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 過敏性腸症候群は日本人の約1〜2割に見られる非常にポピュラーな病気です。過敏性腸症候群はストレスが原因と言われていますが、過敏性腸症候群に出てくる症状は確かに消化器内科で診察して検査をしても何も異常が見当たらないにも拘らず、その割りに異常と言ってよいほどの症状が出ます。
 医学的にはこうした症状が1年のうち12週間以上続く場合と決まっていますが、通勤や外出に差し障るようになれば過敏性腸症候群を疑ってよいでしょう。通勤途中にわざわざ電車を降りてトイレに駆け込むことがよくあるとか、お腹の調子が心配で外出する気になれないという人は、まずはこの病気を疑って受診しましょう。

 今回は、このような辛い症状を伴う過敏性腸症候群を取り上げました。
過敏性腸症候群


過敏性腸症候群
【1】過敏性腸症候群とは?〜その症状と病態〜
【2】過敏性腸症候群の診断と治療
【3】過敏性腸症候群の食事療法
【4】過敏性腸症候群と似た病気〜感染性腸炎と潰瘍性大腸炎〜

【1】過敏性腸症候群とは?〜その症状と病態〜

 過敏性は日本人の約1〜2割に見られるとポピュラーな病気です。本節では過敏性腸症候群の症状を中心に解説しました。
過敏性腸症候群とはどんな病気か

 過敏性腸症候群とは、腸の検査や血液検査で明らかな異常が認められないにも拘わらず、腹痛や腹部の不快感を伴って便秘や下痢が長く続く病気です。以前は過敏性大腸と言われていましたが、小腸を含めた腸全体に機能異常があることが分かってきたため、過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。この病気は日本を含む先進国に多い病気で、日本人では10〜15%に認められ、消化器科を受診する人の3分の1を占めるほど頻度の高い病気です。発症年齢は20〜40代に多く、男女比は1対1・6で、やや女性に多く見られます。便通の状態により便秘型と下痢型、交代型(両者が交互に現われる)の3つに分類されますが、男性では下痢型、女性では便秘型が目立ちます。


過敏性腸症候群の症状の特徴
  • 腹痛の場所が一定ではない
  • 下痢が続いても体重は減らない
  • 発熱、血便は見られない
  • 寝ている間は症状が出ない(トイレに行きたくて目が覚めるようなことはない)
  • ストレスを感じないような時には症状が出ないことが多い(仕事や学校がストレスになっている人は休日には症状は出ない)
  • 人によっては、ストレスによる様々な症状を伴うことがある(例:頭痛や目眩、疲労感、不眠、不安感など)

過敏性腸症候群の症状

過敏性腸症候群 過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:略してIBS)は、以前は大腸過敏症と呼ばれ、大腸の過敏状態によって起こる疾患とされていました。しかし、病気のことを調べるうちに大腸だけでなく小腸も含めた消化管全体の疾患であることが分かり、過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。過敏性腸症候群は今まで様々な定義がされてきましたが、現在は「腹痛や腹部不快感があり、これが半年以上前からあり、特に最近3ヶ月はその腹痛や腹部不快感が排便によって軽くなったり、腹部の症状の始まりが排便の回数や便の硬さの変化から現われる」などと定義されています。また、過敏性腸症候群はその症状によって便秘型と下痢型、この2つを合せた便秘と下痢を繰り返す交替型の3つタイプに分けられます。以前は、この3つの型に腹部膨満感や排ガスが多いガス型を加えた4つの病型が用いられていました。

 それでは、そのような症状はどうして起こるのでしょうか。ひとつには、腸は自律神経によって動かされており、心臓などと同じで自分の意思で動きを止めたり動かしたりできず自動的に動いているが、生活が不規則だったり、心身の疲労がたまっていたり、ストレスがあったりすると、腸の動きのリズムが乱れ、腹部や排便の状態に影響を与えます。また、過敏性腸症候群の患者がが一般的にどの程度いるかというと、大体16%半、つまり4〜5人に1人の割合で過敏性腸症候群の方がいるだろうと考えられています。諸外国の調査や国内の調査でも大体同じような結果で、14〜22%とされており、特別な病気ではなく多くの人が経験しているということを表わしています。なお、過敏性腸症候群の症状を持ちながらも病院は受診せず放置している人が2人に1人で、病院を受診される人は6〜7人に1人程度だろうと思われます。何れにせよ、過敏性腸症候群の似たような症状で腸に炎症があったりすることもあるので、まずは医療機関を受診して正しい診断を仰ぐことが大切です。


腹部症状
  • 腹痛:
     キリキリとした痛み、鈍い痛み、差し込むような痛みなど様々な表現をされるけれど、お腹の左下腹や上腹部などの痛みを訴える人が多いようです。痛みを感じる時の多くは、食後であったり早朝であったり、或は排便の前だったりすることが多いようですが、排便をすることによって痛みが軽くなります。
  • 腹部不快感:
     お腹がすっきりしない状態でお腹が張る、空腹でもないのにお腹がグルグル鳴る、すっきりしないなどの症状です。

排便状態
  • 便秘や下痢または便秘と下痢を繰り返す
  • 排便後すっきりせず、何回もトイレにゆく
  • 実際に排便はないものの、何回もトイレに行きたくなるなど

その他の症状
  • 不眠、肩こり、頭痛、食欲不振、手足の冷え、倦怠感など全身の症状が現われます。また、不安感や気分の落ち込み、イライラ感などの心理的な症状を伴います。

過敏性腸症候群(IBS)の病態


大腸の運動異常
 腹痛や排便の異常は大腸が痙攣したり、運動が亢進(速く動きすぎる)や停滞(動きが鈍る)が関係しています。大腸の機能を検査する経口大腸造影検査の検査の結果によると、便秘型では腸のハウストラ(くびれ)が大きく、ゆっくりとした動きであるのに対して、下痢型は逆に動きが速く、便秘下痢交替型はその双方の特徴を備えています。なお、近年は大腸の動きだけでなく小腸の運動機能にも問題があることの報告もあり、研究が進められています。

腸の過敏性
 冷たいものを飲むと、お腹がグルグルと鳴る人がいますが、これは冷たいものや刺激の強いもの(香辛料がよく効いたもの)が腸に刺激を与えて腸の運動が活発になるためです。過敏性腸症候群の患者はこの反応が強く出るため、下痢や腹痛になったりします。逆に腸は強く収縮しすぎて便を送り出すような運動にならず、便秘になる人もいます。また、腸が刺激されると疼痛を感じることがありますが、その痛みを普通の人より強く感じて強い腹痛になる傾向があります。このように刺激に対して過敏に腸が反応することが症状につながります。しかし、多くの人が同様の状態になるのではなく、そこには個人差があり症状の程度に差が現われます。

ストレスとの関係
 ストレスの度合いが高い人ほど過敏性腸症候群の症状が強く現われる傾向があります。また、病院を受診した過敏性腸症候群の人は不安や緊張感、気分の落ち込みなど心理的な症状を持っている人が多いという調査結果もあります。従って、過敏性腸症候群とストレスが密接に関係していることが推測されます。
 では、どんなことがストレスになるのでしょうか。欧米の研究でストレスの内容をランク付けしたものがありますが、それによると配偶者の死が最も高くなりますが、もちろん生きている中で起きる色々な出来事もストレスになります。一見、結婚や就職、出産、進学、昇進などおめでたいと思える出来事もストレスになりますが、それは、これらの出来事が従来の生活パターンとの変化をもたらし、心もその影響を受けることによるものと考えられています。また、ストレスは心理的なストレスだけでなく、暑さや寒さ、騒音、疲労などもその原因となります。なおその一方で、過敏性腸症候群の症状自体がストレスになっている方もいます。たとえば外出しなければならないけれど、トイレがないと不安、或はお腹が鳴ったらどうしようかなどと心配するような場合です。このような場合は、ますます腸が緊張し症状が出やすくなるという悪循環をもたらしていることもあります。このような場合は、心療内科など専門医に相談されることをオススメします。

過敏性腸症候群の3タイプ

 主な症状は、腹痛もしくは腹部不快感と便通異常です。腹痛は左下腹部に最も多く見られますが、部位が一定しないものも少なくありません。腹痛の性状は、発作的に起こる疝痛(せんつう:さし込むような痛み)または持続性の鈍痛の何れかで、便意を伴っていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向を示します。一般的に食事によって症状が誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。その他、腹部膨満感、腹鳴(ふくめい:お腹がゴロゴロ鳴る)、放屁などのガス症状も比較的多く見られます。また、頭痛や疲労感、抑鬱、不安感、集中力の欠如など様々な消化器以外の症状が見られることもあります。なお、最近は以前聞かれた「ガス型」という分類は用いられなくなりました。


下痢型
 突如として起こる下痢が特徴です。下痢や軟便が食事のたびに、ひどくなると1日に何回も起こるようになります。通勤途中、或は駅ごとに電車を降りてトイレに駆け込むという人もいます。そのため、突然襲って来る便意が心配で、通勤や通学、外出が困難になります。また、そうした不安がさらに病状を悪化させます。

便秘型
 腸管が痙攣を起こして便が停滞します。便意があっても便が出にくく、便秘が続きます。水分が奪われた便は兎の糞のようなコロコロとした便になり、排便が困難になります。

下痢・便秘交代型
 下痢が何日か続いたかと思ったら今度は便秘になるというように、下痢と便秘が交互に起こります。

過敏性腸症候群の原因〜主な原因はストレス。神経質な人、几帳面な人が罹りやすい病気〜

 過敏性腸症候群では、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常の3つが認められます。ただ、これらの異常を引き起こす真の原因は分かっていません。一部の患者では感染性腸炎の後に発症することが明らかになっており、何らかの免疫異常が関わっている可能性も指摘されています。また、ストレスは症状を悪化させる要因となります。
 また、過敏性腸症候群は検査をしても異常がないことが特徴です。メカニズムはまだハッキリとは分かっていませんが、主な原因はストレスです。ストレスによって自律神経が乱れ、腹痛や下痢、便秘の症状を引き起こすのですが、一度症状が出るようになると、「またお腹が痛くなったらどうしよう?」という不安がストレスとなり、新たな症状を引き起こしてしまいます。このため、何かストレスとなるような出来事があった時の他、性格的に神経質な人や几帳面な人、仕事がハードな人などが罹りやすいと言われています。男性・女性の別なく、幅広い年齢層の人が罹りますが、最近は若い女性が罹るケースが増えています。

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【2】過敏性腸症候群の診断と治療

 過敏性腸症候群とただの下痢や便秘はどのように違うのでしょうか? 本節では、過敏性腸症候群の診断法について取り上げ解説しました。
他の病気ではないことを確かめるために早めの検査を

 過敏性腸症候群の主な原因はストレスですから心のケアが大切で、心療内科や神経内科で治療を受けることもできますが、腹痛や下痢、便秘に悩まされるようなら、早めに内科か消化器科へ行きましょう。過敏性腸症候群そのものは、確かにいま直ぐに治療をしなければならないというような病気ではありませんが、腹痛や下痢、便秘はどんな病気が原因で起こるか分かりません。潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸癌なども増えていますから、何か重大な病気が隠れていないかどうか必ず検査を受けて調べておくことが大切です。過敏性腸症候群以外の病気ではないことを確かめるためにも早めに検査を受けるよう心懸けましょう。
過敏性腸症候群(IBS)の診断

 過敏性腸症候群の診断は2段階に分けて行なわれます。まず最初に、器質的疾患(炎症や腫瘍など目に見える病気)がないことを確かめ、次に症状が過敏性腸症候群に一致するかを確かめます。前者に関しては、血液検査や大腸内視鏡検査、X線検査などを行ないます。ただし、これらの検査も全ての人に一律に行なうのでなく、発熱や血便、体重減少など器質的疾患の疑わしい人には詳しく、そうでない人には簡単に行ないます。後者に関しては、腹痛または腹部不快感があり、同時に便秘または下痢があることが大前提で、(1)排便後に腹痛が軽くなる、(2)腹痛が始まると便秘または下痢になる、という特徴を備えている必要があります。さらに、これらの症状が長期間(数カ月以上)続いている必要もあります。また、排便後に便が残った感じ、トイレに行きたくなると我慢できなくなる感じ、トイレに行ってもスムーズに便がでない感じなどがあると診断の参考になります。なお、これらの条件はRomeV(ローマ・スリー)と呼ばれる診断基準にまとめられて全世界で用いられています。
過敏性腸症候群(IBS)の診断基準


2つの診断基準:RomeVとBMW基準
 現在の日本の過敏性腸症候群の診断基準には、RomeV(ローマスリー)とBMW基準という2つの診断基準があります。なお、RomeVとBMW基準は2つとも過敏性腸症候群(IBS)の診断基準なので似通っている部分もあります。

 なお、以下のように過敏性腸症候群(IBS)には上記の2つの診断基準がありますが、診断基準を満たさなくても、身体的な異常が見られず、患者本人に腹痛や腹部不快感などの症状が出ている場合は過敏性腸症候群(IBS)と診断されます。従って、診断基準を満たしていないからといって病院に行くことを先送りせず、症状が続いている場合は、過敏性腸症候群(IBS)でないか一度きちんと検査してもらいましょう。

RomeV
 世界的に認められている過敏性腸症候群(IBS)の診断基準で、国際的なRome委員会というところが出しています。適宜改訂されており、現在は2006年4月に改訂されたRomeVが最新です。診断基準は下記の通りです。
  1. 腹痛などの症状が排便により軽快する
  2. 症状の有無によって排便頻度に変化がある
  3. 症状の有無によって便の状態に変化がある
 6ヶ月以上前から上記の症状があり、腹痛或は腹部不快感が最近3ヶ月の中の1ヵ月につき、少なくとも3日以上を占め、2項目以上満たしている。

BMW基準
 日本の実情に即したものとしてBowel Motility Workshop Clubの頭文字をとって名付けられました。診断基準は下記の通りです。
  • 次の(1)(2)の症状が1ヶ月以上繰り返す。また、他に器質的(身体的)疾患がない。(1)腹痛、腹部不快感或は腹部膨満感がある、(2)便通異常(下痢、便秘或は交替性便通異常)がある。
  • また、便通異常には以下の1項目を含む。(1)排便回数の変化、(2)便の状態の変化。
  • なお、器質的(身体的)疾患がないことを確認するために原則として下記の検査を行なう。(1)尿、糞便、血液一般検査、(2)注腸造影検査または大腸内視鏡検査。
※注腸造影検査や大腸内視鏡検査は患者自身に負担を伴うため、これを行なわなくても症状が認められれば過敏性腸症候群(IBS)と診断されます。

過敏性腸症候群の治療の方法

 過敏性腸症候群の治療においては、生命に関わることはないものの、経過が長く完全に治ることが少ないというこの病気の性質を理解することがまず第一に必要です。また、症状の完全な消失にこだわらず、日常生活のなかで病気とうまく付き合ってゆくことも必要です。
 過敏性腸症候群の治療は、(1)生活・食事指導、(2)薬物療法、(3)心身医学的治療の3つが基本になります。生活習慣の中で、不規則な生活、睡眠不足、慢性疲労の蓄積、睡眠不足、心理社会的ストレスなどこの病気の増悪因子と考えられるものがあれば修正を試みます。症状を悪化させる食品(大量のアルコールや香辛料など)の摂取は控えるようにしましょう。また、食物繊維の摂取は便秘または下痢どちらのタイプにも有効なので積極的に摂るべきです。次に、薬物療法が必要な場合は、高分子重合体や消化管運動調節薬、漢方薬などがまず投与されます。下痢に対して乳酸菌や酪酸菌製剤(いわゆる整腸薬)、セロトニン受容体拮抗薬、止痢(しり)薬、また便秘に対して緩下薬や腹痛に鎮痙(ちんけい)薬が投与されることもあります。これらの薬剤で改善が見られない場合は抗不安薬や抗鬱薬が考慮されます。また、心身医学的治療としては精神療法や自律訓練法、認知行動療法などがあります。
過敏性腸症候群に気づいたらどうするか?

 長い経過があり、日常生活に支障がない場合はセルフケアで充分ですが、通勤や通学、外出などの日常生活に影響が出ている場合は病院を受診すべきです。特に様々な重篤な症状が出ている場合には専門の病院で腸の精密検査を受けることをオススメします。


初診に適した科:
  内科、心療内科、消化器科

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【3】過敏性腸症候群の食事療法

 過敏性腸症候群にはこれといった特効薬はありません。そのため、治療は基本的に生活指導を中心とした対処療法が中心となります。本節では、過敏性腸症候群の食事療法を中心に解説しました。
過敏性腸症候群の治療は生活指導と食事療法が中心

 過敏性腸症候群の治療は、ストレスを解消するための生活指導と食事療法が中心です。それでもよくならない人や症状がひどい人は、薬を飲んだりカウンセリングを受けたりしながら様子を見ます。過敏性腸症候群はこれといった異常がないため、病院に罹って薬を飲めば治るとか手術をすれば治るということがなく、そういった意味では厄介な病気です。従って病院での治療も大切ですが、何よりセルフコントロールが欠かせません。どうすればストレスを減らして症状を抑えることができるか、そのコツを自分でつかもうとすることが治療の第一歩になります。


生活指導
 原因となるストレスは何か医師と話し合って分析し、そのストレスを解消する方法を考えてゆきます。具体的には、スポーツや趣味を活かしてストレスを発散したり、十分な休息&睡眠を摂る、仕事を減らすなどライフスタイルを改善していくことになります。

食事療法
 暴飲暴食を避け、食事時間を決めて、規則正しい排便習慣が身につくようにします。便秘型の人は食物繊維を摂るように、下痢型の人は刺激物を避けるようにします。また、冷たいものはよくありませんが、水分を充分に摂ることがどちらの場合にも大切です。

薬による治療
 症状に合わせて下痢止めや整腸剤、下剤、鎮痛剤の他、消化器の運動機能を改善する薬、漢方薬などを使います。薬によって症状が治まるのは一時的なものですが、それで不安が取り除かれて症状が改善されてゆく人もたくさんいます。

心のケア
 生活指導や食事療法でよくならない時や、ストレスが強く、他の症状が見られる時は、専門医によるカウンセリングを受けた方がよいでしょう。精神的な症状が見られる時には抗鬱剤や向精神薬などを服用することもあります。

下痢が続いている時に食べるもの

 過敏性腸症候群(IBS)の下痢は細菌性の腸炎などと違い、脱水症状になるようなひどい下痢は殆どありません。しかし、食べたら腹痛を伴う下痢になるので、怖くて中々食べることができない場合があります。そんな時は無理して食べずに、食べたいなと思った時に食べればよいでしょう。過敏性腸症候群(IBS)の下痢が続く時は胃腸が弱っている場合がありますので無理して食べると症状を悪化させてしまいます。お腹が空いて食べたくなった時に消化のよいものを少しずつ食べ、徐々に普通の食事に戻してゆきましょう。


下痢が続いている時に食べるもの
 下痢の時は、できるだけ消化がよく、繊維質の少ない野菜で、できるだけ胃腸に負担をかけないものを食べます。たとえば下痢の時は雑炊を食べるのはどうでしょうか。できるだけ野菜が軟らかくなるまでしっかりと煮込んで、卵でとじて食べるのが栄養も摂れてオススメです。消化もよく、身体も温まり、栄養も抜群です。なお、下痢の時は洋食より和食の方がいいようです。

下痢の時に避けたいもの
 下痢の時は胃腸が敏感になっているので、香辛料や炭酸、カフェインなどの刺激物はできるだけ避けるようにしましょう。また、油っこいものやリンゴ以外の果物、牛乳は、敏感に反応してしまうことがあるので避けた方が無難です。

過敏性腸症候群と食事
控える食事と摂取すべき食事

過敏性腸症候群と食事 過敏性腸症候群は、食事によってある程度予防することや症状を軽減させることも可能です。過敏性腸症候群とは下痢や便秘などを伴う症状で、ストレスなどの精神面での原因やアルコールや暴飲暴食といった食習慣や生活習慣によっても引き起こされる症状です。下痢や便秘といった症状のため過敏性腸症候群であることに気づかず、軽視してしまいがちな病気ですが、きちんと原因を突き止めて治療をしないと中々治らない病気でもあるので注意が必要です。
 便秘や下痢を繰り返したり、ストレスを感じて腹痛などを引き起こすといった症状が主ですが、過敏性腸症候群の人が食事において注意すべきことは、まず第一に腸を刺激しないということです。そのため、脂分の多い食事や刺激が強いもの、辛いものや酸っぱいものといった食事は控えましょう。アルコールも腸に刺激を与えてしまうので、アルコールも摂らない方がよいでしょう。また、朝食はなるべく温かいものを摂るように心懸けましょう。たとえば温かいスープやミルクティーなどの温かい飲み物などがよいでしょう。なお、大根は消化を助ける役割をしてくれるので、大根の味噌汁や大根の煮物なども効果的です。また、昼食や夕食も温かく消化のよいものを食べることがオススメです。たとえばうどんなどの麺類もよいでしょう。クリームシチューや雑炊、煮魚などもよいと思います。何れにせよ、栄養バランスのよく取れた胃腸に優しい食事をするように心懸けましょう。
冷たい食事を摂るのは駄目?

 冷たいもの、たとえば冷たい水やジュースをたくさん飲みすぎるのもよくありませんし、消化に悪い硬いものや固形物を食べるのも避けた方がよいでしょう。冷たいものを摂取した場合、より一層冷えの症状を引き起こしてしまう可能性があるので、過敏性腸症候群の時は、お茶や紅茶、常温の水などを飲むようにして下さい。また、空腹すぎるのも満腹すぎるのもよくありません。腹八分目という言葉があるように、お腹に一番負担がかからない状態をキープしておくことが大切です。
 過敏性腸症候群は人によって症状も原因も少しずつ異なります。主な症状は下痢や便秘ですが、お腹の痛み方や便の状態なども症状によって異なります。日頃から食生活に気をつけるのはもちろんですが、原因をしっかり突き止めて、その原因を解消することが最も重要になってきます。極度に緊張したり気にしすぎると却って症状を悪化させてしまう可能性もあります。少しでもこういった過敏性腸症候群の症状を感じたら、専門医に見てもらうなり、漢方薬で処方したりという方法もあります。また、ストレスなどが原因なので、食事を気をつけることはもちろん、リフレッシュしたり、リラックス出来る空間作りを心懸けましょう。
便秘型の注意点

 過敏性腸症候群の便秘型の食事には何に気をつけなければならないのでしょうか? それにはまず知っておかなければならないことがあります。それは、このタイプの便秘は腸の働きが鈍くなって起こる一般的な便秘と違ってストレスなどの原因による痙攣性の便秘になるということです。従って腸の蠕動運動を促すような食事は避けなければなりません。
 まず第一に、一般的に便秘には食物繊維がよいと言われますが、しかしながら過敏性腸症候群の便秘型の人は野菜類に多く含まれる不溶性食物繊維は蠕動運動を促すため、そういった食事は避けた方がよいということです。その代わりに水溶性の食物繊維を摂るようにしましょう。水溶性の食物繊維が摂れる食品としてはワカメなどの海藻類などが挙げられます。従って、それらの食品を味噌汁やサラダなどに使うとよいでしょう。次に、冷たい飲み物を控えて下さい。特に起床後に冷たい水分を摂るのは腸の動きが鈍くなることで起こる弛緩性便秘の人には有効ですが、痙攣性便秘の過敏性腸症候群の便秘型には逆効果になるので注意が必要です。そうは言っても水分補給は大事なので、温いお茶などで代用しましょう。もっとも熱いものにも注意しなければいけないので、ある程度冷ましてから摂取しましょう。最後に、カフェインを含むコーヒーや紅茶の飲みすぎには注意して下さい。さらに唐辛子などの香辛料の使用は控えめにしたほうがよいでしょう。
下痢型の注意点

 過敏性腸症候群の下痢型の人が食事に注意することには何が挙げられるのでしょうか? 下痢という症状は腸の蠕動運動が激しい状態なので、胃腸に負担をかけるようなものは控えた方がよいということです。
 胃腸に負担をかけないためにはどんなことに注意しなければならないかというと、まずよく噛んで食べることが挙げられます。なぜならよく噛まないで食べると、よく噛んだ場合と比べて消化に時間がかかり、胃の中に停滞する時間が長くなることで胃の負担になるからです。従って、過敏性腸症候群の人で食事をする際は、早食いはせず、ゆとりをもって食べるようすることが大切です。また、同じ消化に時間がかかるという理由で食べすぎにも注意しなければなりません。次は消化に悪いものは避けることです。どういったものが挙げられるかというと、肉類など脂分を含むものや天ぷら、豚カツ、フライドポテトなどの揚げ物また刺身や生サラダなどの火を通していないものです。基本的に生ものは消化に悪いので熱を入れることが大事になります。また、刺激物は避けましょう。さらに唐辛子などの入った刺激の強い香辛料は避けたり、熱すぎるものや冷たすぎるものを摂ることも胃を刺激して胃腸の蠕動運動が激しくなり、下痢を促進させることにつながりますので注意が必要です。また、タバコやアルコール類は胃の働きを低下させたり胃を荒らしたりしますので控えることがオススメです。なお、過敏性腸症候群の下痢型の人は食事をしてもそれが直ぐ出てしまうので、それ自体がストレスになるという場合もあるかと思いますが、基本的には食事を抜かないようにしましょう。
ガス型の注意点

 過敏性腸症候群の症状のタイプとして、下痢型、便秘型、下痢・便秘交互型以外に最近では余り使われなくなりましたが、かつてはガス型という症状のタイプも用いられていました。これはお腹にガスが溜まって始終オナラが出るタイプです。症状のタイプとして今回は説明しませんでしたが、ここでは特別にガス型の人の食事で気をつけるべき点を説明します。なお、下痢・便秘交互型の食事の注意は上記の便秘型及び下痢型の食事の注意の両方を参考にして下さい。

 過敏性腸症候群ガス型も他の症状と同様で食事に対して注意することがあります。その行為によってオナラが増えればそれがストレスになり、さらにオナラが増えるといった悪循環を生み出してしまいます。従って食事内容にもきちんと目を向けなくてはなりません。
 まずは早食いせずしっかりと噛んで食べましょう。そうしないと胃で消化不良を起こしやすくなりますし、腸内発酵を起こしてしまいます。そうなるとオナラの臭いもさることながら、オナラの回数も増えてしまいますので、食事をする時はゆったりと落ち着いて食べるようにすることが大切です。また、おしゃべりしながら食べたり、飲み物を一気に飲んだり、炭酸飲料を飲むことは避けた方がよいでしょう。どれも空気を飲み込んでしまう行為なので、オナラの回数を増やしてしまいます。次に過敏性腸症候群のガス型の食事で注意することは、動物性タンパク質を含む食べ物を摂り過ぎないことです。動物性タンパク質は胃での消化が悪く、腸内で腐敗ガスを発生させて悪玉菌を増やし、その結果腸内環境を悪化させます。それによりオナラの臭いや回数が増えますので、やはり避けた方がいい食べ物だということができます。さらに食物繊維を摂り過ぎないということも大切です。これは便通をよくしたり、臭いを吸収して体外へ排出してくれたりするのですが、食べ過ぎると逆にオナラが増えてしまいますので、過剰摂取には気をつけましょう。なお、昼食など家以外の場所で食べる場合はどうしても出来合いのものに頼ってしまいがちですが、やはり自分で弁当を作るほうがガスを増やさない食事メニューにできるというメリットがあります。そうすればガスを増やす食べ物を食べていないから大丈夫だという暗示もあり、食事の際にストレスにつながることはないでしょう。とにかく過敏性腸症候群のガス型の人にとっては大丈夫だと安心感を持つということはとても大事なことです。また、ガチガチに食事内容を縛ることは過敏性腸症候群に大敵のストレスを感じますので休日などは好きなものを食べるなど工夫することも大切です。

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【4】過敏性腸症候群と似た病気〜感染性腸炎と潰瘍性大腸炎〜

 本節では過敏性腸症候群と似た病気として、参考までに感染性腸炎と潰瘍性大腸炎を取り上げました。
感染性腸炎


感染性腸炎とはどんな病気か?
 感染性腸炎とは、細菌やウイルス、寄生虫などの病原体が腸に感染して様々な消化器症状を引き起こす病気です。多くは食品や飲料水を通して経口的に病原体が体に入りますが、一部ペットや人からの感染もあります。食品や飲料水を媒介とする感染はしばしば集団発生が見られ、これを食中毒と言います。

感染性腸炎の原因
 病原体として細菌ではサルモネラやカンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがよく知られています。ウイルスで多いのは、成人ではノロウイルス、小児ではロタウイルスです。寄生虫としては赤痢アメーバ、ランブル鞭毛虫(べんもうちゅう)などがあります。また、感染源としてはカンピロバクターでは鶏肉が圧倒的に多く、サルモネラでは鶏卵によるものが最多ですが、犬やミドリガメなどのペットが感染源となることもあります。腸炎ビブリオでは魚介類、腸管出血性大腸菌では牛肉、未殺菌乳が主な感染源です。ノロウイルスは、近年では冬期の食中毒の原因として最も多い病原体で、生牡蠣からの感染によるとされてきましたが、最近では便や吐物からのヒト‐ヒト二次感染が問題になっています。

感染性腸炎の症状
 一般的な症状としては、発熱を伴った下痢や腹痛、吐き気・嘔吐が多く、時には血便を来します。ウイルス性では吐き気や嘔吐症状が強いのが特徴で、発熱はあっても38℃以下の微熱のことが多く、血便は現われません。感染性腸炎は自然治癒傾向があるため、症状は長く続かないことが多いのですが、一部の寄生虫疾患では下痢が長期間続く場合があります。また消化器以外の特徴的な症状としては、カンピロバクター腸炎後のギラン・バレー症候群や腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群や脳症などがあります。

感染性腸炎の検査と診断
 急に発症した発熱を伴った下痢や腹痛、吐き気・嘔吐があれば、感染性腸炎を疑うことは容易です。食中毒では、原因食品とその時期を詳しく聞くことで病原体を推定することもできます。また、血液検査では細菌感染症は炎症反応(赤沈、CRP)と白血球数の増加が見られますが、ウイルス性ではこれらは正常か軽度の上昇にとどまります。なお、感染性腸炎の最終的な診断は便の培養によります。便の直接鏡検はカンピロバクター、赤痢アメーバやランブル鞭毛虫など特徴的な形態の細菌や原虫の同定に有用であるとされています。ウイルス性腸炎の確定診断は便中の特異抗原やウイルス遺伝子の検出によります。血便を伴う症例や下痢が長く続く場合を除いて内視鏡検査の必要ありません。

感染性腸炎の治療の方法
 感染性腸炎の治療には、全身状態の改善を図る対症療法と原因療法である抗菌薬療法とがあります。
  • 対症療法
     感染性腸炎では、下痢や嘔吐、発熱のため脱水状態となるので、その程度に応じて経口或は経静脈的に水分と電解質、ブドウ糖を補給します。補給には市販のスポーツドリンクが多く用いられています。また、細菌性の場合、強力な止痢(しり)薬の投与は、腸管蠕動を抑制して病原体の排除を遅らせるため使用すべきではありません。嘔吐に対しては制吐薬が、腹痛が激しい時は鎮痙(ちんけい)薬が用いられます。ただし、鎮痙薬は止痢薬と同様に腸管蠕動を抑制するので、その使用は必要最低限とすべきです。乳酸菌、ビフィズス菌などからなる生菌製剤は、病原菌の定着を抑制し、腸内細菌叢(そう)の回復を促進する効果が期待できるため積極的に用います。なお、食事に関しては、腹痛が強かったり血便を伴う場合は腸の安静のために絶食が必要ですが、多くの場合は刺激が少なく消化のよいものであれば食事は摂って構いません。ただし、刺激性のある食物、香辛料、高脂肪食、塩辛い物、アルコールは控えます。

  • 抗菌薬療法
     感染性腸炎では自然治癒の傾向が強いため脱水や自覚症状に対する対症療法だけでよい場合が多く、抗菌薬の投与が必要な場合は、(1)症状が重篤な場合、(2)乳幼児や高齢者、易感染宿主などの免疫が低下している場合、(3)二次感染のリスクの高い細菌感染(細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス、コレラなど)といった場合に限られます。また、抗生物質としてはニューキノロンかホスホマイシンの3日間投与を行ないます。カンピロバクターはニューキノロン耐性のため、マクロライド系薬剤を第一選択とします。腸管出血性大腸菌腸炎では抗生物質を投与するか否か議論のあるところですが、日本では投与がすすめられています。

感染性腸炎に気づいたらどうするか?
 下痢や嘔吐、発熱があったら、脱水を防ぐことが大切です。経口摂取が可能であれば、まずスポーツドリンクなどで水分と電解質を補給します。嘔吐が激しい場合や脱水でぐったりしている時は輸液が必要なので、速やかに医療機関を受診して下さい。血便がある時、また食中毒が疑われる時も同様です。

初診に適した科:
  内科、消化器科

潰瘍性大腸炎

 潰瘍性大腸炎は、現在自民党の総裁に返り咲いた阿部元総理大臣の突然の辞任の原因となった疾病なのでご存知の方もいるでしょう。
潰瘍性大腸炎とはどんな病気か?

潰瘍性大腸炎 潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起こり、潰瘍を形成する慢性疾患で、出血性の下痢や腹部の激しい痛み、発熱を伴う発作を起こします。 また、潰瘍性直腸炎は直腸に限局して起こる炎症で、比較的良性型の潰瘍性大腸炎で、頻度も多い疾患です。潰瘍性大腸炎はどの年齢にも起こりえますが、普通は15〜30歳で発症します。少数ながら50〜70歳で最初の発作を起こす人もいます。潰瘍性大腸炎では、通常は大腸壁がさほど肥厚化せず、小腸に及ぶことも殆どありません。潰瘍性大腸炎は直腸やS状結腸から始まるのが通常で、最終的には大腸の一部または大腸全体に広がります。発症初期から大腸全体が侵される例もあります。
 なお、潰瘍性大腸炎の原因は分かっていません。しかし、遺伝と腸の過剰な免疫反応が関係しています。タバコの喫煙はクローン病には有害ですが、潰瘍性大腸炎のリスクは減らしているように思われます。ただし、喫煙は様々な健康上の問題を起こす原因となるので、潰瘍性大腸炎のリスクを下げるために喫煙することはすすめられません。
潰瘍性大腸炎の症状

 潰瘍性大腸炎の症状は再発します。突然重症の発作が起こり、激しい下痢や高熱、腹痛、腹膜炎を起こすことがあります。このような再発の間は重態になります。より多いのは徐々に始まる再発で、便意が切迫するようになり、下腹部が軽く痙攣して、便には血と粘液が混じります。再発は数日から数週間にわたって続き、いつでも再発する可能性があります。
 まず炎症が直腸とS状結腸に限局している場合は、便は正常か硬く乾燥している状態になります。しかし、排便中または排便と排便の間に大量の赤血球と白血球を含む粘液が直腸から分泌されます。発熱などの全身症状は見られないか、あっても軽度です。また、炎症が大腸の上の方へ広がると、便は軟らかくなり、1日に10〜20回ほど排便します。患者はしばしば重症の腹部痙攣に悩まされ、痛みを伴う直腸の痙攣により便意を催します。夜間も症状は緩和しません。便は水っぽく、膿や血液、粘液を含んでいます。しばしば便全体が血液と膿になることがあります。また、発熱や食欲不振が起こり、体重が減少します。
潰瘍性大腸炎の合併症


出血
 出血は最もよく見られる合併症で、しばしば鉄欠乏性貧血を起こします。潰瘍性大腸炎になった人のほぼ10%で、最初の発作が急激に進行して重症になり、大量の出血と穿孔や広範囲の感染を伴います。

中毒性大腸炎
 中毒性大腸炎は特に重症の合併症で、腸壁全体が肥厚して損傷します。この損傷は、腸壁の正常な収縮運動が一時的に止まるイレウス(腸閉塞)と呼ばれる状態を起こし、腸の内容物が前進しなくなり、腹部が膨満します。中毒性大腸炎が悪化すると大腸の筋緊張を失い、数日、時には僅か数時間で拡張し始めます。腹部X線検査では、腸の麻痺した部分にガスが充満しているのが映ります。

中毒性巨大結腸
 中毒性巨大結腸とは大腸が異常に拡張した状態で、この状態は非常に重篤で高熱が出ます。腹痛と腹部の圧痛があり、白血球数が増加します。腸が破裂すると死亡するリスクが高くなります。しかし、腸が破裂する前に迅速な治療を受けた場合は死亡率は4%未満です。

結腸癌
 結腸癌は末期の潰瘍性大腸炎患者に毎年100人に1人の割合で発症します。潰瘍性大腸炎が広範囲にわたる場合は100人に10人が結腸癌になります。結腸癌のリスクが最も高いのは、病気の活動性に関係なく、潰瘍性大腸炎が大腸全体に及んでいる場合と、罹患期間が8年以上の場合です。潰瘍性大腸炎が8年以上続く場合、大腸内視鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いた大腸の検査)を毎年または2年に1度は行ないます。大腸内視鏡検査の際に大腸各所から組織を採取し、病理組織診を行ないます。癌が初期に発見された場合は殆どの人が助かります。

その他の合併症
 その他の合併症はクローン病のそれと同じで、潰瘍性大腸炎による胃腸症状が再発すると、関節炎や上強膜炎や結節性紅斑、壊疽性膿皮症(えそせいのうひしょう)などの炎症が現われます。潰瘍性大腸炎による胃腸症状の再発がない時期でも、脊椎に炎症が生じて強直性脊椎炎となったり、股関節の炎症(仙腸骨炎)や眼の内部の炎症(ぶどう膜炎)が起こります。また、 潰瘍性大腸炎では普通軽度の肝機能不全が見られますが、肝臓疾患の症状が現われるのは軽症から重症を含めても1〜3%ほどです。重症の肝臓疾患は、慢性活動性肝炎や、胆管が狭くなり、ついには閉塞する原発性硬化性胆管炎、肝臓の機能組織が瘢痕(はんこん)化する肝硬変などです。胆管炎は、潰瘍性大腸炎の腸症状が現われる何年も前から起こります。胆管炎になると胆管癌になるリスクが極めて高くなり、結腸癌のリスクも高くなります。

潰瘍性大腸炎の診断

 症状と便の検査により診断を確定します。血液検査では貧血や白血球数の増加、アルブミン(血液中のタンパク質)濃度の減少、赤血球沈降速度(ESR)の上昇が見られ、これらは炎症が活発になっていることを示します。S状結腸鏡検査(柔軟な観察用チューブを用いたS状結腸の検査)を行なうと、炎症の重症度を直接観察し、診断を確定できます。症状がない時期でも腸全体が正常に見えることは殆どなく、病理組織診でも慢性炎症が認められます。また、腹部X線検査では炎症の程度と広がりがわかります。バリウム注腸後のX線検査や大腸内視鏡検査は、この病気の活動期に行なうと穿孔を起こすリスクがあるので、通常は治療を開始する前には行ないません。しかし、大腸全体への炎症の広がりを診断するために時期を見て大腸内視鏡検査を行ないます。


初診に適した科:
  内科、消化器科
潰瘍性大腸炎の経過の見通しと治療

 一般に潰瘍性大腸炎は慢性疾患で、よくなったり悪くなったり(再燃と寛解)を繰り返します。全体の約10%が急激に進行する初期症状から重篤な合併症を来します。他の10%は1度の発作だけで完全に回復します。しかし、発作が一度だけですむ人は、実際には潰瘍性大腸炎による潰瘍化ではなく、見つかっていなかった感染症によることもあります。まず経過の見通し(予後)は、炎症と潰瘍が直腸だけに限局している潰瘍性直腸炎が最もよく、重篤な合併症は殆ど見られません。しかし、約10〜30%では潰瘍性直腸炎が大腸全体に広がり、潰瘍性大腸炎となります。また、治療は、炎症を抑え、症状を軽減し、体液と栄養素を補うことを目的として行ないます。


食事制限
 便中に血液が失われることによる貧血は鉄剤の補給で改善されます。炎症を起こしている大腸の内膜が傷つかないように生野菜と果物は避けます。乳製品を含まない食事により症状が軽減することがあるので試してみる価値はありますが、効果がなければ続ける必要はありません。

下痢止め薬
 抗コリン作用薬または少量のロペラミドやジフェノキシレートは比較的症状の軽い下痢に用いられます。もっと激しい下痢には高用量のジフェノキシレートや脱臭アヘンチンキ、ロペラミド、コデインなどが必要になるでしょう。重症のケースでは、これらの薬による中毒性巨大結腸を引き起こさないように投与後の状態を慎重に観察します。

抗炎症薬
 潰瘍性大腸炎の炎症を軽減させ、再燃を予防するためにスルファサラジンやメサラミン、オルサラジン、最近開発されたバルサラジドを用います。これらの薬は普通は経口投与されますが、メサラミンは浣腸や座薬としても使用できます。経口投与でも直腸投与でも、これらの薬は軽度から中等度の病気を維持したり寛解するには限定的な効果しかありません。なお、ベッドで安静にしなければならないほど重い炎症でなければ、プレドニゾロンなどのステロイド薬を経口投与します。高用量のプレドニゾロンを頻繁に服用すると、劇的な寛解が得られます。プレドニゾロンで潰瘍性大腸炎の炎症をコントロールした後に、改善を維持するためにスルファサラジンやオルサラジンやメサラミンを投与します。プレドニゾロンは徐々に用量を減らし、最終的には投与を中止します。ステロイド療法が長びくと必ず副作用が現われます。ステロイド薬の新薬ブデソニドはプレドニゾロンより副作用が少ないですが、効果もプレドニゾロンほどではありません。軽度から中等度の潰瘍性大腸炎が左側の下行結腸と直腸に限局している場合にはステロイド薬やメサラミンの座薬を投与します。なお、症状が重症の場合には入院が必要となり、ステロイド薬と水分を静脈内投与します。また、直腸に大量の出血がみられる場合は輸血が必要となります。

免疫抑制薬
 アザチオプリンやメルカプトプリンなどの薬は、長期のステロイド療法でなければ寛解を維持できない潰瘍性大腸炎患者に使われます。この免疫抑制薬は免疫系で重要な働きをするT細胞の作用を阻害しますが、しかし、これらの薬の作用はゆっくりで、2〜4カ月間しないと効果が見られません。また、重篤な副作用を起こす可能性があるので、医師による慎重な経過観察が必要です。シクロスポリンは、重篤な再発を起こし、ステロイド療法でも効果が現われない場合に投与されます。多くの患者が当初はシクロスポリンに反応しますが、最終的には手術が必要になるケースもあります。

手術
 他の治療では寛解が得られない慢性の炎症で患者が衰弱している場合や高用量のステロイド療法に慢性的に依存している場合は手術が必要になります。また稀ですが、壊疽性膿皮症や腕・脚の深部静脈血栓症が重症の場合など大腸炎に関連する腸以外の異常が起きた場合にも手術が必要となります。
 大腸において癌の診断がついたり、癌性の変化である形成異常が確認された場合は、緊急ではありませんが、待機手術を行ないます。また、大腸が狭窄した場合や小児に成長の遅れが見られる時にも手術を行ないます。大腸全体と直腸の切除により潰瘍性大腸炎は完全に治癒します。この治療法には従来小腸の最後部と腹壁の開口部との間を手術でつなぐ回腸造瘻術を行ない、腸瘻バッグを生涯にわたって使用するという代償が伴いました。しかし、最近は他にも様々な方法が開発されており、その最も一般的な例が回腸‐肛門吻合術です。この治療法は、大腸と直腸の大部分を切除し、小腸に小さな貯蔵部を形成して、それを肛門のすぐ上の直腸残存部につなぐ手術法です。この治療法では便を排泄するまで体内にとどめておくことができますが、貯蔵部の炎症などの合併症が起こる恐れがあります。なお、潰瘍性直腸炎では手術が必要になるのは稀で、余命にも影響はありません。しかし、一部にはどの治療法によっても症状が改善されない例もあります。それに対して中毒性大腸炎は手術を必要とする緊急事態です。中毒性大腸炎が見つかったり中毒性巨大結腸の疑いがあれば、即座に下痢止め薬は中止して絶食し、胃か小腸に経鼻チューブを挿入して定期的に吸引します。水分と栄養、薬剤は点滴で投与します。患者に腹膜炎や穿孔の徴候がないかどうか注意深く観察します。これらの処置で24?48時間以内に症状の改善がみられない場合は、緊急手術が必要となります。その場合大腸全体か大腸の大部分を切除します。

参考:過敏性腸症候群に関する参考サイト

◆参考図書
伊藤克人『過敏性腸症候群の治し方がわかる本』主婦と生活社
伊藤克人・著
『最新版 過敏性腸症候群の治し方がわかる本』
こころの健康シリーズ、主婦と生活社・2011年08月、1,155円
急増している過敏性腸症候群について、最新の薬物療法、心理療法、ライフスタイル改善法をわかりやすく解説。
キーラン・J.モリアーティ『過敏性腸症候群 よくわかる お医者に行く前にまず読む本』一灯舎
キーラン・J.モリアーティ・著
荻野俊平・監訳、三枝小夜子・訳
『過敏性腸症候群 よくわかる お医者に行く前にまず読む本』
わが家のお医者さん17、一灯舎・2008年05月、1,260円
本書はまず、消化管の構造と機能、および、過敏性腸症候群の症状と、その診断法について説明します。過敏性腸症候群の原因についてわかっていることなども説明します。その後、一般的な便秘や下痢などの症状を説明します。これにより正反対に思われる症状が同じ症候群に含められている理由がわかるでしょう。最後にこれらの症状とうまくつき合っていく方法などを示します。
ジェフリー・M・ラックナー『IBS克服10のステップ 過敏性腸症候群で悩む人&専門家へ』星和書店
ジェフリー・M・ラックナー著、
佐々木大輔・監訳&解説、細谷紀江&佐藤研・訳
『IBS克服10のステップ 過敏性腸症候群で悩む人&専門家へ』
星和書店・2012年10月、2,835円
薬だけでは完治が難しいIBS。本書は、認知行動療法に基づいた、自分でできる症状コントロールのための10ステップを紹介する。症状・原因・診断法や食事・薬物療法などについても詳しく解説。IBSに悩む患者さんのみならず専門家にも役立つ、IBS克服のための決定版。

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