
更新された脅威の1 つは、論ずるまでもなく、日本を射程内に置く相当数のミサイルと大量破壊兵器(特に核)とを保有し、放置するとやがては両者を結合(核戦力化)するに至ると見られる北朝鮮の軍事力です。これはまた大量破壊兵器の拡散源ともなり得ますから、北朝鮮問題は単に我が国周辺地域の問題であるだけではなく、今やグローバルな安全保障上の懸念となりつつあります。そのため、6カ国協議を通じて、或は日米共同の外交圧力の下、北朝鮮に核の完全放棄と将来にわたる断念を強いることは、グローバルな安全保障環境を安定させる上でも必要であるということになります。
ただしそれが奏功しない場合に備えて、当然我が国としても防衛手段を整備する必要があるでしょう。しかし、北朝鮮から直接に飛来するミサイル兵器に対しては、既存の能力や既存措置の改善・強化をもって臨むことは実は不可能です。日本はこの種の脅威に対処するため、自衛能力の「更新」をも図らなければならないのです。
03 年12 月19 日、日本政府は、現有のイージス艦と地対空誘導弾ペトリオットの活用によるBMD(弾道ミサイル防衛構想
※注2)システムが「弾道ミサイル攻撃に対して我が国国民の生命・財産を守るための純粋に防衛的かつ唯一の手段」であるとの理由で同システムの整備を決定しました。しかし、これをもって事足れりではありません。我が国を射程に収める北朝鮮のノドンは既に100基を大きく超えると見積もられていますから、初期型BMDシステムの効果は名目的なものに止まる危険があるのです。
また、北朝鮮ではありませんが、中国の中距離弾道ミサイル戦力も拡大が進められていると推測されます。これら弾道ミサイルの脅威を無力化するため、これまで逡巡してきた日米共同開発に踏み切り、より高性能な迎撃体の開発に向けた努力を日本は今後とも強化すべきなのかも知れません。

ちなみに、弾道ミサイル防衛は100 パーセントの確率を持ち得ません。そのため、北朝鮮のミサイル攻撃着手が確実となった段階では、当然ながらそれを阻止する意志と阻止出来る打撃力とが本来は我が国に備わっていなければならないのです。
これはポスト冷戦後の安保体制に関して述べたところとも関連しますが、そういう事態での攻撃阻止の意思と能力を持つためには、いわゆる「専守防衛」論の見直し、或は新たに定義される「専守防衛」論の下での策源地(=前線の部隊に対し物資の補給などの兵站〔へいたん〕活動を行なう後方基地)打撃力の保有も真剣に検討してみる必要があるわけです。
他方、湾岸戦争でも判明したように、米軍の圧倒的な攻撃力をもってさえ弾道ミサイルの移動式発射台を破壊することは困難を極めます。中距離弾道ミサイルの多くが移動式で発射されることを考えると、仮に「専守防衛」を見直して策源地攻撃能力を得たとしても、我が国の持ち得る打撃力の主体的な効果は低く、従って「専守防衛」の見直し効果を誇大視せず、打撃力の必要な局面では米軍に依存する現在の防衛政策をさらに維持強化する方策が賢明でしょう。
| ※ワンポイント3 |
弾道ミサイル防衛構想(BMD:Ballistic Missile Defence) |
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東西冷戦終結後、第三国に拡散する大量破壊兵器・NBC兵器(核・生物・化学)及びそれらを運搬するミサイル等の拡散による脅威に対処するため、アメリカが同盟国と進めているミサイル防衛構想の総称で、米本土を防衛するための国家ミサイル防衛構想(NMD※注1)と世界各地に展開する米軍及びその基地ならびに同盟国を防衛するための戦域弾道ミサイル防衛構想(TMD※注2)の計画が推進されている。
(※1)国家ミサイル防衛(NMD:National Missile Defence)
(※2)戦域弾道ミサイル防衛(TMD:Theater Missile Defence) |
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