【3】アルコール依存症とその治療 |
アルコール依存症になったらどんな対処法が必要でしょうか?
本節では、アルコール依存症の治療法や予防法、家族の対応法などについて解説しました。
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身体依存ができると根治は難しい |

アルコール依存症以外にも摂食障害やギャンブル依存症など様々な依存症が存在しますが、アルコール依存症がこれらと決定的に異なるところは、進行すると「身体依存」になることです。一度身体依存になると、心の持ち方を変えるだけでは克服できません。
二日酔いでたまに朝寝坊してしまうことがある程度ならまだ引き返せます。しかし、身体依存の段階まで進んだ場合、この体質は一生続きます。一度やめたとしても何かの拍子に飲酒を一度でも再開してしまえばお酒がないといられない生活がまた始まってしまうのです。そんな訳で、身体依存が出来た人がアルコール依存症を克服する場合には、「何があっても一生飲まない」ことを心に誓い、断酒に取り組まねばならなくなります。
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身体依存とは |
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ある物質を長い期間に渡って大量に摂取したために、身体がその物質がないといられなくなり、中断したり量を制限すると身体に異変が生じること。アルコールの他にも、薬物やニコチンなども身体依存ができやすいとされます。 |
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検査と診断 |
アルコール依存症の検査法には、飲酒パターン分類やCAGEテストなど各種のスクリーニングテストがあり、それらでおおむね診断可能です。
アルコール依存症は、他の薬物依存症と併せて精神作用物質依存症や物質依存症と呼ばれ、共通の診断基準があります。WHO(世界保健機関)のICDの精神作用物質依存症診断基準や米国精神医学会のDSMの物質依存症診断基準です。これらの診断基準を用いてアルコール依存症の診断をします。なお、酔って興奮するのは、先にも説明したように「酩酊の異常」に分類され、アルコール依存症とは区別されます。
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アルコール依存チェック&診断のガイドライン |
自分がアルコール依存症でないかどうかを知るにはどうしたらよいでしょうか? WHOによる診断ガイドラインがありますので、チェックしてみましょう。
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アルコール依存症の診断ガイドライン |
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過去1年間のある期間において、次の項目のうち3つ以上の経験があった場合、アルコール依存症の疑いがあります。
- 「飲酒したい」という強い欲望または切迫感がある
- 飲み始めや飲み終わりの時間、または飲酒量をコントロールすることが困難
- 飲酒を中止したり減らしたりすると離脱症状(禁断症状)が現われる
- アルコールの効果を感じるために以前より飲酒量を増やさなければならなくなった
- 飲酒のために他の楽しみや興味に目を向けなくなり、飲んでいる時間や酔っている時間が長くなった
- 明らかに心身や生活などに支障が出ているのを知りながら飲まずにはいられない
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アルコール中毒の治療法 |
現在のところ、アルコール依存症には断酒以外の治療選択肢はありません。たとえば米国立アルコール研究所が、患者の特性に合った治療法を検証するため、12ステップ強化療法や認知行動療法、動機づけ補強療法の3つに関して、治療後1年間の飲酒日数と飲酒量から治療効果を判定する全米規模の研究を行なったところ、精神病性障害がなく最初から外来治療を行なってきた患者には、12ステップ強化療法が認知行動療法よりも飲酒日数が明らかに少なかった以外に、患者の特性と治療法の有意な組み合わせは見られなかったとのことでです。このように、今のところ特に優れた治療法はありません。
急性アルコール中毒で治療を要する場合は、若年者の一時的大量飲酒や小児の誤飲など、また、稀にアルコール依存症者の大量飲酒時ですが、何れも血中アルコール濃度を下げる対症療法と心臓保護療法を行なうことになり、メチルアルコール中毒もこれに準じます。病的酩酊などでは入院保護を要することもあります。アルコール乱用やアルコール依存の治療は一般には入院加療が建前となりますが、アルコール精神病に移行しない例では、外来治療も不可能ではありません。ただし、本人が治療意欲を持たないと外来治療は成功しません。外来治療の場合は、嫌酒療法として断酒薬(アンタブース、シアナマイドなど)が用いられ、同時に精神療法が試みられます。入院治療の場合、アルコール病棟と言って、アルコール依存者専門の病棟が利用される傾向が強くなっています。精神病様状態以外は、一般には開放的に取り扱われることが多いです。ここでは集団精神療法や作業療法が取り入れられ、酒害からの回復が図られています。
しかし、入院治療だけでは不十分で、退院後に地域の断酒会や AA(alcoholicsanonymous の略、匿名禁酒会)に参加し、息の長い断酒への努力がなされなければなりません。すなわち、断酒会やAA(アルコール・アノニムス=アルコール匿名会)などの自助会も治療の場なのです。医療機関としては、アルコール専門クリニックや精神病院のアルコール専門病棟、一般精神病院などがあります。日本のアルコール専門病棟の大半では断酒の動機づけを入院条件にしており、開放病棟で2〜3カ月の入院期間中に患者自治会の主導で断酒会やAAへと繋げてゆきます。最近は認知行動療法を行うところも増えています。また、中には内観療法を行なうところもあります。動機づけが困難で、3カ月以上の長期入院が必要な人の専門病棟は余りありません。
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アルコール依存症の薬物療法 |
アルコール依存症の断酒維持のための薬物療法として、抗酒薬(ジスルフィラム・シアナミド)と飲酒欲求を減らす薬(アカンプロサート)が利用できます。抗酒薬は飲酒後の不快反応を利用して心理的に飲酒を断念する薬、アカンプロサートは脳内に作用して飲酒への欲求を減らすことで断酒を補助する薬です。
アルコール依存症の治療での薬物療法の役割は二つあります。一つは離脱症状や不安や不眠などの併発症状を軽減させるためのもので、主にベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬が用いられます。もう一つは断酒を維持するための薬物療法です。
断酒維持のために使用される薬物は大きく分けて2種類があります。一つは抗酒薬と呼ばれる薬剤で「飲酒すると気持ち悪くなる」という状態を作ることによって飲酒行動を起こさなくするもの、もう一つは中枢神経に作用して飲酒欲求を直接減らすことにより断酒を補助する薬剤です。
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抗酒薬 |
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シアナマイドとジサルフィラムの2つが用いられますが、飲酒渇望を抑制する効果はありません。両剤はアルコール中間代謝産物のアセトアルデヒドの代謝酵素を阻害して飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度を上昇させ、飲めない体質の人と同じ生体反応を起こすことでアルコールを遠ざけるようにする薬剤です。抗酒薬は従来から用いられており、国内ではジスルフィラムとシアナミドが利用できます。これらの薬は、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)を阻害するので、抗酒薬を服用中に飲酒した場合、血中アセトアルデヒド濃度が上昇し、悪心・嘔吐や頭痛、動悸、顔面紅潮、呼吸困難などのアセトアルデヒドによる不快な反応を引き起こします。よって抗酒薬を服用していれば、生活の中で飲酒をしたくなるような出来事があった場合にも、「飲んでも気持ち悪くなるからやめよう」と考え、心理的に飲酒を断念しやすくなるという効果があります。ジスルフィラムは100-300mg、シアナミドは5-20mlを通常1日1回服用します。シアナミドの方がジスルフィラムに比べて速効性ですが、効果の持続も短いことが知られています。主な副作用としてはアレルギーによる皮疹・肝障害が起こる可能性があるため、特に服用の初期には血液検査などを行なうことが望ましいとされています。また、重症の肝硬変や心・呼吸器疾患が合併する場合は使用できません。 |
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飲酒欲求を抑制する薬 |
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日本では未承認薬のアカンプロセートやナルトレキソンが欧米で用いられています。飲酒渇望には万全ではありませんが、支持的精神療法と組み合わせて高い断酒効果が得られています。飲酒欲求を抑制する薬剤として、国内ではアカンプロサートがあります。欧米では20年以上前から使用されてきた薬剤ですが、日本では2013年5月に承認され発売されました。アカンプロサートは、主に脳内のNMDA受容体を介する神経伝達を阻害することによって効果を現すのではないかと考えられています。飲酒への欲求を軽減させることにより断酒率を高める効果があり、多くの研究で再飲酒のリスクを低減させることが確かめられています。アカンプロサートの効果は、断酒をしている人が服用すると断酒率が上がりますが、飲酒している人が服用してその飲酒量を少なくする薬剤ではないとされます。そのため、服用にはきちんと断酒をしていることが前提とされています。通常1日3回2錠ずつ服用することになっています。副作用としては、下痢や軟便が起こることがありますが、多くの場合は一過性で暫くすると軽快することが多いです。また、重症の腎障害がある場合は服用できません。相互作用は少ないため、抗酒薬との併用も可能と考えられています。なお、海外では飲酒している人の飲酒量を下げる効果があるナルトレキソン・ナルメフェンといった薬剤も使用されていますが、日本ではまだ承認されていません。 |
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薬物療法の効果を高めるために |
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どちらの薬剤も薬物療法の有効性に影響を与える因子として一番重要なのは、服薬のアドヒアランス(きちんと薬を服用しているか)です。アドヒアランスを向上させるために、毎朝家族の前で薬を飲む、薬箱を作って服用したかどうかをチェックできるようにするといった工夫が治療効果を上げることに繋がります。また、これらの薬は薬を服用しただけで断酒に成功するというものではありません。薬物療法と他の心理・社会的な治療や自助グループへの参加と組み合わせることが効果を最大限に得るために重要なことです。 |
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入院治療 |
アルコール依存が完成され、悪循環が完璧なものになった段階では、当然のことながら身体的・精神的・社会的三大症状の治療を要することになりますが、患者自身に対する治療への動機づけは更に困難となります。ただ、多くの患者は身体的症状の治療には比較的応じやすいので、内科や外科における身体的治療のみが行なわれています。
身体的に快復すると、患者は既に病気が全快したものと認識して直ちに飲酒が継続されることを反復することが多いです。それに対して精神科を受診する患者の多くは、飲酒のために身体的に重篤な症状を認めるようになるか、もしくは精神的にアルコール精神病を発症するか、或は社会的に完全な生活破綻の状態にまで落ち入ってから始めて来院する者が圧倒的に多いです。精神科における初診では、その患者がアルコール依存症であるか否かの診断(判断)は殆ど不要な状況であり、余りにも治療のスタートが遅きに失していると言わざるを得ません。この段階の患者では直ちに入院治療となるわけですが、まず治療のスタートでは患者に治療の必要性を認識させることから始められます。まずは身体的・内科的治療が優先されるますが、何よりも大切なことは、患者の病気がアルコール依存症であることの自覚(病識)をしっかりと持たせなければならないことです。何となれば、それなしに患者は断酒の必要性を認識することは不可能だからです。
患者が病識を持つことに必要不可欠の作業は、アルコール依存症という病気の概念をまずはっきりと知ることと同時に、自己の過去の生活態度や身体・精冲的状況を振り返って、その概念と見事に一致することを患者自身の内部で確認することに始まります。ともすると患者にとって断酒は自分の「意志一つでだ」「気持ち一つ」と言いたがるものですが、まさにその通りです。しかし、その意志(精神)に力がないのが問題なのであり、大概は精神的に極めて不安定で、人格レベル低下を来し、自我の弱さや自制心(自己統制力)の弱さを認識していないのです。入院治療の最終目標は、この地盤(精神)の強化であると言えるでしょう。そのための作業がアルコール依存症患者に対する精神療法として必要であり、最も困難な作業が精神科医療には課せられています。
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断酒会 |
アルコール依存形成の段階で充分な飲酒抑制や断酒の努力がなされることが治療上最も望ましいことではありますが、一般社会における概念では未だこの段階をアルコール依存症と認めることは極めて困難なのが実情です。医療の対象となるのは、悪循環が完成して、その結果生じた身体的・精神的・社会的三大症状のみの治療を依頼されるのが現状です。予防の第2段階は既に治療の第1歩で、この時期は断酒会や外来治療に最適で、節酒療法としての抗酒剤の服用や断酒している人との交流によって節酒や断酒が比較的スム一スに継続可能な時期です。
断酒会とは、アルコール依存から脱却するために依存者たちが断酒を誓い、再飲酒しないように励まし合う会のことです。アルコール依存症は、酒を断つために入院治療を行なっても、退院して間もなく再飲酒してしまう例が極めて多く見られます。断酒するためには強い意志と己れにかつ努力がいるのです。それに失敗すれば、再飲酒の繰返しで社会からの落伍者になってしまいます。アルコール依存者が飲酒の悪循環を断ち切り、自己破壊行動から逃れるために、孤独感からの解放と治療への動機づけのために、仲間たちでつくるグループ活動が断酒会なのです。アメリカで1935年に生まれた酒害者匿名会
AlcoholicsAnonymous(略称 AA)は、ロックフェラー財団の援助を受けて、今では世界的に発展しています。当然日本にもAAはありますが、特に匿名でなく集まる全日本断酒連盟が作っている地区断酒会も全国各地にあります。日本の断酒会の発足は1873年と記録されています。断酒会は依存者だけでなく、家族も加わると一層の効果があるとされています。
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アルコール依存症に気がついたらどうするか? |
患者本人に治療意欲があれば、まず地域の断酒会やAAへ参加しましょう。治療意欲がないか、気づかない場合は、問題に気づいた人が地域の保健所や断酒会、AA、アルコール専門クリニックや専門病棟のある精神病院などの窓口へ相談しましょう。なお、合併症が重い(当然アルコール依存症も重い)のに治療する意欲がない場合、本人の意思を尊重すると事態は深刻になるので、強制的な入院治療も必要です。その場合、利用できる医療資源には地域差があるので、相談機関の指導に従って下さい。
治療が必要な状態かどうかわからない時には、まず保険期間に相談しましょう。症状や問題の程度に関係なく、本人でも家族でも無料で相談ができます。
公的機関のうちアルコール依存症に対応している代表的な機関は精神保健健康センターと保健所です。どちらも全国に存在し、無料の相談窓口が設置されているため、思い立った時にいつでも相談することができます。問題の全貌が明らかになっていなくても、まずは相談して、話を進めてゆく中で問題も整理されてゆきます。困っていることが少しでもあるならまずは相談しましょう。ただし、専門の窓口が対応しているのは主に依存症の症状や治療に関する相談です。経済的なことや法律的なことなど病気から派生した症状以外の悩みについては、それぞれの対応窓口を利用しましょう。一つの機関に相談するのではなく、目的に合わせて複数の機関を利用し、総合的に対応、治療してゆきます。
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保健所(保険福祉センター) |
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心身両面の健康維持のために活動している機関で、飲酒問題についての無料相談を行なっています。健康面の問題に広く対応しているため、精神保健健康センターよりも専門性が低いと言えます。他機関とも連携しています。 |
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精神保健健康センター(こころの健康センター) |
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主に心理面の健康維持のために活動している機関で、飲酒問題についての無料相談を行なっています。その他、講演会や勉強会、本人向けのディケアプログラムなどを実施、医療機関と連携して依存症を支えています。 |
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最初はどの医療機関でもよい |
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治療を受けたいと思った時はアルコール依存症の専門医療機関を受診するのがベストですが、近隣に専門医療機関があるかどうか分からなければ、まずはかかりつけの医師に相談するだけでも構いません。とにかく受診して対応を始めることが大切です。最初は、出来れば精神科か内科を受診して下さい。症状を伝え、専門医療を希望しましょう。アルコール依存症の治療に対応している機関であれば、そのまま専門医療が始まります。残念ながらその対応のない機関の場合は他機関を紹介してもらいましょう。希望すれば紹介状を出してもらえます。 |
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早期受診と予防のために |
アルコール依存症はそれ自体でも危険な病気ですが、もう一つの怖さは、長期に渡る飲酒が原因の様々な臓器障害の併発が多いことです。最もよく見られるのは肝機能障害で、アルコール性脂肪肝はその典型ですが、致死率の高いアルコール性肝炎(重症型)を起こしていることもあります。アルコール性膵炎も多く見られますが、膵炎を起こすと、胃の辺りや背中に強い痛みを生じる他、慢性化するとインスリンの分泌が悪化して糖尿病を併発する可能性も高くなります。また、アルコールが余り強くない人が飲み続けている場合には、食道癌や口腔癌の発症率が高くなることも知られています(アルコールを飲むと顔が赤くなる人はリスクが高いとされています)。その他、アルコールには脳の神経細胞を壊す作用もあるため、記憶障害などの認知症を起こしていることもあり、脳の神経細胞の破壊が進むと、治療をしても回復が難しくなります。こういった多くの病気の早期発見のためにも、アルコールが好きでよく飲むという人は定期的に受診して検査を受けることが大切です。アルコール依存症と臓器障害を併発している場合、治療では離脱症状への対応と、臓器障害の治療を並行して進める必要があります。離脱症状は苦しく、精神的にも不安定になるので、自分だけで対応することは危険です。専門医の管理の下、入院してきちんとした治療を受けるようにしましょう。専門の医療機関が分からない時は、それぞれの地域にある精神保健福祉センターや保健所に相談して下さい。
予防面では、先に紹介したチェックの他、アルコールの飲み方の変化にも注意が必要です。飲酒量が増えたとか、飲むスピードが速くなった、二日酔いが多くなった、飲酒中に口論などトラブルを起こしたといった面ことが見られたら要注意です。何らかの理由でアルコールへの依存度が高まり、コントロールが効かなくなりつつある状態だからです。本人は当然ですが、家族などの周囲の人がこうした初期段階での変化に気づき、適切な対応(断酒、早期受診)ができればアルコール依存症の予防に繋がります。
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アルコール依存症者と家族 |
アルコール依存症者の飲酒に対する家族の接し方 |
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アルコール依存症者の飲酒に対する家族の接し方 |
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- 監視をしない
お酒を飲まないように目を光らせていても、家族には患者の飲酒を止める力はありません。まずはこのことを理解しましょう。
- 責めない
飲酒したことを責めても反発されるだけです。責めれば責めるほど嘘をついたり隠れて飲んだりするようになります。
- 世話を焼かない
お酒の後片付けやトラブルの後始末、本人の仕事の肩代わりなどは一切やらずに、本人にやらせるようにしましょう。もっとも、そうは言っても、衰弱状態など命の危険がある場合は別です。見殺しすれば裁判で裁かれることになるかも知れませんので、救急車を呼ぶなどの対応をして下さい。また、後始末をしないことで自分の身に危険が及ぶ場合には速やかに逃げて下さい。親戚や友人の家に行ったり、DVの相談窓口に電話をするとよいでしょう。
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アルコール依存症の家族が陥りやすい共依存 |
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世話を焼くタイプ |
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このタイプは、患者の飲酒を最終的に許してしまうのが特徴です。主に、飲んだお酒の缶や酔って散らかした物の後片付けする、酔い潰れている患者を迎えに行く、お酒が切れて荒れている患者を宥めるためにお酒を買って来たり、お金を渡したりする、飲んだ翌日に遅刻しそうな患者を起こしてあげたり、欠勤する際に本人の代わりに会社に電話をかけてあげる、などといった行動を取ります。このように患者本人がすべきことを代わりにやってあげたり、患者の責任を自分が負うことが当たり前だと思い尻拭いをしてしまうのです。患者に頼られることに満足している共依存の状態に陥っていると言えます。こういう行動を取ると、患者は甘える一方で、自分の飲酒問題の深刻さを冷静に判断できなくなります。 |
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責めるタイプ |
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何かにつけて「お酒が原因だ!」と患者を責め立てるタイプです。主に、家にあるお酒を全て捨てたり、患者がお酒を隠してないか家中を探し回る、飲酒によるトラブルを患者本人に認めさせたり謝らせたりする、離婚話を持ち出したり、無理やり病院へ連れて行ったりする、などといった行動を取ります。このタイプは、自分が正しいと思い込み、患者をコントロールすることばかりに囚われてしまうのが特徴です。しかし、患者に無理やり罪悪感を植え付けようとしても逆効果です。患者は自分のことを理解してくれない家族に反発し、更にお酒を飲んでしまうことになります。 |
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受け身になるタイプ |
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このタイプは、患者の飲酒による非常識な行動を受け入れてしまっているのが特徴で、患者から暴言を吐かれるとか暴力を受ける、大切な物を壊されるといったようなことをされても、じっと我慢をしてしまう傾向があります。このタイプの人は、患者のこのような行動に対して受け身になり、全て自分の中で消化しようとしますが、結果的に患者を甘えさせるだけでしかありません。 |
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参考文献と参考情報 |
◆参考図書&資料 |
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佐藤成美・著 |
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『お酒の科学(おもしろサイエンス)』 |
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B&Tブックス、日刊工業新聞社・2012年10月刊、1500円 |
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味だけでなく見た目、香り、のどごしなど、さまざまな角度から楽しむことができるお酒。お酒の作り方やその飲み方にこめられている、おいしさの理由に迫ります。 |
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樋口進・監修 |
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『アルコール依存症から抜け出す本 イラスト版』 |
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講談社・2011年05月刊、1200円 |
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信頼できる全国150医療機関リスト付き。依存症の疑いのある人は450万人以上。依存症の進み方、治療法から相談先までを詳説。患者家族が知りたい情報をまとめた決定版。 |
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森岡洋・著 |
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『よくわかるアルコール依存症 その正体と治し方』 |
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白揚社・2002年05月刊、1800円 |
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この一冊で、本人の問題も、家族の悩みも、すべて解決! あんなにおいしく楽しんだお酒が体と心を蝕んでいく、つらい仕事や家事育児を忘れさせ、安らぎを与えてくれたほんのちょっとのお酒が、悪魔のように生活を破壊していく──豊富な治療経験をもつ精神科医が、全国250万人の患者と悩めるその家族に、真の救いの手を差し伸べます。 |
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アルコール薬物問題全国市民協会・著/季刊Be!編集部・編集 |
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『依存症って何? どこから病気?どうやって抜け出す?』 |
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季刊Be!増刊号16 公開ミーティングシリーズ、
アスク・ヒュー・2007年12月刊、1000円 |
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アルコール、薬物、ギャンブル依存、摂食障害、ニコチン、カフェイン、ネットオークション、恋愛依存......。どこからが病気? 何が病んでいるの? 25名の心に響く体験談に加え、専門家インタビュー、コラムで依存症にまつわる豆知識を紹介。「病気の一線を超えたのはいつ?」「あなたにとって依存症とは? 回復とは?」などアンケートから生の声も紹介。本人だけでなく、家族、依存症について知りたい人にもおすすめの一冊。 |
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