる

  • 残った便や嘔吐物の上にペーパータオルを被せ、その上から50〜100倍に薄めた市販の塩素系漂白剤を充分浸るように注ぎ、汚染場所を広げないようにペーパータオルでよく拭く

  • ウイルスは乾燥すると空気中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、便や嘔吐物を乾燥させないことが重要

調理と配膳に関する注意点
 人によってはノロウィルスに感染しても発病せずに(※これを不顕性感染と呼びます)、ノロウイルスを便から排出し続けている場合があります。保護者などの大人の方が知らないうちに子どもにノロウイルスを感染させてしまう可能性も決して低くありません。そのため、家庭では以下の注意点を守るように心懸けましょう。
  • 調理の前と後で流水や石鹸(※液体石けんが推奨されます)による手洗いをしっかりと行なうこと

  • 貝類をその内臓を含んだままで加熱調理する際には充分に加熱して調理し、貝類を調理した俎板や包丁は直ぐに熱湯消毒すること

  • 食事を配膳する際にも手洗いをすることが推奨される。特に自分が下痢や吐き気がある場合は必ず行なうこと

家庭における注意点
 学校や職場、施設内でノロウイルス感染による嘔吐や下痢が発生しても、その最初の発端は家庭内での感染による場合が多いと言われます。特に子どもや高齢者は健康な成人よりもずっとノロウイルスに感染し発病しやすいですから、家庭内での注意が肝要です。
  • 何度も言うように、最も重要な予防方法は手洗いです。帰宅時や食事前には、家族の方々全員が流水や石鹸による手洗いを行なうように心懸けること

  • 貝類の内臓を含んだ生食は時にノロウイルス感染の原因となることを知っておくこと。特に高齢者や乳幼児は避ける方が無難

  • 調理や配膳は充分に流水及び石鹸で手を洗ってから行なうこと

  • 衣服や物品、嘔吐物を洗い流した場所の消毒は,次亜塩素酸系消毒剤(※濃度は200ppm以上、家庭用漂白剤の場合は約200倍程度に薄める)を使用する。(※なお、次亜塩素酸系消毒剤を使って手や指など身体の消毒をすることは絶対に止めるようにしてて下さい。)


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