【1】インターネット依存症とその実態 |
スマホ依存症を取り上げるに当たって、本節では、その前提としてネット依存症そのものを総括的に取り上げ解説しました。
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広がるネット依存 |
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ネット依存とは |
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ネット依存とは、インターネットに長時間没頭し、未使用時に心理不安などが起きる状態を言います。ネット依存の疑いがある人は国内で約270万人とも言われ、厚労省研によれば、全国の中高生51万8千人がネット依存に陥っているそうで、睡眠不足や栄養失調など健康面での悪影響を引き起こすケースもあるとされています。ネット依存は引きこもりや出社拒否に繋がるなど現在まさに社会問題化しつつあります。数年前まではオンラインゲームに没頭するケースが殆どだったものが、最近ではスマートフォンやSNSにのめり込むケースが増加していると言います。相談者の多くは10〜20代が中心ですが、被害は80代の高齢者にも及んでおり、中高年は出会い系サイトに没頭するケースが多いということです。ちなみに、ネットが急速に普及した韓国ではオンラインゲームをしたまま死亡するケースも相次いでいると言われますが、国内では診断基準が定まっていないため、必ずしも病気と見なされていないのが現状です。しかも、ネット依存を知らない人もまだまだ多く、潜在的な依存者は非常に多いのが現状です。 |
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広がるネット依存 |
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インターネットに長時間没頭するネット依存が近年急速な広がりを見せています。ネット依存は、睡眠不足などによる健康への悪影響に加え、引きこもりや不登校の引き金になるとの指摘もあります。ネット依存治療部門を抱える国立病院機構久里浜医療センターでは全国から相談が殺到しており、依存脱却に向けた取り組みが進められています。アルコールや薬物依存症の専門治療を行なう同センターが国内で初めてネット依依存の治療を始めたのは平成23年7月からで、ここ2年間で370件の電話相談が寄せられ、約150人が受診に訪れたと言います。10〜20代が約8割を占め、年内は予約がいっぱいという状況だそうです。同センターでは入院治療も行なっており、ネットを利用できない環境でカウンセリングや軽いスポーツなどを行ないながらネット依存からの脱却を図っています。
自分がネット依存であることを認めず、反抗するお子さんもたくさんいます。たとえば普段からオンラインゲームに没頭し、学校に行かなくなったある男子高校生は、親がパソコンを取り上げようとすると「ゲーム仲間との信頼関係をぶち壊す気か」と反抗する子もいるのだそうです。
両親の不和やいじめ、受験失敗などネット依存に陥るキッカケは様々なものがあります。自らの居場所を失い、ネット利用時間が増加、次第にコントロールできなくなり、遅刻や欠席が増えるというパターンが多いのですが、ネット環境が整備された現在では誰もが知らず知らずのうちにネット依存に陥ってしまう恐れがあります。何れにせよネット依存から立ち直るには家族や周囲の協力が不可欠です。家族に異変を感じたら、少しでも早く医療機関などに相談することが大事です。そのうちよくなるだろうと安易に放置するのは大変危険です。実際、重度のネット依存に陥ると、食事や睡眠を摂らず、倒れるまでネットをやり続けるという人もいます。ネットもアルコールと同様に依存性が強いのですが、診断基準が確立されていないのが現状です。国内には治療する医療機関が少なく、治療に当たる人材も不足しています。 |
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ネット依存の実態と対策 |
インターネット、いわゆるネットは、現代人にとって今や生活必需品で、ネットのない生活など考えられない人も多いでしょう。実際ネットの使用者は年々増え続けていて、ある調査によると、平成23年末にネットを利用していた人は約9600万人で、これは国民のおよそ10人に8人に上ります。このように便利なネットですが、使い方を誤ると様々な問題を引き起こします。ネットの使い過ぎで健康問題や社会問題、家庭問題などを引き起こしている状況を一般に「ネット依存」と呼びますが、その特徴として、ネット社会への強い拘り、ネット使用のコントロール障害、問題が生じていると知りながらネットを続けることなどが認められています。医学的には「ネット嗜癖」が正しい用語ですが、ここではより一般的な「依存」という表現を用います。
 それでは、ネット依存の状態にある人はどのくらい存在するのでしょうか? 2012年のデータによると、平日は中学生の5人に1人、高校生の3人に1人が1日3時間以上ネットを使用しているという結果が出ました。もちろん休日となると、この時間は更に延びます。そして、このような調査の結果、中高生の男子の6.4%、女子の9.9%がネット依存が強く疑われる状態にあり、その数は約52万人と推計されます。同じような調査をしたヨーロッパ諸国では、男子の5.2%、女子の3.8%がネット依存を疑われる状態で、これで我が国の中高生のネット依存がヨーロッパ諸国に比べて一層深刻であることが分かります。ちなみに成人のネット依存は、ネット依存傾向にある者は男女それぞれ約2%で、その数は約270万人と推計されます。調査した年や使用した評価尺度が異なるので直接比較するのはちょっと乱暴ですが、中高生のネット依存の割合は、女子が成人の約5倍、男子が3倍強となります。ネット依存は他の依存と異なり、若者の病気であること、男性に勝るとも劣らず女性に多いことが分かります。
上でも簡単に触れましたが、ネット依存とは一体どのような状態なのでしょうか? 久里浜医療センターの外来に来る患者の50%近くは中高生で、大学生まで加えると全体の70%になるそうで、男女比はおよそ5対1だとのことです。依存しているネットサービスは現在のところ80%以上がロールプレイイングゲーム(RPG)やシューティングゲームといったネットゲームですが、最近はスマートフォンの使いすぎによる問題が急増しています。
若者を蝕むネット依存は、健康問題はもちろん、様々な社会問題を惹き起こします。睡眠・覚醒の問題はほぼ全ての患者に認められます。また、不規則な食事による栄養失調や、動かないで食べるだけによるメタボ状態、エコノミークラス症候群予備軍状態などが一定の割合で見られます。さらに、運動をしないために骨も脆くなり、体力もほぼ全ての人で最低レベルに落ちています。学業面では、ネット依存と並行して成績は急にしかも顕著に下がります。頻回の遅刻や欠席、長期欠席はほぼ全ての人に見られ、その結果、転校を余儀なくされることも多くあります。金銭問題もしばしば起き、たとえば有利にネットゲームをするために使う課金を得るために親にお金をせびったり盗んだりする人もいます。また、ネットカフェに入り浸ったり、無銭でネットカフェを使用し、警察に補導されるケースも見られます。そして多くの場合、両親は当初自分の子どもに何が起こっているのか分かりません。しかし、ネットが問題と分かると、ネット時間を制限しようしたり、取り上げようとしたりで本人と諍いが続く状態となります。やがて、何をしても効果のないことを悟り、本人が荒れる状況を見て、多くの場合ただ静観するだけになってしまいます。
なお、ネット依存に対しては我が国ではまだ殆ど手付かずの分野ですが、しかし、このようなネット依存の深刻さと数の膨大さを見ると、早急の対策が必要であることは論を俟ちません。その対策としては、まずはネット依存の実態をより明確にする必要がありますが、その調査には、どのような人がネット依存になりやすく、ネット依存になった人が将来どのようになっていくのかなどの縦断的調査が含まれます。また、学校においてはネット依存を予防するための教育が必要となりますが、これは生徒だけでなく、PTAに対しても行なわれるべきで、ネット依存に対する早期対応ができる人材育成と対応システムの整備を学校や地域レベルで進めてゆくことも不可欠となります。その他、我が国のネット依存医療は大幅に遅れています。治療を受けられる医療機関は数えるほどで、この方面の拡充がまず必要となります。また、治療の質を向上させるため、ネット依存の早期発見ツールや診断・治療ガイドラインの整備も必要です。当然、依存しやすいネットサービスを提供している側に対する何らかの規制や対応も考慮される必要もあります。今までに述べてきたように、ネット依存は若者の将来設計や人生を大きく狂わせますし、それに向かい合う家族の不安や心配、無力感、落胆、怒りなどは察して余りあるものがあります。この問題に対する包括的な早急の対応が強く望まれるところです。
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仲間外れ、誹謗中傷が怖い〜大人がネットを止められない理由〜 |
子どもばかりでなく、LINEやフェイスブックへのSNS依存やオンラインゲーム依存など、ネットやスマホに依存する大人が近年増えています。中にはゲームを1日8時間以上プレイして無断欠勤をする人や、或はママ友から嫌われたくないという理由でSNSに依存する人もいると言います。
止めたいと思っても、中々止められない。こうした心情は「負の報酬」と呼ばれ、ネット&スマホ依存から簡単には抜け出せない理由の一つになっています。負の報酬とは、ネットやスマホの利用を止めることによって生じるデメリットのことを言います。ネットの世界で獲得できる充足感や癒しは、いわゆる「正の報酬」に位置づけられます。それは飲酒で味わう陶酔感やギャンブルで得られるお金、快感と同じものです。これも依存の要因となりますが、それに加えてネット&スマホでは「負の報酬」によっても依存が助長されるのです。たとえばオンラインゲームでは、プレーヤーが操る登場人物の熟練度が上がると、他者からの尊敬や注目を集め、達成感を得ることができますが、そうした正の報酬を得られる半面、負の報酬として、ゲームを止めてしまうと仲間から相手にされなくなるという不安や、「仲間に迷惑をかけるかも知れない」という罪悪感を感じるようになります。これはママ友グループなど現実のコミュニティーでもあることですが、SNS依存でコミュニティーから抜けることで、仲間から中傷されたりグループからの隔絶に不安を抱いたりして、本人が止めたいと思っていても止められないことが多いのです。正と負の報酬が相俟って自分の意思で使用をコントロールできなくなるわけですが、これがネット&スマホ依存の特性と言ってよいでしょう。
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誰かとつながりたい〜ネット依存症は不安な気持ちが根底に〜 |
中高生のネット依存は推計約52万人に上ると言われます。また、スマホの普及によって、大人でも依存傾向の強い人が増えていると言います。依存症になると、睡眠不足や集中力低下などによる仕事や生活面での支障が出て来ます。ネットをしないとイライラするようなら要注意です。
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5時間以上は予備軍 |
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成人のネット依存は、数年前のデータによれば、男性153万人、女性118万人に上るとされています。ネットに依存しやすいのは、子どもはオンラインゲームやLINE、大人ではFacebookなどのSNSが代表で、本人に依存の自覚はありませんが、仕事とは別にネットの使用が1日5時間以上のヘビーユーザーはネット依存予備軍です。1日10時間以上なら立派な依存症と考えられます。 |
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生活乱れ、仕事で失敗 |
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お酒やタバコ、薬物などに対する依存は物質依存であるのに対して、ネット依存は、ギャンブルや買い物、セックスなどと同じで行為依存に分類されます。ネット依存状態になると、ネットをやらないと不安症状やイライラ感が強く出るようになります。多くの依存症と同じで、当然ながら耐性が付くので、どんどんのネットにめり込んでゆくことになります。睡眠障害で生活リズムが乱れ、酷い状態になると会社に行けない、或は遅刻する。出勤しても仕事に身が入らず、失敗を繰り返すようになってゆきます。 |
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どんな人がネット依存になりやすいか? |
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それでは、どんな人がネット依存になりやすいのでしょうか?
人との関係が何となく疎ましく億劫だけど、一人でいると寂しさや虚しさを感じるような人がネット依存になりやすい人だとされています。ITの進歩で便利な世の中になりましたが、それに比例して人間関係は希薄になっています。そこから来る誰かと繋がっていたい気持ちとそれが満たされない、或はその繋がりを失うのではないかという不安でネットに向かってしまうのです。 |
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治療はカウンセリング |
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ネット依存の予防のひとつは、使用時間に目安を設定して制限してみることがまず第一に挙げられます。そのためには、「何のためにネットを使うのか」をいつも意識してネットを使うことが大切です。仕事やストレス解消など目的がハッキリあって、コントロールできていれば依存症になりません。またそれに加えて、友人や同僚など生身の人間との付き合いを増やすことも大切です。たとえば他人と直接交流するスポーツなどの趣味も持つことも予防に繋がります。治療が必要になるのは、ネットを止めたくても止められなくなり、悩むようになった場合です。
ネット依存の治療は、カウンセリングが基本で、治療者にもよりますが、時間制限や日記を付けたり課題等を出して指導することが多く、生活上の問題点をひとつずつ認識・理解するために認知行動療法を行なう治療者もいるようです。ネット依存症は自覚しにくい反面、治療が始まれば治りやすいとも言われます。 |
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どこからがネット依存? |
2000年代初頭からネット依存の問題は度々取り沙汰されて来ましたが、ここ数年で患者数が急増、その傾向も変わってきていると言います。以前は「ネトゲ廃人」などと呼ばれるオンラインゲーム依存が殆どだったものが、近年はスマホの普及によってLINE(ライン)をはじめとするSNS依存の患者が増えています。
先にも触れましたが、厚労省の研究班が無作為に選んだ全国264校の中・高校にアンケートを行なったところ、ネット依存の疑いがある子どもが中学生の6%、高校生の9%で、推計で51万8千人にも上ることが判明しました。更に予備軍を含めれば全国で70〜80万人の子どもがネット依存に該当する可能性もあると言います。中には自分がネット依存ではないかと懸念している人もいかも知れませんが、しかし、自分のネット依存の可能性を自覚している人は余り多くありません。何度か触れたネット依存専門の外来を持つ久里浜医療センターには月に20〜30件の相談が寄せられるそうですが、そのうち未成年は8割で、特に患者が中・高生の場合、本人に自覚がなく、保護者が相談に来ることが殆どだと言います。精神疾患もそうなのですが、ネットに限らず依存症の場合、当人に病院に来てもらうまでが大変です。昼夜が逆転してしまい、学校に行けなくなる人や、親に携帯をむりやり取り上げられたため、お金も持たずにネットカフェに駆け込み、無銭飲食して補導された子どももいるそうです。もっとも、そこまでひどい状況は少ないながら、学校から「授業中に異常なほど居眠りをしている」「遅刻が増えた」などと注意されて気がつく人が多いと言います。
生まれ得た頃からネット環境が当たり前の昨今の状況の中で、ネットに接する年齢が低ければ低いほど依存症になるリスクも高くなると専門家は警鐘を鳴らしています。それでは、どうやったら家庭で子どもの異変に気づけるのでしょうか?
家庭その他に問題を抱えていて、現実世界に居場所がない子が、居場所を求めて不良グループの仲間になってしまったのと同じく、最近では、いじめその他で現実の世界に問題を抱える子どもがネットを居場所にしがちなのです。友達と遊ばなくなったり、家族との会話が減ったりしたら要注意です。また、たとえばスマホの使用時間が目立って増えたり、食事や外出に誘っても、「ネットをしている方よい」と断ったり、或は誕生日やクリスマスなどに何が欲しいか聞くと、ネット関係のものばかり欲しがるようになったら、ネット依存の可能性を疑った方がよいかも知れません。
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【2】スマホ依存とその実態 |
スマホに嵌まるとどんな状態になり、どのような弊害が現われるのでしょうか?
本節では、スマホ依存症の実態とその症状について解説しました。
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携帯電話依存症とスマホ依存症 |

携帯電話の普及によって「携帯電話依存症」になる人が増えました。携帯電話依存症とは、携帯電話やPHSといった個人向けの通信機器が提供するサービスに没頭する余り日常生活に支障を来すほどになっている状態を示す用語です。それが最近では、スマホの普及によって「スマホ(スマートフォン)依存症」になる人が急増しているのです。スマホ(スマートフォン)は従来のフィーチャーフォン以上に付加価値が多く、一種の小型のパソコンと言ってもよいほどに機能が充実しています。そのため、ゲームや動画閲覧も含め娯楽も長い時間楽しむことができるようになった結果、スマホを四六時中手放すことができない依存状態になってしまう人が昨今多く現われて来たのです。この事態は、 本来はコミュニケーションを補完し促進するためのツールが、真に大切にすべきコミュニケーションを阻害するという非常に残念な事態に陥っていると言ってもよいかも知れません。
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中・高生のスマホ依存 |
夏休みなど長い休みは生活のリズムを乱しやすいことはよく知られています。お子さんが朝いつまで経っても起きられない状況になっているような場合は要注意です。特にスマホを持っている場合は、夜遅くまでスマホからネットに接続して中々ネットから抜けきれなくなっているかも知れません。そのような場合はネット依存の可能性があります。
それでは、ネット依存とは一体どういう状態を言うのでしょうか? 単にネットが好きで、長時間ネットを使うことがあると言っても、もちろんそれだけではネット依存とは断定できません。ネットの使用時間を減らすことができないとか、止めようとしても止められないなど、要するに自分の意思でネットの利用をコントロールすることが難しくなったり、ネットをしていないと不安でイライラして日常生活に支障を来したりするような状態が依存です。ちなみに、国立病院機構久里浜医療センターでは全国に先駆けて初めてネット依存の専門外来を設置しました。設置以来2年間で受診した患者は100人以上で、その半分近くが中・高生だったそうです。多くは昼と夜が逆転している他、眠りが浅い、体格が小さい、骨が脆いといった身体的な特徴があると言います。長時間ネットにしがみつく生活を繰り返していることの影響と考えられます。
中・高生のネット依存の実態が厚労省の調査で最近明らかになりました。10万人から回答を得たアンケート調査を元に推計した結果、ネット依存の中学生は6%、高校生は9.4%。中・高生全体に当て嵌めると合わせて51万8千人に上ると言います。同じ厚労省の調査によると、ネット依存の大人は全体のおよそ2%と推計されているので、中・高生の依存率は成人のおよそ4倍になります。今の子どもたちは生まれた時からネットが生活の中に入り込んでいるだけに、若い層ほどネットに嵌まりやすいと言われてきたことが裏付けられた形になります。また、中学生や高校生のネット利用は、今や携帯電話に代わってスマホが主流になっています。ある調査によると、スマホを持っている高校生は55%と普通の携帯を持つ高校生を初めて今や上回ったと言います。スマホの所持率は数年前に比べて3.7倍。逆に携帯を持つ高校生は80〜45%に減っているので、高校生の間で携帯電話がスマホに急速に置き換わっていることが分かります。このことがネット依存の増加に拍車をかけるのではないかと懸念されているのです。
それでは、スマホの普及がネット依存に拍車をかけることが心配されるのはなぜでしょうか? ある調査によると、50%が起床した後直ぐにスマホを確認し、布団に入ってからも50%以上がスマホを使っていると言います。携帯電話の場合と比較すると、1日中使いっぱなしという状況が見て取れます。
スマホは要するに通話機能付きの小型パソコンです。パソコンの前に座らなければ利用できなかったネットを四六時中手の中に持ち歩ける状態になったということです。そんな状態で多くの高校生が利用しているのが、LINEに体表される無料通話アプリです。通話やメールに加えてグループを作ってメッセージを共有する機能もあります。トークなどと呼ばれるこの機能では、送ったメッセージを相手が読んだかどうかわかる「既読」と呼ばれる仕組みがあります。いったんグループでトークを始めると、この仕組みがあるため「読んでいるのに返事をくれない」と思われることが不安で、中々抜けることができません。仲間外れにされるのを恐れ、何時間も返事を繰り返すことになるのです。全員がスマホを持ったまま眠ってしまって漸くトークは終了するということが珍しくないと言います。携帯電話のメールのやりとりでも、3分ルールなどと言われ、このような問題はつとに指摘されていましたが、LINEの登場によってそれが更にエスカレートした形です。夏休みなどの長期休暇中は翌日の学校を気にしなくてもよいので、特にこうした事態が続きがちですが、しかし、夏休みが終わってもこの習慣が続くと、朝起きられず、遅刻を繰り返すようになり、ますますエスカレートする恐れがあります。夏休み明け肝腎だと言われる理由です。
このように今の中・高校生は、スマホの普及によって我々大人が想像する以上にネット依存に陥りやすい環境の中にいます。では、ネット依存に陥る前にできることは何なのでしょうか。まずは保護者ができることを考えてみましょう。そのためには、ネットやスマホの危険性について知る努力をすることが必要になります。
多くの大人は、携帯電話もそうですが、子どもに求められるままにスマホを買い与えて、それをそのままにしていないでしょうか。スマホは携帯電話のようにフィルタリングで接続先を制限することがまだ難しく、危険なサイトや個人情報を吸い取られるアプリを利用する可能性もあることをご存知でしょうか。ただでさえ親と会話をしない時期だけに難しいと思うかも知れませんが、少なくとも子どもがどんな使い方でスマホを利用しているか、どんなアプリを利用しているか話し合う機会を作る必要があります。そして、依存に陥るような使い方にならないよう、きちんと親子で納得のゆくスマホ利用のルールを作ることが必要です。もう一つは、学校が一定の役割を担うことです。特にこの時期、夏休みなどが終わって学校が再開されれば、家庭だけの努力では限界があるからです。子どもとスマホの問題に詳しい専門家は、たとえば学期の始めに生徒同士でスマホの利用の仕方について話し合いをさせてみることを奨めています。たとえばLINEのトークが際限なく続く状況について誰もがおかしいと思っているのに、疑心暗鬼になって止められないでいるといったような場合、たとえば誰かが眠くなって「お休み」と書いたらトークを止めても構わないのだと理解しあえば、自ずとそんな状態から抜け出せるからです。このようにネットの問題に関しては、教師や保護者からいわば上から目線で言うのではなく、生徒たちが自分たちで考え、自身で気付くことが重要です。なお、ネット依存の危険性を考えると、特にスマホに関して言うと、当然ながらスマホを中・高校生には「使わせない、持たせない」という選択肢もあります。ただ、学校の部活動の連絡にもスマホのアプリを利用する昨今の状況の中で、単にスマホの利用を禁止するだけでは、子ども同士の社会の中でその子が浮いてしまう危険性があります。情報の伝達手段が日々進化してゆく状況の中で、スマホに使われるのではなく、スマホを賢く使う方法を考える必要があります。大人も子どもも暮らしの中になくてはならない存在となったネットやスマホとの付き合い方を常に考える必要があります。
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スマホ依存症の実態 |
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高校生の6割にネット依存傾向 |
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高校生のネット依存傾向が6割に上ることが、2013年に総務省情報通信政策研究所が実施した「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査」の結果明らかになりました。スマホ所有者は、ネット利用や動画視聴の時間が長くなる傾向にあり、ネット依存傾向も高い結果となりました。これは、インターネットの長時間利用によって実生活に悪影響が出るネット依存が問題となっていることを受けて若年層のインターネット利用やネット依存に繋がる傾向への影響を把握しようとして行なわれたもので、小学生(4〜6年生)、中学生、高校生、大学生・社会人(25歳まで)2,609名を対象にオンラインアンケートを実施した結果です。その調査によると、情報通信機器の利用状況はパソコン(タブレット端末は除く)が最も高く90.9%で、年代が上がるに連れてパソコンの利用率も高くなり、高校生で96.0%、大学生で98.3%と高い割合を占めました。スマホ利用率も年代が上がる毎にアップし、高校生で51.1%、大学生68.5%、社会人70.0%となりました。
ネット依存的傾向については、ネット依存的傾向を高(70点以上)・中(40〜69点)・低(20〜39点)の3区分に分類して集計した結果、全体では「高」が6.3%、「中」が37.5%、「低」が56.2%と出ました。年代別で見ると、高校生が最も高い傾向にあり、「高」が9.2%、「中」が50.8%とその6割にネット依存的傾向が見られました。スマホ所有別では、所有者の方が非所有者よりも高く、「高」は6.8%、「中」は43.7%と半数以上にネット依存的傾向が見られたそうです。また、「自分はネット依存だと思う」と回答した人の割合も、高校生以上とスマートフォン所有者とで高く、高校生40.4%、大学生39.5%、社会人38.7%、スマートフォン所有者35.4%という結果でした。また、ネットを利用するために犠牲にしている時間がある人は57.2%と過半数を超え、年代別では高校生と大学生の割合が高く、犠牲にしている時間は睡眠時間が最多の37.1%、次に勉強時間が31.9%を占めています。一方、スマホを持ったことによる時間の変化では、ネット利用と動画視聴が長くなったとする回答が6割を超え、これが圧倒的に高く出たそうです。逆にスマホを持ってから短くなったのはテレビを見る時間が最も高く29.2%。その他、睡眠時間(23.6%)と読書の時間(21.6%)、家にいてパソコンでネットを利用する時間(20.9%)などとなっていると言います。 |
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中高生のネット中毒は推定52万人 |
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インターネットへの依存が強く、ネット中毒状態にある中高生は推定51万8千人にも上ることが、日本大学医学部の研究班の調査結果から最近明らかになりました。その調査結果によると、中学生よりも高校生に多く、男子よりも女子に多い傾向にあると言います。同調査は2012年度に全国の中学校約1万校と高校約5千校から無作為に中学校140校と高校124校を抽出、中学生38,871人と高校生62,263人より回答を得た結果で、それによると、インターネットへの依存が強く、病的使用している中高生が推定51万8千人に上るとのことで、病的使用は男子が6.4%、女子が9.9%を占めていました。調査の結果は、インターネット中毒は中学生よりも高校生に多く、男子よりも女子に多い傾向があり、「インターネットに夢中」は中学生男子が31.8%、女子が38.8%、高校生男子が39.9%、女子が44.9%でした。次に「インターネット使用による生活支障」は中学生男子が3.7%、女子が4.4%、高校生男子が6.0%、女子が7.5%となっています。また、平日のインターネット使用時間は、「5時間以上」は中学生男子が8.9%、女子が9.2%、高校生男子が13.8%、女子が15.2%で、休日のインターネット使用時間は高校生の2割以上が5時間以上となりました。更に睡眠習慣をみると、インターネットへの依存が強いほど睡眠の質が悪く、病的な使用をしている中高生の59.4%が悪い睡眠の質で、43.0%が6時間未満の睡眠となっています。 |
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スマホ依存症とその症状 |
スマホ依存症患者の多くが自分がスマホに依存している自覚がないと言います。そこで、以下にスマホ依存の症状とそのチェックリストを掲げましたので、ご自分でも検証してみることをオススメします。
■スマホ依存症の症状 |
以下に挙げたものが典型的なスマホ依存症の症状です。スマホが見当たらない・触れられない環境になると強い不安を感じるようであれば、これは禁断症状の表われだと言ってよいでしょう。このような症状ないし禁断症状が出ることによって仕事や日常生活に支障を来す場合は、やはり自分がスマホ依存症であることをしっかりと自覚しましょう。 |
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1□ |
スマホを持ってないと不安になり、スマホなしでは1日も過ごせない |
2□ |
プライベートのスマホの利用時間が1日5時間以上に及ぶ |
3□ |
少しだけのつもりがつい延々とスマホを触ってしまう |
4□ |
充電が切れたり電波のない環境にいるとイライラする |
5□ |
仕事中や勉強中、家事の合間などでもSNS等の更新が気になる |
6□ |
運転中でもスマホをいじる |
7□ |
親しい人といっしょでもスマホを使う |
8□ |
対面にいるのにチャットで会話する |
9□ |
風呂やトイレまでス肌身離さずマホを持ち込む |
10□ |
スマホの使いすぎで疲れ目になる など |
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■スマホ依存症のチェックリスト |
7個以上チェックが付いた方は要注意です。10個以上チェックが付いた方は完全にスマホ依存症だと判断して間違いないでしょう。 |
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1□ |
スマホを忘れてしまった日はとても不安になる |
2□ |
TPOを弁えず、無意識にタッチパネルを触っている |
3□ |
スマホの充電ができるかどうか、Wi-Fiがあるかどうかなどで入るお店を決める |
4□ |
財布を忘れていても、スマホだけは持っていることがある |
5□ |
朝、目が覚めて寝転がったままニュースやSNSをチェックする |
6□ |
分からないことは直ぐにスマホ(検索エンジン)で調べる |
7□ |
スマホの充電器を忘れたらつい買ってしまうので、幾つも予備を持っている |
8□ |
着信していないのにスマホが振動したような錯覚に陥る |
9□ |
スマホを握ったまま眠ってしまう |
10□ |
食事中にスマホを見ていることが多い |
11□ |
スマホの電波の届かない(届きにくい)ところには行きたくない |
12□ |
フェイスブックなどに書き込むネタを作るために行動することがある |
13□ |
もしソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)がなかったら人間関係がなくなると感じる |
14□ |
会議や宴会中などでもフェイスブックやツイッターが気になり、ついスマホを見てしまう |
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急増するスマホ依存症が与える7つの健康被害 |
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鬱病やパニック障害 |
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FacebookやTwitterといったネット上での人間関係が盛んになるにつれ、実生活での人との交流が減っている人は少なくありません。これが原因で引きこもりになったり、重い依存症によって鬱病やパニック障害、自律神経失調症などを惹き起こすこともあります。 |
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肩凝りや頭痛、血行不良 |
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スマホの画面を見る時、背中が丸まって猫背になってしまう傾向があります。猫背は見た目が悪いだけでなく、肩凝りや頭痛、血行不良などを惹き起こします。猫背はその他にも胃もたれや生理痛、便秘の原因ともなるので、ストレッチや体操などで身体を動かして筋肉をほぐすように心懸けましょう。 |
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ストレートネック |
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長時間俯いた姿勢でスマホを使用することで、本来カーブしているはずの首が真っ直ぐに変形してしまうことをストレートネックと言います。ストレートネックの人の殆どが猫背だと言われており、肩凝りや頭痛、吐き気、手の痺れ、目眩などの症状を訴える人が多いとされます。これが悪化した場合、手の痛みや脱力を起こしたり、ワイシャツのボタンが止めにくくなったり、階段が降りにくくなったりするケースもあるので注意が必要です。 |
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不眠症 |
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画面から放たれるブルーライトは睡眠のリズムを狂わせる原因となる光です。青色で波長の短いこの光は朝日の光とよく似ていることから、ブルーライトを浴びることで脳を目覚めさせる働きがあると言われています。このため、就寝前にスマホを使用することで知らず知らずのうちに眠りにくい状態をつくってしまっているのです。従って、少なくとも寝る1時間前にはスマホの使用をやめるのがベストです。なお、最近ではブルーライトをカットするメガネなどが販売されているので、こうしたアイテムを上手く利用するのもひとつの方法です。 |
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視力低下 |
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スマホの小さな画面に表示される文字はどうしてもかなり小さくなってしまいます。この小さな文字を長時間見続けると当然目が非常に疲れます。スマホの使用による疲れ目から視力低下を訴える人がここ数年で急増しています。従って、スマホを何時間も続けて使用せず、自発的に休憩を挟むように心懸けて、目を休める時間をつくることが大切です。 |
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小指の変形 |
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スマホを持つ時にスマホの底に小指を置いて支える人が多く、この持ち方で小指への負担がかかり、変形するケースが増えています。小指の変形の他には、痛みや痺れ、タコなどの症状を訴える人も少なくありません。海外では「テキスト・サム損傷」とも呼ばれ、世界中で増えている症状のひとつだと言われます。 |
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もしかしたら加害者に!?〜怪我するよりも怖い「ながらスマホ」〜 |
歩きスマホは危険だ、転んだ、ホームから落ちた、電信柱にぶつかった等々、そんな話をよくど耳にすることと思います。最近では「歩きスマホは危険だから止めましょう」といったポスターが駅や街に貼られていたり、駅のホームやCMで注意を促すメッセージが流れたりしています。しかし、悪い言い方ですが、歩きスマホで自分が被害を受けることは自業自得です。スマホ依存にしても、他人に迷惑をかけない限り自己責任だと言ってもよいでしょう。しかしながら、実はこういった歩きスマホを初めとする「ながらスマホ」の一番大事な問題は「他人に多大な迷惑」をかけているということなのです。確かにどこでも気軽に見ることができて便利なスマホですが、歩きスマホは、自分が加害者となってより多くの責任を問われる危険性があることを理解しましょう。なお、マナーとは他人を気遣い、不快にさせない行為です。ここでもう一度マナーについて考え直してみることもよいでしょう。
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歩きスマホで他人にぶつかったら事故 |
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歩きスマホをしていると、どうしても歩く速度が遅くなります。電車を降りてホームを歩いている時など、歩みが遅すぎたり蛇行したり、或は急に立ち止まったりされれると、人にぶつかってしまうことも多いものです。本人はちゃんと歩いているつもりかも知れませんが、人の歩行等を邪魔していることは確実です。また、画面に集中してしまっていて気づかずに他人にぶつかってゆくことも間々あるものです。蛇行したり急停車して他人に怪我を負わせたりすれば、自動車の運転なら確実に事故扱いで、これは既に立派な加害者です。 |
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自転車に乗りながらスマホ |
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これもよく見かけます。やっている人は歩きスマホと同じ感覚なのでしょうが、もしも人とぶつかってしまったら、その破壊力は歩きスマホの比ではありません。最悪の場合、相手を死亡させることだってあり得るのです。もちろん怪我を負わせた時点で加害者となり、怪我の程度によっては数千万の賠償金を払うことにもなりかねません。自動車じゃないから大丈夫だろうなどとたかを多寡を括らないことです。 |
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食事中のスマホはマナー違反 |
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食事をしている間もスマホをを手放さない人もいます。1人の時でも余りオススメはできませんが、いっしょに食事をしている人がいるのなら尚更です。実際に目の前に相手がいるのに、生返事ばかりで目はスマホに釘付け。相手に不快な思いをさせていることにも気づかない。これを彼女相手にやってしまったら、フラれてしまっても文句は言えません。 |
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電車で会社のメールや資料閲覧 会社の秘密が丸見えに |
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電車で通勤中や外食中など周りに他人がいる場所なのにスマホで会社関係のメールや書類をチェックしたりするのも大きな問題です。プリントアウトされた書類なら人前で広げたりもしないでしょうが、スマホだとついやりがちです。しかし、スマホでの閲覧内容が人の目に入る可能性があることを忘れてはいけません。特に会社の資料は大抵が会社の機密や守秘義務によって部外者の目に晒してはいけないものが大半ですし、それを公衆の中で見ていたら誰に見られてしまうか分かったものではありません。つい見られてしまったマル秘の内容があっというまにネットでで広まってしまう可能性も否定できません。仕事情報の漏洩は会社に損害を与える行為になるのですから、社会人としては絶対やってはいけないことです。これを理由にクビになっても文句は言えないでしょう。 |
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盗撮、ストーカー、そして、まさかの冤罪 |
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帰宅途中、ずっと同じ人がスマホをいじりながらついて来るといった場合を想像してみましょう。単に帰る方向が同じなのかも知れませんが、女性からしてみれば、ストーカーだったどうしよう、写真を撮られていたらどうしようと不安に思うのも無理はありません。上りのエスカレーターで女性の後ろに乗った場合も、盗撮ではないかと疑われること可能性があります。不安感はもちろん、嫌な思いを他人にさせてしまうだけでも迷惑な話ですが、警察に突き出されてしまったら、もう加害者としての扱いをされてしまうのです。こうなったら、その冤罪を晴らすのはとても大変です。 |
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