【1】竜巻とは?〜その種類とメカニズム〜 |
近年、温暖化に伴う異常気象も手伝って、日本でも竜巻の被害が増えています。
本節では、竜巻発生のメカニズムについて解説しました。
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地球温暖化と異常気象 |
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異常気象の増加 |
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日本はこのところ毎年のように猛暑やゲリラ豪雨、竜巻などの自然災害に襲われ、大きな被害が生じています。今年も例年と同じく全国的に猛暑となりました。また、晩夏から秋にかけて大型の台風が襲う危険性もあります。昨年も日本列島が異常気象に見舞われた1年でしたが、こうした自然の猛威は今後も続くと思われます。
近年世界中で異常気象が増加しています。異常気象には集中豪雨や干魃、黄砂以外にも、台風の巨大化や竜巻、ハリケーンの増加などが挙げられますが、こういった異常気象は現在世界的な問題となっている地球温暖化との関連性が指摘されています。日本ではゲリラ雨の被害が相次いでいることから、ゲリラ雨の予報技術や防災への関心が高まっています。集中豪雨は、日本でも毎年夏場になると頻発し、ゲリラ雨という呼び名が定着しつつあります。ゲリラ雨は河川の増水や土砂崩れ、家屋への浸水、道路の冠水など様々な被害をもたらし、私達の生活を混乱させます。世界でもゲリラ雨のもたらす被害は大きく、家自体が流され、屋根で救出されるのを待つという状況も実際に起こっています。その一方で干魃が起きている地域もあります。干魃による日照りが続けば水不足になり、農業や家庭での生活水が充分に得られなくなります。また黄砂とは、東アジアの砂漠地域から強風によって黄砂が舞い上がり、日本などの周辺諸国へ降下する現象です。黄砂は農業や生活環境に被害を与えるだけでなく、雲の発生と降水などを通じ、世界の気候にも影響を及ぼしています。さらに竜巻やハリケーンは、発達した積乱雲の底から柱状に早い速度で回転する空気の渦ができることを言います。地面や水面で発生し、都市部で発生すると被害も大きくなります。日本では年間平均12本程度の発生ですが、世界では、アメリカのように年間平均数百本発生するという国もあります。 |
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異常気象と極端気象 |
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異常気象(unusual weather)とはどのような気象状況を示しているのでしょうか? 一般的に異常な現象とは、過去の経験から大きく外れた現象で、人が一生の間で稀にしか経験しない現象を指します。その意味で異常気象には、大雨や強風などの激しい数時間の現象から数カ月も続く干魃、極端な冷夏・暖冬なども含まれます。ちなみに気象庁では《気温や降水量などの異常を判断する場合、原則として「ある場所(地域)・ある時期(週・月・季節)において、30年間に1回以下の頻度で発生する現象」》を異常気象と定義しています。ところが、近年では30年に1度どころか、毎年のように何らかの異常気象を経験するようになりました。このため、30年に1回という基準に限らず、社会的影響が大きい現象を「極端気象」と呼ぶことも多くなりました。 |
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猛烈な豪雨を呼ぶバックビルディング現象 |
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限られた狭い範囲に1時間で50oを超える大雨を集中豪雨と呼びます。たとえば数年前の山口・島根の豪雨では、島根県津和野町で24時間の降水量がこの地点での観測史上1位となる381oに達しました。また、秋田・岩手豪雨では、秋田県角館市で観測史上最多となる1時間に108.5oの豪雨となり、気象庁は《直ちに命を守る行動を取って欲しい》と呼びかけたことはまだ記憶に新しいでしょう。気象庁は、このような猛烈な豪雨となったのは積乱雲が連続して発生するバックビルディング現象が原因だとしました。ちょうどビルの背後に別のビルが並ぶように積乱雲が一列に並ぶためバックビルディング現象と呼ばれているのですが、通常は温かく湿った積乱雲は上昇し、冷たい下降気流と打ち消し合って激しい雨を降らせてやがて消えてしまうのに、バックビルディング現象が起こると、雨を降らせて消えるはずの積乱雲が次々に押し寄せ、記録的な大雨に繋がるのです。 |
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地球温暖化と台風 |
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地球温暖化と台風の関係は現在のところ明確にはなっていません。しかし、気象庁その他による21世紀末頃を想定した温暖化予測実験によれば、熱帯低気圧の発生数は減少するものの、最大風速が45m/sを超えるような非常に強い熱帯低気圧の出現は地球温暖化によって増加すると予測しています。 |
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ゲリラ豪雨や竜巻も積乱雲の仕業 |
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ゲリラ豪雨というのは正式な気象用語ではありませんが、局所的に大雨を降らす雨を指しています。都市の中心部の温度が郊外に比べて異常に高くなるヒートアイランド現象によっても、このゲリラ豪雨が起こります。ヒートアイランド現象とは、都市の中心部の地表がアスファルトやコンクリートで覆われ、しかも樹木も少ないために熱が逃げることなく、都市部の上空に放出されて局所的に気温の上昇を招く現象です。気温の等値線を記入すると、都市の上空に島のような形状が現れることからヒートアイランドと呼んでおり、都市部と周辺部との温度差は2〜5℃以上あることもあります。通常低気圧の接近による雨は徐々に雲行きが怪しくなって降雨となりますが、都市部を中心としたゲリラ豪雨は短時間に集中して大雨となるのが特徴で、このため、予報が遅れることがあります。竜巻も、これと同様に積乱雲が原因です。竜巻が温かい都市部と冷たい周辺部の境に多く起こるのは、その気温差によって積乱雲が発生しやすいからです。そして、スーパーセルという大きな積乱雲が渦を巻くことで竜巻が起こります。たとえば先年、埼玉県越谷市や千葉県野田市を襲った竜巻は、突風の強さを示す藤田スケールで上から4番目のF2(約7秒間の平均風速50〜69m/s)に相当する強烈なもので、移動距離は観測史上6位の約19qにも及びました。ちなみに、日本最大級の竜巻は茨城県つくば市などで発生したF3で、移動距離は歴代3位の約21qにも達したと言います。 |
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大気の移動で気象の変化 |
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地球では、太陽に近い赤道付近が一番熱く、離れた北極や南極では熱が余り当たらないため寒くなっています。このままでは赤道付近は暑くなり続け、北極や南極では気温が下がる一方ですが、現実には赤道付近は35℃程度、北極や南極ではマイナス30℃前後に保たれています。これは、大気が移動して熱のやり取りを行なって地球全体のバランスを保っているからで、この大気の移動すなわち熱交換によって気象が変化しているのです。温暖化が進むとこのバランスが崩れ、気温の変動差が大きくなって、この結果熱交換時に温度の差が大きくなり、予期しない要素が働いて異常気象が起こると考えられています。 |
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地球温暖化は地球規模の問題 |
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地球温暖化は、自然災害を引き起こすだけでなく、生態系にも大きな影響を及ぼします。多くの動物は居住地の移動などである程度は気温の上昇に順応できますが、植物は移動することができません。温度の上昇に耐えられなくなった植物は枯れてしまい、そこに寄生していた微生物なども死滅してしまいます。また、温暖化で北極や南極の氷が解け、海面が上昇することで海岸線の生態系も激変することが予測されます。地球温暖化は異常気象といった気象状況の変化だけでなく、このように地球全体の生態系など様々な分野に大きな影響を及ぼします。世界気象機関と国連環境計画が設置した『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)』は、世界中で相次ぐ干魃や猛暑、豪雨、竜巻などは温暖化がもたらす異変であるとして気候変動の危機を強く訴えています。 |
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竜巻とは? |
竜巻は積乱雲の下で地上から雲へと細長く延びる高速な渦巻き状の上昇気流で、英語でトルネード(tornado)とも呼ばれています。ハリケーンや台風と混同されやすい面もありますが、竜巻はそれらとは全く異なった自然現象です。竜巻は要するに突風の一種で、規模が小さく寿命が短い割に猛烈な風を伴うのがその特徴です。地上で強い竜巻が発生すると、暴風によって森林や建物などに甚大な被害をもたらすことがあり、災害をもたらす典型的な気象現象の一つとされています。
竜巻の水平規模は平均で直径数十メートル、大規模なものでは直径数百メートルから千メートル以上に及び、その中心部では猛烈な風が吹き、時には鉄筋コンクリートや鉄骨の建物をも一瞬で崩壊させ、大型の自動車なども空中に巻き上げてしまうこともあります。1ヶ所に停滞するものもありますが、多くは積乱雲と共に移動し、その移動速度は様々で、稀に時速100km/hを超えることもあります。なお、竜巻は台風・熱帯低気圧や温帯低気圧に比べて遙かに局地的であるため、気象観測施設上を通過することが希であり、中心の気圧を実測した例は殆どありませんが、僅かな観測例か言うと、中規模の竜巻で950hPa程度と考えられています。
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神奈川県で竜巻か 東京都にも竜巻注意情報 |
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横浜地方気象台によると、先月17日14時頃、神奈川県藤沢市周辺で竜巻などの激しい突風が発生し、木などが倒れる被害があったとのことです。関東地方は大気の状態が非常に不安定になっており、広い範囲に活発な雨雲や雷雲が発生しています。さらに神奈川県では、各所で発達した積乱雲が発生しており、この後も竜巻などの激しい突風が起こる恐れが非常に高まっています。また、東京都にも竜巻注意情報が発表されています。横浜地方気象台では今後も竜巻などが発生する可能性が高く、注意を呼びかけています。黒っぽい空が近づくとか冷やっと冷たい風が吹く、ゴロゴロと雷の音がするなどといった時は、発達した積乱雲が近づくサインです。速やかに頑丈な建物の中に入り、身の安全を確保するようにして下さい。 |
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竜巻発生のメカニズム |
竜巻とその特徴 |
竜巻が発生する原因としては、空気が暖められることで急速に発達した積乱雲の影響であることは間違いありませんが、しかし、未だに竜巻発生のメカニズムが完全に解明されていない部分もあるため、竜巻の発生を予想するのことは極めて難しいとされています。気象庁では、竜巻の発生原因について気象要因別・月別に分類し、その傾向を伝えつつ注意を促しています。
竜巻は、雲底から象の鼻状に垂れ下がる漏斗雲を伴うことが知られています。これは竜巻に巻き込まれた空気中の水蒸気が急激な気圧低下により凝結して生じるもので、従って、空気が乾燥していたり竜巻が弱い場合は漏斗雲を伴わないことも珍しくない上、夜間や豪雨中に発生した場合は漏斗雲を確認できないことも多くあります。竜巻は多くの場合、下層に存在している潜在的な渦が上昇気流に引き伸ばされて上下に伸長することでコンパクトかつ強力な渦へとなったものとされます。他方、竜巻の雲(漏斗雲)は大抵の場合、親雲の下端である数100メートルの上空から地上付近にまで延びますが、これは、膨張・冷却されて凝結して水滴が形成されるために、より湿度が高く気温が低い上空から下の方へと発達していくことが原因だと言われています。一方、普通の風(傾度風)は、気圧傾度力とコリオリ力(地球の自転に起因する力)、遠心力の三者が釣り合って吹くことが知られていますが、竜巻の場合は水平スケールでの規模が極端に小さいため、気圧傾度力と遠心力のみを考慮した旋衡風の考え方が適用できます。つまり、コリオリ力を考慮しなくてもよいため、竜巻には時計回り・反時計回りの両方が存在しているのです。ただし、メソサイクロンを伴う竜巻の場合、メソサイクロンと同じく北半球では反時計回り、南半球では時計回りが多く見られます。また、竜巻の進行方向は、親雲の移動方向に左右される部分が大きく、北半球では北〜北東〜東、南半球では南〜南東〜東の方向に移動する傾向があります。ただし、台風とは異なり、大きく蛇行したり規則性のない進路をとる竜巻も多く見られます。なお、通常は親雲から1個の竜巻が発生するだけですが、時に発生要因が揃った状態が長く持続すると、最初の竜巻が消滅した後に第二、第三の竜巻が続けて出来ることもあり、特にアメリカ大陸ではこうした連続発生がしばしば見られ、6個連続で発生したことも報告されています。
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竜巻の特徴 |
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- 発達初期の竜巻は形がはっきりしない場合がある
- 竜巻が地上に達すると巻き上がった土や枝葉、瓦礫などが渦を巻く
- 漏斗雲を伴わず、巻き上げた土などが渦を巻いているだけの竜巻も存在する
- 太いいびつな形状の竜巻も存在する
- 遠くの竜巻は不明瞭で、接近するまで気がつかない場合がある
- 竜巻の被害は細長く分布するという特徴がある
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竜巻の発生〜スーパーセルとメソサイクロン〜 |
強い竜巻は多くの場合スーパーセル(Supercell)または親雲と呼ばれる発達した積乱雲や積雲に伴って生じることが分かっています(ただし、スーパーセルを伴わない竜巻の発生事例も少数ながら報告されている)。このスーパーセルの中心部や周辺部には上昇気流の領域と下降気流の領域があり、下降気流の領域では集中豪雨が降っています。この雨は大気中や地上で蒸発する際に大気から気化熱を奪い大気の下層を冷やすと共に、自身の重さで大気を押し下げて下降気流を増強する働きがあるのですが、これによって下降気流が維持されて雨がつきるまで暫くの間は降り続けることになります。このため、豪雨に混ざって霰や雹が降ったり、豪雨の前後に激しい下降気流に伴うダウンバースト(down
burst、下降噴流とも呼ぶ)が発生したりします。一方、上昇気流の領域では、下降気流により冷たくなった空気の層の上を暖かく湿った空気が乗り上げるようにして上昇することで上昇気流が発生しています。上昇気流は積乱雲や積雲が発達するのに不可欠な空気の対流活動で、地上付近から上空10〜15km付近の対流圏界面へと空気が上昇してゆく過程で、空気に含まれた水蒸気が凝結して雲を作ります。このような環境の下では、重く冷たい下降気流の部分に比べて軽く暖かい上昇気流の部分の気圧が低くなり、上昇気流の部分を中心として低気圧と同じ方向(北半球では反時計回り、南半球では時計回り)に気流が渦を巻いて回転し始めますが、そうするとメソサイクロン(Mesocyclone、メソロウとも呼ぶ)と呼ばれる小規模(水平距離が数キロメートルから数十キロメートルほど)の低気圧が生まれます。また、メソサイクロンの周囲を回転する空気には遠心力がかかって渦の外側に引っ張られるため、中心部の空気が薄くなって気圧が下がります。その一方で気圧が下がることで気圧傾度力が働いてさらに周囲の空気を巻き込むことになります。また、この規模の渦には地球の自転に起因するコリオリ力という力も働くため、気圧傾度力と遠心力、コリオリ力の三つの力が均衡して低気圧としての気流の循環を維持しているのです。ちなみに、このタイプの風を傾度風と言います。さらに、メソサイクロンの中では上昇気流の領域や下降気流の領域自体も回転しています。下降気流は回転しつつ周囲に向かって流れ出しているのですが、この気流と南東の風とがぶつかると、ガストフロント(Gust
front)と呼ばれる寒冷前線に類似した気流の衝突面が形成されることになります。ガストフロントは主に強い下降気流さえあれば発生しうる現象で、スーパーセル以外の発達した積乱雲でも発生することがあります。また、ガストフロントの先端である前線面は、冷たい下降気流と暖かく湿った上昇気流が衝突しています。気流の衝突によって、この前線面では大きな風速差や気流の乱れが生じます。これをウインドシアと言いますが、このウインドシアのある状況下では小規模で短命な気流の渦が多数現われては消えることを繰り返しています。このような多数の渦のうち、ごく少数の渦が発達して上昇気流と結びついて竜巻に成長するのではないかと考えられています。
ただし、竜巻のもととなるこの渦の発達のキッカケについては未だ詳しく解明されていない部分が多く、現在も気象学や流体力学の観点から研究が続けられているのが現状です。現在のところ竜巻発達のキッカケとして、上昇気流が急激に強まることがその原因だとする説があります。これは、スーパーセル内でメソサイクロンが発達して中心部の大気中層の気圧が下がると、その下の大気下層では上向きの気圧傾度力が強まって上昇気流が急激に強まりますが、この上昇気流と前述の小規模で短命な渦が重なると渦に対して上向きの吸引力が働き、それが収束によって渦の幅が狭まると同時に風速も増し、コンパクトで強力な渦が形成されて竜巻となるという考え方です。ただし、このような条件はメソサイクロンの気流が回転している中心部にできやすいのですが、これはレーダーや衛星画像で見たスーパーセルの雲の位置的な中心とは異なるため、スーパーセルの雲の端の方に竜巻ができることも珍しくありません。一方、スーパーセル以外の積乱雲の場合、上昇気流が強まる要因は余りなく、ウインドシアによって偶然に水平方向に回転する渦が発達すると竜巻になるのではないかと考えられています。そのため、竜巻の発生域は限られており、発生頻度も低く、勢力もスーパーセルよりは劣るものが多くなります。ただ、スーパーセルでなくとも被害をもたらすような竜巻は実際に発生しており、同様に注意が必要であることに違いはありません。
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竜巻の発生しやすい天候 |
ガストフロント、ウインドシアといった竜巻の発生要因が揃うことが多い状況には以下のようなものがあります。
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熱帯低気圧の通過時 |
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スパイラル・バンド(レインバンド/螺旋状降雨帯)やアウターレインバンド(外縁部降雨帯)などの発達した積乱雲の近辺で発生し、低気圧の中心よりも東側に多く発生します。日本では台風の接近に伴って竜巻が多発することが多く見られます。 |
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温帯低気圧(熱帯低気圧以外の低気圧)・寒冷前線・停滞前線の通過時 |
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発達した積乱雲の近辺で発生し、前線については前線の近辺で多く発生します。ただ、スコールラインといって前線から離れた所に発生する例も見られます。 |
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大気不安定時 |
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上空への寒気や乾燥した空気の流入、下層への暖湿流の流入など。特に上空への移流によるものは一般的に目にする地上天気図では確認できず、高層天気図を見る必要があります。 |
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竜巻の発生地域 |
アメリカ合衆国では毎年1000個前後の竜巻が発生し、50人程度が亡くなっています。世界の竜巻の8割がアメリカで発生しているとも言われているのですが、これは他の地域に比べて特に多く、その中でも特に竜巻被害の多い同国中部はTornado
Alley(竜巻横丁)と呼ばれています。なお、アメリカでの竜巻被害が際立って多いのは、竜巻の発生数に対する勢力の強い竜巻の割合が非常に多いためですが、アメリカで発生する竜巻がなぜ勢力が強くなりやすく、かつ連続で発生しやすいかについては未だ解明されていません。一方、アメリカ以外では、南アジアやフィリピン、東アジア、ニュージーランド、オーストラリア西部・東部、カナダ南部、メキシコ北部、南アメリカ東部、ヨーロッパ、南部アフリカなど中緯度の温帯地方を中心に竜巻発生数が多く見られます。温帯での竜巻の発生が多い理由としては、亜寒帯低圧帯にあって暖気と寒気の衝突する前線で対流性降雨が多いことと、低気圧・高気圧の交互通過やジェット気流などが原因で高度によって風向風速が異なることが多いために気流の回転が生じやすいことが考えられます。世界の竜巻多発地帯は降水に恵まれた農業地帯に一致しており、その一方では災害に繋がる竜巻をもたらす低気圧などが豊かな降水をもたらしていることを示しています。
ところで、日本での竜巻の年間発生数は20個程度であり、気象庁の統計(1991〜2006年)では年間平均約13件ですが、単位面積当たりに換算すると0.3〜0.5個/km2で、同じく0.8個/km2のアメリカの半分から3分の1程度で、これは極端な差ではないとも言えます。気象庁の観測記録では、日本で発生する竜巻は、記録されているものに限れば最大でF1〜F2のものが時々発生し、数年に1度F3クラスが発生するくらいの頻度と考えられています。なお、竜巻の年間発生数は毎年の変動幅が広く、集計方法の変化などの要因もあって、日本国内では増加・減少といった傾向は断定できていませんが、実感としては竜巻の発生が近年増えていることは間違いがない事実だと言ってよいでしょう。参考として日本の事例に限った気象庁の統計によると、季節別では比較的暖かい夏から秋にかけての発生率が高く、9月や10月が特に多くなります。また、時間帯別では太陽が出ている日中の方が発生率が高く、特に正午頃から日没にかけての時間帯に多いと言われます。
日本国内では、1991年から2008年までの18年間の気象庁の観測データによれば、北陸地方から東北地方にかけての日本海沿岸や関東平野、東海地方、沖縄県などの発生がやや多いものの、全体としては日本全国の殆どの地域で竜巻の発生が観測されています。
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アメリカで竜巻が多い理由 |
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世界中で最も竜巻が多く発生する国はアメリカで、多い時には年間800〜1000個もの竜巻が発生したこともあります。アメリカの中西部において昼間の気温が急上昇してカナダ方面から冷たい空気が流入、大気が不安定な状態になることが多く、積乱雲が発達しやすい状況であるためと考えられています。 |
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【2】竜巻の種類とその被害規模 |
近年、日本でも竜巻の被害が増えています。
本節では、竜巻の種類と規模、その被害状況について取り上げました。
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竜巻とその種類 |
激しい突風とその種類 |
発達した積乱雲からは竜巻やダウンバースト、ガストフロントといった激しい突風をもたらす現象が発生します。なお、竜巻発生確度ナウキャストや竜巻注意情報では「激しい突風」をイメージしやすい言葉として「竜巻」を使っていますが、その中にはダウンバーストやガストフロントに対する注意も当然ながら含まれています。なおこの他に、晴れた日の日中などに地表付近で温められた空気が上昇することにより発生する「陣旋風」などがあります。
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竜巻 |
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竜巻とは積乱雲に伴う強い上昇気流により発生する激しい渦巻きで、多くの場合、漏斗状または柱状の雲を伴います。被害域は幅数10〜数100メートルで、長さ数キロメートルの範囲に集中しますが、数10キロメートルに達することもあります。 |
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ダウンバースト |
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ダウンバーストとは積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹き出す激しい空気の流れです。吹き出しの広がりは数百メートルから10キロメートル程度で、被害地域は円形あるいは楕円形など面的に広がる特徴があります。 |
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ガストフロント |
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ガストフロントは、積乱雲の下で形成された冷たい(重い)空気の塊がその重みにより温かい(軽い)空気の側に流れ出すことによって発生します。水平の広がりは竜巻やダウンバーストより大きく、数10キロメートル以上に達することもあります。 |
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竜巻と陣風 |
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先にも簡単に説明したように、竜巻とは積乱雲が発達した時に地表面に収束してきた気流の中で起こる瞬発性の回転する強風を言い、収束してきた気流は上昇気流となります。個々の竜巻は比較的短時間のうちに終わりますが、幾つも続いて発生することもあり、地表面付近では気圧の急下降もあります。竜巻の構造は柱状または漏斗上の雲が積乱雲の底から垂れ下がり、その軸は鉛直か、または傾いています。海面から巻き上げられた海水の飛沫または地表面から巻き上げられた砂塵などが竜の尻尾のように立ち上がって見えますが、漏斗の先がこの尻尾と繋がっていることが多く観測されます。また、竜巻の中の空気は低気圧性(北半球では反時計回り)に回転していることが通常で、全体の約80%が反時計回りです。竜巻の中の風速は、予め準備することができないので測器で観測することが難しく、推定値しかありませんが、たとえば1969年12月7日の愛知県豊橋市の場合、被害の程度から推定すると最大風速は毎秒約100m、回転速度は毎秒約90mとされています。
なお、竜巻が発生する積乱雲の中の上昇気流の近くには下降気流(ダウンバースト)があり、これが地上にぶつかって水平に広がる強風となって周囲に発散します。これをバーストフローとも呼びますが、これに相当する日本語はなく、一般に陣風と呼んでいます。陣風は気圧の上昇と気温の急降下を伴います。陣風は竜巻の場合より被害の範囲は少し広いものの、風速は大きくならないので、被害の程度は小さいとされます。陣風の最大風速はこれまでの研究では毎秒50mくらいとされています。ちなみに、陣風という語をこの下降気流(ダウンバースト)が地表面とぶつかるところの強風としたのは1970−1980年代に竜巻の構造・発生・被害などの総合研究をした京都大学を中心とする気象学者グループで、それまでは現象も詳しくは解明されていなかった上に、一般にも陣風の語は馴染みがなく、諸橋徹次の『大漢和辞典』にも、陣雨(じんう、にわか雨)や陣雲(じんうん、戦場に現れる凶雲)などは出ているものの、陣風は載っていませんでした。恐らく19世紀末か20世紀初め頃、低気圧や前線、積乱雲の鉛直構造が分かっていなかった時代に日本の気象学者が「強風域が線状に地表面を進行する現象」を陣風線と呼んだのが始まりではないかと考えられます。 |
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竜巻の種類 |
一般に竜巻を竜巻という表現で一括りにすることが多いですが、特にアメリカを中心にして学術的に竜巻は幾つかの種類に分類されます。 |
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■竜巻の種類 |
一般に竜巻を竜巻という表現で一括りにすることが多いですが、特にアメリカを中心にして学術的に竜巻は幾つかの種類に分類されます。 |
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多重渦竜巻(multiple vortex tornado) |
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複数の渦がまとまって活動する竜巻群。やや大きな竜巻(親渦)の周囲を小さな竜巻が回転することがあります。 |
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衛星竜巻(satellite tornado) |
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大規模な竜巻の周囲にできる竜巻。多重渦竜巻とは異なり、構造的には独立した竜巻ですが、勢力は弱いことが多いとされます。 |
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水上竜巻(waterspout)、海上竜巻、シースパウト(seaspout) |
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海上で発生する竜巻。竜巻だけではなく、海上の「チューブ状砂塵竜巻」や「塵旋風」もランドスパウトに含められることがあります。 |
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陸上竜巻、ランドスパウト(landspout) |
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水上竜巻と対比して陸上で発生する竜巻とされることが多い。アメリカ国立気象局(NWS)ではチューブ状砂塵竜巻(dust-tube tornado)としており、地上付近では漏斗雲が見えない代わりにチューブ上の砂塵が渦を巻いている竜巻のことを指し、地上に達しない竜巻によりできることもあります。 |
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空中竜巻(funnel aloft) |
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渦巻きの下端が空中に存在し、地上や水上に達していない竜巻。竜巻に含めない場合もありますが、構造やメカニズムは竜巻と同じです。 |
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■竜巻と類似した現象とその種類 |
竜巻と類似の現象も数多く存在すます。学術的にはこれらは竜巻とは全く異なるものなのですが、一般的にはその形状などから竜巻と呼ばれることも多くあります。 |
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塵旋風(dust devil) |
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学校の運動場や荒地などに発生するつむじ風(辻風)が稀にテントや椅子を巻き上げるほどの大規模なものに発達することがあります。これは塵旋風と言って竜巻と誤認されることが多くあります。塵旋風は地表熱に熱せられて渦が強化される現象ですが、竜巻は小規模であっても積乱雲から発生します。 |
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冬季水上竜巻(winter waterspout) |
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冬季に暖かい水面と非常に冷たい空気が接して発生する現象で、蒸気旋風(steam devil)の一種。冬季の日本海などで気団変質に伴って発生することが多くあります。竜巻とは形状や構造が似ているものの、母雲がなくても発生し、発生のメカニズムは竜巻とは異なっています。 |
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ガストネード(gustnado) |
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突風性の旋風で、ダウンバーストに上昇気流が付加されたもの。発達した積乱雲があり、大気の状態が不安定という竜巻と同様の条件下で発生しますが、メカニズムも形状も塵旋風に近いものがあります。 |
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火災旋風 |
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火災による熱や強風などにより発生する旋風で、関東大震災の時には大きな被害をもたらしたとされます。 |
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漏斗雲 |
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竜巻に付随する漏斗雲もありますが、竜巻とは関係のない漏斗雲もあります。寒気の渦巻きによるものなどがあり、形状もメカニズムも竜巻と類似しています。 |
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竜巻の被害とその規模 |
竜巻による被害の特徴は、短時間で帯状の範囲に大きな被害をもたらし、建物が倒壊したり車がひっくり返るほどの威力を持っている点です。人が風に飛ばされるだけではなく、様々なものが飛んでくる可能性があります。
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強風による被害 |
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竜巻は建物や施設、樹木や農作物などを倒したり壊したりする可能性があります。また、看板や瓦、壊れた建物の一部などが強風に飛ばされ、それらに当たって怪我をする場合もあります。さらに自動車や列車などを横転させるほどの威力を持つ場合もあります。 |
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交通障害 |
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竜巻によって送電線が切断されたり信号機が破壊されたりすることで、長時間の停電や交通障害が発生することもあります。 |
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■藤田(F)スケール階級表 |
竜巻などの激しい突風をもたらす現象は水平規模が小さく、既存の風速計から風速の実測値を得ることは困難です。このため、1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士により、竜巻やダウンバーストなどの突風により発生した被害の状況から風速を大まかに推定する藤田スケール(Fスケール)が考案されました。被害が大きいほどFの値が大きく、風速が大きかったことを示します。日本ではこれまでF4以上の竜巻は観測されていません。 |
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階級 |
推定風速 |
相対度数 |
想定被害 |
F0 |
17〜32m/s
(約15秒間の平均) |
38.9% |
テレビのアンテナなどの弱い構造物が倒れる。小枝が折れ、根の浅い木が傾くことがある。非住家が壊れるかもしれない。 |
F1 |
33〜49m/s
(約10秒間の平均) |
35.6% |
屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木は幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。 |
F2 |
50〜69m/s
(約7秒間の平均) |
19.4% |
住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。 |
F3 |
70〜92m/s
(約5秒間の平均) |
4.9% |
壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。 |
F4 |
93〜116m/s
(約4秒間の平均) |
1.1% |
住家がバラバラになって辺りに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。1トン以上ある物体が降ってきて、危険この上もない。 |
F5 |
117〜142m/s
(約3秒間の平均) |
0.1%未満 |
住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。自動車、列車などがもち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。数トンもある物体がどこからともなく降ってくる。 |
F6 |
143〜169m/s
(約3秒間の平均) |
ほぼ皆無 |
もし発生するようなことがあるならば、未曾有の超壊滅的な被害が予想される。この階級以上の竜巻の発生率は全体から見てもごくごくまれな割合である。 |
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日本の竜巻 |
日本の陸上では1年間に平均して18個の竜巻が発生します。しかし、8〜10月の盛夏から台風シーズンにかけた時期に全体の約半分が集中するので、台風の襲来回数が少ない年、冷夏の年の年間総数は少なくなり、たとえば冷夏だった1981年には6個、1982年には4個で竜巻発生数が異常に少なかったことがあります。このように竜巻発生件数は年による変動が大きく、たとえば1976年は37個で、特に前線・低気圧に伴う竜巻が25個に及びました。また、1979年は36個で、このうち台風によるものが17個に達しています。また、日本の中では竜巻発生の地域差がかなり明瞭です。特に多く発生するのは次ぎの5地域で、(1)東北地方の日本海沿岸、(2)関東平野、特に東京・千葉・茨城・埼玉、(3)東海道の太平洋沿岸、(4)九州の南部太平洋沿岸と西部沿岸、(5)南西諸島です。それぞれの地域で竜巻が発生する主な気象状態が異なり、従って季節性が認められます。
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日本で発生する竜巻の特徴 |
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- 日本のどこにでも発生する可能性がある
- 季節に関係なく、台風や寒冷前線、低気圧などに伴って発生する
- 台風シーズンの9月頃に最も多く確認される
- 年間平均(1999〜2008年)で約15個の竜巻が確認されている
- 年間を通じて沿岸部で多く発生するが、夏は内陸部でも発生する。また、秋は西日本の太平洋側で、冬は日本海側で多くなる
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関東平野における竜巻 |
竜巻は非常に発達した積乱雲の下で突発的に生じる縦長の大気の渦で、雲の底からロート状に下がってきて、地表に接した幅狭い部分に激しい破壊を与えます。積乱雲の移動と共にこの渦は高速でほぼ直線的に進行して、断続する幅狭い帯状の被災域を残して短時間で消滅します。突発的な局地的強風には他に、ダウンバーストやガストフロント、塵旋風などがあります。ダウンバースト(下降流突風)は積乱雲から激しく吹き降りてくる冷気流で、回転は伴わなないのに対して、ガストフロントは積乱雲からの冷たい下降流が水平に吹き出した前面(フロント)で生じる突風(ガスト)です。一方、塵旋風は温められた地表付近の大気が渦を巻いて立ち昇る旋風(つむじかぜ)です。気象庁はこのうちの竜巻とダウンバーストを広義の竜巻として突風データベースを作成しています。
1961年からの50年間に全国で発生した竜巻は年平均15.4個、関東平野(起伏の僅かな平坦地部)では1.9個で、関東平野の発生比率が12%です。竜巻の約4分の3は海岸付近で起こっているので、内陸だけに限ると、全国の内陸域竜巻の約30%が関東平野において発生しており、特に関東平野の中でも利根川及び鬼怒川沿いの地域に集中が見られます。広い平野では地表の起伏による抵抗がないので発生しやすく、また、邪魔されずに進行できることが竜巻多発の原因と考えられます。スケールは全く違いますが、強いトルネードが頻発する北米の中央平原に似たような地形条件にあると言えます。次に被害の比率についてみると、関東平野では大きな値を示します。この50年間の全国における死者発生の竜巻件数は17件で、死者総数は30人(年平均0.6人)、関東平野における発生件数は5件、死者総数は8人で、その比率は共に30%近くになっています。首都圏の内陸域に位置するために被災対象が多いということが考えられます。竜巻の強さには差がなく、藤田スケールでF2〜F3(日本の竜巻はF3が最高)の個数の比率は、全国も関東平野もほぼ同じの8%です。なお、F3の竜巻(住家が倒壊、非住家はバラバラになって飛散、自動車は吹き飛ぶ)は全国で4件、うち1件は1971年に浦和で発生しています(浦和の竜巻は浦和市街東方の農村部で発生し、幅は狭く移動距離は小さかったので、被害は幸い大きくはありませんでした)。
竜巻の発生条件は、上下の対流が生じやすい不安定成層の大気があって、それを水平方向に回転させる力が作用するという組み合わせです。対流不安定状態を作る主要因は上空への寒気流入で、南からの暖かく湿った気流の流入が加わると不安定はさらに増します。南に開けた関東平野では暖湿気流が内陸深くまで進入しやすいという条件があるわけです。上空に行くにつれて風が強くなり、また、その風向が変わって行くという状態にあると、大気の回転が起きます。ゆっくりと回転する巨大積乱雲(スーパーセル)は強い竜巻を発生させています。竜巻発生時の気象条件で最も多いのは寒冷前線の通過、次いで台風の接近です。寒気・暖気の流入はほぼ常に相伴っています。関東地方では北東に進行する台風の中心がまだ東海地方にあり、南方からの暖湿気流が吹き込む状態の時にしばしば竜巻が発生しています。
アメリカにおけるトルネードとは違って日本の竜巻の勢力は弱いので、幸い被害はそれほど多くはありません。先にも述べたように、藤田スケール(6段階区分)の日本における最大はF3で、50年間の総数は4件であり、その90%以上がF1以下と弱いものです。死者数はアメリカで年平均100人近くにもなるのに対して、日本では年平均0.6人程度、建物損壊は竜巻1件当たり平均30棟ほどで、竜巻の被害では建物損壊数に比較して死者数が少ないという特徴があります。死者数と住家全半壊棟数との比は100分の1程度で、地震や大雨の災害の僅か数分の1です。また、竜巻の渦内の低い気圧により屋根や2階が吸い上げられて飛散するので、人への危害力は比較的小さくなります。しかしながら、竜巻の発生は全く突発的で、その被害は局地的に激甚なものがあるので、非常に恐れられます。確かに大雨や地震の災害においては、土地の条件がその危険度・危険域に密接に関係するので、危険域を避け、或は建物構造で備えるといった事前の回避対応も可能ですが、竜巻の場合にはそれが不可能で、それは全くの運任せの突発現象であり、竜巻は文字通りの天災でもあるのです。なお、そんな状況の中、2008年3月から「竜巻注意情報」が発表されるようになりましたが、これは、発達した積乱雲が接近してきており、竜巻のような突風発生の危険が切迫していると予想される場合の注意喚起情報で、県単位で地方気象台から発表されます。県単位ということは、どこで竜巻が起こるとは言えないけれども、広い県内のどこかで起こる可能性があるという、すなわち場所は特定できない現象であることを意味しています。この情報が出されたら、空を見て雲の発達状態に注意し、さらに気象のウェブサイト等で雷雲の動きを知り備えるなどの対応が望まれます。
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