【1】児童虐待とは何か?〜児童虐待の種類とその実態〜 |
最近ニュースなどで児童虐待による殺人事件等が盛んに報道されています。
まず本節では、そもそも児童虐待とは何か、その定義や種類などについて解説しました。
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増える児童虐待〜「虐待しているのでは?」と不安な人4割〜 |
親は子どもに対し愛情をもって接するべきなのに、虐待してしまう例が後を絶ちません。児童虐待のニュースを最近しばしば見かけますが、親が自分の子どもを虐待したり、ひどい時には折檻した結果死なせてしまうケースが目立ちます。
ちなみにあるアンケートによれば、「躾にしては行き過ぎではないか?」と思う場面を見た人が半数近くもいたと言います。また、「自分では気がつかないけれど、虐待しているかも知れない」と不安に思った人が4割強もいたそうで、さらに、「子どもを叩き続ける」「子どもの存在を否定するような言葉を言い続ける」人が各1割以上もいたとのことです。そして、「子どもを叩き続ける」、「子どもの存在を否定するような言葉を言い続ける」、「子どもを長時間1人にする(家の中や屋外&車中に)」、「子どもに食事を与えないことがある(病気の場合を除く)」などの明らかな虐待行為をしたことのある親が4割近くもいるのだそうです。
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児童虐待とは? |
最近、児童が虐待を受けて死亡する事件が報道されています。自治体でも、子どもに対する虐待の相談件数が近年急増していると言われます。これは、子どもへの虐待が急激に増えているのか、または、これまでも行なわれていたことが最近虐待として認識され始めたために相談される件数が増えて来たのかは俄には分かりませんが、虐待で心身に深刻な影響を受けている子どもが大勢いることは間違いのない事実です。また、都市部に限らず地方でも児童虐待は多く見られる現象となっています。
親や親に代わる養育者が子どもに対する身体的暴力や言葉による暴力などを行なうことを児童虐待と言います。児童虐待と言うと直ぐに暴力的な行為を思い浮かべがちですが、養育の放棄や無視(ネグレクト)など子どもの成長や発達に著しく影響を及ぼすような養育の状況も含まれます。そして、虐待は子どもの心身に深刻な影響を与えます。児童虐待は子どもの心と身体に深い傷を残し、健やかな成長や人格の形成に重大な影響を与えるばかりか、次の世代に引き継がれ、近い将来、さらに深刻な社会問題へと拡大する恐れも含んでいます。このように子どもに対する虐待は、子どもの健康を損ない、子どもの身体や心までも傷つけてしまう行為なのです。なお、虐待は社会に顕在化しにくいという特質もあるため、早期発見・早期対応が何よりも重要です。そのためには、地域に住む私たち一人ひとりが虐待に関心と理解を持つことが必要となってきます。
確かに「可愛い我が子をなぜ虐待するのだろう?」と思う人が多いと思いますが、しかし、実は児童虐待は誰にでも起こりうることなのです。たとえば育児の悩みを相談する人がいないとか、一生懸命に子育てをしているのに子どもが思うように育ってくれないなど、育児に関する不安を抱える中でついつい我が子を虐待してしまう親もいるのです。このように、児童虐待は誰でもしてしまう可能性があるのだという認識を私たちが持つことで、児童虐待の早期発見と早期対応が可能になり、子どもを救うことができます。我が子を虐待している親は、子育てに悩み苦しんでいる人であり、必ずしも非難されるべき人ではなく、援助を必要としている人であることをまずは理解することが大切です。
◆参考1: |
児童虐待の「発見」 |
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児童虐待が社会問題として浮上したのは比較的近年のことだと言われています。それというのは、昔は「躾のために親は子どもに折檻を行なうものだ」という常識が世界的に受け入れられていて、子どもの虐待は最近までは全く問題視されなかったという側面もあります。特に近代以前においては、児童は親の所有物という考えが社会通念としてあったために、人身売買や、果ては口減らし(間引き)とする子殺しすら行なわれていた事情もあります。その証拠と言っては何ですが、我が国でも、1995年の刑法改正で削除されるまで尊属殺人で子どもが親を殺すのは厳罰であったのに対して、親が子どもを殺すことには格別罰則が設けられていなかった有様です。なお、民法においても親権者による「必要な範囲内」での体罰は認められているため、現実に虐待と体罰の区別を明確にすることは難しいとされている状況です。 |
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児童虐待の定義と種類 |
■法律による定義 |
日本では、00年11月に施行された「児童虐待の防止等に関する法律」、「保護者(※親権を行なう者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者を言う)がその監護する児童(18歳に満たない者)に対し、次に掲げる行為をすること」と定義されています(第2条)。 |
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- 児童の身体に外傷が生じ、または生じる恐れのある暴行を加えること
- 児童に猥褻な行為をすること又は児童をして猥褻な行為をさせること
- 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること
- 児童に心理的外傷を与える言動を行なうこと
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■児童虐待の種類 |
児童虐待には大きく分けて4つの分類があります。これらは単独ではなく、重複して現われることもあります。 |
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身体的虐待 |
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法律では、身体的虐待とは、《児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第1項)と規定されています。
具体的には、暴力等により身体に傷を負わせたり、生命に危険を及ぼすような行為を言い、たとえば殴る、蹴る、投げ落とす、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物を飲ませる、食事を与えない、冬に戸外に閉め出す、一室に拘束する、タバコの火やアイロンを押し付けるなどの行為の総称です。 |
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性的虐待 |
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法律では、性的虐待とは、《児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第2項)と規定されています。
具体的には、性的暴行や児童に対する猥褻な行為を言い、たとえば子どもへの性交や性的暴行、性的行為の強要・示唆などの行為、また、性器や性交を見せたり、ポルノグラフィーの被写体などに子どもを強要する行為の総称です。 |
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ネグレクト(養育の放棄・怠慢) |
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法律では、ネグレクトとは、《児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第3項)と規定されています。
具体的には、心身の発達を損なうほどの不適切な養育や子どもへの安全への配慮がなされていない行為を言い、たとえば保護の怠慢や拒否・放置により子どもの健康状態や安全を損なう行為や、子どもの健康・安全への配慮を怠るとか、子どもにとって必要な情緒的要求に応えない、食事や衣服、住居などが極端に不適切で、子どもの健康状態を損うほどの無関心・怠慢などの行為、また、子どもを遺棄するとか、適切な衣食住の世話をせず放置する、病気なのに医者に診せない、乳幼児を残したまま度々外出する、乳幼児を車の中に放置する、家に閉じ込める、学校に登校させないなどと言った行為の総称です。なお、ここで付言しておきますが、たとえば親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し熱射病で子どもが死亡したり、また、夜間に乳幼児だけを家に残して火災で焼死したりする事件も、ネグレクトという虐待の結果なのです。 |
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心理的虐待 |
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法律では、心理的虐待とは、《児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと》(児童虐待の防止等に関する法律:第2条第4項)と規定されています。
具体的には、子どもに著しい心理的外傷を与える言動を行なうこと、また、ひどい言葉や極端な無視、拒否的な態度などによって子どもに心理的な傷を負わせる行為を言い、たとえば言葉による脅かしや脅迫などの行為や、子どもの心を傷つけることを繰り返し言うとか、子どもの自尊心を傷つけるような言動などの行為、また、他の兄弟とは著しく差別的な扱いをする行為の総称です。また、DVなどを子どもの目の前で見せ、苦痛を与えてしまう行為も心理的虐待に含まれます。 |
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参考1:無自覚の虐待の問題 |
虐待行為の中には、当事者が必ずしも虐待の自覚を伴わないで行なっている行為も当然ながら含まれます。たとえばネグレクトなどではパチンコ関連で社会問題化もしていますが、これは昔から行なわれていることながら、未だに自動車内への乳幼児の放置などが危険な行為であるという認識もなく行なわれる事例が後を絶たず、業界団体より注意が呼びかけられ、また、各店舗でも保護者に注意を呼びかけるといった活動が見られます。また、自覚のない心理的虐待としては児童に対する「過干渉」といった例も挙げられます。
なお、「揺さぶられっ子症候群」等に見るように、本人は子どもをあやしているつもりで負傷させるケースも警告されています。こちらでは、子煩悩ぶりを発揮して子どもを喜ばせようとして張り切り過ぎ、結果的に却って負傷させてしまうといったケースも報告されています。またその一方で、心理学的方面ではしばしば保護者側が偏った価値観や認識を子どもに強要するなどの問題も見出されます。ちなみに、このような問題に関連しては、たとえば米国において、「片親引き離し症候群」と称する、離婚家庭において片親が離婚した側の相手を中傷する情報を子どもに対して洗脳的に与えているなどとする指摘も出ました。なお、これに関しては、たとえばDVの問題にも関係して、米国内でもその後否定的見解が精神医学・法曹分野で成されるなどしているといった複雑な事態の発生も見られます。
◆参考2: |
マルトリートメント(不適切な養育・関わり)とは? |
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児童虐待の定義で明記された内容以外にも、児童に対する不適切な養育や関わりについてより広い認識も持つ必要があります。たとえばマルトリートメントとは、大人(行為の適否に関する判断の可能なおよそ15歳以上の年齢の子どもを含む)の子どもに対する不適切な養育や関わりを意味しており、これは「虐待」よりも広い概念です。
確かに児童虐待の定義で示される虐待の内容は、児童虐待が起きている状況が、ある程度様々な情報や状況から明らかな、ないしは推測できるものとなっていますが、マルトリートメントという概念では、児童虐待の定義で示される内容以外にも、現に虐待という状態ではないとしても、今後そういう状態に発展する危険性のあるようなグレイゾーンの状態も含みます。このような広い概念も導入して子どもに対する不適切な養育や関わりについてより広い認識を持って早期に対応することで、問題の重度化や深刻化を防止することにつながることが期待されます。 |
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参考2:その他の虐待と児童虐待との関係 |
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DV(ドメスティック・バイオレンス) |
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DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者や親密な関係のパートナーからの暴力を言い、具体的には殴る蹴るなどの「身体的暴力」や、怒鳴ったり侮辱したりする「言葉の暴力」、無視や行動の制限等の「精神的な暴力」(日本では一般にモラルハラスメントとも言います)、性的行為の強要などの「性的暴力」、生活費を渡さないなどの「経済的な暴力」などがあります。
近年、DVに子どもが巻き込まれ、子どもの心身に大きなダメージを与えている事実が注目されています。夫やパートナーからの暴力が直接子どもには向けられていなくても、DVを見続けるだけでも、その子どもにとっては大きなトラウマ(心的外傷)になる可能性があります。たとえば母子ともに暴力に晒されている場合や、殴られている母親が子どもを殴る(暴力の連鎖)といった場合はもちろんのことながら、子どもが夫婦間の暴力を目撃しているだけである場合でも、子どもへの悪影響は子ども虐待同様に非常に深刻なものがあるのです。従って、子どもの虐待の背景にDVが隠れていないかという視点を持つことも重要だと言ってよいでしょう。 |
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学校・幼稚園・保育園での虐待 |
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先生による虐待(※残念ながら児童虐待防止法には規定されませんでした)は、親や養育者からの虐待と同じぐらい子どもの心に傷を残します。また、部活やスポーツクラブのコーチによる気合い入れやビンタなども虐待に当たると考えられます。日本古来の軍隊式のしごきは決してよい結果を生まないばかりか、暴力容認の土壌を生み出す温床になっているのではないかと思われます。 |
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養護施設での虐待 |
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保育士や指導員、園長などによる入所児に対する虐待も後を絶ちません。また、年長児(※児童養護施設には2歳〜18歳まで入所しています)から年少児へのイジメや暴行なども起こっています。これは、狭い空間や劣悪な環境によるストレスや入所児童の以前の生育環境(暴力の連鎖)も考える必要があると思われます。 |
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◆参考3: |
躾と虐待 |
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我が子を虐待した親の言い訳で多いのが、「虐待ではなく躾のつもりがついゆきすぎてしまった」と言うものです。虐待と躾の間には、キッチリと線引きすることができないグレイゾーンが存在します。でも、多数の事例に関わってきた福祉・保健関係者や精神科医・小児科医なども言うように、「子どもが耐え難い苦痛を感じさせることであれば、それは虐待である」と考えるべきでしょう。たとえ保護者が子どものためだと考えていても、過剰な教育や厳しい躾によって子どもの心や体の発達が阻害されるほどであれば、あくまで子どもの側に立って判断し、虐待と捉えるべきです。
大体、子どもに手を挙げたり怒鳴ったり、ひどい言葉を投げつけた瞬間、この子がよい子に育つようにと考えながらそれを行なえる人が一体何人いるでしょうか? そのような状態に陥っている時には、既に理性は吹き飛んで感情の赴くまま、ただ自分の「言うことを聞かせよう」としているのではないかと思います。そもそも躾とは「子どもに礼儀作法を教えること」であって、自分の思うままに動くロボットを作る(支配する)ことではないのです。 |
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【2】児童虐待が起こる背景と要因〜虐待はどうして起きるのか?〜 |
児童虐待は当然ながら家庭において起こります。児童虐待の門dないを考えるためには、まずは家族の問題を考える必要があります。
本節では、児童虐待が起こる背景や要因を家族の問題を中心に探りました。
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児童虐待が生じる家族 |
児童虐待が生じる家族は、保護者の人格特性や経済状態、就労、夫婦関係、住宅事情、医療や健康上の課題、子どもの発達特性等、実に多様な問題を抱えています。それらの問題が絡み合い複合し、家庭内に生じた家族全体のストレスが最も弱い立場にある子どもに向かうというのが、虐待の生じるメカニズムです。児童虐待は、このように家族の構造的背景から生じるのです。
ただ、虐待の生じるハイリスク要因は様々です。そして、これらのハイリスク要因ひとつだけで虐待が生じるわけでもありません。すなわち、児童虐待はそれらの要因が重なりあって起こるのです。従って、児童虐待のハイリスクな要因があるからといって、その家族を色眼鏡で見ることがあってはならないことは言うまでもないことを念のためにここに付記しておきます。
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虐待はどうして起きるのか?〜児童虐待が起きる背景と要因〜 |
子育てにはしばしば不安やストレスが伴います。虐待はこのような不安やストレスが昂じて行なわれることも多くあります。なので、児童虐待は必ずしも特殊な問題ではなく、誰にでも起こりうる問題なのです。しかし、以下のような要因が重なった時に虐待へ発展しやすいと考えられています。
■虐待が起こる要因 |
親が我が子を虐待するようなことがなぜ起こるのでしょうか? 多くの場合、ひとつのことが原因ではなく、様々な要因が重なった時に家族関係が不安定になり、子どもの虐待が引き起こされます。以下に示す要因は、これらがあるからといって必ずしも虐待を引き起こすというわけではありませんが、虐待発生の可能性を高める要因と言われています。 |
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育児不安 |
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親自身の虐待された経験 |
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病気や精神的に不安定な状態 |
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不安定な夫婦関係 |
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経済的不安 |
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地域からの孤立 など |
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親の生育歴 |
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子どもを虐待する親の中には、親自身が虐待を受けて育ってきた人もいます。虐待を受けて育つことは、他者への不信や自分への不信、また低い自己評価をもたらします。つまりその人自身、安定した人間関係が持ちにくいこととなるわけです。また、虐待を受けた体験は自分が子どもを育てる時に再現しやすく、子どもに暴力を振るいやすいとも言われています。さらに親は、自分が幼い頃に自分の親から得られなかった愛情と信頼を我が子との関係の中で満たそうとします。つまりこの場合、子どもに愛してもらいたいという親子の役割の逆転をもたらすことにもなるのです。 |
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家庭の状況 |
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夫婦関係が不安定な場合、一方が支配し他方が服従するという関係になることが多いと言われています。そのため、服従している配偶者は我が子に対する虐待を黙認することも見受けられます。また、そのような不安定さからか、職場でのトラブルなどにより経済的に困難な状況に陥っていることも多く見られます。 |
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社会からの孤立 |
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近隣との関係がうまくゆかずに孤立化すると、虐待の発見を妨げ、深刻さを増すことにも繋がります。 |
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親と子どもとの関係 |
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兄弟姉妹のいる場合、全員に虐待が行なわれる場合もありますが、その中の特定の子どもだけが虐待の対象となることがしばしばあります。従って、虐待は親や家族の問題としてのみならず、親と子どもとの関係の問題とも言われています。たとえば母子分離の状態が長かった場合、親がその子どもに対して愛情が感じられなくなることがあると言われていますが、親と特定の子どもとの間に問題が起きるのは、このような母子分離の体験が要因と考えられる場合もあるのです。 |
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子ども自身の要因 |
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よく泣く・要求が強い・こだわる・なだめにくいなど、しばしば手のかかる子や育てにくい子という言われ方をする子どもがよくいますが、そのような子どもに対して親が否定的な感情を持ってしまうことがあります。また、子どもが慢性疾患や障害を持っていた場合など、親がその対応に追われて余裕が無くなり、他の子どもへの虐待へと繋がることもあると考えられます。 |
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◆参考4: |
虐待の慢性化の背景 |
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虐待の生じる家族構造が一度できてしまうと、家族は自ら問題解決を図ることができず、周囲からの働きかけにもスムーズに応じることができなくなることがあると言われています。そして、このようような時に、保護者に対して「親なのだから」と反省を迫るだけの叱るような働きかけをすることは、家族を地域内でより孤立させることになってしまいます。そうなると、逆に周囲の目がより家庭内に届かなくなり、虐待は却って進行・慢性化してしまうのです。時には反省が保護者の精神状態を悪化させ、虐待のエスカレートや、或は転居による証拠隠滅などを引き起こすことも考えられます。また、家族と関わりを持っている機関や個人が自分の力だけで何とかしようとして問題を抱え込むことも、構造的背景を持つ虐待の解決には逆効果になります。 |
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子どもが暴力の被害に遭いやすい理由 |
■1) |
社会的な力を持たされていない |
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子どもは生まれてくる環境を選べませんし、そこを離れて一人で生きてゆくこともできません。また、虐待は構造的な力の差によって起こります。大人にとって子どもは力関係において明らかに自分より弱い立場にあるため、大人が暴力を振るいたくなるような何らかの要因に陥った時、ストレスの捌け口にするには身近にいる子どもは格好の餌食となるのです。 |
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■2) |
虐待についての正しい知識や情報を持っていない |
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子どもは生まれてくる環境を選べませんし、そこを離れて一人で生きてゆくこともできません。また、虐待は構造的な力の差によって起こります。大人にとって子どもは力関係において明らかに自分より弱い立場にあるため、大人が暴力を振るいたくなるような何らかの要因に陥った時、ストレスの捌け口にするには身近にいる子どもは格好の餌食となるのです。 |
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■3) |
孤立している |
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虐待を受けても誰にも言えない状況にあったり、加害者によって口止めされていることもあります。また、誰かに言える状況にあったとしても、虐待を受けるのは自分が悪いからだ、自分が悪い子だから叩かれるんだと思い込んでいる(或は思い込まされている)子どももいます。そういう子どもは、たとえ親から虐待されていても、そのことを誰にも言うことができなくなってしまうのです。 |
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虐待が起こりやすくなるリスク要因 |
■虐待が起こりやすくなるリスク要因 |
■1) |
個人的な要因 |
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- 親に人権や暴力についての正しい知識がない
- アルコール依存症や薬物依存症などのアディクションがある
- 心身の健康面で問題がある
- 知的障害を持ち、なおかつ社会的なサポートが得られていない
- 自己肯定感のなさ、自己評価の低さがある
- 強いストレスを受けている
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■2) |
社会的な要因 |
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- 夫婦間あるいは家族間の人間関係が上手くいっていない
- DVを受けている
- 自分の親との現在の関係が上手くいっていない(いなかった)
- 親自身の生育歴(機能不全な環境で育った、虐待を受けていたなど)に問題を抱えている
- 孤立している
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■3) |
環境的な要因 |
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- リストラや失業している
- 低収入
- 住宅事情が悪い
- 子どもが多い
- 近隣の環境(閉鎖的な人間関係など)に問題がある
- 所属する社会の子ども観に虐待を容認させるようなところがある
- 暴力を容認する社会的認識を持っている
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■4) |
その他の要因 |
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- 核家族化や父親が不在がちな家庭環境
- 近所づきあいの減少で孤立し、子どもとの密着化を来している
- 育児に関する体験的な知識が持ちにくい
- 育児に関する情報の氾濫から親の子育てに迷いを生じている
- 相談できる相手がいない
- 「3歳児神話」などによって母親が追いつめられている
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■子ども側の要因〜虐待されやすい子どもとは?〜 |
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- 未熟児
- 多胎児(双生児、三つ子など)
- 障害、病弱、発育不全
- 夜泣き、反抗的な態度
- いわゆる育てにくい子(ディフィカルト・チャイルド)
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児童虐待をしてしまう「心理」とは? |
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どうして虐待してしまうの?
〜過去の傷や風評は気にするな 今の心の状態に目を向けよう〜 |
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一般に「虐待を受けた人は子どもにもそれを繰り返す」という世代間連鎖や、また、「望まれずに出生」「女性の社会進出」などが虐待に繋がりやすいと従来から考えられてきましたが、ある調査によると、これらの要因は、それだけを録ってみれば数値的には思ったほど高くはないようです。つまり、過去の傷や風評に惑わされすぎて、育児を恐れすぎたり、育児に対する自信をなくす必要は全然ありません。それっよりは、現在の育児状況における不安や孤独、孤立といった問題の方が実は児童虐待に大きく影響しているのです。 |
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私もいずれしてしまうかも!?〜育児による苛立ちがエスカレートするのが虐待〜 |
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実際、経済的困難もなく円満家庭であっても、ままならない育児への苛立ちを抱えている人は多くいるでしょう。疲れが溜まっていると、子どもを叱る時の語調が強くなったり、いつもは気にならない子どもの行為にもヒステリックに反応してしまうということは、親ならば誰しも経験していると思います。虐待をしてしまうのは、その人が特別だからではありません。もちろん子どもの心の傷は人生に大きな禍根を残す元凶となるのだから、児童虐待を容認してよいわけではありませんが、とにかく八方塞がりの状況の中で育児をしていると、子どもの行為に過敏に反応しやすくなってしまうことが児童虐待の発端であるのです(※性的虐待の場合は除く)。 |
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悩んでいる人は1人にならない、1人にしない
〜悩んでる人に寄り添ってあげるのが子どもを虐待から救う道〜 |
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大切なのは、親が子どもを虐待をしてしまう前に、その親御さんの周囲が気がついてあげることです。もしもあなたの知り合いが育児に悩んでいるようなら、ぜひ足を運んで話を聴いてあげたらどうでしょうか。その際には、相手を否定したり説教したりせず、まずは気持ちを受け止めてあげることが何より大切です。そして、一緒に解決してゆく道を考えたり、保健センターや児童相談所についていってあげて、解決の糸口をさぐるための援助をしてあげましょう。とにかく、悩んでいる人を「一人にしない」ことをが大事なのです。 |
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