1stサービスヤマト生活情報館
ヤマト生活情報館 インデックスページに戻る
こちらもチェック 水のトラブル プロが教える自分で出来る修理法
Presented by Yamato Group
今月のワンポイントアドバイス







 いつ日本で流行してもおかしくない狂犬病。

狂犬病は、感染したが最後必ず死に至るという、狂牛病や鳥インフルエンザよりももっと恐ろしい病気です。

今月はその狂犬病とその予防法を解説しました。


狂犬病
【1】狂犬病とは?
【2】狂犬病とその症状
【3】狂犬病の検査と治療
【4】狂犬病と予防接種

【1】狂犬病とは?

 昭和32年来発症がなかった狂犬病がいつ日本で発生してもおかしくない状況です。本節では、狂犬病とはどのような病気なのか、その歴史も含めて解説しました。
危険な狂犬病がいま日本に迫る!?
日本に迫る致死率100%の狂犬病

 現在も世界中で年間約5万5千人が死亡する人類最大の疾病のひとつ、ウイルス性の人獣共通感染症・狂犬病がアジアで拡大しています。


 今年7月、台湾では野生のイタチアナグマ3頭の死体から実に52年ぶりの感染が発覚しました。現地紙によると、9月下旬段階でイタチアナグマ143例、ジャコウネズミ1例、そして犬にも1例の狂犬病感染が報告されているそうです。これによりペットショップの8割ほどが開店休業状態に追い込まれた台湾の狂犬病パニックは、同じ島国で1957年を最後に狂犬病の感染報告がない日本にとっても決して対岸の火事ではありません。アジアは世界でも狂犬病での死亡者が多いインドや中国を抱えており、台湾の陥落によって狂犬病未発生地域はシンガポールと日本だけになってしまったからです。

 狂犬病で毎年2千人以上が死亡している中国には、当局が把握しているだけで1億5千万匹の犬(食用、愛玩用、野犬)がおり、愛玩犬も放し飼いが基本です。咬傷事故は年間10万から15万件が報告されていますが、これは病院などから公式に届けられた数で、実際はその10倍以上あると言われています。その上、中国の狂犬病予防接種率は極めて低いのが実情です。中国では登録とワクチン接種の費用が日本円にして約1万5千円と非常に高額なため未登録犬・未接種犬が多く、偽ワクチンも大量流通していて、医療機関もワクチンの真贋を把握できない、また、獣医師や医師が私腹を肥やすためにワクチンを薄めて打つケースも少なくないため、はっきり言って打つ手なしの状態だと言います。そんな中国からの狂犬病流入が日本に限って起こり得ないと考えるのは余りにも楽観的です。しかも、不安要素は中国だけではありません。北海道で問題となっているロシア船乗務員が持ち込んだ犬の野犬化や東南アジア各国の貨物船や漁船による愛玩動物の密輸など危険は幾らでもあるのです。
 検疫という水際を突破され、国内で動物の感染が確認された場合、用心のために人間が狂犬病の予防接種を受けようとしても、日本では全て自己負担。半年かけて計3回接種し、やっと基礎免疫ができるワクチンを製造している国内メーカーは現在1社しかなく、その量はたった5万回分(3回接種するとすれば約1万6700人分)にすぎないという実情です。そんな中で狂犬病に発症したら致死率はほぼ100%です。日本国内には飼い犬が約1300万匹いるそうですが、狂犬病の予防接種実施率はWHO(世界保健機関)ガイドラインの70%を遙かに下回る僅か40%に留まっています。そして、猫やハムスターなどの小動物に至っては完全にノーガード状態です。何れにせよ、ペットはもちろん人間への狂犬病の感染を防ぐためにも、少なくとも野生動物には迂闊に手を出さないという鉄則だけは守りたいものです。
台湾の狂犬病ウイルスはどこから来たのか?

 今年7月、台湾の中央流行疫病指揮センターは、昨年回収した野生のイタチアナグマ3頭の死体から同地域では52年ぶりに狂犬病の感染を確認したと発表しました。日本国内では1957年を最後に感染例がなく、既に過去のものとされている狂犬病ですが、それがなぜ台湾で発生したのか。

 遺伝子調査の結果、今回のウイルスは中国大陸から持ち込まれたことが確定的だということです。島国の台湾で、イタチアナグマのような山林に棲む動物が突発的に狂犬病に感染することはありえないため、恐らく数年前に大陸から持ち込まれた何らかの動物がスーパースプレッダー(一体で多数の個体に感染させる個体)となって様々な動物に広めた可能性もあり、だとすると、最初に発見されたイタチアナグマは、そのルート沿いに無数に広がる2次、3次感染の枝のひとつにすぎない可能性も高いということです。幸いまだ人間への感染例は確認されていませんが、人・動物を問わず52年間も感染ゼロを誇った台湾を震撼させるには十分な事件だと言えるでしょう。
狂犬病とは?

 狂犬病ウイルスによって伝播する動物由来感染症です。狂犬病はその名称から主に犬の病気だと思われがちですが、しかしながら狂犬病はヒトを含む全ての哺乳動物に感染する病気です。狂犬病は最も恐ろしい人獣共通感染症の一つで、犬や狐、猫などの殆どの哺乳類や鳥類等、人間も含む全ての恒温動物に感染するウィルス性の病気です。人や動物がこの病気に感染し、いったん発病すると治療方法はなく、発症した場合、犬や人での死亡率はほぼ100%という極めて恐ろしい病気です。症状としては恐水発作が有名ですが、それ以外にも、まず音や光に過敏になり、狂騒状態となり、動物では目の前にあるもの何にでも噛み付くようになります。やがて全身麻痺を起こし、昏睡状態となって死亡します。
 狂犬病の原因はウイルスで、狂犬病ウイルスに感染し、発症した動物の唾液中にウイルスが含まれているため、多くの場合これらの動物に噛まれることにより伝染しますが、その他にも舐められたり動物のクシャミなどからも感染します。咬傷等で体内に侵入したウイルスは、その侵入部位付近で増殖し、そこから神経組織に入った後、増殖を続けながら脳へと上り、異常な興奮状態や痙攣などの症状を引き起こします。そして、脳に達したウイルスはさらに神経を伝って唾液腺へと移り、唾液と共に排泄されるようになります。ウイルスが体内に侵入してから症状が出るまでの間を潜伏期間と言いますが、感染しても直ぐに発症するわけではなく、通常、犬で2〜8週間、人で1〜3ヶ月(平均1ヶ月)程度の潜伏期間の後、狂犬病を発症します。潜伏期間の長さは咬まれた部位から脳までの距離や侵入したウイルス量によって違いますが、何れにせよ、発症すると動物でも人でも100%死亡すると言われています。

 わが国においては、過去幾度となく流行を繰り返していましたが、昭和25年に制定された狂犬病予防法に基づ狂犬病き、犬の登録・予防注射の徹底など強力な予防事業が推進された結果、昭和31年以降は発生していません。しかしながら海外に目を転ずると、狂犬病は一部の国を除いて世界各国において発生しており、国際交流が盛んになった現在、わが国は常に狂犬病の危険に曝されていると言っても過言ではないでしょう。実際に海外ではアライグマやコウモリ、狐、スカンクなどの野生動物及びこれらの野生動物と接触の機会の多い放し飼いの猫などから人への感染が大きな問題となっています。アメリカやカナダを訪れたことのある人は公園などで野生のリスやプレーリードッグなどを見たになったことがあるでしょうが、しかしながら幾ら可愛らしく感じても、これらの野生動物は狂犬病ウイルスを持っている危険性があるので絶対に触らないように注意して下さい。


参考:動物由来感染症
 動物由来感染症(Zoonosis:ズーノーシス)とは動物から人に感染する病気の総称で、世界保健機関(WHO)ではズーノーシスを「脊椎動物と人の間で自然に移行する全ての病気または感染(野生動物等では病気にならない場合もある)」と定義しています。人と動物に共通する感染症は、日本では人獣共通感染症とか人と動物の共通感染症とも言われますが、厚生労働省では人の健康問題という視点に立って動物由来感染症という言葉を使用しています。

世界の状況〜日本での発生は?世界では?〜

狂犬病の分布 2012年の報告では、世界の狂犬病の犠牲者数は年間7万人と言われています。欧米諸国や北米では犬の狂犬病をほぼ制圧しましたが、野生動物に流行している狂犬病を根絶するまでには至っていません。一方、中国及び東南アジア諸国、アフリカ諸国では犬に狂犬病が流行しており、これを中心に公衆衛生上の大きな脅威となっています。また、2006年には世界狂犬病デーの取り組みが始まっており、世界135カ国においてイベントが開催され、狂犬病の教育活動や犬への狂犬病予防注射の取り組みが毎年行なわれています。ちなみに、人は狂犬病ウィルスに感染した動物に深く咬まれたり引っ掻かれたりすることで感染します。犬は狂犬病の主な宿主であり、媒介動物です。犬はアジアとアフリカで毎年約五万人と推計される人の狂犬病死亡の全ての感染源です。また、コウモリはアメリカ合衆国とカナダの人の狂犬病死亡の殆どの感染源です。コウモリの狂犬病は、最近オーストラリアやラテンアメリカ、西ヨーロッパで公衆衛生上の脅威となりましたが、しかし、これらの地域でコウモリによって起こった人の狂犬病死亡者数は、犬に咬まれたことによって起こった死亡者数に比較すると依然として少数です。なお、狐やアライグマ、スカンク、ジャッカル、マングースや他の野生の肉食動物種からの感染による人の狂犬病死亡は非常に稀です。さらに感染性物質(通常は唾液)によって伝播することもあり、人の粘膜や新しい傷に感染性物質が直接接触することで伝播することがあります(ただし、人が人を咬むことによる人−人感染は理論上起こり得ますが、確認されていません)。また、非常に稀ではありますが、狂犬病はウイルスを含有するエアゾールの吸入や感染した臓器の移植を通して感染する可能性も否定できません。なお、狂犬病に感染している動物の生肉または他の組織の摂取は人の感染源になりません。
 幸い日本での狂犬病の発生は1957年以降ありませんが、1970年に旅行先のネパールで犬に咬まれた邦人男性が帰国後に狂犬病を発症して亡くなった事例があります。また、2006年11月には、フィリピンからの帰国者2名が相次いで狂犬病を発症しています。その一方、世界では今なお多くの国で狂犬病が発生し、年間4万〜7万人が狂犬病で死亡しています。2006年11月現在、狂犬病が発生していないのは、日本、アイスランド、アイルランド、スウェーデン、ノルウェー、英国(グレートブリテン及び北アイルランド)、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ諸島、グアムの10の国と地域のみです。上記は皆、島国や高い山脈に隔てられた半島など地理的に動物が往来しにくい地域に限られています。日本にいると余り実感できませんが、世界的には狂犬病の発生は増加傾向にあり、そのため、海外との人や動物の移動が盛んな今日では日本に狂犬病がいつ侵入してきてもおかしくない状況にあるのです。たとえば1997年まで狂犬病の発生がなかったインドネシアのフローレス島では、漁師の船に乗って来たたった3頭の犬の中から狂犬病が発生し、3年後には全島に流行しました。流行を阻止するために50万頭の犬(犬総数の63%)が処分され、3年間で計81人が死亡しました。また、2000年に犬に咬まれて暴露後免疫治療を受けた患者数は7千人以上にも上ったと言います。狂犬病は、このように一度侵入し流行してしまうと、その撲滅に莫大な時間と費用がかかり、多くの生命が犠牲になってしまう恐ろしい病気です。もっとも疫学的には集団の70%以上が予防接種を受けていれば感染症の流行を防ぐことができると言われています。そんなわけで、万が一の狂犬病侵入に備えて、今のところ狂犬病の発生がまだ起こっていないない日本でも狂犬病予防注射は重要なのです。
日本における狂犬病の歴史
日本最古の狂犬病

 丹波康頼(911〜995)によって当時の中国の医書をもとにして982年に著された日本最古の医学書である『医心方』に狂犬病の記載があります。ただ、実際に当時の日本で狂犬病が流行していたか否かは不明です。まだ人口も少なく、犬の数も多くなかった時代に狂犬病が蔓延していたとは考えられないからです。狂犬病が流行したとしても、中国や朝鮮からの輸入犬に起因する小規模な流行であったのではないかと推測されます。
江戸時代

 日本で犬の数が増し、野良犬対策が必要になったのは徳川5代将軍綱吉の時代です。1687年からその内容が厳しくなった生類憐みの令によって、犬の飼い主には飼い犬の登録すなわち飼い犬の性別や毛色、年齢などの特徴を犬目付まで届け出て「御犬毛付帳」に記帳してもらうことが義務付けられました。そればかりでなく、飼い犬が病気になれば犬医者の治療を受けさせ、死亡すれば犬目付に届け出た後に無縁寺に埋葬しなければならず、また、飼い犬が行方不明にでもなれば犬目付の厳しい取り調べを受けなければならなかったのだそうです。このため、庶民が犬に関わることを避けるようなり、野良犬が江戸市中に急増する結果となりました。そのため、幕府は1692年に人喰犬繋留命令を発布しましたが、効果はなかったようで、1695年には犬の収容所を四谷大木戸に設け、野良犬を収容しました。しかし、そこもたちまち満員になったため、現在のJR中野駅を中心に16万坪に及ぶ広大な犬小屋を設営し、野良犬を収容して飼育したそうです。この犬小屋は綱吉の死後、生類憐みの令の廃令と共に1709年に廃止されます。
 日本で狂犬病の流行が記録されているのは18世紀以降です。八代将軍・徳川吉宗が支配した享保年間には狂犬病の大流行が見られ、犬や馬、狐、狸などが多数犠牲になったことが記されています。また、幕府の医官であった野呂元丈(1692〜1761)は『狂犬咬傷治方』の中で「咬まれた傷は軽くとも、後で再び病が重くなって十中の八、九は死ぬから、瘡口は早く血を吸い出して灸をすえるがよい」と記しています。江戸時代後期における狂犬病の実態は明らかではありませんが、十代将軍・家治の要請で編纂された救急治療法集である『広恵済急方』(1788年完成)には、「常犬に咬たるは(つねのいぬにかまれたるは)」及び「やまひ狗に噛たるは(やまひいぬにかまれたるは)」と言って、健丈な犬に咬まれた場合と病い狗(多分狂犬病の犬)に咬まれた場合を別項目で扱って治療法が述べられていることから、少なくとも狂犬病発生が稀ではなかったことが推測できます。
明治以後

 明治時代の初期から中期には狂犬病が地域的に流行し、時にはかなり広範囲に流行が及びました。特に人口も犬頭数も多かった東京では狂犬病の流行にしばしば悩まされたようです。しかし、全国レベルでも府県レベルでも狂犬病発生件数を集計し記録する体制は整っていなかったため、発生件数を明らかにすることはできず、個別的な流行の記録によって流行の程度を推定する他ありません。
 東京では1870年に狂犬病の発生が郊外にも及び、引き続き発生が見られたため、東京府は1876年に畜犬規則を定めました。その後も狂犬病の発生は治まらず、1881年には畜犬取締規則が制定されます。1881年以降も狂犬病の流行が続き、1886年には東京府下で7名の狂犬病による死者が出ました。また、 1893年2月、長崎市に外国人が持ち込んだ犬から狂犬病流行が発生し、5月までに犬に咬まれた被害者は76名、狂犬病による死者は10名に達したそうです。この間、市民は犬を撲殺したため、殺された犬は735頭を数えたと言います。さらに1894〜95年にかけて長崎県全域に狂犬病の流行が広がり、狂犬病による死者は21名となります。その後、狂犬病はさらに九州全域に広がり、流行は1902年まで続きました。この狂犬病流行に際して、当時の長崎病院内科医長・栗本東明が1895年に日本で最初のパストゥール法による曝露後免疫を行なっています。栗本の曝露後免疫を受けた者は15カ月間で62名に達し、内2名が免疫治療中に発病して死亡したとされます。また、1893年には神奈川県足柄郡に、1894年には山口県佐波郡に狂犬病が流行して牛馬の被害が大きかったと言います。そして、ここに来て1896年に獣疫予防法が制定されました。本法は狂犬病を獣疫(家畜法定伝染病)の中に規定し、狂犬病の犬の殺処分を定めました。また、これによって1897年から全国の狂犬病発生件数が公式に記録されるようになりました。また、1897年8月からは伝染病研究所でもパストゥール法による曝露後免疫が開始されました。伝染病研究所では発病予防処置を希望して来所する咬傷被害者にワクチン接種を行なったばかりでなく、地方での狂犬病流行に際しては出張治療も行なったようです。
現代

 1905年11月、神戸市を中心に始まった狂犬病の流行は兵庫県下に広がって約3カ年に及び、この間4千人以上の咬傷被害者と45名の狂犬病死亡者を出しまし。流行の発端は猟犬を伴って岡山地方から来た猟師が宿泊した家の飼い犬であったと言われています。また、翌1906年には青森県下で狂犬病が流行し、狂犬病の犬157頭、狂犬病の馬6頭、狂犬病死亡者11名の被害を出しましたが、流行の発端は日露戦争後に樺太から凱旋した軍人が連れ帰った犬であると言われています。さらに翌年の1907年には北海道室蘭に狂犬病の犬が突然現れ、瞬く間に近隣地方に広まり、4カ月足らずの間に狂犬病の犬252頭、狂犬病死亡者21名に達したと言います。流行の発端は青森県から移入された狂犬病潜伏期の犬であるとされています。また、同じ1907年には静岡県下でも狂犬病の流行が発生して神奈川県足柄郡にも飛び火し、1908年には山梨県でも狂犬病の流行が見られました。なお、神奈川県横浜を中心とした流行が1908年から1909年にかけて発生しています。また、 1910年には宮城県の流行が岩手県下に侵入し、東京と神奈川、千葉で、また、長野と九州でも狂犬病の発生が見られました。また、翌1911年、東京で狂犬病が大流行し、その他の地方でも多数発生が見られました。明治末期の狂犬病発生増加傾向は大正時代に入ってより顕著となります。さらに1918年、梅野と土井が神奈川県で初めて犬の集団予防接種を行ない、1919年には東京でも集団予防接種を開始しています。その効果は狂犬病の犬及び咬傷被害者の減少として現われました。1921年から23年にかけて全国の狂犬病発生件数は増加しているのに対して、東京では384件、212件、126件と減少を続けたのです。しかし、1923年の関東大震災による混乱のため、それも1924年には726件と激増します。なお、1923年には狂犬病の流行の中心は大阪に移り、狂犬病の犬は1338頭に達して全国発生の約半数を占めました。また、例年狂犬病発生が見られなかった北陸地方と四国地方でも狂犬病が発生し、全国規模の流行となりました。1924年は関東大震災の影響で東京での狂犬病発生件数が700件を超えただけでなく、大阪でも600件以上、神奈川県と兵庫県でも200件以上となり、史上最多の発生件数に達したのです。なお、これより先の1922年には家畜伝染病予防法が制定され、これによって犬ばかりでなく、狂犬病を発病した全ての家畜の殺処分が定められました。また、1925年から飼い犬の予防接種と野良犬の取り締まりが強力に進められます。次に、1925年にも大阪700件、東京600件、神奈川500件、兵庫400件以上の狂犬病発生があり、前年と殆ど変らない件数でしたが、1926年以降は明らかに減少し始めます。1925年からは東京に替わって大阪での発生件数が全国最多となりますが、大阪での大流行も1929年の116件を最後に急激に減少します。また、翌1930年には全国発生件数が2桁になり、1933年から43年までの発生件数は1〜21件になっています。

[ ページトップ ] [アドバイス トップ]


【2】狂犬病とその症状

 狂犬病は犬だけの病気ではありません。さまざまな動物でも見られる病気です。
 本節では、人間を含め犬や猫その他の動物における狂犬病の症状を解説しました。
狂犬病の症状
狂犬病とはどんな感染症か

 狂犬病はその死亡率の高さと独特の症状のために古くから恐れられていた代表的な人獣共通感染症で、感染症法では4類感染症に指定されています。狂犬病の病原体は狂犬病ウイルスで、狂犬病の動物の唾液中に高濃度で含まれているため、普通は狂犬病の動物に咬まれて感染しますが、引っかかれたり傷のある皮膚を舐められたりしても感染します。中には狂犬病のコウモリが棲んでいた洞窟に入っただけで感染した研究者もいるそうですが、これは、洞窟の中では狂犬病ウイルスを含んだコウモリの唾液がエアロゾール(空気中に浮遊する微小な粒子)になっていて、これを吸い込んだために感染したものと考えられます。また、これも稀な例ですが、狂犬病と診断できなかった患者から提供された角膜などの臓器移植を受けて狂犬病を発病して死亡したケースも報告されています。
狂犬病の症状

 狂犬病の潜伏期間は一般的には1〜3か月ですが、1週間未満から1年以上と幅があり、7〜8%の患者では1年を超えるとされます。咬み傷から体内に入った狂犬病ウイルスは傷口付近の筋肉細胞の中で増えてから神経線維の中に侵入して、神経線維の中を脊髄に向かって進みます。そして、狂犬病ウイルスが脊髄に達すると初めて症状が出ます。ウイルスが中枢神経系に広がるにつれて、脳と脊髄に進行性で致命的な炎症が生じます。
 また、狂犬病には発症すると2つの病型があります。狂躁型の狂犬病は活動性の亢進や易興奮性、恐水症状、時々恐風症状が現われます。2〜3日後に心肺停止によって死亡します。一方、麻痺型の狂犬病は人の狂犬病の総数の約30%を占めています。この型は狂躁型よりも劇症ではなく、通常長い経過をたどります。筋肉は咬傷または擦過傷の部位から徐々に麻痺します。昏睡は徐々に進行し、結果的に死亡します。麻痺型の狂犬病はしばしば誤診され、疾患の過少報告につながっています。

 狂犬病の初発症状は、発熱の他、しばしば創傷部位の痛み、すなわち、異常で説明のつかないヒリヒリする痛みやチクチクする痛み、灼熱感(錯感覚)があります。この時期に現われる比較的特徴的な症状は、一度治った咬み傷が再び痛んだり、古傷のまわりが痒くなったり、傷口付近の筋肉が痙攣したりすることです。他にも発熱やだるさなど多くの病気で見られるような症状が現われます。さらに狂犬病ウイルスが脊髄から脳に達すると、患者は言いようもなく強い不安感に襲われます。また、水を飲もうとすると喉の筋肉が痙攣して強い痛みが起こるため、患者は水を避けるようになります。恐水症と呼ばれるこの症状は狂犬病に特徴的なもので、狂犬病が恐水病とも呼ばれるのはこのためです。そして、さらに病気が進行すると高熱や全身の痙攣発作が起こり、やがて昏睡状態に陥り、死亡します。狂犬病の致死率はほぼ100%で、現代の医学をもってしても、発病した狂犬病を治すことは極めて困難で、現在まで救命できたと報告されている狂犬病患者は6例だけです。
狂犬病の潜伏期間と臨床症状

 狂犬病は感染してから発病するまでの潜伏期間が非常に長いのが特徴です。潜伏期間は一般に1〜3ヵ月ですが、中には6年にも及ぶ例が報告されています。狂犬病の潜伏期間はこのようにかなり長く、潜伏期間を診断する術がないので、疑わしい場合はこの間に治療を始めなくてはなりません。
 犬が狂犬病に感染すると、その約80%が狂躁型と言われる狂犬病特有の臨床症状を示し、反射機能の亢進や顔貌険悪、筋肉の痙攣、唸り、流涎(よだれ)などの興奮状態が2〜4日間続いた後、運動失調と下顎下垂、脱水、意識不明の麻痺状態を示し、その1〜2日後に死亡します。残りの約20%は麻痺型を示し、発病初期から麻痺症状が3〜6日間続いて死亡します。麻痺型は他の病気との鑑別が困難で、たとえばジステンパーを疑った症例で、実は狂犬病だったということもあります。なお狂躁型では、犬は極めて攻撃的となって咬傷事故が多発し、唾液中に多量のウイルスが含まれているため、これが狂犬病の感染源となります。また、人も類似した神経症状を示しますが、特に水に対して極端なほど過敏に反応するため「恐水病」とも呼ばれています。
人の狂犬病

 人の狂犬病の初期症状は頭痛や不安、熱、嘔吐、水を怖がることで、最終的には麻痺と昏睡状態、そして死に至ります。狂犬病に感染している動物に噛まれてから2〜10週間で病気の症状が出ます。狂犬病の症状が一度出ると治療法はなく、死ぬだけです。


前駆期(2〜10日間):
 発熱や倦怠感、筋痛、疲労感、食欲不振、悪心(吐き気)、嘔吐、咽頭痛、空咳など風邪に似た症状で始まる。また、咬傷部位の疼痛や掻痒感などの知覚異常が見られる。

急性期(2〜7日間):
 不安感や恐水発作(水を恐がる)、興奮、精神錯乱、麻痺、筋痙攣などの神経症状が現われる。ただし、恐水症状を示さない例もしばしばある。

昏睡期
 最終的には呼吸障害により死亡する。

麻痺型:
 急性期の神経症状が見られずに麻痺が全身に広がる例で、特にコウモリに咬まれて発病したケースに多いとされる。

犬の狂犬病

狂犬病 犬の潜伏期間は2週間から2ヶ月とされていますが、最長6ヶ月という報告もあります。犬は犬間で伝播し、流行を維持できる動物です。統計上人の狂犬病の95%以上が犬由来とされていますから、犬対策が非常に重要です。言い換えれば犬の狂犬病をなくすことができれば人の狂犬病の問題は殆ど解決すると言ってよいでしょう。犬の場合、狂躁型が全体の75%を占めます。発症すると死亡までの期間は10日とされていますが、平均2日程度で死亡することが多いとされます。また、経過は多少の症状の起伏はあるものの、3〜4日間の観察では確実に症状は進行してゆきます。



前駆期(一般に2〜3日の経過):
 犬は初期には恐らく発熱のために元気が消失し、食欲が減退または廃絶します。また、朗らかな性格の犬が臆病になったり、温和しい性格の犬がきつくなったりと、性格や行動の変化が見られます。わが国の記録では飼い主の言いつけを聞かなくなるという記述があります。一方、食欲については衰えない犬も見られます。
  • 性格の変化と行動の異常(挙動不審、気紛れ、過敏)
  • 恐怖心による興奮と飼い主に対する反抗、遠吠え
  • 異物を好んで刺激に応じて咬む
  • 咬傷部位の掻痒
  • 瞳孔散大
  • 性欲の亢進など

興奮・狂躁期(一般に1〜7日の経過):
 犬は落ち着きを失い、目的なく徘徊したり、不眠となったりします。喉頭筋の麻痺等により嗄れ声となり、大きな声で吠えます。人と違って犬には恐水症状は見られません。脱水のためかむしろ盛んに水を飲もうとします。しかし、舌や下顎、喉の麻痺等による嚥下障害のために上手に飲水ができず、鼻ごと水中に水没させて飲もうとしたり、飲めない苛立ちのためか、水の容器を咬んだりする行動が見られます。また、涎は通常認められません。この時期には目の前の物に何でも理由なく咬みつく行動が見られます。特に檻に入れて観察をすると、繰り返し檻に咬みつく様子が観察されます。健康な犬と違い、威嚇行動を伴わずに突然攻撃をするため大変危険です。同時に下顎麻痺のための開口や舌麻痺により舌が口より飛び出して下垂することもあります。また、この時期に既に後躯の不全麻痺によりフラフラしながら歩く様子も見られます。観察中の犬は落ち着かずに移動を続け、立ったり座ったりを繰り返しますが、その際、力なくドスンと座ることが多いと言われています。
  • 落ち着きがなく興奮状態となる
  • 異嗜(小枝や藁、石、土などを食べる傾向の多発)
  • 光や音の突然刺激に対する過敏な反応
  • 咽喉筋の麻痺による吠え声の変化
  • 顔貌の険悪化
  • 初回の痙攣発作中に死ななければ麻痺期に入る

麻痺期(一般に1〜7日の経過):
 犬は横臥して咬むことを止めてしまいます。この時期に流涎が認められることもあります。やがて意識が低下し、呼吸麻痺により死亡します。

※麻痺型狂犬病の場合には、狂躁期が目立たず、前駆期から直ぐに麻痺期に移行するように見えます。しかし、麻痺型であっても人に狂犬病を感染させる能力はあるので注意が必要です。
  • 全身の麻痺症状による歩行不能(特に後躯麻痺)
  • 咀嚼筋の麻痺による下顎下垂と嚥下困難
  • 舌を口外に垂らしながら流涎
  • むせるような発声音(犬の喉に物が詰まったと勘違いして咬まれてしまう)
  • 昏睡状態になり死亡

猫の狂犬病

 潜伏期は14〜21日と言われ、最長は51日とされています。猫は90%が狂躁型と言われ、威嚇することなく急に飛びかかって引っかいたり咬みついたりするので大変危険です。しかし、犬と違い、猫間でウイルスを保持することはありません。


前駆期(一般に1日の経過):
 物陰に隠れるようになる他、異常に人にまとわりついて愛情表現をするようになると言われています。発症から死亡までは約8日とされ、犬より短期間で死亡するようですが、平均すると4日間ほど生存するので、犬より経過が長い傾向とも考えられます。
  • 性格の変化と行動の異常(突然引っかいたり咬んだりして鬱状態となり、暗い場所に隠れようとする)
  • 性欲の亢進
  • 瞳孔散大など

興奮・狂躁期(一般に2〜4日の経過):
 非常に攻撃的となり、人や他の動物を襲うようになります。絶え間ない体動が見られ、鳴き続け、不眠となります。発熱のため、鼻鏡や口唇、舌、掌球などの紅潮が認められます。また、犬と違って涎が認められ、口周囲や前肢を濡らします。瞳孔は散大します。この頃より軽度の後躯麻痺が見られることもあります。攻撃・紅潮・流涎・瞳孔散大は猫の4大徴候とされます。
  • 筋肉の緊張増加や筋肉の単収縮、全身の筋肉の振戦、筋肉衰弱、流涎神経過敏、攻撃性の増加
  • 目に入るものを頻繁に咬む
  • 嚥下筋肉の麻痺により唾液が溜まり、流涎を起こす
  • 痙攣は徴候が見えてからほぼ5日目に顕著となり、後肢麻痺が急速に進行

麻痺期(一般に3〜4日の経過):
 嚥下障害の進行により流涎が増加します。やがて意識が低下し、呼吸不全により死亡します。
  • 飲食困難
  • 全身麻痺
  • 徴候開始から3〜4日以内に昏睡して死亡

その他の動物の症状


動物全般の症状
 全ての動物で行動が変わります。家畜は凶暴で攻撃的になり(狂ったように見える)、その一方で野生動物は温和しくなります。そして、最終的に麻痺が起こり、死に至ります。

動物別症状
  • 犬:攻撃的、吠える、突然襲いかかる、涎を流す、妄想で蠅を噛むような仕草をする、一点を見つめる、目的無く歩き回る、顎を下げる、嚥下困難、土や棒を食べる、むせる、吐く、歩行困難、麻痺
  • 猫:とても攻撃的になり、何の兆候も無く飛びかってくる
  • 牛:大声で鳴く、涎を流す、むせる、攻撃的になる、よれよれと乳を吸う、嚥下困難、虚弱、弯足、歩行困難、麻痺
  • 馬:目的もなくよろめき歩く、嚥下困難、歩行困難、虚弱、麻痺、攻撃的、噛む
  • ロバ:噛む、攻撃的
  • 豚:攻撃的、ひどく怒って噛む
  • 山羊及び羊:鳴く、後足の虚弱、歩行困難、攻撃的、過度の性行為、水を掻くような仕草
  • 野生動物:温和しくなったように見える、家や庭に入ってくる、夜行性動物が昼間見られる、何の兆候もなく突然人や物に襲いかかる、麻痺


[ ページトップ ] [アドバイス トップ]


【3】狂犬病の検査と治療

 確実に死に至ると言われる狂犬病ですが、その治療は果たして可能なのでしょうか? どうしたらその発症を確認できるのでしょうか?
 本節ではその予防も含め、狂犬病の検査と治療法、そして対応策について取り上げ解説しました。
狂犬病の検査と診断

 狂犬病を発症する前に狂犬病の感染を診断できる検査はありません。それは、狂犬病に特有の恐水症状や恐風症状が出現するまでは臨床診断が難しいこともあります。従って、狂犬病を早期に診断する上で役立つ検査法は今のところないのです。ただし人の狂犬病の場合は、感染した組織(脳や皮膚、尿、唾液)中の全ウイルス及びウイルス抗原、核酸を標的とした様々な診断技術によって、患者が生きている間でも死後でも確定検査を行なうことが可能です。狂犬病の診断には患者さんの唾液や脳脊髄液から狂犬病ウイルスを分離したり狂犬病ウイルスの遺伝子を証明する方法、皮膚生検標本や角膜擦過(かくまくさっか)標本で蛍光抗体法によって狂犬病ウイルス抗原を証明する方法などがあります。しかし、何れも狂犬病ウイルスが脳内で増殖した後、唾液腺や皮膚に移動した後でなければ陽性になりません。狂犬病の初期には狂犬病抗体も陽性にはなりません。患者に恐水症のように特徴的な症状があり、アジア・アフリカ・中南米など狂犬病の常在地で犬などの狂犬病危険動物に咬まれた既往歴があれば臨床的に狂犬病と診断することも可能ですが、咬傷(こうしょう)歴が不明の場合には臨床的に診断することは困難です。


狂犬病の診断方法
 狂犬病の診断には次の3種類の方法が一般的です。
  1. 病理組織学的検査:
     大脳組織の染色標本を作製し、神経細胞中にネグリ小体と呼ばれる細胞質内封入体を確認する方法で、ネグリ小体は大脳内のアンモン角と呼ばれる部分に出現しやすく、その出現率は66〜93%です。病理組織学的検査は比較的簡便な方法ですが、ネグリ小体の出現率が100%でないため、陰性であっても狂犬病を否定することはできません。

  2. 蛍光抗体法:
     大脳組織の凍結切片を作成し、蛍光標識抗体により染色し狂犬病ウイルスを検出する方法で、検出率は98%で非常に精度は高いのですが、設備と試薬を必要とします。

  3. 接種試験:
     大脳組織の乳剤をマウスに接種し、21日間観察する方法で、マウスに神経症状が現われた場合、前述した2つの方法で再確認します。接種試験は精度が非常に高い方法ですが、結果が出るまでに時間がかかります。

  4. その他:
     その他の診断法として、研究機関のような設備の整った施設ではウイルスの分離や遺伝子の検出など精度の高い方法も行なわれています。

狂犬病の予防と治療

 狂犬病は長い潜伏期間が大きな特徴のひとつです。犬の場合2週間〜2ヶ月ほど、猫では2〜3週間とされています。人の場合も1〜3ヶ月と言われています。狂犬病は狂躁型と麻痺型とに分類されますが、中間的な病型も多いと言われており、特に麻痺型狂犬病の狂躁期は目立たないと言われています。何れの型であっても、前駆期・狂躁期・麻痺期を経過して殆ど10日を跨がないうちに100%死に至ります。なお、犬も猫も発症3〜4日前にはウイルスを排泄し始めると言われているので注意が必要です。人をはじめ犬や猫の予防方法は確立していますが、しかし、残念ながら狂犬病を発症してからの有効な治療法はまだ確立されていません。特効薬は未だになく、発症してしまったら助ける方法はまだ見つかっていません。大切なのは、少しでも疑わしいときは発症する前に適切な治療を受けることです。そこで、狂犬病の長い潜伏期を利用して、狂犬病の動物に咬まれた後直ぐに狂犬病ワクチンを最初の接種日を0日として、0、3、7、14、30日に、必要があれば90日にも接種することによって狂犬病の発病を阻止することができます。これを狂犬病曝露(ばくろ)後発病予防と呼んでいます。

狂犬病の予防接種 犬では不活化ワクチン接種による予防がベストです。日本では狂犬病予防法により、犬の飼育者には狂犬病ワクチンの接種が義務づけられています。海外では野生動物の予防も実施している国があります。経口タイプの弱毒生ワクチンを野外に散布して、それを食べた動物に免疫を与える方法で、狂犬病に対する感受性が高い狐や狼、イタチ、アライグマなどが対象となります。
 狂犬病はいったん発病すると治療法はありません。明らかに狂犬病が疑われる動物や狂犬病の動物に咬まれた動物は、蔓延を防ぐため治療せずに殺処分し検査することがベストです。また、人の予防には、感染の危険に曝される地域に出かける場合、人用のワクチン接種を受けることです。不幸にして人が狂犬病に感染した動物に咬まれた場合は、暴露後(ばくろご)免疫と呼ばれている方法で治療を行ないます。これは、狂犬病は潜伏期間が非常に長いため、その間にワクチンを大量に接種し、免疫を賦与する方法です。人が感染動物に咬まれた場合は、発症前の潜伏期間中に暴露後免疫治療を行ないます。この治療は、咬まれた直後から1ヶ月後(必要な場合90日後)の間に数回狂犬病のワクチンを接種することで免疫を上げ、ウイルスが脳に達して発症するのを抑えるというものです。ただし、治療の開始が遅れたり、顔面など脳に近い部位を咬まれた場合には、この治療の効果が出る前に発症してしまうことがあります。海外旅行などで、狂犬病の発生国にゆく場合は、事前に予防接種を受けることをオススメします。また、現地では動物との接触をなるべく避けるようにしましょう。
狂犬病の予防

 わが国では、狂犬病予防法に基づき、犬やその他の動物に検疫を義務付けて狂犬病の侵入防止を図っています。これは島国だからこそ効果的な措置であるとも言えます。しかし、ペットの輸入の検疫対象は全ての動物ではないので、検疫の対象外のペットが狂犬病に罹っていた場合見逃す危険性もあり、日本国内で狂犬病がいつ発生してもおかしくないというのが現状です。従って、狂犬病が万が一にも日本国内に侵入してきた時のために、狂犬病を予防する意味で最も重要な動物である犬に対する登録制度を実施してその飼育動向を把握し、自分の飼い犬が狂犬病に感染した犬に噛まれても安全なように年1回の予防接種を義務付けているのです。


犬の狂犬病の排除
 狂犬病はワクチンで予防可能な疾患です。人の狂犬病を予防するために最も費用対効果の高い戦略は、犬に予防接種をすることで狂犬病を排除することです。数か国、特にラテンアメリカでは、動物(大部分は犬)に予防接種をすることで人(と動物)の狂犬病の患者数が減少しました。しかし、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの一部では狂犬病による死亡者が最近増加しており、狂犬病は深刻な公衆衛生学的問題として再興していることが示唆されています。アフリカとアジアの大部分の地域では、国内の犬の狂犬病をコントロールすることで人の狂犬病を予防することが現実的な目標であり、人への暴露後予防の中止という将来的な貯蓄ができるということで財政的に正当化されます。

人の予防接種
 安全で効果的な予防接種が暴露前予防に使われます。暴露前予防は、著しく暴露するリスクのある地域への長期滞在者や国外居住者の他、戸外、特に農村部で多くの時間を過ごす渡航者で、サイクリングやキャンプ、ハイキングをする人に推奨されます。また暴露前予防は、生きた狂犬病ウイルスやその他のリッサウイルスを扱う検査施設で働く人や、狂犬病常在地域でコウモリや肉食動物その他の哺乳類と直接接触する専門的または非専門的な活動をする人にも推奨されます。小児は動物と遊びたがる傾向があり、重い咬傷を受けるかも知れず、咬まれたことを伝えないかも知れないため、高いリスクがあると考えられており、感染するリスクの高い地域に住んだり訪問したりする場合には予防接種が検討されます。


参考:狂犬病リスクの高い人
 犬の狂犬病は、アジアとアフリカで30億人以上の人に潜在的な脅威となっています。最も高いリスクがある人は、人のワクチンと免疫グロブリンが直ぐに利用できないか、アクセスできない農村地域に住む人々です。狂犬病の疑いのある動物と接触した後の暴露後予防の平均価格は、アフリカでは40米ドル、アジアでは49米ドルなので、1日の収入が1人当たり約1米ドルから2米ドルの貧しい人々はより大きなリスクがあります。狂犬病は全ての年齢層で影響を受けますが、15歳未満の小児で最もよく見られます。平均して、暴露後予防の40%は5歳から14歳の小児に投与されており、その多くは男児です。また、居住環境や職業状況により狂犬病ウイルスへの暴露の危険性が継続しているか頻繁であるか、或は増加した人は、誰もが狂犬病に感染するリスクがあります。即時に適切な治療を受ける機会が制限されるかも知れない農村部のリスクの高い地域で広範囲な戸外で活動する渡航者は、滞在の期間を問わず危険に曝されていると考えなければなりません。狂犬病の存在する地域に暮らしていたり訪問していたりする小児には特にリスクがあります。

参考:暴露後予防

 狂犬病に暴露後に早期に効果的な治療を行なうことで狂犬病の発症と死亡を防ぐことができます。暴露後予防は、(1)暴露後、可能な限り早期に創部の処置を開始する、(2)WHOの推奨に合う効果的な狂犬病ワクチンを規定の回数接種する、(3)適応がある場合には狂犬病の免疫グロブリンの投与を行なう、といった3つの方法からなります。


創部の処置
 感染部位から化学または物理的な方法で狂犬病ウイルスを除去することは効果的な予防方法です。従って、狂犬病ウイルスで汚染されているかも知れない全ての咬傷と擦過傷を迅速に処置することは重要です。推薦された救急処置は、即時に石鹸や水、洗浄剤、ポピドンヨードまたは狂犬病ウイルスを殺す他の物質で創部を最低15分間洗い流すことです。

推奨される暴露後予防
 暴露後予防は狂犬病が疑われる動物との接触状況によって異なります。なお、開発途上国では、暴露後予防をするかしないかと決める際に、疑われる動物の予防接種歴のみで考慮すべきではありません。

狂犬病の対応策


海外における対応策
 狂犬病はアフリカやアジアなどの途上国での発生が極めて多いことから、以下の対策が必要です。
  • 一般市民の狂犬病に対する知識の普及
  • 犬に対するワクチン接種(70%以上)と野犬のコントロール
  • 実行可能な対策の策定と予算化(技術協力などの援助を含む)
  • 担当当局における技術者の養成と教育
  • 疫学的サーベイランスを強化し、早期発見と迅速な防疫対策

日本における対応策
 わが国は狂犬病の発生が昭和32(1957)年以降なく、ワクチン接種と動物検疫により狂犬病を撲滅した数少ない国の一つです。しかし、近年狂犬病常在国を含む世界の国々から犬猫をはじめ様々な動物が輸入されており(実際、日本では毎年数万頭の犬が輸入されています)、狂犬病の侵入を防ぐため常に注意が必要となっています。また、狂犬病の発生が長期間なかったため、狂犬病に対する社会の関心が低く、加えて狂犬病研究者の数がとても少ないことから、以下の対策が必要と考えられています。
  • 犬の飼い主に狂犬病予防の必要性を充分説明し、ワクチン接種を実施
  • 検疫の強化。狂犬病が発生している地域からは、犬はもちろんのこと、狐やアライグマ、フェレットなど感受性動物の輸入には細心の注意が必要(狂犬病発生地域からの感受性動物の商用輸入が法律で禁止できればベスト)
  • 研究者の養成。途上国に対する技術協力も研究者の養成に寄与
  • 狂犬病が侵入した場合の対応策の策定(行政の危機管理)

WHOの対応
 WHOは少なくとも30年間、新しいツールを用いたアドボカシーや調査研究を通じて、特に低所得国と中所得国で狂犬病の予防とコントロールに影響を及ぼしている「顧みられないサイクル」を断ち切ろうとしてきました。WHOは暴露後予防に皮内接種を広く使用することで細胞培養ワクチンの費用を60%から80%に削減し、犬の狂犬病の排除を進めることにより人の狂犬病の予防を進めています。WHOは、2015年までにラテンアメリカの全ての国で人と犬の狂犬病を排除するという目標と、2020年までに東南アジアで犬から伝播する人の狂犬病を排除するという目標を支援しています。東南アジアでは、地域の5か年計画(2012〜2016年) で現在の流行国における狂犬病の推計死亡者数を半分に減少することを目指しています。

狂犬病に気づいたらどうするか?

 狂犬病の治療法は確立されていないので、病気に気づいてからの対処では遅すぎます。狂犬病が疑わしい動物に咬まれたら直ぐに狂犬病ワクチンの接種を受ける必要があります。狂犬病の常在地に旅行したり1カ月以上滞在する場合には、予め3回の狂犬病ワクチン接種をすませおくとよいでしょう。これを狂犬病曝露前免疫と言います。ただし、狂犬病ワクチン接種を3回すませた人でも、狂犬病の危険動物に咬まれたら、再び少なくとも2回の狂犬病ワクチン接種を受けなければなりません。たとえば2006年にフィリピンで犬に咬まれた男性2名が帰国後に狂犬病を発病して亡くなりました。確かに日本国内では50年以上前から狂犬病の発生はありませんが、数時間の空路の旅でゆくことができるアジア地域の国々では、このように狂犬病の発生が続いています。狂犬病は決して過去の病気ではないことを忘れてはなりません。

[ ページトップ ] [アドバイス トップ]


【4】狂犬病の予防接種

 狂犬病の予防にはワクチンの予防接種が一番有効です。でも、ワクチンの副作用も強いと言われます。
 本節では、狂犬病ワクチンとその副作用を取り上げ、それでも狂犬病対策には予防接種が重要であることを訴えました。
狂犬病のワクチン

狂犬病のワクチン 狂犬病ワクチンは現在接種率の低下が大変問題になっています。昭和30年代までは日本にも狂犬病は発生しており、集団接種などの大変な努力により日本は清浄国になったのです。世界でも清浄国は島国が多いとは言っても、それでもオーストラリアやイギリス、アイルランド、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーぐらいです。それに対して、アジアは特に狂犬病の猛威に現在も曝されており、日本人もアジアを旅行した際に野良犬に噛まれて死亡しています。狂犬病になると死亡率は100%なので、未だに恐ろしい感染症であることは論を俟ちません。
 日本には海外から沢山の動物が輸入されています。もし狂犬病ウイルスを保有した動物が日本国内に入ってきたら、人や動物を守れるでしょうか? 答えは守れないレベルに低下しているというのが現状です。犬のワクチン接種率が80%であれば蔓延することはありません、WHOでも最低70%を目標値として掲げています。しかし、70%台或はそれ以下にまで落ち込んでいる現状ではとても危険です。しかも厚生省発表の登録頭数とペットフード工業会発表の飼育頭数には大きな隔たりがあり、飼育頭数を母数とすれば、実は接種率は一気に40%台にまで落ち込むほどの危機的状況なのです。実際、韓国では狂犬病を一時撲滅できた時期がありましたが、しかし、38度線境界領域に野生生物が往来することで狂犬病が韓国内に入り込んでしまいました。この時の接種率が20%台であったため狂犬病が蔓延してしまいまったのです。現在では接種率40%台まで回復しているのですが、狂犬病撲滅まで至っていないのが実情です。

 狂犬病は可愛い飼い犬のためだけに接種しているのではなく、人間自身を狂犬病から守るという公衆衛生の意味があるのです。従って、全ての飼い主に狂犬病ワクチンを毎年接種すべきです。狂犬病予防法という法律により毎年1回接種を義務づけているのが現状で、強制的に接種する権限は獣医師にもありません。しかも罰則規定がないので、接種しなくてもうやむやになってしまっています。もちろん狂犬病ワクチンの副作用で不幸にも命を落とす犬ががいることも事実です。多くはアナフィラキシーショックでなくなることが多いのですが、接種後30分よく観察していて、何かおかしい、ぐったりするなどの症状が現われたら、早急に処置をすれば命を落とす可能性はずっと少なくなります。集団免疫(多くの動物が抗体を保有する)の観点から、このような副作用の事例があっても接種をすることのメリットの方が遙かに多いのです。もちろん獣師の中にも、公衆衛生の意味を知らずに「狂犬病は日本にないから打たなくてよい」などと無責任なことを言う人がいることは事実ですが、しかし、これは明らかに無知で間違った発言です。飼い主の方はこんな無責任な発言に騙されず、上記の点を理解した上で、飼い犬に狂犬病の予防接種をされるよう強くオススメします。


ワクチンの種類
 狂犬病予防注射以外にワクチン接種をする必要があるのは、感染症を予防するための通称混合ワクチンです。狂犬病予防接種は法律で義務付けられていますが、混合ワクチンは人間のインフルエンザや水痘(みずぼうそう)のような任意接種です。犬用では5〜9種、猫用では3〜7種までの感染症に対するワクチンの種類があります。

ワクチンの摂取時期はいつが望ましいのか?
 仔犬や仔猫のワクチン接種時期はいつ頃が好ましいのでしょうか? 仔犬や仔猫は母親から免疫を受け取ります。この免疫は8〜14週でなくなってしまいますが、この自然の免疫が存在する間は、いくらワクチンを接種したとしても母親からの免疫がワクチンの作用を邪魔してしまうので、通常は仔犬や仔猫のワクチン接種は生後8週齢以後に行ないます。また、妊娠中の動物に生ワクチンを接種すると奇形や流産が起こる危険性があるので、その場合は時期をずらすことが必要です。また、何種のワクチンが最適なのかは、生活環境や飼育方法などによって異なります。接種時期と合わせてホームドクターの獣医師とよく相談するとよいでしょう。

毎年4月〜6月は狂犬病予防強化月間
 区・市役所に飼犬の登録をしている人は、毎年3月になると「狂犬病の予防注射のお知らせ」の葉書が送られて来ることと思います。これは日本では4月の初めが「狂犬病予防週間」として定められているからです。なぜ4月かと言えば、これは行政の業務の都合であり、獣医学的な理由からではありません。従って、何らかの都合で4月に狂犬病の予防注射を接種できなかったとしても、他の月に接種すれば全く問題ありません。中には毎年9月や12月に接種しているという人もいます。ただしこのような場合には、市や区から「今年度の狂犬病予防接種をまだ受けていません」と言うお知らせが来る場合があります。これは、行政が4月からの年度制を基準にしているため、たとえば前年の12月に注射をしていたとしても「今年度は未接種」と見なされてしまうためです。しかし、きちんと毎年接種しているのならば何ら問題はないので心配は要りません。ただし、真夏の暑い時期にワクチンを接種するのは余りオススメできません。
 そんな訳で、 なるべくこの時期に狂犬病の予防接種をされることをオススメします。ただし、この時期に接種できない場合は年度内に接種すれば大丈夫です。

狂犬病予防ワクチン接種時期と料金の目安
 畜犬登録後は市区町村より予防注射の案内の通知がきます。狂犬病予防ワクチンは、毎年4〜5月頃に各自治体で行なわれる集合会場や動物病院では年中受けることができます。
 接種時期は、基本的には生後3ヶ月を過ぎたら1回接種します。しかし、この時期は混合ワクチンを優先するので、実際には混合ワクチン接種後、生後4〜5ヶ月頃に接種することが多いようです。その後、年1回4〜5月に追加接種します。ワクチン接種にかかる料金には動物病院によって異なりますが、初回は、畜犬登録を含めると6〜7千円前後ぐらいです。ただし、畜犬登録は1頭につき1度登録すると生涯有効なので、2回目以降は必要ありませんから、1頭につき1生涯3〜4千円前後くらいです。

狂犬病予防注射は副作用が恐い?

 「狂犬病予防注射は副作用が恐い」という意見を時々目にしますが、これは決して間違いではありません。ただし、狂犬病のワクチンだけが副作用が強いというわけではなく、どんなワクチンにも副作用があるのです。ワクチンを行なうかどうか考える場合、副作用の確率と接種しなかった時の健康上の障害を天秤にかけます。 もちろん狂犬病の場合、接種しなかった時の健康上の障害の方が遙かに大きいため、ワクチンを接種する必要があると言えるわけです。確かに狂犬病の場合、年間に何頭かの副作用及び死亡例が報告されていますが、接種頭数が多いために副作用の頭数も多くなるので、確率から言えば混合ワクチンの方が副作用の率は高いと言えます。犬を飼うと決めた以上、「狂犬病の予防接種は副作用があるかも知れないが、やらなければならない」 と覚悟して下さい。ただし、副作用の可能性をなるべく低くするために、当然ながら健康状態のよい時に接種すべきです。 そのためには、なるべくかかりつけの病院で健康診断をしてもらってから接種するのがよいでしょう。また、接種した後1〜2日は安静にして様子をよく観察しましょう。 何か異常があれば直ちに動物病院に相談して下さい。もちろんワクチンによる副作用の発生は限りなくゼロに近くあるべきですし、ゼロに近づけるための研究も進んでいます。しかし、健康な動物に対して薬物であるワクチンを投与するのですから、確率的に低いとは言え副作用が全く起こらないわけではありません。もっとも、だからと言ってワクチンを接種しないという選択は賢明ではありません。ワクチンを接種せずに感染症のリスクを常に背負いながら生活をするのは非常に危険です。大切なのは、かかりつけの獣医さんとしっかりと話し合い、適切な時期に適切なワクチンを接種することで愛する愛犬や愛猫を感染症のリスクから守ることです。


犬のワクチン副作用
 ワクチンは病原体から動物を保護するために接種するものです。ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンとがあり、生ワクチンは病原性を失わせた上で生きた病原体を接種するものです。一方、不活化ワクチンの場合、死んだ病原体か、或は病原体の一部(病原性のない部分)から作られます。どちらも毒性を失わせているのですが、当然体には刺激として伝わります。この刺激によって稀に副作用を及ぼす場合があります。その副作用には注射部位の軽度の熱感からアレルギー反応まで様々な反応があります。
  • 軽度な副作用:
     発熱や不活発、食欲低下などの症状が注射後1〜2日で出ることもありますが、治療なしで解決することが殆どです。

  • 中等度な副作用:
     代表的なものはジンマシンです。たとえば蜂に刺された時、蜂毒に対して皮膚の血管が反応すると、激しい痛みを伴い、真っ赤に腫れ上がります。動物の場合はこのジンマシンが唇や目の周りあるいは首の周りの赤みや腫れとして現われます。

  • 重度な副作用:
     アナフィラキシー反応と言われるもので、この反応は突然起こり、呼吸困難に陥るなど生命に関わる危険性のあるアレルギー反応です。


アナフィラキシー反応
 アナフィラキシー反応は、狂犬病や犬コロナウイルス、犬パルボウイルス、そしてレプトスピラなどの不活化ワクチンにより一般的です。不活化ワクチンは死んだ病原体か、或は病原体の一部から作られ、病原体は生きていないため、ワクチンとしての効果を高めるための化学物質を加えています。その化学物質(アジュバンドなど)がアレルギー反応の原因となることが多いと考えられています。ワクチン後のアレルギー反応の免疫学的メカニズムは実はまだよく分かっていませんが、他に考えられる原因物質としては、ワクチン中の牛胎児血清や蛋白安定剤(ゼラチン、カゼイン、そしてペプトン)などであると言われています。

ワクチン副作用の発生率
 犬のワクチンアレルギーの確率は1万五千分の1と非常に低い確率ですが、ワクチン関連性副作用(非特異的ワクチン反応やアレルギー反応、ジンマシンもしくはアナフィラキシー)は、年齢が若いほど、体重が軽いほど、また、去勢・避妊をしていないほど副作用のリスクが増加すると言われています。つまり、若い中性化していない小型犬はワクチン接種の後72時間以内にワクチン関連性副作用のリスクが高いということになります。従って、獣医師と接種時期や接種前のコンディションを確認・相談する必要があります。

ワクチンアレルギー対策
 花粉などに対する季節性のアレルギーがある犬はアレルギー症状の出ない時期にワクチン接種する方がよいでしょう。というのも、1年の中である一定期間だけ皮膚炎などの症状が出るアレルギー性皮膚炎の犬に対して症状が出ている期間にワクチンを接種すると、ワクチンアレルギーが悪化するという報告があるからです。また、接種後の状態は注意深く観察する必要もあります。反応は通常ワクチン接種後数分〜数時間(24時間未満)以内に起こります。ワクチンを接種したら、動物病院の待合室に戻った時点から観察を続け、特に接種後30〜40分は経過を注意深く観察して下さい。また、自宅に戻ってからも食欲や元気など通常と少しでも違うことがあれば直ちに動物病院に連絡できるよう観察を怠らないようにしましょう。動物病院によっては、万が一のアレルギー反応に迅速に対応できるよう午前中の接種を促しているところもあるようです。

狂犬病の予防接種はなぜ必要なのか?
森林型と都市型の狂犬病

 狂犬病の発生の仕方には、大きく分けて森林型と都市型の2種類があります。森林型はコウモリやスカンク、アライグマなど野生動物の間に狂犬病ウイルスが蔓延するタイプで、野生動物の多いアメリカやヨーロッパなどでは森林型の発生が主流です。森林型の場合には自然界にウイルスが蔓延しているため狂犬病の予防対策が極めて困難ですが、人への感染の機会はそれほど多くはないという特長があります(※2000年のアメリカCDCの報告では、野生動物の狂犬病感染死亡頭数が約7000頭に対して人の感染死亡者数は5人、犬114頭、猫249頭でした)。これは野生動物と人間の接触がある程度限られているためであると考えられます。従って、森林型における現実的な狂犬病対策は、正確な知識と良識をもって野生動物と接する(=触らない・関わらない)ことが非常に重要になります。これに対して都市型の発生は、人口密度の高い主に途上国の都市部で見られます。インドやタイ、中国などにおける狂犬病の発生は都市型に含まれます。都市型の特徴は、動物での感染頭数に比べて人での感染者数がかなり多いということです。この都市型狂犬病においてウイルスを媒介する主な動物は、人に最も身近な動物である犬であることが分かっています(80〜98%)。特に野犬の多い地域では要注意です。実際、過去に日本で狂犬病の発生が見られた時にも都市型の発生でした。そんな訳で、とりわけ都市型狂犬病の発生を防ぐためには、犬に対して狂犬病の予防注射を接種することが重要であるということが理解できるでしょ。もちろん本来なら人を含め全ての哺乳動物に予防接種をすべきとだという意見が正論なのですが、実際には上記の理由、すなわち、都市型狂犬病でのウイルス感染源の80〜98%が犬であるという理由から、人との接触の機会が1番多い犬に対して狂犬病予防注射を接種することが根拠のある現実的な対応策とされているわけです。このような理由から、日本では犬だけが狂犬病予防注射の対象になっているのです。
なぜ狂犬病の予防注射が必要なのか?
 狂犬病は日本ではもう発生がないので安全だということを言う人が時々います。しかし、狂犬病は本当に過去の病気なのでしょうか?


 現在、指定地域(日本の農水大臣が指定する狂犬病清浄国と地域)と言われているのは、日本や台湾、イギリス、北欧の一部やオーストラリア、ニュージーランドなど世界のほんの一部の国だけです(※台湾は2013年7月より指定地域から削除されました。2013年9月現在、日本以外の指定地域〔農水大臣が指定する狂犬病清浄国及び地域〕はアイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアムの6つだけです)。確かに日本では1957年以降国内での狂犬病の発生は報告されていません。しかし、地球上の大多数の国では未だに多くの人や動物が狂犬病で命を落としているのが実情です。たとえばインドでは毎年約3万人が狂犬病に感染して死亡しており、ロシアや東南アジアでも毎年非常に多くの発生報告があります。全世界では毎年約5万人の人が狂犬病で死亡しているのが現状です。
 海外からの動物の入国に対する日本の検疫制度が2004年11月6日から改正になって、これに伴い、輸入しようとする全ての犬猫にマイクロチップの装着が義務付けられ、狂犬病発生国からの生後10ヶ月未満の犬猫の輸入が禁止になりました。さらに狂犬病発生国から入国する場合は、狂犬病の抗体価の測定及び狂犬病の予防注射を2回以上接種していることなどが必要となりました。また、対象となる動物も犬や猫だけではなく、狐やアライグマ、スカンクまで含まれるようになりました。このことは狂犬病が決して過去の病気などではなく、今現在も常に日本に侵入する危険性のある非常に怖い病気であるということを意味しています。そんな訳で、狂犬病の発生を防ぐためには狂犬病の予防注射を接種することが重要です。本来ならば人を含め全ての哺乳動物に予防接種をすべきところですが、実際には人との接触の機会が1番多い犬に対して狂犬病予防注射を接種することが現実的な対応策とされています。

 ところで、獣医は狂犬病に感染した犬を治療することが出来るでしょうか? 答えは否です。実は獣医は狂犬病が疑われる犬やその他の動物を治療することを法律で禁じられているのです。もちろん発症したら致死率100%なので実際に治療不可能ではあるのですが、万が一に狂犬病が発症したと思われる犬その他の動物を診察した場合には、狂犬病予防法及び家畜伝染病予防法に従い、人や周囲へのウイルスの蔓延を防止するために患者ならぬ患畜を隔離し、保健所または管轄の都道府県知事に届け出なければならないことが法律で定められています。現在は幸い日本国内での狂犬病発生がないので、獣医も狂犬病はないものとして日常の診療ができていますが、もしも日本のどこかで狂犬病が発生したという状況で目の前に狂犬病を疑わせるような神経症状を示す犬が連れて来られた場合、そして、その犬が狂犬病の予防注射を受けていないことが明らかな場合、周辺住民の命と生活を守るため、そして周辺地域の沢山の動物たちの生命を守るため、医師の良心と法律に従って、獣医はその犬を隔離し、届出義務を果たさなければならないのです。なお、狂犬病予防法は基本的に人間の命と安全を守るために定められた法律であり、犬や動物達のための法律ではありません。従って、特に犬に対して多少の負担を強いる内容になるのはある程度仕方のないことです(確かにワクチン接種による副作用のリスクも否定できませんが)。「狂犬病に感染するのが怖ければ人間がワクチンを接種すればよいだろう」という暴論もあるかも知れません。確かに獣医などはリスクが高いのでそうすべきでしょうし、海外旅行者もそうすべきです。何れにせよ大切なのは、「狂犬病というのは、いま話題のBSEや鳥インフルエンザなどとは比べ物にならないほど怖い非常に致死率の高い感染症であり、私たち人間の生命に関わる重大な問題なのだという認識をしっかりと持つことです。とにかく、「狂犬病の予防注射なんて打たなくても構わない」と考えている方がいるかも知れませんがが、それが本当に社会人として責任ある判断なのかどうか、よくよく考える必要があります。


日本での狂犬病予防接種状況
 日本の犬の狂犬病予防注射の接種状況はどうなっているのでしょうか?
 日本では生後90日齢を過ぎた犬には狂犬病の予防接種を受けさせることが法律で義務付けられています。平成14年度のデータでは日本国内の犬の登録件数は約600万頭となっており、この年の狂犬病予防注射接種率は約76%という比較的高い数字となっています。しかし、実際には犬を飼っていても登録していないケースがかなりあると予想され、現実の犬の国内飼育頭数は約1千万頭以上と考えられています。従って、実際の狂犬病予防注射接種率は50%以下(一説によれば38%程度)ということになります。日本に狂犬病ウイルスが万が一侵入した場合、これは極めて危険な状況と言わざるを得ません。なお、ここ数年のSARSや鳥インフルエンザ、BSE発生に対する国内の騒動を見れば、もしも日本で狂犬病が発生した場合、国中がパニック状態に陥ることは想像に難くありません。しかも狂犬病の場合、感染して発症した場合の死亡率はほぼ100%ですから、その脅威はSARSや鳥インフルエンザ、BSEの比ではありません。SARSや鳥インフルエンザの時は、飼っているハクビシンや鳥を放してしまう無責任な人もいたと聞きます。しかし、一人ひとりが責任を持って飼犬の狂犬病予防注射を受け、国内のワクチン接種率を高い水準に保つことができればこのようなパニックに陥る必要は全くなくなるのです。自分の愛犬を守るため、自分達人間の命を守るため、愛犬に狂犬病の予防注射を接種することは、飼い主として果たすべき社会的責任の一つであると言えるでしょう。

狂犬病と狂犬病予防法
 狂犬病予防法では、「犬の所有者は、犬を取得した日(生後90日以内の犬を取得した場合は、生後90日を経過した日)から30日以内に、その犬の所在地を管轄する市区町村に登録の申請をし、鑑札の交付を受けなければならない」と定められています。狂犬病予防注射についても、「室内犬を含む生後91日以上の犬を所有する者は、毎年1回、狂犬病予防注射を受け、注射済票の交付を受けなければならない」と定められています。そして鑑札や注射済票は犬に付けておかなければならないことになっています。きちんと法律を守って登録をしている人は、毎年春になると管轄の市区町村から狂犬病予防注射のお知らせの葉書が送られて来ます。


アメリカは3年に1回、日本は何故1年に1回なのか?
 狂犬病発生国であるアメリカでは狂犬病の注射は3年に1回なのに、清浄国の日本では毎年打つことになっているのは何故か?という疑問を持つ人がいるかも知れません。それは、アメリカでは生ワクチンで3年保証できるワクチンが接種されているのに対して、日本では1年しか保証できない不活化ワクチンが接種されているからです。将来的に3年に1度でよい狂犬病ワクチンが接種可能かも知れませんが、それまでは毎年接種して下さい。それに加えて、前述したような森林型と都市型の狂犬病対策は異なるということを理解する必要もあります。森林型発生の見られるアメリカでは、犬だけに予防注射を接種しても余り有効な予防対策になりません。だからと言って、全ての野生動物に予防接種を受けさせることは当然できるわけがありませんので、狂犬病を撲滅することよりも、(野生)動物に咬まれたら狂犬病に感染したものと仮定して治療することの方が優先されることになります。要するに予防よりも早期診断・治療に力を入れざるを得ないという現状があるのです。ただし、決して予防を疎かにしているわけではなく、アメリカでは犬よりも猫での狂犬病の発生数が多いため、猫に対しても狂犬病の予防注射接種が義務付けられているほど予防に力を入れているのです。

参考:狂犬病に関する参考サイト

◆参考図書
高山直秀『ヒトの狂犬病―忘れられた死の病』
高山直秀・著
『ヒトの狂犬病―忘れられた死の病』
時空出版、2000年06月刊、2,100円
現在の日本ではみられないが、世界の大部分の地域で発生しているヒトの狂犬病の現状を、症例を中心に記述。狂犬病の疫学的特徴、症状、ワクチン接種での予防等を簡潔にまとめ、海外旅行者による輸入狂犬病や、ペット等の輸入動物による発生の可能性を示し、とるべき対策を提言。
神山恒夫『これだけは知っておきたい人獣共通感染症』地人書館
神山恒夫・著
『これだけは知っておきたい人獣共通感染症―ヒトと動物がよりよい関係を築くために―』
地人書館、2004年04月刊、1,890円
近年、BSEやSARS、鳥インフルエンザなど、動物から人間にうつる病気「人獣共通感染症(動物由来感染症)」が頻発しています。なぜ、これら感染症が急増してきたのでしょうか。病原体は何なのでしょうか。どういう病気がどんな動物から、どういうルートで感染し、その伝播を防ぐために私たちはどう対処したらよいのでしょうか。この一冊で、人獣共通感染症の現状と正しい知識がつかめます。
神山恒夫『狂犬病再侵入』地人書館
神山恒夫・著
『狂犬病再侵入―日本国内における感染と発症のシミュレーション―』
地人書館、2008年03月刊、2,310円
2006年11月、海外でイヌに咬まれ、日本に帰国後狂犬病を発症し死亡する例が相次いだ。36年ぶりの国内患者発生に、狂犬病が決して過去の病ではないことを痛感した。現在日本には、狂犬病は存在しない。しかし、世界的には狂犬病は増加傾向にあり、年間5万5000人が死亡していると推定される。しかも、発症後の致死率は100%!今、この狂犬病が国内発生するのも時間の問題だと言ったら…?海外との往来の活発化、ペット目的など感染源となり得る動物の輸入増加や密輸、国内飼育犬のワクチン接種率の低下など、安全のバリアが破られる危険はいくらでもある。そう、狂犬病はまさにその隙を狙って侵入するのだ。本書では、まず狂犬病について概説したうえで、海外での実例を日本の現状に当てはめた10例の狂犬病発症のシミュレーションを提示する。そして、狂犬病という感染症に対する正しい知識の必要性、対策の再構築を訴える。
狂犬病 - 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/
狂犬病に関するQ&Aについて - 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/07.html
9月28日世界狂犬病デーについて - 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/12.html

YAMATO GROUP

水のトラブル 水廻りのメンテナンス ヤマトグループ
神奈川県横浜市旭区柏町1-7
1STサービスヤマト管理(有)・(有)ヤマト興業
(有)アメニティー・ワイ・(株)ヤマトプランニング


Copyright (C) 2000 02 01.Yamato Gr.
Dezin By JCM inc.,

お気付きの点、ご意見等がございましたら下記までお寄せください。

yamato@yamato-gr.co.jp